今では飛行機やインターネットの発展によって、世界は小さくなったと言われています。
ですが宇宙はいまだに謎が多く、依然として広大なままです。
私たちの生活でも宇宙の大きさを意識することはまったくありません。
ただ途方もなく大きいものだというイメージがあるのではないでしょうか。
今回はそんな宇宙の大きさについて紹介していきます。
宇宙の大きさはどれくらいなのか
宇宙の大きさについて最初に触れておきたいこととして、宇宙には「実際の大きさ」と「観測可能な大きさ」があるという点があります。
宇宙は少なくとも途方もない大きさをしているということが分かっています。
あまりにも大きいため、その果てと私たちの間には一切のつながりを持つことができません。
そのため実際の大きさの宇宙と、観測のできる大きさの宇宙を別のものとして考えることがあるのです。
このうち、観測のできる大きさの宇宙を「可視宇宙」と呼びます。
一般的に「宇宙」という言葉が出てきたときにはこの可視宇宙を指す場合が多いです。
可視宇宙は地球からあらゆる方向に465億光年の範囲に存在するものです。
つまり可視宇宙は地球を中心とする直径930億光年の球体をしているということです。
一方実際の宇宙は可視宇宙よりは大きいのではないか、という可能性しか示されていません。
ですが実際には可視宇宙よりも実際の宇宙が小さい可能性もあります。
近くの銀河の放つ光が一度観測された後に宇宙を一周して、ありもしない別の銀河を再び観測させているためです。
現在モンタナ州立大学の教授を務める物理学者ニール・コーリッシュらが2003年に発表した論文『Constraining the Topology of the Universe(宇宙のトポロジーを制約する)』によると、実際の宇宙は最低でも直径780億光年ほどだと言われています。
これは現在の可視宇宙よりも小さな値ですが、可視宇宙自体も厳密にその範囲の宇宙を観測できているわけではないので、充分に妥当な数字であると言えるでしょう。
銀河系・太陽系の大きさとは
宇宙は宇宙を構成するいくつもの単位に分けることができます。
ちょうど日本が都道府県や市区町村に分けられるように、宇宙も銀河団や、銀河団を構成する銀河に分けることができます。
銀河とは恒星や星間物質、ダークマター、宇宙塵など宇宙を構成する物質が重力によってひとまとめになったもので、銀河の中にある恒星の中には恒星の持つ重力によって他の恒星と結びつき合う恒星系という集団を作ることもあります。
地球は太陽を中心に公転する太陽系に属しており、太陽系は天の川銀河という銀河に属しています。
天の川銀河は特に銀河系と呼ばれることがあります。
太陽系はいわゆる「水金地火木土天海」と呼ばれる8つの惑星と、冥王星など5個の準惑星、衛星、小天体から形成されています。
地球と太陽の距離は1億5000万kmあり、これを天文単位(au)とします。
このとき太陽から最も遠い距離にある海王星は太陽からおよそ30au(45億km)離れています。
また海王星の外には太陽の黄道面(太陽の年周運動)に沿ってエッジワース・カイパーベルトと呼ばれる領域が数百auも広がっています。
そして太陽系の最外縁にはオールトの雲と呼ばれる領域が、太陽を中心とする球殻状に広がっていると言われています。
オールトの雲は未知の部分も多いですが、彗星などはオールトの雲からやってくると考えられています。
太陽からオールトの雲までの距離が10万天文単位、1.58光年だと言われています。
オールトの雲は球状に広がっているので、太陽系の大きさは約3光年分だと言えるでしょう。
一方銀河系には約2000億から4000億もの恒星があると言われ、その大きさは約10万光年ほどです。
宇宙には銀河そのものが1兆個以上も存在すると考えられています。
そう考えると、改めて宇宙の途方もないスケールを実感させられるのではないでしょうか。
宇宙は膨張している?
宇宙はインフレーションの後にビッグバンが発生したことで生まれたというのが定説となっています。
このインフレーション理論が現実のものだとすると、宇宙はビッグバンの際に生まれたダークエネルギー(実態の定かではない、正体不明のエネルギー)によって誕生した瞬間から現在も膨張を続けていることになります。
この定説が生まれたきっかけとなったのは1929年のことです。
アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが銀河系の外にある銀河までの距離を測定することで、銀河が銀河系から遠ざかっていることを発見し、1929年に発表したのです。
このハッブルの発見により、宇宙が広がっていることが明らかとなりました。
宇宙の広がる速度が「ハッブル定数」、そして同じく宇宙が広がっていることを発表したベルギーの天文学者ジョルジュ・ルメートルと合わせて、遠くの銀河ほど速く遠ざかっている法則は「ハッブル=ルメートルの法則」と呼ばれます。
ジョルジュ・ルメートルはハッブルの発見に留まらず、独自の方程式を用いて「原始的原子の仮説」という宇宙誕生のモデルを提唱しました。
そしてロシア出身の物理学者ジョージ・ガモフは自身の提唱した宇宙の核反応段階に関する「α-β-γ理論」を用いて「原始的原子の仮説」を発展させ、1948年にビッグバン理論を発表します。
1964年に宇宙マイクロ波背景放射が観測されたことで、ビッグバン理論が主流となります。
宇宙マイクロ波背景放射はビッグバンの際に発生した波長が、宇宙の拡大と共に冷却されて地球に到達したものだと考えられました。
ビッグバン理論が提唱された際には宇宙は無限のものであるという定常宇宙理論なども語られましたが、現在では様々な証拠からビッグバン理論が都合がよいとされています。
宇宙が膨張し続けるとどうなる?
ビッグバン理論では宇宙は膨張を続けますが、永久に膨張を続けるわけではありません。
膨張には何らかのきっかけで歯止めがかかり、終焉へ転じると言われています。
宇宙の終焉には、大きく分けて4つのモデルが存在します。
1つは「ビッグクランチ」です。
膨張し続けた宇宙はやがて反転し、自身の持つ重力で縮小していきます。
そしてすべての物質や時空は、ゼロ次元の特異点へと追いやられていきます。
ゼロ次元の特異点に追いやられたものがどうなるかは判明していませんが、とにかく縮小していくのがビッグクランチです。
ビッグクランチの後、再びインフレーションを起こすという予測がもうひとつの終焉に関するモデルである「サイクリック宇宙」となります。
サイクリック宇宙では宇宙はまるで振動するように拡張と収縮を繰り返すとされています。
また宇宙の温度が下がることによる、「ビッグ・フリーズ(低温死)」というモデルもあります。
宇宙の膨張が永遠に続くことで宇宙の温度が絶対零度へと近づき、私たちが生存できない状態で固定されてしまうものです。
似たような未来として宇宙の熱的死というものもあり、こちらは無限の時間が経過することで熱量がすべての宇宙に均等に分布し、結果として私たちの生きていける宇宙でなくなってしまうというものです。
宇宙と言えども熱力学の法則からは逃れられないため、時空の拡大や時間経過によって限りある熱量が拡散して、地球の気温を極寒へと変えてしまいます。
そして最後のモデルが「ビッグ・リップ」です。
リップとは英語で「引き裂く」という意味であり、文字通り宇宙が「引き裂かれる」ことで終焉を迎えろというものです。
宇宙の膨張が加速することで、光の速度を超え、すべてが原子レベルにまで崩壊してしまいます。
ビッグ・リップでは最終的にすべてが発散して、単一状態となります。
もちろん現実的にどうなるかは不明ですが、いずれにしても、想像を絶するものには違いありません。
まとめ
今回は宇宙の大きさについて、宇宙の大きさと太陽系や銀河系の大きさ、そして未だに宇宙が膨張を続けているということを紹介しました。
宇宙と深海、人体には未だに理解の及ばない点が数多くあります。
宇宙の大きさも、すべては明らかにされていません。
ですが観測された事象と理論を組み合わせることによって、途方もない距離や時間の果てにあるものについての理論やモデルができあがりつつあるのも確かです。
いずれ宇宙の大きさについても、人類の叡智が及ぶこともあるのかもしれません。