日本の安全保障問題は非常に差し迫った問題のひとつです。
度重なる核実験を行う北朝鮮や軍事費を増大させる中国など、懸念材料は豊富にあります。
もし有事となれば、日本を守る最前線に立つのは自衛隊です。
普段は災害復興などで活躍する姿が目立つ自衛隊ですが、果たして日本を守るだけの実力があるかを今回は検証します。
日本の軍事力は世界6位
アメリカの軍事力評価機関である「Global Firepower」が発表した「2019 Military Strength Ranking」によると、日本の軍事力はランキング対象国137ヵ国中第6位に位置しています。
このランキングは陸海空軍の規模から人口、石油資源、更には鉄道網や港湾設備などのロジスティクス面など、計55項目を用いることで「PowerIndex(PwrIndx)」という指標を算出して、その数字を比較します。
単純な動員数や軍隊の規模などに偏らず、総合的に軍事力を比較したり、ある国の軍事力を見ることができます。
日本の近隣諸国で言えば、中国が3位、韓国が7位、北朝鮮が18位を記録しているほか、日本の同盟国であるアメリカが1位に輝いています。
日本のPwrIndxで高く評価されているのは総人口や各航空機を総合した総航空機強度や軍事費などです。
反対に軍人の人口や戦車や装甲車などを合わせた総戦闘戦車強度、石油消費量、対外債務、海岸線の填補範囲などがマイナス要因になっています。
日本は世界でも有数の経済大国であり、日本の6位という数字はややもの足りなく思われるかもしれません。
ただ日本よりもランキングが上の5か国であるフランス、インド、中国、ロシア、アメリカはいずれも核保有国です。
特にアメリカやロシアはそれぞれ6000基、中国は280基、フランスは300基ほど核兵器を保有していると考えられています。
当然、核兵器もそれぞれの国の戦力の一部としてPwrIndxに計上されるため、核保有国は単純にスコアを見たときに有利になります。
日本は非核保有国の中で最大の軍事力を有していることになります。
単純に数字だけを比較しただけではその国の本当の実力は分からないかもしれませんが、数字を見たとき、日本の軍事力は世界でも屈指のレベルと言えるでしょう。
日本の防衛費は高い?
引用元:https://ihoku.jp/
PwrIndxでも評価項目にありますが、何より単純にその国の実力を示す数値となるのが軍事費です。
日本の2019年度の防衛費(軍事費)は、2018年度比1.3%増の5兆2574億円です。
日本の防衛費は2019年度までに6年連続で上昇、5年連続で過去最高を更新しています。
PwrIndexでも軍事費の項目で、日本は世界で7位に位置しています。
2020年度予算は2019年度よりも更に増額し、5兆3000億円規模になる見込みです。
日本の防衛費は1976年に当時の三木内閣の閣議決定により、対GDP比で1%を超えないよう設定をするよう決められています。
2019年度予算も対GDP比0.9%ほどであり、PKO分担金や旧軍人遺族への恩給費などを合わせることでようやく1.3%に達します。
他国を見ると、世界で最も防衛費の大きなアメリカでは対GDP比が3.1%、中国では1.9%、サウジアラビアでは10.3%にまで達しています。
NATO(北大西洋条約機構)は2024年までに加盟国の防衛費を対GDP比2%以上にする目標を打ち出しています。
軍事大国化を防ぐために閣議決定によって抑えられていた日本の防衛費ですが、朝鮮半島や中国などを巡る動向は依然きな臭く、日本も最新鋭の戦闘機や護衛艦を配備するなど、防衛費を増やし、自衛隊の実力の強化を図る方針のようです。
日本の防衛費の内訳とは
さて、防衛省が公開している『平成30年度版防衛白書』には防衛費の経費・使途別の内訳が紹介されています。
5兆2000億円にも及ぶ防衛費のうち、最も高い割合を占めるものが「人件・糧食費」で、44.2%にもなります。
人件・糧食費は文字通り自衛官の給与や食事代に使われる費用です。
自衛隊の待遇問題などが時折話題になることがありますが、人件・糧食費を見たとき、自衛官ひとり当たりへの年間の支出は各国の軍隊とも同等か、それ以上になることもあります。
人件・糧食費と歳出を二分するのが、モノに支払う支出である「物件費(事業費)」です。
「歳出化経費」と「一般物件費」に分かれ残りの55.8%を占めます。
歳出化経費とは、その年度以前の契約によって支払わなくてはならない費用です。
戦闘機などの最新兵器は非常に高額のため、一括でポンと購入はできません。
そのためいくつかの年度に支払いを分割して支払い、毎年その枠を歳出化経費として計上するのです。
また一般物件費とはその年度の契約によって支払う費用で、具体的には装備品の修理費や燃料代、隊員の訓練費などが当てはまります。
その年度の活動に必要な費用であるために、活動費とも言われます。
防衛費の額から考えると、自衛隊の実力は高く評価されるものですが、費用の内訳を見ると人件・糧食費と歳出化経費という、半ば義務に近い費用が歳出の8割を占めています。
もし今後も実力を増そうと思えば、残りの2割の部分でどうにかしないといけず、厳しい側面もあります。
自衛隊で最も実力のある「特別警備隊」
引用元:https://dot.asahi.com/
世界の軍隊には陸海空軍の正規部隊のほかに、正規部隊では遂行の難しい特殊作戦をこなすために訓練を受けた「特殊部隊」が存在します。
特殊部隊の兵士は正規軍のそれと比べて過酷な訓練を受け、肉体的にも精神的にも鍛え上げられています。
アメリカの「グリーンベレー」、「SEALs」、イギリスの「特殊空挺部隊」、イスラエルの「サイェレット・マトカル」などが代表的ですが、日本にも高い実力を持つ特殊部隊である「特別警備隊」が存在します。
特別警備隊は特警隊、もしくは英語表記の「Special Boarding Unit」の略称から「SBU」とも呼ばれ、海上自衛隊に属しています。
アメリカの「SEALs」をモデルに2001年に設立され、不審船の武装解除と無力化を主任務として、不審船に対してヘリコプターや高速ボートによる強襲や潜水しての浸透作戦などの訓練をしています。
特別警備隊は旧海軍時代までさかのぼっても初の事例ですが、特別警備隊創設のきっかけとなったのは、1999年3月23日に発生した能登半島沖不審船事件です。
能登半島沖不審船事件ではイージス艦「みょうこう」が富山湾で北朝鮮による工作船を発見した事件です。
海上自衛隊で初となる「海上警備行動」、すなわち工作船の立ち入り検査が発令されましたが、当時の海上自衛隊では艦を攻撃する訓練は受けていても小銃や拳銃を使って船内の工作員を制圧するような訓練は受けていませんでした。
そのため工作船は北朝鮮領海へと逃れてしまいます。
そこで事件の反省を踏まえ、特別警備隊が創設されたのです。
特別警備隊は年に1度海上自衛隊内で募集するのですが、応募条件が非常に厳しく、まず3等海曹以上の階級にある30歳未満の者でなくてはなりません。
加えて海上自衛隊内における二級以上の運動能力を有している必要があります。
自衛隊における運動能力二級以上とは腕立て伏せを2分間で72回以上、腹筋を2分間で77回以上、3000m走12分22秒以内、懸垂を14回以上、走り幅跳び4m80㎝以上、ボール投げ56m以上を指します。
海上自衛隊の場合は、更に50m自由形、平泳ぎで40秒以内を記録する必要もあります。
隊員数は100名前後だと言われていますが、いずれも日本最強の精鋭揃いと言われています。
陸上自衛隊でも「特殊作戦群」という特殊部隊がありますが、こちらは特別警備隊と異なり、訓練内容や受験資格も非公開です。
参加任務なども明かされていませんが、陸上自衛隊のイラク派遣に数名が同行したと言われています。
特別警備隊と比べ、特殊作戦群は秘密のベールに包まれている部分が大きく、陸上自衛隊の正式な式典にも目出し帽をかぶった一部の隊員が参加するのみです。
ただ創設者である荒谷卓によって、イラクにおいて特殊作戦群の隊員が両脇に自衛隊員を立たせた、10m先の的に移動しながら銃弾を当てたなどの超人的なエピソードや、休日でも隊員が民間軍事会社(PMC)で研修を行うなど、普通の自衛隊員よりも訓練に対して熱心な姿勢などが窺い知れます。
自衛隊は最新鋭の兵器を装備し、日々訓練に励んでいますが、通常の自衛官だけでなく、一部の特殊部隊もまたその高い実力で日本の防衛を担っているのです。
まとめ
今回はPowerIndexや防衛費など、数字から自衛隊の実力を紹介しました。
自衛隊は非核保有国としては最も実力を評価された軍隊であり、東アジア有事の際にはアメリカ軍と連携しながら事態に当たることで実力的には優位に事を推移できると考えられます。
世界でも有数の軍事費(防衛費)を投じて、最新の装備を持ち、厳しい訓練を経てきた自衛隊は日本を守るのにふさわしい部隊です。
当然何もないのが一番ですが、何かあったときも慌てず、自衛隊を信じて事態を見守りたいところです。