宇宙・地球

【最新】ビックバン前の宇宙と宇宙の始まりに関する3つの説

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今から138億年前、万物を誕生させる究極の始まり“ビッグバン”が起こったことにより宇宙の全ては始まったと考えられています。それではビッグバンの前の宇宙とは、どのような状態であったのでしょうか?

2019年現在、ビッグバンの前の宇宙と宇宙の始まりについて考察されている代表的な説を紹介していきます。

 

ビッグバンとは何か?

20世紀の初めまで、多くの物理学者は宇宙は永遠に不変で無限に広がっていると考えていました。宇宙の始まりという問題については神の仕業と呼ぶ以外に説明がつかず、長らく手を付けられずにきたのです。

しかし1929年にアメリカの天文学者エドウィン・ハッブル(1889年~1953年)が、夜空の銀河を観察していてまるで爆発後に飛び散る破片のように、それらがお互いに遠ざかりつつあることを発見したのです。自分から見て遠方の銀河ほど、より速い速度で遠ざかっていることに気が付いたハッブルは、宇宙が膨張しているという結論にたどり着きました。

そしてこの宇宙膨張が発見されてから、宇宙には“はじまり”があったのではないかと考えられるようになったのです。つまり宇宙の膨張を時間をさかのぼってたどってみると、最初はひとつの点だったのではないかという考察が生まれたのです。

この考察は小さな点に過ぎなかった宇宙が何故膨張を始めたのかという、新たな疑問を作りました。そのような折に今で言う原子核物理学者であったジョージ・ガモフ(1904年~1968年)が、宇宙の始まりはただの点ではなく、極めて高温の火の玉であったということを提唱したのです。

ガモフは宇宙が火の玉であったならば、その頃には凄まじい光を放っていたはずと考え、その名残が現在でも観測できるのではないかと考えました。つまり宇宙が始まった当初は非常にエネルギーが高く密度の濃かった光が、宇宙の膨張に従って引き延ばされ、現在ではマイクロ波の電波として観測できるのではないかと考えたのです。

そして1964年にアーノ・ペンジアス(1933年~)とロバート・W・ウィルソン(1936年~)によって、マイクロ波の電磁波が観測され、宇宙の始まりは本当に火の玉であったことが示唆されます。

こうして誕生したのが現在“ビッグバン理論”と呼ばれる宇宙の始まりについて説明した理論です。ビッグバンという呼称は、宇宙の基本的な姿は不変であるとする定常宇宙理論を支持していた天文学者でもありSF作家でもあるフレッド・ホイル(1915年~2001年)が、宇宙が火の玉であって爆発したという理論を皮肉を込めて“ビッグバン”と呼んだことに由来して付けられました。

宇宙は火の玉として生まれ、膨張をする中で温度が下がってガスが固まって星が生まれ、銀河が形成されて現在の姿になったというのがビッグバン理論の概要です。

 

ハッブルはなぜ宇宙の膨張に気づいたのか?

救急車やパトカーのサイレンの音が車両に近い場所にいると高く、遠ざかると低くなるというドップラー効果。これは音が空気を振動しながら伝わる波だから起こる現象ですが、これと同じことは光でも起こります。

光も波の性質を持つため、光源が観測者に近づけば実際の光より波長は短くなり遠ざかれば波長は長くなります。そして可視光は観測者に近づくほど実際の色より青みを増し、遠くなる程赤色に近づくのです。この現象を赤方偏移と呼びます。

ハッブルが観測したのはケファイド変光星と呼ばれる星でした。ケファイド変光星は明るさが変わる周期と絶対等級の間に一定の関係があり、星の本当の色や明るさを予め知ることができます。

ハッブルはそのような星を観測し続けることで本当の明るさと見掛けの明るさとの違いに気が付き、宇宙が膨張していることに気づいたのです。

 

ビッグバン以前の宇宙とは?

引用:https://www.universetoday.com/

観測により証明されたビッグバンは、理論的にも裏付けられることとなります。一般相対性理論が正しければ宇宙が無限に小さくエネルギーが密であった時に時間そのものが誕生した瞬間が存在したことを、理論物理学者のリチャード・ホーキング(1942年~2018年)とロジャー・ペンローズ(1931年~)が明らかにしたのです。

現在では宇宙の始まりについてはビッグバン理論が主流となりましたが、宇宙の生まれた瞬間については未だに推測の域をでていません。宇宙誕生の瞬間や、それ以前について説明するには現実世界の理論では不可能とされているのです。

とはいえビッグバンの前の宇宙の姿についてはいくつか仮説が存在します。以下に2019年現在の時点で提唱されているものをしていきます。

 

全くの“無”であったという説

ビッグバンの前の宇宙は無の状態であったという仮説を立てたのがアレキサンダー・ビレンケン(1949年~)です。無、といっても宇宙空間に物質が何もない状態という意味ではなく、時間や空間、エネルギーが一切存在しなかったという意味です。量子重力理論によると、この全くの無の状態から有限の大きさの宇宙が突然誕生することが可能と考えられています。

この理論の根拠はミクロの世界における量子論の法則“トンネル効果”に基づいています。トンネル効果は物理学者の江崎玲於奈(1925年~)がノーベル賞を受賞するに至った発見で、簡単に言うと電子は通常であれば通過できない空間を、ある一定の確率で通ることができるという理論です。

どんなに小さな点であっても常に揺らいで動いているため、何らかのタイミングで通常は移動しえない場所に突然現れることもあるというこのトンネル効果を宇宙に当てはめると、無の状態であった宇宙が突然、小さいながらも有限の大きさを持って現れ、そこからインフレーションを起こして膨張していったと考えられるというのがビレンケンの提唱する説の概要です。

無から誕生した小さな点であった宇宙が火の玉となり、拡大するにつれ温度が下がって中にあるガスが固まり量子の揺らぎが次第に強くなって銀河や銀河団が誕生したというこの説は、宇宙の創成期を説明するものとして現在最も支持されています。

 

古い宇宙が存在したという説

引用:https://www.spaceanswers.com

宇宙は誕生と死亡を繰り返す、という理論が共形循環宇宙論(サイクリック宇宙論)です。この理論に基づいて考えると、ビッグバンが原因で現在の宇宙が誕生したのは確かなのですが、その以前に既に宇宙は存在していたということになります。

カナダ、ウォータールー大学のミール・ファイサル教授らの提唱する説によると宇宙には4つのフェイズがあり、延々とこのフェイズを繰り返し続けているとされています。つまり宇宙は誕生と消滅を幾度となく繰り返しているためビッグバンの前には古い宇宙が存在したというのです。

京都大学の教授である物理学者、河合光の研究によると、現在の宇宙は誕生となるビッグバン(膨張)と終焉となるビッグクランチ(収縮)までのサイクルを30回~50回繰り返した末に生まれたものであり、一つ前に存在した宇宙では地球は存在しなかったという計算になります。

宇宙の誕生について2019年現在の時点ではインフレーション理論が主流となっているため、サイクリック宇宙論は突飛な印象があるかもしれません。しかしサイクリック宇宙論はアルバート・アインシュタイン(1879年 ~ 1955年)も研究を進めていたものの、自身の方程式では宇宙の終焉はビッグクランチ(収縮)ではなく、膨張しながら冷えていくだけという緩やかなものとなるため証明ができなかった理論です。

しかし“アインシュタインの夢”とも呼ばれた重力、強い力、電磁気力、弱い力の4つの力を統一する理論に最も近いとされる“超ひも理論”の登場により、サイクリック宇宙論にも光が当たるようになってきました。

 

膜宇宙があったという説

引用:https://scitechdaily.com/

超ひも理論の考え方に基づいて1995年頃に登場したのが“膜宇宙”(ブレーンワールド)という考え方です。超ひも理論では素粒子はひもであるとされますが、膜宇宙論ではそのひもの端が膜宇宙(3次元の方向性を持つ膜)にくっついていると考えられています。

膜宇宙論では素粒子や光子は10次元や11次元の時空間に存在していても、3次元の膜に紐づけられているため3次元以外の空間へは移動できないとされています。ただ、これらの“ひも”は膜の上をすべることはできるため、空間の移動をすることはできるのです。

そしてこの膜宇宙の理論を使って、ビッグバンを解明しようとしたのがエキピロティック(ギリシャ語で大火の意味)宇宙論です。この説によると、私達が存在する宇宙を含めて3次元の膜宇宙は何枚も並んで存在し、隣り合った別の膜宇宙同士がぶつかることでビッグバンが起こると考えられています。

膜宇宙同士がぶつかるごとにビッグバンを起こし、膨張、収縮をしてまたビッグバンが起こるというのがエキピロティック理論では提唱されているのです。

引用:http://www.calabiyauspace.com/

膜宇宙論で私達が住んでいる宇宙以外の空間は“カラビ=ヤオ空間”と呼ばれています。アメリカの素粒子研究者であるレオナルド・サスキンド(1940年~)によるとこの空間内に膜宇宙が続いていて、私達の暮らす3次元の宇宙だけではなく4次元、5次元などの空間が存在しているというのです。

超ひも理論によると電磁気力や物理要素が互いに異なる世界が存在することができ、また存在する可能性は10の200乗程もあるとされています。

 

ビッグバン後の最初の1秒

宇宙は誕生後の1秒であらゆる基礎が作られたと考えられています。ビッグバン直後の現象を説明するのに使われる時間の単位は通常のものでは大きすぎるため、プランク時間(1プランク時間=10の-43乗秒)という単位が使用されます。

ビッグバン直後に万有引力として知られる重力、電気や磁石の力である電磁気力、原子核の中で働いている強い力と弱い力の4つの力が誕生しました。プランク時間の最初の一刻みではこの物質を構成する要となる4つの力は統一されたものであり、重力と電磁気力は分離していなかったと考えられています。

誕生したばかりの火の玉状の宇宙の大きさは原子より小さく、温度は1兆℃を超えていたとされます。しかしビッグバン後の宇宙の温度の低下に伴い、まず次のプランク時間の一刻みで重力が分かれて、次いで強い力と弱い力が分かれたのです。

宇宙誕生直後に次々と力が分かれて、現在のように4つの力が揃ったという進化の過程は“真空の相転移”により起こるとされます。相転移とは水が氷になるといったように物体の性質が変化することです。

真空のエネルギーが空間を押し広げることでごく小さな点のような状態であった宇宙の温度は急激に下がり、真空の相転移が起こりました。この時、真空のエネルギーは熱のエネルギーとなって空間内に現れ、誕生したばかりの火の玉状の温度は1兆℃を超えていたとされます。

そして急激な加速膨張によって10の-35乗秒から10の-34乗秒という瞬きより僅かな時間で、宇宙は急激に大きくなったと考えられているのです。その規模は10の43倍とも考えられており、具体的には1ナノメートルほどの宇宙が現在の宇宙の大きさより大きくなる程の膨張とされます。そしてこの宇宙が火の玉であった時に既に宇宙の密度は決まっていたと考えられているのです。

エネルギーで満たされていた宇宙から物質を作る基となる原子が作り出され理論は、E = mc2という1905年にアルバート・アインシュタインが導き出したエネルギーと質量の関係式により解明されています。

この公式を用いて生まれたのが原子力爆弾ですが、これと真逆のことがビッグバンの最中には起こったと考えられています。つまり莫大な量のエネルギーが物質に変化したとされているのです。

とはいえ1兆℃の1兆倍という超高温状態であった火の玉宇宙では原子は消滅してしまうため、物質が存在することは不可能でした。膨張を続けながら冷却していくなかで宇宙には物質のもととなるごく小さな素粒子であるクォークが集まり、中性子や陽子が誕生したのです。

誕生直後の宇宙には気体(ガス)が満ちていたというイメージが強いですが、実際には液体に近く、クォークのスープのようなものが存在していたとされます。そしてこの中で粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅するという現象を繰り返していたと考えられます。

この時、何らかの理由で反粒子より粒子の方が10億個に1個ほど数が多かったために粒子が生き残り、その残った僅かな粒子が基となって現在の宇宙に存在する全ての物質の基となったのです。この反素粒子がなくなるまでの期間がビッグバンから4秒までの間と考えられています。

 

宇宙の晴れ上がり

ビッグバンから30万年~40万年後までの宇宙は曇っていて見ることができなかったとされます。この頃までの宇宙は高温で、素粒子が飛び交っている火の玉でした。

光がこの火の玉の中を進もうとすると素粒子と衝突してまっすぐに進めないため、一寸先さえ見えなかったのです。そのため宇宙は分厚い雲に覆われたような状態であったと考えられています。

しかし宇宙の温度が3000℃まで下がると素粒子は原子核と結合して原子となり、宇宙を覆っていた雲が晴れたとされます。これを“宇宙の晴れ上がり”と呼び、これ以降の宇宙の様子であれば光で観測することが理論的に可能になりました。

そして宇宙誕生から3億年後に最初の星が生まれ、6億年後には私達が知るもっとも古い銀河であるEGSY8p7が誕生したと推測されています。

 

インフレーション宇宙論とマルチバース

宇宙が膨張しているというインフレーション理論は、ビッグバン理論を裏付けるだけではなく宇宙が一つではなく多数の宇宙が存在する可能性を見出しました。この宇宙(universe)が複数存在するという説は多元宇宙論(multiverse)と呼ばれています。

宇宙が急激な膨張をする時に早くにインフレーションを起こす場所と、インフレーションを起こしていない場所とがいくつも混在することによって多数の宇宙(子宇宙や孫宇宙)が発生すると考えられているのです。

周囲よりも遅れてインフレーションを起こした領域では、先にインフレーションを起こして宇宙規模の大きさを持った周囲の領域から見ると、表面は急激に押し縮められているものの、その領域自体は光を超える速さで急激に膨張していることが導き出されました。

そして既にインフレーションが終わっている領域を親宇宙とするならば、急膨張した場所が子宇宙となり、更に遅れて孫宇宙ができるというようなモデルができあがったのです。これらの子宇宙や孫宇宙はやがて親宇宙とは完全に因果関係の切れた、独立した宇宙になると考えられています。

そのためこちら側の宇宙から観測することができないため、観測によりマルチバースの実在を証明することができないのです。そして多元宇宙論では宇宙は永遠にビッグバンとインフレーションを繰り返し、新しい宇宙を生み出す“永遠のインフレーション (eternal inflation)”が起きていることになります。

一方でアメリカのマックス・テグマース(1967年~)は、原理的には同じ空間であっても実質的に行かれない場所であれば別の宇宙と呼んでも差し支えないのではないかと主張しています。

現在、私達のいる宇宙は無限と言えるほど広がっていますが、因果関係を持てる領域は420億光年程度と考えられています。宇宙の年齢が137憶年であるならば、宇宙が膨張していることを考慮すると137億年前に出た光は現在420億光年の彼方まで遠ざかっていると推測されるため、人間が関わることができる距離も同程度であると考えるのです。

そしてそれ以上離れた場所は理論的には同一の空間にあっても、干渉し得ないことから別の宇宙と見做そうというのがテグマースのマルチバース理論となります。テグマースの計算によると別の宇宙は複数存在することとなり、その数は2の10の18乗個にもなるとされます。

またマルチバースにおける物理法則では、変わった考え方も出てきています。無数にある宇宙の物理法則は自然に選択をされ淘汰が行われているというのです。つまり現在私達が存在する宇宙は、生存競争に勝ち抜いたものということになります。

この説はアメリカの理論物理学者リー・スモーリン(1955年~)が提唱しているもので、1つの宇宙にブラックホールが生まれると、そのブラックホールには別の新しい宇宙が生まれるとされるのです。そして新しいブラックホールの誕生によって新しくできた宇宙の物理法則は、元の宇宙のものとは少しだけずれると仮定されます。

それはまるで生物の変化のようなもので、世代交代をする時に宇宙も少しだけ変化するというのです。そして何世代にも渡って宇宙が進化し続けるうちに、ブラックホールをたくさん作る宇宙が必然的に数が多くない栄えることになります。

このスモーリンの宇宙論的自然選択仮説によると、私達のいる宇宙には多くのブラックホールが存在するが故にその物理法則がスタンダードと成り得た、生存競争に打ち勝つことができたということになります。

もちろんこのような説を理論的に説明できる手段は現時点では存在しません。しかしビッグバンを補完するためのインフレーション宇宙論から、このように面白い説が複数生まれてきているのです。

 

まとめ

過去の宇宙論では宇宙の膨張は次第に減速をして、人類の子孫はより広大な宇宙を観測できると考えられてきました。しかし実際は現在も宇宙では第2のインフレーションとも呼ばれる現象が起きており、宇宙の膨張はより加速しているため将来的に観測が可能なのは非常に限られた範囲になると推測されています。

そのため宇宙の始まりを説明するのに最も有力とされているビッグバン説ですが、現時点はもとより、私達の子孫がより発達したテクノロジーを持ったとしてもマイクロ波が微弱なものとなるため、ビッグバンがあったことを決定づける証拠は見つからないとも考えられているのです。




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