かつて世界には、地球の地表を何度も焼き払うことができるだけの核兵器があると言われていました。
現在でこそ核兵器削減の運動が進み、核弾頭の数自体は減少傾向にあります。
しかし科学技術の発展により、むしろ核兵器一発一発の威力は増大してもいます。
今回この記事では世界最強の爆弾トップ10を紹介していきます。
プルトニウムやウランといった放射性物質は、同じ質量の火薬などと比較して莫大なエネルギーを放出することができます。
そのため最強の爆弾ランキングは必然的に核兵器がほぼすべてを占めるランキングとなってしまいます。
最強の基準となるのは、爆発によって放出されるエネルギー量の単位であるTNTトンの順です。
これは1トンのTNT火薬が放出するエネルギー量を1とする単位で、米軍がイラク戦争で用いた、世界最強の通常兵器であるMOABのエネルギー量が10TNTトンであると言われています。
10位 サーモバリック爆弾 44TNTトン
サーモバリック爆弾とは、燃料気化爆弾という技術を発展させ、専用の爆薬を使うことでその破壊力を格段に向上させたものです。
起爆させる過程でBLEVEという現象を利用して沸騰し、気化した液体燃料を広範囲に噴出、それを着火させることで威力を発揮します。
燃料気化爆弾では燃料が液体でしたが、サーモバリック爆弾では燃料は固体となっています。
固体から一気に気体へ変化させる「昇華」という現象を利用することでエネルギー放出量が上昇しています。
従来の爆弾は爆風そのものではなく、爆発によって飛来する爆弾の破片で敵を傷つけることに主眼を置いていましたがサーモバリック爆弾では爆風と衝撃波で被害を与えます。
ロシアが2007年に実験に成功したと発表したサーモバリック爆弾「FOAB」は破壊力が44TNTトンに達しており、「世界最強の真空爆弾」として報道されました。
FOABはアメリカの持つ世界最強の通常兵器MOABに対抗して作られたもので、名前もMOAB(Mother Of All Bomb、全ての爆弾の母親)に対してFOAB(Futher Of All Bomb、全ての爆弾の父親)となっています。
もし実際に実験に成功していたら、FOABはMOABの4倍もの破壊力を誇る世界最強の通常兵器となりますが、実験映像に不審な点があることから信憑性を怪しまれています。
9位 中性子爆弾(1トン) 300TNTトン
中性子爆弾は核兵器の一種で、核爆発でエネルギーを放出する際に中性子線の割合を増やしたものです。
通常、核兵器は爆風による破壊、熱線による焼夷効果、放射性物質による即時の放射効果、そして放射性降下物による残留効果の4つを機能として持っています。
中性子爆弾ではそのうち爆風と熱線、残留効果を抑え放射効果を向上させています。
中性子線は放射線障害を引き起こすうえ、水やアスファルト程度では通り抜けてくるため都市部で逃れるすべはありません。
そのため都市への被害を抑えつつ、確実に敵を殺傷することができます。
8位 EMP爆弾 1,200TNTトン
EMP爆弾は電磁パルス(EMP)を利用して広範囲のインフラや通信、情報機器を攻撃するための兵器です。
核兵器を地上100キロの高層大気圏で炸裂させることでEMPが発生し、およそ100キロから1000キロと言う広範囲でケーブルやアンテナ類を破損させます。
1962年にアメリカが北太平洋上空で行った高高度核爆発の実験「スターフィッシュ・プライム」では、爆心地からおよそ1400キロ離れたハワイ・ホノルルで停電が確認されました。
もしこの実験をアメリカ本土で行ったらアメリカ全土が停電したのではないかとも言われています。
EMP爆弾自体は非殺傷性の兵器ですが広範囲に渡って被害を及ぼすため、1963年には上空や宇宙空間での核実験を禁止する「部分的核実験禁止条約(PTBT)」が締結されました。
アメリカでは核を使わないEMP爆弾が試作されていますが、核を用いたものより範囲が狭く実用化には至っていません。
また2017年9月には北朝鮮がEMP攻撃を目的とした核兵器の配備を示唆しており、世界の警戒を強めています。
7位 ガンバレル型(ヒロシマ型)原子爆弾 15,000TNTトン
ガンバレル型原子爆弾は核兵器の中でも最も古いものです。
1945年8月6日に広島へ投下された原子爆弾「リトルボーイ」がこのガンバレル型だったため、ヒロシマ型とも呼ばれます。
このガンバレル型原子爆弾より後に作られた原子爆弾はプルトニウムを使用していましたが、このガンバレル型ではウランを使用しています。
実はこのガンバレル型原子爆弾は検証実験を行っておらず、広島への投下はいわゆる「ぶっつけ本番」でした。
ウランによる核融合は既に原子炉で実験されていたために実験が不要だったためだとも、実験によりウランが不足して原子爆弾の配備が遅れることを懸念したためだとも言われています。
またガンバレル型は非常に作りが単純で、安全装置をつけることができなかったため「リトルボーイ」以後の開発が行われることはありませんでした。
6位 インプロージョン型(爆縮レンズ型)原子爆弾 23,000TNTトン
インプロージョン型原子爆弾はガンバレル型原子爆弾に続いて作られた原子爆弾です。
長崎に投下された「ファットマン」はこのインプロージョン型原子爆弾です。
ガンバレル型はウランが大量に必要なうえ小型化が難しく、兵器としては不向きな代物でした。
一方インプロージョン型はプルトニウムを使用します。
プルトニウムはウランよりも必要量が少なく、小型化ができます。
爆縮レンズと呼ばれる技術を用いてプルトニウムに均等に圧力をかけて超臨界状態にするために、別名で爆縮レンズ型とも呼ばれました。
5位 コバルト爆弾 40,000TNTトン
コバルト爆弾は、原爆や水爆の周囲をコバルトで覆ったものです。
より具体的に言えば、原子爆弾のタンパ―と呼ばれる、重金属性の核物質の覆いにコバルトを用いたものをコバルト爆弾と呼びます。
通常コバルトは原子量が59のコバルト59という状態なのですが、核反応によって放出された中性子を取り込むことで原子量が60のコバルト60へ変化します。
コバルト60はガンマ線を放射する放射性物質であり、半減期もおよそ5.3年と非常に長く残存するため殺傷力が高まります。
このコバルト爆弾を提唱した物理学者レオ・シラードはコバルト爆弾を塩でひと味加えるさまに例えて「Salted Nukes」と表現し、危険性を表明しました。
しかし長期間放射線を放出し続ける原子爆弾は占領する上では非常に使いにくいものであること、またコバルトも膨大な量が必要になることから、恐らく現時点でコバルト爆弾を保有している国は存在していないのではないかと考えられています。
4位 水素爆弾(B83) 1,200,000TNTトン
水素爆弾は、原子爆弾とは違い核融合(熱核反応)を利用した核兵器です。
核融合とは水素のような原子核の荷電が少なく原子核同士の接触しやすい原子同士を衝突、融合させてエネルギーを生み出す核反応のことです。
核分裂はエネルギーの総量に限界があるのですが、核融合には理論上無限にエネルギーを増加させることができます。
核融合は技術的なハードルが高い反面、核分裂と違い暴走の危険もありません。
水素爆弾は原子爆弾を起爆剤に使い、水素の同位体である二重水素、三重水素の核融合を誘発することで莫大なエネルギーを放出します。
B83はアメリカで1979年に開発が開始された水素爆弾で、爆発の威力を調整することができる最新型の水素爆弾です。
3位 キャッスルブラボー 15,000,000TNTトン
キャッスルブラボーは、アメリカ軍が1954年にビキニ環礁、エニウェトク環礁で行った「キャッスル作戦」という全6回の核実験のうち、初回の「ブラボー実験」を指す名称です。
SHRIMP(エビ)と称された水素爆弾は、アメリカの研究者の想定を超えるほどのエネルギーを計測し、実験水域にあった島ひとつを消滅させるほどでした。
きのこ雲や40キロにも上り、爆発の直径は100キロにも及んだと言われ、海底にも直径2キロのクレーターを作りました。
この実験は爆撃機に搭載可能な水準まで小型化した水素爆弾でも実用性があると証明したほかにも様々な問題を引き起こしました。
アメリカ側による危険海域の設定が不十分だったため避難が間に合わず、現地の人々や漁船の乗組員など合わせて2万人以上が放射性降下物を浴びて被曝しました。
その中には日本の漁船「第五福竜丸」があり、乗組員が被曝、うちひとりが死亡する事態へと発展しています。
有名な映画である「ゴジラ」シリーズはこのキャッスルブラボーと第五福竜丸の事件が大きな影響を与えていると言われています。
2位 B41 25,000,000TNTトン
B41は1961年から1976年にかけてアメリカ空軍戦略航空兵団に配備されていた水素爆弾です。
総重量5トンにも及ぶ水素爆弾であり、全3段階の爆発でエネルギーを放出するアメリカ最強の核兵器です。
B41と同じ弾頭部を用いるW41は大陸間弾道ミサイルとして開発されていましたが途中で中止となっています。
1位 ツァーリ・ボンバ 50,000,000TNTトン
「核爆弾の皇帝」という名前の、この世界で最強の爆弾は旧ソビエト連邦が開発したものです。
ツァーリ・ボンバは東西冷戦の最中、米ソの熾烈な核の開発競争の中で生まれました。
北極のノヴァヤゼムリャという場所で実験に使用されましたが、当初ツァーリ・ボンバは100メガトン、つまりランキングで表示される数値の2倍ものエネルギーを放出するものでした。
しかし、それでは地球上のどこでも実験ができないため、出力を落として実験しました。
ただ出力を落としてもなおそのエネルギー放出量は世界一の名を欲しいままにしています。
その圧倒的な威力は、一次放射線の致死域(500rem)が半径6.6km、爆風による人員殺傷範囲は23km、致命的な火傷を負う熱線の効果範囲は実に58kmにも及んだと言われています。
爆発によって生じたキノコ雲は高さ60km、幅30-40kmで、1,000km離れた地点からも見ることが出来ました。
この爆発による衝撃波は地球を三周してもなお空振計に記録され、日本の測候所でも衝撃波到達が観測されています。
仮にこのツァーリ・ボンバが東京に落とされた場合23区が衝撃波で薙ぎ払われ、熱線は埼玉県や千葉県、神奈川県にまで及ぶと言われ、その死亡者は1000万人を下らないと計算されています。
まとめ
この記事では世界最強の爆弾についてご紹介しました。
単位が大きすぎて今ひとつ想像ができない部分もあるかと思いますが、島ひとつが消し飛ぶ、首都圏で1000万人もの死者が出るなどどれも莫大な被害を出すものばかりです。
こうした強力な兵器開発が結果として諸国間の均衡を招き、平和を維持していた時期もありますがこれからはこういった危ういものに頼らない平和を築いていきたいものです。
最後までご覧いただきありがとうございました。