ミリタリー

実用化された世界のレーザー兵器10選

レーザーポインターからレーザー脱毛など私たちの生活のなかでも身近な存在になっているレーザー。

これを利用した兵器がレーザー兵器で、アニメやSFの世界では兵士が使う銃から戦艦の主砲までレーザー砲で、まばゆい光線で撃ちあうシーンが描かれることもあります。

しかし、現実の世界で軍隊がレーザー砲を使っているところなどまず見かけることがなく、レーザー兵器といえば架空の兵器の代表のように思われてきました。

しかし、あまり知られてはいませんが、レーザーが架空の兵器だったのは過去の話。

技術の発展とともに実用に耐えるレーザー兵器がいくつも開発され、中には実際に配備されている例もあります。

ここでは、SFや架空の世界の兵器とされてきたレーザー兵器の現実世界での姿を紹介していきたいと思います。

レーザー兵器とは

引用:engineer.fabcross.jp

レーザーとは、光を増幅して射出する装置のことをいいます。

レーザー光は発生する電磁波の波長を一定に保つことができるという特徴があり、指向性および収束性に優れています。

レーザー光には当たった場所を視認することのできる可視光レーザーのほか、X線レーザーや赤外線レーザーなどがあります。

レーザーを発生させる方式により、固体レーザーや化学レーザー、半導体レーザー、ファイバー・レーザーなどに分類されます。

現代ではコンピュータや機械の制御から、金属加工に至るまで様々な分野に利用され、製造業をはじめとする各種産業で大きな役割を果たしています。

そんなレーザーを軍事の分野に利用しようという試みは古くから行われていて、50年以上の歴史があります。

何年ものあいだ、大量の資金を投じた研究が行われてきましたが、そのわりにはレーザー誘導装置やレーザー測距装置など一部を除いて兵器としての実用化は不調で、アニメやSFの世界にみられるレーザー砲のようなレーザーを使った攻撃兵器などは夢のまた夢の存在と思われてきました。

しかし、2000年代から民間分野におけるレーザー技術が成熟してくるとともに、それが軍事の分野にも輸入され、ついにレーザー砲の実用化が現実のものとなりました。

レーザー兵器の特徴

引用:gsx-r1000-k9.seesaa.net

レーザー砲は、高出力のレーザー光線を射出して目標を攻撃する兵器で、銃や大砲、ミサイルといった実体弾を発射する兵器と比較して、指向性のエネルギーを発射するため指向性エネルギー兵器と呼ばれます。

①レーザー兵器は超高速

レーザー兵器の最大の特徴として、そのスピードが上げられます。

レーザー兵器が発射するレーザー光線は、秒速30万㎞の速さで進み、これは音速の88万倍となるマッハ88です。

光の速さと同じ速度であり、つまりは宇宙一のスピードをもつ兵器ということになります。

レーザー兵器は、目標を瞬時に攻撃することができる高い速効性をもった兵器なのです。

②レーザー兵器は超精密

現在は、民間で精密な加工を行うレーザー装置が実用化されているため、これを軍事分野に転用することで、高性能かつ低コストなレーザー兵器を開発することが可能となっています。

光速で発射されるレーザーに弾道計算は不要で、照準をつけた次の瞬間にはレーザー光線が目標を貫いています。

さらに、実弾を使わないレーザー兵器には次弾の装填という概念もなく次々と瞬時に連射することが可能です。

そのため、レーザー兵器はこれまで使われてきた兵器と比べてはるかに高い命中率が期待できるとされています。

実体弾を使った兵器の場合は、機銃のように弾をばらまくタイプの兵器がありますが、この場合は必ず目標に当たらない弾が発射されることになります。

高い命中率をもつレーザー兵器なら目標をピンポイントで攻撃することができるため、そのような無駄もなくなります。

③レーザー兵器は低コスト

レーザー兵器のもつ他の特徴として上げられるのが、低コストであることです。

現在、レーザー兵器は出力5kw~30kw程度のものが実用化されていますが、低出力のレーザー砲なら1発あたりの射撃コストが1ドル(約110円)、高出力のものでも1000ドル~2000ドル(約11万円~22万円)程度となっています。

ミサイルなどは1発1000万円以上といわれるため、これをレーザー兵器で代替できるとすれば、かなりのコストカットが見込めます。

さらに、無駄弾もないためその点でもお財布に優しい兵器といえます。

最近では、2019年9月のサウジアラビアの油田攻撃のように、ドローンなど無人兵器を使用した攻撃も行われるようになり、これを撃墜するためなるべくコストの低い兵器が求められているため、レーザー兵器は需要に見合ったものといえます。

レーザー兵器の射撃コストが低いのは、使用するのが電力のみであるためで、これは同時に電力さえあれば弾切れの心配がないというメリットもあわせもちます。

④レーザー兵器は無限に撃てる!?

レーザー兵器は砲やミサイルのように実体弾を用いた兵器と異なり、弾をいうものを使用しません。

そのため弾切れの心配もなく、電力さえあればレーザー光線を発生させて発射することができます。

車両などに搭載するレーザー砲の場合は、蓄電池などを搭載して使用するため発射数に制限がありますが、艦艇のように発電設備をもっているプラットフォームに搭載して安定した電力供給が実現すれば、理論上は無限に撃てる兵器ということになります。

さらに、発射音や発射炎を出さないため、敵に見つかりにくく生残性が高くなるというメリットもあります。

⑤レーザー兵器は低威力?

アニメでは発射されたレーザービームが目標を一瞬で焼き尽くし、消し炭に変えるといったシーンが描かれることがありますが、本物のレーザー兵器はどれくらいの威力をもっているのでしょうか。

結論からいうなら、現実のレーザー兵器には目標を発火させたり爆発させたりするような威力はありません。

例えば、アメリカ軍が艦艇に搭載しているレーザー兵器では、艦艇に向かってくる小型ボートなどを目標にして、レーザー兵器によってモーターを攻撃し、加熱して不調を起こさせ故障させるというかなり地味なものです。

レーザー兵器の威力は3段階に分類され、レーザーによって敵の電子機器やエンジンなどに不調をおこさせ行動不能にするのがレベル1、レーザーの熱で燃料タンクなどを内部破壊するレベル2、そして目標を物理的に破壊するのがレベル3となっています。

レーザー兵器は基本的に、このうちのレベル1のレーザー照射によって目標のエンジン等を故障させるというものが主流ですが、なかにはレベル2の威力をもつものもあります。

残念ながら巨神兵のビームのような兵器は実用化されていないのが現状ですが、見た目は地味でも実際に兵器として威力が認められているのは事実であり、威力は低くみえますが、兵器としては十分に使えるものであるといえます。

もちろんこれは現段階での話であり、航空機やミサイルを実際に撃墜することのできる高出力レーザー兵器の開発も行われており、近い将来にはアニメの世界のレーザービームが現実のものとなる日もくるかもしれません。

では次からは、実際に世界各国で開発・実用化されたレーザー兵器をみていきたいと思います。

世界初の実用レーザー兵器 アイアン・ビーム

引用:bgr.com

世界で初めてレーザー兵器を実用化したのは、軍事大国アメリカでなければロシアやヨーロッパ諸国でもありませんでした。

2017年、世界に先駆けてレーザー兵器の実戦配備にこぎ着けたのは中東の国家イスラエルでした。

それが、ラファエル社製のアイアン・ビーム(Iron Beam Mobile Laser Weapon System)です.

周囲をアラブ国家に囲まれ四面楚歌状態のイスラエルは、軍事力を自国の存在を守るための生命線としてきました。

イスラエルの敵は正規の軍隊だけでなく、ハマスやヒズボラといったイスラム系過激派も存在しており、こうした組織はロケット弾を使ってゲリラやテロに近い戦い方をしてきます。

2006年のレバノン侵攻ではイスラエル北部に4000発のロケット弾が撃ち込まれ、2000~2008年にかけてはガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾4000・迫撃砲弾4000発が撃ち込まれ、2014年のガザ侵攻ではハマスが1000発のロケット弾でこれに対抗するなど具体例には事欠きません。

これによって軍人のみならず民間人にまで死傷者を出し、イスラエルにとっての大きな脅威となっていました。

このロケット弾を撃墜するため、イスラエルでは従来アイアンドームと呼ばれるミサイルによる防空システムを使用してきました。

しかし、大量に撃ち込まれるロケット弾をいちいちミサイルで撃ち落としていてはキリがありません。

そこで、1ドル程度の抵コストでロケット弾を迎撃可能な兵器としてアイアン・ビームが開発されました。

イスラエルにとってレーザー兵器は将来への投資ではなく、国家を守るため必要に迫られて開発された兵器でした。

アイアン・ビームは民間の技術が転用されたと思われ、5年という短期間で開発されて2017年に実用化されました。

ファイバー個体レーザー砲で、5kwという低出力ながら、そのぶん小型化に成功していて、大型トラックのコンテナに搭載することができます。

レーザー砲2基、管制装置、蓄電装置、防空レーダーのセットになっていて、射程は7㎞、出力の低さを補うために2基のレーザーが同目標を狙う撃つ仕組みとなっており、合計10kwの威力を発揮できます。

命中率の高いレーザー兵器なら、市街地を攻撃するロケット弾を迎撃する際にも、民間人への被害を抑制できるという利点もあります。

ストライカー搭載「MEHEL」レーザー砲

引用:www.defensenews.com

MEHEL(Mobile Expeditionary High Energy Laser 2.0)はアメリカ軍が開発した車両搭載型の高出力レーザー砲です。

アメリカもイラクやアフガニスタンで、イスラエルと同様に、テロリスト・ゲリラの攻撃や無人機(ドローン)を使った攻撃に悩まされ、これに対処するためにレーザー兵器が開発されました。

MEHELは出力5kwのレーザー砲と管制装置がセットになったもので、アメリカ陸軍の8輪装甲車ストライカーに搭載されます。

レーザー砲は電動で回転・俯仰が可能で、赤外線カメラや測距器といったセンサー類が組み込まれています。

MEHELは、味方の防空レーダーや観測所とネットワークを介して情報をやりとりすることができ、これによって迅速に目標の情報を取得し、撃墜することが可能です。

2017年には実際にレーザー砲を使ってドローンを撃墜する実験にも成功していて、この時は捕捉から撃墜までの時間が10秒程度でした。

ストライカー戦闘車にはさらに、ドローンを操作不能にできる電子ジャマーも搭載され、これらを組み合わせたCMIC(対無人機機動統合能力)システムによって無人機による攻撃から車両を守るようになっています。

2018年にはより長射程の10kwのMEHELが導入されており、アメリカ陸軍では今後3年のうちにさらに出力を上げた50kwのものを配備することを計画しています。

最強のファイバー固体レーザー砲「HELMTT」

引用:www.laserfocusworld.com

HELMTT(High Energy Laser Mobile Test Truck)は、アメリカ陸軍がボーイング社とともに進めてきたレーザー砲開発プロジェクトです。

スタートしたのは2005年でMEHELよりも早く、2013年には実証車が完成しています。

HELMTTは、オシコシ社製のHEMTT8輪50tトラックに搭載する高出力機動レーザー砲で、レーザー兵器は7.3mのコンテナ内に収納されるため、外観は普通のトラックとほぼ変わりません。

トラックにはドライバーとレーザー射手の2人が乗り込み、射手はモニターとゲーム機用コントローラーを使って1人でレーザー砲の操作をすることができます。

コンテナ内にはビーム照射部と制御装置をはじめ、蓄電設備や発電機、熱管理システム、冷却水タンク、空調設備などが搭載されています。

レーザー照射部は四角形で360度旋回させることができ、レーザーを発射するときにのみコンテナの天井部から起き上がる形で出現し、それ以外のときにはコンテナ内に収納されています。

口径0.5mで威力は10kw、目標を捕捉・追尾するため2種類の赤外線センサーが組み込まれています。

HELMTTの実証車は、2013年の実証実験において、射程1.8m~2.7mにおいて90発以上の迫撃砲弾と無人機を撃墜する戦果をあげています。

現代レーザー兵器の主流 ファイバー固体レーザー

HELMTTレーザー砲の大きな特徴として上げられるのが、小型で高出力のレーザー光線を発生させることができる、ファイバー固体レーザーを採用している点です。

ファイバー固体レーザーとは、レーザー光線を造り出すファイバー・レーザーをいくつも束ねて増幅し、出力を向上させるという最新のレーザー砲の主流となっている方式です。

ファイバー・レーザーとは、レーザーの光源となる半導体ダイオード(固体)から発せられるレーザーを希土類Yb(イッテルビウム)などを添加したコアを通過させることで増幅した上、それをさらに出力光結合部(出力光コンバイナー)でいくつも束ねることによって1つの強力なレーザー光線を作り出すというものです。

ファイバー固体レーザーは、従来のレーザー光線と比べて、レーザー光線の品質が高い、機器を小型化できる上に電力効率がいい、長寿命でメンテナンス性が高いといったメリットがあります。

世界最強の60kwレーザー砲

ボーイング社では、さらに強力な50kwのレーザー砲を開発し、HELMTTに搭載するとしていました。

しかし、それより早くに2017年3月、ボーイングのライバル企業であるロッキード・マーチン社が陸軍と契約して60kwという強力なファイバー固体レーザー砲の開発に成功しました。

このレーザー砲は、試験においては200秒にわたって高出力のレーザー光線を発射することに成功し、レーザー出力の世界記録を打ち立てました。

エネルギー効率も従来の33%から43%へと向上しているため、設備の小型化や消費電力の節減が期待でき、アメリカ陸軍ではこの世界最強レーザー砲を搭載したHELMTTトラックを完成させる計画です。

未来の100kwレーザー砲「HELTVD」計画

引用:www.defensenews.com

アメリカ陸軍では、ロケット弾や無人機、さらには巡航ミサイルをも撃ち落とすことのできる強力な100kwレーザー砲の開発を進めており、実現すれば陸軍野戦部隊の防空を担うことが予定されています。

このため、アメリカ陸軍では1.3億ドルの予算を投じて2022年までに100kwレーザー砲の実証車を開発することとしており、HELTVD(High Energy Laser Tactical Vehicle Demonstrator)と呼ばれます。

開発を担うのはロッキード・マーチン社で、HELMTTと同じくトラックのコンテナにレーザー砲を搭載します。

HELTVDは6輪の中型トラックで、レーザーの威力は向上していますが、8輪のHELMTTよりも小型化する計画のようです。

口径は0.3mでミサイルを数秒で撃墜する能力を持ち、1発あたりの発射コストは約30ドル(約3200円)とされています。

ミサイル等を使って迎撃することを考えれば破格の安さといえるもので、アメリカ軍ではさらに強力な300kwレーザー砲の開発も進めていて、これが実現すれば大型ミサイルや戦闘ヘリまでをも撃墜することができるといわれます。

艦艇搭載レーザー砲「LaWS」

引用:ja.wikipedia.org

LaWS(Laser Weapon System)は、アメリカ海軍が開発した艦艇搭載型のレーザー砲です。

LaWSはレイセオン社によって2009年に開発されたもので、30kwの赤外線レーザー光線を照射することができます。

大型望遠鏡のような外観をしており、艦艇を狙ってくる無人機や小型ボートなどを阻止することを目的としています。

目標のエンジン、モーターを攻撃することで故障させ、2秒ほどで無人機を撃墜することができます。

爆発物を起爆させることもでき、出力を抑えれば人に対する非致死性兵器として使用することも可能です。

HELMTTより早く開発されたため、エネルギー効率が現在では低めの25%となっていて、これがLaWSの欠点ともいえます。

LaWSは、野外試験として2014年8月にペルシャ湾に派遣された輸送揚陸艦「ポンス」に搭載され、個艦防衛用兵器としての運用がスタートしました。

これに伴い、AN/SEQ-3という制式兵器としての名称が与えられ、ポンスの積むファランクス用レーダーを共用できるようにするなどの改修が加えられました。

ペルシャ湾での射撃試験では無人機を何度も撃墜することに成功しており、アメリカ海軍ではさらに強力なイージス艦用の150kw対空レーザー砲HELIOS(ヘリオス:太陽神)の開発も行われています。

ヘリオスは、2021年の完成を目指していて、アーレイバーク級駆逐艦に搭載される予定です。

弾道ミサイルを撃破した空中発射レーザー砲「ALTB」

引用:www.globalsecurity.org

1980年代にアメリカのレーガン政権が掲げたミサイル防衛構想であるスターウォーズ計画では、レーザー兵器を使用して弾道ミサイルを撃墜することも考えられていますが、予算の都合と技術的な問題から断念されました。

しかし、レーザー砲を使って弾道ミサイルや敵機の放った空対空ミサイルを撃墜するというコンセプトはその後も研究が続けられ、2001年にはALTB(Airborne Laser Testbed)試験機が開発されました。

ALTBはジャンボジェットの愛称で知られる4発旅客機ボーイング747の新型でハイテクジャンボと呼ばれる747-400Fの機体にノースロップ・グラマン社製のレーザー砲とロッキード・マーチン社製の射撃管制システムを搭載したものです。

機首には旋回型レーザー砲が装備され、機内容積の3分の1がレーザー関連機器で占められています。

レーザー内部には直径1.5mの望遠鏡装置が組み込まれ、機体後部には小型自動車ほどの大きさの6つのレーザー発生モジュールがあり、そこから出力1~3Mwという高威力のレーザーを目標にむけて発射することができます。

ALBTに搭載されたのは化学レーザーの1種であるヨウ素レーザーで、酸素とヨウ素の混合気体を共振器に送って-145度まで急速冷凍し、その際ヨウ素原子からレーザー光を発生させるという原理のものです。

ALTBは、目標を探知する赤外線センサー、レーザーによる目標の追尾機能やあらゆる方向からの攻撃に対処できる全周監視装置などを備えています。

2010年2月11日、南カリフォルニア沖の海軍射場で行われた実験で、ALBTは見事弾道ミサイルを撃墜することに成功しています。

ALBTのもつ強力なレーザーでも、弾道ミサイルの貫き撃墜するということは不可能で、このときはブースト段階(発射直後でミサイルがまだ低速の段階)で目標の燃料タンクをレーザー光線で過熱し、タンクを破裂させて撃ち落としたということです。

ALBTはコストの増大によって2011年には開発中止になりましたが、アメリカ軍ではこの経験をもとに新たな空中発射型レーザー兵器の開発を進めており、将来的には戦闘機や無人機に搭載してミサイル防衛を担うものとされています。

中国のレーザー防空兵器「サイレントハンター」

引用:www.dailymail.co.uk

サイレントハンターは、中国のポーリー・ディフェンス社が開発した、ドローンによる攻撃に対処するためのレーザー防空システムです。

サイレントハンターはファイバー固体レーザー砲で、レーザー照射装置に指揮通信システム、レーダー、光学・電子センサー、ターゲティング・トラッキングシステム等をセットにしたものです。

総重量は200kgほどで、車両に搭載する場合には、レーザー砲等を搭載した車両に加え、電源供給システムを乗せる車両がもう1台必要で、2車1組で運用されます。

出力は10~30kwで、出力10kwのとき射程200~2000m、20kwで200~3000m、30kwで200~4000mとなります。

レーザーだけでなく、光学センサーとミリ波レーダーも駆使して目標を探知することができ、4000m以内で捕捉が可能です。

対処できる目標の速度は最大で60m/sとされ、1㎞の距離から5㎜の鉄板に穴を開ける威力をもっています。

ポーリー社ではサイレントハンターの艦艇への搭載も計画していて、大きな電力を供給できる艦艇に搭載することでレーザー砲の威力を上げられるとしています。

サイレントハンターは2016年に杭州で行われたG20サミットの警備で実際に使用され、2018年にカザフスタンで行われた「KADEX」やアラブ首長国連邦で開催された「IDEX2019」など海外の防衛装備展示会にも盛んに出展されています。

人工衛星を破壊する「死光A」

引用:www.sohu.com

中国は2007年1月にミサイルを用いて人工衛星を撃墜して以来、対衛星兵器と呼ばれる兵器の開発を行っています。

「死光A」は衛星攻撃のために中国が開発したといわれる大型戦略レーザー兵器で、中国では高出力自由電子レーザー兵器と呼ばれます。

死光Aの存在は中国のネット上などで報じられているもので、それによるとこの兵器は世界の15年先を行く能力をもっており、人工衛星、宇宙ステーションの破壊や移動中の戦略核弾頭、潜水中の原子力潜水艦などを攻撃する兵器とされます。

中国の人口衛星と連動して、地上から発射したレーザー光線を反射によって普通ならレーザーの届かない場所まで送ることができ、その有効殺傷距離は実に30000㎞(地球1周が約40000㎞)にもおよぶとされます。

死光Aは現在すでに中国の地上レーザー砲基地に配備されているといわれ、将来的には中国の人口衛星(敵国衛星の攻撃を目的とするキラー衛星)や宇宙ステーションにも搭載されるといわれます。

これが実現すれば、まさに宇宙戦争の時代といえますが、情報の多くが真偽不明のもので実際のところ死光Aがどれほどの兵器なのかはわかっていません。

しかし、アメリカの研究機関が出した報告書でも中国軍が高出力レーザー兵器の開発を行っていることが指摘されており、もしかすると近い将来こうした兵器が実際に使用されるようになるかもしれません。

日本が開発する「高出力レーザシステム」

引用:ddogs38.livedoor.blog

日本の防衛省でも、1970年代からレーザー兵器の実験・開発を行ってきました。

しかし、日本で開発されてきたのは従来型の化学レーザーで、防衛装備庁が2010年から研究を行っているのもヨウ素レーザーで、現在の主流になっているファイバー固体レーザーの開発では出遅れています。

ようやく2018年から平成30年度防衛予算により、87億円の予算を投じて「高出力レーザシステム」(防衛省ではレーザーの後ろの伸ばし棒は表記されません)の開発がスタートしました。

低高度を飛んでくる無人機や迫撃砲弾に対処することを目的としたもので、アメリカのHELMTTのようにトラックに搭載する陸上レーザー砲が構想されており、実現すれば海自艦艇や地上基地での防空兵器としても使用されると見られています。

まとめ

以上、世界のレーザー兵器を紹介してきました。

アニメや映画の世界のものだと思っていたレーザー兵器が、実はいろいろな国で開発され、十分実用的な兵器と呼べるものが生まれていることがわかります。

フィクションの世界で描かれるレーザー砲とは少し違ったものですが、世界最速の兵器であり電力さえあれば弾切れもなくコストも削減できるなど従来の兵器にはない大きな特徴と可能性をもっていて、これからさらに発展していくことが期待されます。

近い将来には、強力なレーザー兵器が登場し、世界の軍隊で当たり前のように使われる時代がくるかもしれません。

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