世の中には様々な高額商品が存在していますが、みなさんは世界一高額な戦車とはなんだと思いますか。
そもそも戦車1両の価格と言われても多くの人がピンとこないかもしれません。
兵器の値段は私たちの常識とはかけ離れた額になっているので、いくらくらいになるのか想像すらつかないのではないでしょうか。
世界一高い戦車は、軍事大国アメリカの戦車でしょうか、それともヨーロッパ戦車でしょうか、高性能だけどその分値段も高いといわれる日本の戦車はどれくらいなのでしょうか。
ここでは、世界の戦車の価格をランキング形式で紹介していきます。
第10位 99式戦車(2億8000万円)
引用:seesaawiki.jp
99式戦車は、中国人民解放軍が開発した第3世代戦車で、中国軍の主力戦車となっています。
中国語では、「99式主战坦克」、英語では、「ZTZ-99」と表記されます。
全長11m、重量54t、速度80㎞、乗員3名で、武装として50口径125㎜滑腔砲や9M119対戦車ミサイル、12.7㎜、7.62㎜機銃、94式5連装76mm発煙弾発射機などを搭載しています。
砲塔には、爆発反応装甲と複合装甲を組み合わせた楔形の増加装甲を取り付けることもできます。
もともとは98式戦車という名前でしたが、1999年の建国50周年に参加したこと記念して、このときまだ98式戦車が完全な実用段階に達していなかったこともあって、99式戦車と改称されました。
本格的な生産は2000年から開始され、2001年から配備がスタートしました。
設計はソ連ものを元にしていますが、中国がそれまで培ってきた戦車開発のノウハウが詰め込まれ、欧米からの技術を積極的に取り入れられました。
レーダー誘導兵器やJD-3レーザー検知式アクティブ防護システムを採用するなど、それまでの中国戦車とは一線を画するものになっています。
自衛隊の10式戦車や韓国のK2戦車が登場する以前には、アジア最強の戦車といわれることもありました。
そのぶん、価格も高価になったため、安価で性能的には劣る第2世代の96式戦車との廃炉―・ミックスによる配備されています。
99式戦車には、超信地旋回ができない、重量54tもあって中国のインフラの最大限ギリギリの値になっていることなど、いくつかの問題点も持ち上がっていて、これらは戦車の開発を急いだことに端を発しているといわれます。
99式戦車には、改良型として99A戦車が存在しています。
これは、中国とパキスタンが共同で開発した90-Ⅱ式戦車の車体に99式の砲塔を搭載したもので、99式で問題になっていた車内における動力部の容量を抑えることに成功し、軽量化に成功しています。
主砲は99式と同じく125㎜滑腔砲で、車両間の情報共有システムを搭載して、探知した敵の位置や行動データをリアルタイムで味方部隊に伝えることができます。
中国戦車として初めて超信地旋回を可能にしています。
主砲の砲塔の上に水の入ったコップを乗せたまま、水をこぼさずに戦車を走行させる動画が中国軍によって配信されており、これが事実なら走行性能もかなり高いとみられます。
99式戦車の不満点を改善し、現時点において最強の中国戦車といえる99 A戦車ですが、その欠点として上げられるのがやはり価格の高さで、6000以上の戦車を保有するといわれる中国軍の中で、99A式戦車の配備数はたったの120両あまりだといわれています。
第9位 T-90A(4億5000万円)
引用:ja.wikipedia.org
T-90A戦車は、現在のロシア軍における主力戦車となっている第3世代の戦車です。
1992年に制式採用されて、ロシアでは「ヴラジーミル」という愛称を与えられています。
それまでのロシア戦車と外見の異なる、T-90Aの角張った溶接砲塔は「ヴラジーミル砲塔」とよばれます。
T-90Aは、ロシアの2.5世代戦車であるT-72に、ロシアの主力戦車の1つとなっている第3世代戦車のT-80Uと同じように主砲から対戦車ミサイルを発射することができるようにしたりといった攻撃・防御能力を付与する改良を行って、T-90戦車として開発されました。
現在は、輸出型のT-90Sを改良した、溶接砲塔搭載タイプのT-90Aが主に配備されています。
T-90Aは、全長9.53m、重量46.5t、最大速度65㎞/h、乗員3名で、武装として48口径125㎜滑腔砲に、12.7㎜、7.62㎜機銃を装備し、主砲からはレーザー誘導式でNATOではAT-11スナイパーと呼ばれている9M119「レフレークス」対戦車ミサイルを発射することが可能です。
ちなみに、主砲から対戦車ミサイルが撃てるのは、アメリカやヨーロッパの戦車にはあまり見られない、ソ連時代からのロシア戦車の特徴です。
装甲には、複合装甲と、爆発反応装甲「コンタークト-5」ERAを装備しており、アクティブ防御システムとして、敵の対戦車ミサイルの測距・照準を妨害する「シュトーラ-1」を装備し、砲塔の横に設置された赤外線ライトは赤外線ジャマーとして使うこともできます。
T-90Aは、そのほかにも目標の自動追随機能をもった最新の射撃統制システム「カリーナ」、位置情報ネットワーク通信システム「グロナス」といったロシア軍の最新テクノロジーが詰め込まれています。
2011年には、発砲されるAPFSDS(翼安定式装弾筒付徹甲弾)の有効射程を増加させた新型の125㎜滑腔砲と最新の爆発反応装甲「レリークト」を装備した改良型T-90MSも登場しています。
T-90は海外への輸出や現地でのライセンス生産も行われていて、最新のT-90MSも輸出についてインドと交渉中であるともいわれますが、仕方のないこととはいえ、戦車の性能が上がるごとに価格も上昇していく傾向にあります。
T-90の輸出価格が1両1億6000万円ほどだったのと比べると、3倍近くに上昇しています。
特にT-90の場合は、装備も高価で、対戦車ミサイル「レフレークス」は、1発3000万円で、当時から5発撃つたびにT-90が1両買えるといわれていました。
第8位 メルカバMk.4(6億4000万円)
引用:ja.wikipedia.org
中東の強国イスラエルの主力戦車メルカバ、その最新型で2002年から配備がスタートしたのが、メルカバMk.4です。
メルカバはヘブライ語で「騎馬戦車」を意味し、旧約聖書に登場する「神の戦車(メルカバー)」に由来しています。
メルカバは、全長9.04m、重量65t、最大速度64㎞/h、乗員4名で、武装として44口径120㎜滑腔砲や12.7㎜、7.62㎜機銃、60㎜迫撃砲などを装備しています。
重量が大きいため、高出力エンジンを装備しているものの、速度はやや遅めです。
イスラエルは、周囲に同盟国をもたず国境を接しているのは潜在的な敵国であるアラブ諸国ばかりという特殊な国情の国家で、自国と自国民の生存にかなりの重点をおいています。
メルカバ戦車も、こうしたイスラエルの特殊な事情を反映し、他国の戦車にはない特徴をもっています。
メルカバはMk.1~Mk.4まで4つの発展形がありますが、そのすべてで車体の前部にエンジンを置くという社内配置を取っており、これは前方からの攻撃を受けた際に、走行不能になる代わりに、エンジンを盾にすることで乗員を守り、生残性を高めるという効果を狙ったものです。
これは、周囲の国家と比べると、相対的に人口が少ないイスラエルにおいて、兵士の命を大切にするという思想が現れたものです。
そのほかにも、車体後部が弾薬庫兼兵員室になっていたりと、乗員と弾薬を守るための設計となっているほか、戦車が戦闘不能になった場合は乗員が後ろから脱出することができます。
後部のドアは戦闘中に孤立した歩兵を救出するためにも使われます。
そのほか、副武装が充実していて対人戦闘能力が高いことなど、イスラエルにおけるそれまでの戦訓が取り入れられた設計となっています。
Mk.4では最新の射撃統制装置とネットワーク機能の充実による情報共有や、外装式モジュール装甲が採用など攻守ともに強化されています。
武器輸出も盛んなイスラエルですが、メルカバ戦車は自国軍への配備が最優先とされているため、輸出は行われていません。
メルカバは、これまでに300両以上が生産されているほか、実戦にも幾度も投入されています。
第8位 アージュン(6億4000万円)
引用:ja.wikipedia.org
アージュンは、南アジアの地域大国インドが開発した第三世代の主力戦車です。
名称のアージュンは、古代インドの神話的抒情詩『マハーバーラタ』に登場する戦死アルジュナからきています。
アージュンは、全長10.63m、重量58.5t、最大速度72㎞/h、乗員4名で、武装として55口径120㎜ライフル砲、12.7㎜、7.62㎜機関銃を装備しています。
インド軍では、戦車の自国開発能力を獲得するため、1974年から戦車開発が始められました。
はじめは第二世代戦車の開発を目指していましたが、レオポルト2のようにそれよりも優れた性能の戦車が登場してきたことで、さらに能力の高い戦車を開発する方針に変更します。
しかし、インドにとってこれはハードルの高いことで、アージュンがお目見えするのは1996年のことになってしまいました。
ですが、そのかいあって、アージュンでは、主砲の120㎜ライフル砲や射撃統制装置、照準器、自動消火システム、NBC(核・生物・化学)兵器防護装置など多くの装備がインドの自国開発となっています。
装甲にも、インド国防冶金研究所(DMRL)が開発した「カンチャン・アーマー」と呼ばれる独自の複合装甲を採用しています。
インド空軍のC-17グローブマスターⅢ輸送機を使っての空輸も可能です。
アージュンは、インドの過酷な砂漠環境にも適応できる戦車とされ、比較性能試験において、T-90にも勝ると判断された、インド軍自慢の戦車です。
さらに、改良型のアージュンMk-Ⅱの開発も決まっており、2014年には試作車が公開されています。
アージュンMk-Ⅱは、遠隔操作の無人銃架の採用や、射撃統制装置の改良、対ヘリコプター戦能力の付与、爆発反応装甲の採用など様々な点がアップデートされる予定です。
第6位 レオパルト2A6(7億3000万円)
引用:ja.wikipedia.org
レオパルト2は、ドイツ軍の開発した第3.5世代の主力戦車です。
先代のレオパルト1は、1965年に登場した戦車で、レオパルト2はソ連戦車の進化に対抗を目的にアップデートするために開発されました。
当初はアメリカ軍と共同で、戦車装備の共通化を図ることが計画されていましたが、結局、アメリカはM1エイブラムスを採用したため、レオパルト2を使用するのはドイツ軍だけとなりました。
レオパルト2は、1977年に開発され、1979年の量産開始当時、ドイツはまだ分裂しており、西ドイツと呼ばれていました。
レオパルト2A6は、全長11.17m、重量62.5t、最大速度68㎞/h、乗員4名で、武装として55口径120㎜滑腔砲、7.62㎜同軸機銃および対空機銃を装備しています。
A6は、主砲をそれまでの44口径から長砲身の55口径砲に換装した改修型で、装甲貫徹能力は44口径より1割増しくらいになっているとみられます。
複合装甲に加え、車体前面には内部が中空になっており、隔壁のあるショト装甲といわれる特徴的な装甲を装備しています。
これによって、HEAT弾(成形炸薬弾)による攻撃を防いだり、複合装甲を守る効果があるといわれています。
レオパルトは改修を重ねることで、最初55tだった重量は62tにまで増加し、それに伴い、スピードは72㎞/hから68㎞/hに低下しています。
第3世代戦車の先駆的存在となったレオパルト2は、ドイツをはじめ、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドなどヨーロッパを中心に15か国以上で採用、「欧州標準戦車」の呼び名もあります。
各国すべてあわせた生産数は3000両以上になり、世界の戦車のなかでもその性能はかなり高い水準にあり、これが各国での採用につながっています。
第5位 M1A2エイブラムス(9億1000万円)
引用:www.jiji.com
現代のアメリカ軍の主力戦車となっているのが、第三世代のM1エイブラムス戦車です。
1981年に開発され、主砲は少し小さめで旧式でしたが、高出力のガスタービンエンジンを搭載し、複合装甲を採用するなど先進的な設計をしていました。
愛称のエイブラムスは、第二次大戦の戦車将校のクレイトン・エイブラムス大将に由来します。
エイブラムスは、バルジの戦いでも活躍した英雄で、この戦車の開発を推進しました。
M1A2は、その改良型で、各戦車で敵の情報を共有できる車両間情報伝達システム(IVIS: Intervehiclar Information System)や車長用独立熱線暗視装置(CITV:Commander's Independent Thermal Viewer)を搭載しており、さらにC4I能力を向上させたM1A2ESP(ッシステム拡張パッケージ適用型)もあります。
M1A2は、全長9.83m、重量63t、最大速度65㎞/h、乗員4名で、武装として44口径120㎜滑腔砲、12.7㎜、7.62㎜機銃を装備しています。
開発時は自動装填装置の搭載も可能とされましたが、アメリカ軍では乗員の誰かが戦闘で負傷したときに戦車の運用が難しくなるといった理由から、あえてこれを搭載せず、装填手を入れて乗員を4名としています。
装甲には、劣化ウラン弾に対応した装甲の中に網上の劣化ウランを組み込み劣化ウランプレートも採用されています。
M1エイブラムスの大きな特徴として、世界でも屈指の実戦経験をもつ戦車ということが上げられます。
1991年には湾岸戦争で初めての実戦投入を経験し、輸出型ではあるものの、イラク軍が保有していたT-72などソ連戦車を、長射程を活かしてアウトレンジから次々と撃破し、アメリカ軍圧勝の原動力になっています。
このときは、砂丘の影に隠れたT-72を熱映像装置で発見し、砂丘越しに砲撃を行って撃破するといった出来事もありました。
そのほか、2001年のアフガニスタン紛争や2003年のイラク戦争でも実戦参加しています。
M1エイブラムスは、間違いなく世界最強戦車の1つといえ、アメリカだけでなく、オーストラリアやエジプト、クウェートサウジアラビアといったアメリカの同盟国にも多数採用されており、M1シリーズ全体での生産数は9000両を越えています。
第4位 チャレンジャー2(9億2000万円)
引用:ja.wikipedia.org
イギリス陸軍が誇る第三世代戦車がチャレンジャー2です。
チャレンジャー2は、イギリスが1983年に開発したチャレンジャー1の改良型で、1991年に制式採用されました。
チャレンジャー1からの改良点として、新型の主砲や複合装甲、変速装置の搭載、砲塔の再設計、ステルス性の付与などが上げられます。
チャレンジャー2は、全長11.55m、重量62.5t、最高速度56㎞/h、乗員4名に、武装として、55口径120㎜ライフル砲と7.62㎜機銃を装備しています。
イギリス戦車では、他の多くの国で採用されている滑腔砲ではなく、砲身の内部にライフリングと呼ばれる溝のあるライフル砲が採用されているという特徴があります。
これには、イギリス戦車がHESH弾(粘着榴弾)の使用するためこれに適していることや、射距離、命中精度の高さといった理由が上げられます。
2007年から、一部のチャレンジャー2には、プラットフォーム戦場情報システムアプリケーション(PBISA)が装備されるようになり、これによって戦車同士はもちろんのこと、歩兵戦闘車や偵察車両などとも情報共有が可能になり、敵の位置から弾薬、燃料の残量といった情報までもをやりとりすることができます。
チャレンジャー2は、チョバム・アーマーといわれる独自の複合装甲をもち、ドーチェスターと呼ばれる増加装甲を取り付けることもでき、高い防御力をもつとされています。
が、その反面、重量62tとヘビー級で、エンジン出力の低さと相まって、速力は56㎞/hとかなり低速になってしまっています。
イギリス軍とともに、アフガニスタンやイラクにも派遣され、オマーン軍にも採用されています。
第3位 K2戦車(9億4000万円)
引用:www.sankei.com
K2戦車は、韓国軍が誇る第3.5世代の主力戦車で、愛称は「黒豹(ブラックパンサー)」です。
先代のK1戦車はアメリカのクライスラー社に支援を受けて、韓国の現代工業が開発したもので、韓国軍を代表する戦車となりました。
K2戦車は2億3000万ドル(約248億円)が投じられ、これをもとにトルコの時期戦車開発を支援する契約も結ばれ、韓国の戦車技術は海を渡ることになりました。
K2戦車は、韓国が誇る初の完全国産戦車となるはずでしたが、その開発にはいくつもの苦難が付きまといました。
自動装填装置を備えた55口径120㎜滑腔砲を装備し、自動追尾装置付射撃統制装置、データリンク・システム、周辺警戒用のCCDカメラ、複合装甲、アクティブ式防護装置など最新かつ意欲的な性能をもつ戦車となることが計画されていました。
しかし、これを実現するには第三世代戦車開発技術のなかでもさらにより高度な技術が必要で、残念ながら、韓国のもつ技術力はここまで達していませんでした。
開発された自動装填装置や自動追尾装置は、振動や熱に弱く、エンジンと変速機の接合がうまくできずにエンジンの点火とともに火災が起きるという深刻な不具合も起こりました。
アクティブ防護装置はロシアのアレーナ防護システムからの技術移転を求めていましたがこれは実現せず、代わりに普通の発煙弾発射装置が取り付けられることに。
さらに複合装甲は先代のK1戦車の主砲に貫通され、主砲は重量が重すぎて安定せず、射撃を行うと振動がおさまるのに時間がかかってしまい次弾をなかなか撃てないという問題も起こります。
周辺警戒用のCCDカメラは射撃発砲時の衝撃で損傷し、発砲炎を被弾と誤認して自動消火装置が作動するという問題だらけの欠陥戦車となってしまい、この解決に時間をとられ、当初2011年に完成予定だったものが、配備が2014年からと大幅に遅れることになりました。
K2戦車は、全長7.5m、重量55t、最大速度70㎞/h、乗員3名で、55口径120㎜滑腔砲、K6 12.7㎜重機関銃、7.62㎜同軸機関銃を装備しています。
自動装填装置はフランス企業、アクティブ防御システムはロシア企業、エンジン、パワーパックについてはドイツ製のライセンス生産となり、韓国国内では国産率99%とされていますが、その多くは外国企業からの技術供与によって完成された戦車です。
K2戦車は、当初目標としていたおおむねの性能は達成したとされ、韓国軍でも配備がはじめられています。
韓国国内ではレオパルトに匹敵する性能をもつともいわれているようですが、果たしてその真の実力はどれほどのものになっているのでしょうか。
第2位 10式戦車(10億円)
引用:www.sbbit.jp
10式(ひとまるしき)戦車は、2010年に制式化された日本で4番目となる国産戦車で、陸上自衛隊が世界に誇る最新鋭戦車です。
10式戦車は、先代の90式戦車ではなくその1つ前の代の74式戦車を更新するために開発がスタートしたもので、平成20年(2008年)には試作車が一般に公開されました。
従来の自衛隊戦車と異なり、対戦車戦闘はもちろんのこと、市街地における特殊部隊やゲリラを相手にしたゲリコマ戦にも対応できる能力を備えているのが特徴です。
10式戦車は、全長9.42m、重量44t、最高速度70㎞/hで、自動装填装置を装備しているため、乗員は車長・砲手・操縦手の3名となっています。
武装として、主砲に国産の44口径120㎜滑腔砲を、副武装としては、砲塔上の車長用ハッチ横に12.7㎜重機関銃M2、主砲同軸機銃として74式7.62㎜機関銃を装備しています。
10式戦車の使う砲弾には、APFSDSとHEAT-MPのほか、120㎜砲と並行して生産がお行われた国産の新型徹甲弾(10式120㎜装弾筒付翼安定徹甲弾)があります。
装甲は、炭素繊維とセラミックを組み合わせた複合装甲で、これによって車体の軽量化に成功しています。
車体と砲塔の前面には、取り外しのできるモジュール装甲を装着していて、輸送時にはこれを取り外して車体をより軽量にすることができるため戦略機動性が高くなります。
トランスミッションは、変速比を最適制御することができる油圧機械式無段階自動変速機(HMT)を搭載していて、これにより、前進も後退も同じ速度で行うことができ、さらに、油気圧式懸架装置によって、油圧を変化させることで上下や前後左右に傾斜することができるため、姿勢安定性や不整地での踏破性に優れています。
駐屯地のイベントにおいて、砲身の先にワインを注いだワイングラスを乗せて車体を旋回させ、ワイングラスが落ちない、倒れない、こぼれないという神業をみせています。
そして、10式の最大の特徴といえるのが、陸上自衛隊の戦闘車両の中で初めて、本格的なC4I機能を搭載したことで、味方戦車同士でデータリンクを行うことによって、効率的な戦闘が可能となります。
さらに、優れたFCS(射撃統制装置)も備えていて、目標の自動追尾システムで走行中でも目標を逃すことはなく、高い命中率を誇ります。
10式はデモンストレーションで、移動する標的に対して、後進しながら左右に蛇行しながらのスラローム射撃を行い、目標に対して百発百中の命中率を出して見せ、これには外国の軍事関係者からも驚きの声が上がりました。
高いFCS・C4Iの能力を備えた10式戦車は、自衛官のあいだで「走るコンピュータ」とも呼ばれているそうです。
まさに、陸自の次世代主力戦車を担うにふさわしいといえる10式ですが、陸上自衛隊では、戦車部隊は一部の教導師団を除いて北海道と九州のみに配備され、本州からは戦車がいなくなってしまうことが決まっています。
代わって本州に配備される16式機動戦闘車は、10式よりも価格が安く、こうしたところもこの決定に影響を及ぼしているのではないでしょうか。
第1位 ルクレール(13億6000万円)
引用:ja.wikipedia.org
ルクレールは、フランスが開発した第三世代戦車で、他国戦車に先駆けてC4I能力をもって誕生した先進的な戦車で、「初の3.5世代戦車」とも呼ばれます。
名称のルクレールは、第二次大戦における自由フランス軍戦車部隊将校で、パリ進撃への戦法をつとめたフィリップ・ルクレール将軍の名からとられています。
1989年にフランスの国営企業ネクスター(GIAT)社によって開発され、1992年から配備が開始されています。
ルクレールは、全長9.87m、重量56.3t、最大速度71㎞/h、乗員3名で、武装は自動装填装置付きの長砲身52口径120㎜滑腔砲、12.7㎜、7.62㎜機銃を搭載しています。
装甲には、外装部を簡単に取り外すことができるモジュラー式複合装甲を採用しているため、被弾時に装甲を交換したり、新型装甲への換装もスムーズに行うことができます。
エンジンには、小型軽量で大出力の、ディーゼルとガスタービンの複合機関V8Xを搭載。
独特な吸気システムは、ハイパーバーと呼ばれています。
ただ、V8Xには構造が複雑でメンテナンスに手間がかかるというデメリットもあります。
ほかにも、初の3.5世代といわれるに至った理由である、データリンク・システムなどの先進的電子装備も充実しています。
さらに、市街戦用のタイプであるルクレールAZUR(action en zone urbaine:都市における軍事行動という意味だが、Azurにはフランス語で紺碧という意味もある)も開発されています。
世界最高価格の戦車だけあって、ルクレールはその値段から各国にとっては高嶺の花で、採用国はフランスを除けばアラブ首長国連邦のみとなっています。
まとめ
以上、世界の戦車の価格ランキングでした。
一般的に輸入兵器のほうが価格は安くなる傾向がありますが、それでも多くの国が戦車を国産で開発しようとしたがるのは、戦車を自主開発できる技術力をもっているという証明であると同時に、有事の際でも部品などが安定して供給されるというメリットがあるからです。
戦車を国産で開発しようとしたり、今までにない新しい技術やシステムを導入しようとしたりすると、開発費などを含めてそのぶん高額になってしまうようです。
ランキング上位の戦車は新しい能力や高い性能を目指したものが多く、戦車の性能と価格の安さは両立しがたいということがわかります。
良い戦車とは、ただ単に性能が高いだけでなく、価格と性能を天秤にかけていかにその国の軍隊に見合ったものを選択するかということになるでしょう。