潜水艦は主に通常動力型潜水艦と原子力潜水艦の2種類が存在することをご存知でしたでしょうか?
世界の海では1955年にナチス・ドイツによって世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」が開発されて以降、多くの原子力潜水艦が登場しています。
しかし、原子力潜水艦は潜水艦と原子力技術の双方を持つ国でしか製造できないため保有国は限られ、現時点で世界6か国(アメリカ合衆国、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド)にすぎません。
それでも原子力潜水艦は非常に高性能であり、それを保有することは世界の海に大きな影響を及ぼすことになります。
その為、潜水艦ランキングを作成する上で、世界トップ10に通常動力型が入ることは非常に難しく、運用目的も異なることから、通常動力型潜水艦と原子力潜水艦はあえて分けて考える必要があると考え、ここでは世界最強の原子力潜水艦ランキングをご紹介します。
世界最強の通常動力型潜水艦ランキングはこちら
原子力潜水艦の特徴
と、その前に原子力潜水艦の持つ主な特徴をご紹介しましょう。
原子力潜水艦と通常動力型潜水艦を比べた場合以下のメリットがあります。
②動力に酸素を必要としないため長期間の連続潜航が可能
③原子炉は燃料消費を考慮する必要がないため水中での機動力がアップ
しかし、同時に以下のデメリットもあります。
②開発・建造・維持運用が非常に高コスト
③廃止後の原子炉・核燃料の処理問題
④メルトダウンや放射能漏れの危険性
ちなみに、過去には日本でも原子力潜水艦の開発・保有が議論されたことがあり、川崎重工業は、1958年に原子力潜水艦を建造した場合のコスト、必要な設備等について81ページのレポートをまとめ、その中で当時の試算では攻撃型原子力潜水艦を1隻を建造するためには、通常動力艦10隻分の資金を要すると結論しています。
前置きが長くなりましたが、原子力潜水艦ランキング行ってみましょう!
10位.リュビ級(アメティスト)原子力潜水艦
リュビ級(アメティスト)原子力潜水艦はフランス海軍が保有する最初の攻撃型原子力潜水艦です。
排水量は2,000トン程度と、攻撃型原子力潜水艦の中では最小です。動力に制限のない原子力潜水艦にとってサイズが小さいことはデメリットでしかありません。事実、本級の兵装搭載量・連続航海日数はかなり小さなものになっています。
また、本級は独自に世界的に珍しい原子力タービン・エレクトリック推進方式を採用しています。
これは静粛化の面では有利ですが、システムの複雑化、信頼性の低下、重量の増大などの問題があるため、他の原潜運用国では一般的なものではないものの、後継として開発中のシュフラン級原子力潜水艦も含めて、フランス海軍の原子力潜水艦はすべてこの方式を採用しています。
リュビ級(アメティスト)の性能情報
全長 :73.6m
全幅 :7.6m
原子炉:K48型加圧水型原子炉(48MW)×1基
最大速力:水中25kt(46km/h)
航続距離:(平均/最大):45日/60日
運用深度:300~500m
乗員 :70名
兵装 :533mm魚雷発射管×4基、SM39エグゾセ対艦ミサイル×14、機雷
探索装置:DMUX20(複合ソナー)、DSUV62C(曳航ソナー・アレイ)、DRUA33(水上探索レーダー)
電子機材:TITAC(戦闘情報システム)、SEAO/OPSMER(指揮支援)、Minicin(統合航海)、Syracuse2(衛星通信)、ARUR13(ESM)
9位.949A型(オスカーⅡ型)原子力潜水艦
オスカー型原子力潜水艦はソビエト連邦海軍・ロシア海軍が運用していた巡航ミサイル潜水艦で、原型の949型(オスカーI)と、改良型の949A型(オスカーⅡ)があります。
ソ連海軍第3世代の巡航ミサイル原潜であり、大射程のP-700「グラニート」対艦ミサイル×24発という極めて強力な対水上打撃力を備えています。
また、排水量の増大にも関わらず、奇襲効果と生残性を向上するために水中速力の向上が求められたことから、大出力のOK-650M加圧水型原子炉×2基が搭載され、2軸推進艦として設計されました。
949A型(オスカーⅡ型)は1986年から就役を開始しましたが、極度の財政難等により、現在活動状態にあるのは6隻程度と見られ、その他の艦は修理待ち状態になっているとみられます。
949A型(オスカーⅡ型)の性能情報
全長 :155m
全幅 :9.2m
原子炉:OK-650M加圧水型原子炉×2基
最大速力:水上15kt 水中32kt
航続距離:120日間連続潜航可能
運用深度:520m、最大600m
乗員 :90名
兵装 :650mm魚雷発射管×2門 (魚雷8本)、533mm魚雷発射管×4門 (魚雷16本)、P-700対艦ミサイル×24発
探索装置:MGK-540
8位.オハイオ級原子力潜水艦
オハイオ級原子力潜水艦はアメリカ海軍が現在保有する唯一の戦略ミサイル原子力潜水艦で、西側諸国で最大の排水量を誇る潜水艦であり、現役の潜水艦では最大の全長と弾道ミサイル搭載数を有しています。
オハイオ級の任務は、海中に潜み、アメリカ合衆国に対して核ミサイルが発射された場合、または発射される恐れがある場合に相手国に核ミサイルを発射することです。
出港後はひたすら海中に身を潜め、いつでも核ミサイルを発射することが出来るように海中で待機しています。
1回の任務は70日間でどの海域に待機するかは軍事機密であり、船長を含めた数人しか知る者はいないとされていますが、現在では搭載するミサイルの射程が長いことから、アメリカ本土に比較的近い太平洋や大西洋、北極海などで待機していると考えられています。
オハイオ級の性能情報
全長 :170.67m
全幅 :12.8m
原子炉:GE社製加圧水型S8G原子炉×1基
最大速力:水中20ノット(24ノット)
航続距離:90日間
運用深度:最大300m程度
乗員 :155名
兵装 :533mm水圧式魚雷発射管×4基、トライデントSLBM×24基(5番艦以降)
探索装置:BQQ-6(パッシブソナー)、BQR-15(曳航ソナー)、BPS-15A(対水上レーダー)
7位.971型(アクラ2型)原子力潜水艦
971型(アクラ2型)原子力潜水艦はソビエト/ロシア海軍の攻撃型原子力潜水艦で、2012年からはインド海軍でも運用されています。
同型旧型のアクラ1型からさらに静粛性を向上させ、強力な兵装を装備したタイプです。8隻が起工されましたたが、竣工されたのは6隻とされ、うち1隻がインド海軍へリースされています。
971M型(アクラ2型)の性能情報
全長 :108.0~111.7 m
全幅 :13.6 m
原子炉:OK-650B/OK-650M加圧水式原子炉 (190 MW)×1基
最大速力:水上20ノット(37km/h)、潜行時:35ノット(65km/h)
航続距離:100日間
運用深度:安全450m、最大600m
乗員 :73m
兵装 :650mm魚雷発射管×4基、533mm魚雷発射管×4基、533mm外装式魚雷発射管×6基、携帯式防空ミサイルシステム(イグラM MANPADS)
探索装置:MGK-540(統合ソナー)、Pelamida(曳航式)、MG-70(機雷探知機)、MT-70(迎撃受信機)
6位.改ロサンゼルス級原子力潜水艦
アメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦です。
ロサンゼルス級は62隻(改同型艦含む)が建造されており、単一クラスとしては配備数、建造期間ともに原潜史上最大の記録になっています。
ソ連の新世代潜水艦に対抗することを目的に設計された本級は、従来よりもはるかに優れた静粛性と速力を実現し、統合ソナー・システムや新型Mk48魚雷、対艦ミサイルを装備することで極めて卓越した戦闘能力を有しています。
その優秀な性能に加え、優れた量産性を両立させることで、1970年代以降のアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦戦力の基幹を担いました。
1972年-1995年の23年間という長期にわたって建造されていた為、段階的に3度の改良を施されており、その最終型は改ロサンゼルス級と呼ばれています。
また、本級はC4ISRシステムという統合ソナー・システムを装備した最初の攻撃型原子力潜水艦であり、ほぼ四半世紀にわたってアメリカ海軍の主力原潜の座を保持していたその実力は元世界最強と言えるものでしょう。
改ロサンゼルス級の性能情報
全長 :109.73m
全幅 :10.1m
原子炉:S6G型加圧水型原子炉×1基
最大速力:水中31ノット
運用深度:457m
乗員 :127-133名(士官12-13名、下士官兵115-120名)
兵装 :Mk67 533mm水圧式魚雷発射管、Mk48魚雷、トマホークSLCM用VLSなど
探索装置:BQQ-5統合ソナーなど
5位.945A型(シエラⅡ型)原子力潜水艦
シエラ型原子力潜水艦は、ソビエト/ロシア海軍の攻撃型原子力潜水艦で、1・2・3型のサブタイプが存在します。(3型は進水・就役せず)
船体はチタン合金で作られており、「強度が大きいので深深度潜航ができる」「磁気探知が困難になる」という特徴を有しています。また、船殻に吸音タイルを用いているので秘匿性にも優れています。
ただし、高価なチタン合金を大量に必要とする為、大量生産することができず、1型・2型ともに少数しか建造されていません。更に種々のミサイルを運用する本艦級は維持費が非常に高いとも言われています。
945A型(シエラⅡ型)の性能情報
全長 :111.0m
全幅 :12.2m
原子炉:OK-650B加圧水型原子炉(190MW)×1基
最大速力:水上14kt(26km/h) 、水中33kt(61km/h)
航続距離:食料補給を除き無制限
運用深度:500~600m
乗員 :100名
兵装 :533mm魚雷発射管×6基(魚雷、沈底機雷、対潜ミサイルRPK-6)、対空ミサイル(9K32ストレーラ2・9K34ストレーラ3)
4位.885型(ヤーセン型)原子力潜水艦
ヤーセン型原子力潜水艦は、ロシア海軍の巡航ミサイル潜水艦で、攻撃型潜水艦に巡航ミサイルを搭載することで、両者を統合した級になります。
特徴は何と言っても武装している3S-14V(3R-14V)対艦巡航ミサイル垂直発射筒(VLS)です。
居住区画と原子炉区画の間に8基搭載しており、最大24発のオーニクス対艦ミサイルを発射することができます。
また、原子炉には寿命が30年まで延長された新開発の「KPM」が採用されていますが、静音性ではシーウルフ級に劣ると考えられています。
885型(ヤーセン型)の性能情報
全長 :119m
全幅 :13.5m
原子炉:KPM 加圧水型原子炉(PWR)(出力195MW)×1基
最大速力:水上20ノット、水中28ノット
航続距離:
運用深度:600m
乗員 :80~85名
兵装 :533mm魚雷発射管×8門、オーニクス対艦ミサイル3連装垂直発射機×8基(24発)ほか
探索装置:MGK-700「アヤクス」水中聴音器、「ツカン」航跡自動追尾システムほか
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