「虫が苦手だ」という人は多いのではないでしょうか。
特に、脚が多かったり、嫌にテカテカしているなど、見た目が奇妙な虫。
映画など物語の中でも、恐怖を煽る演出で使われるのはクモやムカデなどの見た目、気味の悪い虫です。
それは多くの人が、その姿を見ると背筋がゾクリと粟立つからでしょう。
クモやムカデが大群で押し寄せてくる、巨大になって襲ってくる、となるとその恐怖は倍増です。
そして私たちが生きるこの世界には、「え!? ファンタジーの生き物でしょ!?」と言いたくなるようなクモが実在しています。
それが、世界一大きいクモ「ゴライアスバードイーター」です。
ここでは、まるで映画から飛び出してきたような巨大なクモについてご紹介します。
ゴライアスバードイーターの生態
まずはその姿を見ていただきましょう。
こちらが「ゴライアスバードイーター」です。
引用:https://ja.wikipedia.org
ゴライアスバードイーターは、クモガタ綱クモ目オオツチグモ科に属するクモです。
オオツチグモ科に属するクモは、一般的にはタランチュラと呼ばれるクモたちのグループです。
「ゴライアスバードイーター」の名前で呼ばれることが多いですが、正式な和名は「ルブロンオオツチグモ」で、学名は「Theraphosa blondi」です。
「ゴライアス」とは、旧約聖書に登場する巨人の名前で、転じて巨大なものの名に冠されることが多い言葉です。
そして「バードイータ―」は、「鳥喰い」という意味なので、「ゴライアスバードイーター(巨大な鳥喰いグモ)」という事になります。
ゴライアスバードイーターの大きさ
ゴライアスバードイーターは、世界一大きいクモとしてギネスブックに記録されており、脚を広げると最長30cm、重さ170gに達する大きさです。
そのサイズは、子犬1匹の重量に相当すると言われています。
海外メディアに、昆虫学者のピオトル・ナスクレッキ氏が、ジャングルでゴライアスバードイーターを発見した時の言葉が記述されていた。
ナスクレッキ氏は、ゴライアスバードイーターとの遭遇について「硬い脚が地面を踏みしめ、その重みで乾いた落ち葉の砕ける音がした。 ネズミのような小型の哺乳動物かと思いながら、懐中電灯のスイッチを入れて、音のする方向へ光を当てた。 見た瞬間、大きくて毛深い、ネズミくらいの大きさの動物だと思った」と記しています。
ナスクレッキ氏のゴライアスバードイーターとの遭遇時の様子から、ゴライアスバードイーターはその大きさのために足音を立てることが分かります。
その脚にある爪が硬化していることもあり、非常に明確な「カタカタ」という音を発するそうです。
体は、褐色がかった赤色で、他のタランチュラの仲間と同じように毛で覆われています。
「バードイーター」と呼ばれるくらいなので豪快に鳥を捕獲して食べる、かと思いきや、主な獲物は昆虫やトカゲ、カエル、小型の哺乳類などです。
しかし、鳥を食べないわけではなく、機会があれば鳥さえも獲物にしてしまうと言います。
凶悪で獰猛な名前と見た目ではありますが、ゴライアスバードイーターはそのサイズの割には温厚な性格であるとされていて、自ら攻撃を仕掛けようとはしません。
中には凶暴な個体もいるとされますが、あくまでそれは捕食のため、もしくは身を守るためなのです。
ゴライアスバードイーターの分布・繁殖
ゴライアスバードイーターは、ベネズエラ・ブラジル・ガイアナに生息しています。
熱帯雨林に身を潜めて生活しているようです。
引用:https://matome.naver.jp
日中はのんびりと巣穴で休息し、夜になると活発に動き出します。
基本的には地中の巣穴で多くの時間を過ごします。
ゴライアスバードイーターは、50~150個の卵を直径30cm以上もある卵のうに産み付けます。
孵化した子グモは2~3年で成虫になり、その間母グモと巣穴の中で一緒に過ごします。
メスは最長で20年生きると言われますが、オスの寿命は3~6年ほどで多くの場合は交尾後にすぐ死んでしまうとされています。
現在は絶滅の心配はされていないが、熱帯雨林に依存して生活しているため、熱帯雨林の縮小が進むと絶滅の危機に瀕する恐れがあると考えられる。
ゴライアスバードイーターの武器
ゴライアスバードイーターには、強力な武器が2つあります。
1つ目は、大きな鋏角。
引用:http://karapaia.com
体のサイズに比例するように、その鋏角もまた巨大です。
この鋏角から分泌される毒は、人間に対する毒性は強くありません。
噛まれると一瞬スズメバチに刺されたような痛みを感じますが、治療する必要はないとされています。
しかし、この大きさ故に、噛まれてしまうと小型犬に噛まれた程度の怪我を負います。
2つ目の武器は、体中に生えている刺激毛です。
引用:http://karapaia.com
この刺激毛は細かいトゲのような形状をしており、危険を感じると後脚で自らの腹部を擦ります。
腹部を擦る仕草は可愛くも見えますが、飛び散った刺激毛が人間の粘膜や目などに付着すると激しいかゆみが襲うとされています。
実際に刺激毛の被害にあったナスクレッキ氏も「数日間はかゆくて目から涙が流れていた」と記述しています。
人間であればかゆみ程のダメージですが、ゴライアスバードイーターを襲おうとした小型の哺乳動物にとっては十分致命的になると考えられます。
ゴライアスバードイーターの天敵
攻撃の術も防御の術も備えているゴライアスバードイーターですが、恐ろしい天敵が存在します。
その名は、「オオベッコウバチ」です。
引用:http://sekaino-bukimi.com
オオベッコウバチの体長は6cm以上になり、世界最大のハチと言われています。
オオベッコウバチは驚くことに、タランチュラを専門に狩るハチなのです。
タランチュラの一種であるゴライアスバードイーターも、もちろんオオベッコウバチの恰好の獲物なのです。
引用:https://matome.naver.jp
その生態から、別名「ドクグモオオカリバチ」と呼ばれることもあります。
英名では、クモを見つけるとクモに向かって一直線に急接近する様子を鷹(hawk)に見立てて、「タランチュラホーク」と呼ばれています。
オオベッコウバチは、主に地上を徘徊して、地中に巣穴を作るクモを狙って巣穴からクモを引きずり出すという習性を持っています。
タランチュラの大きな鋏角を避け、的確に針で急所を突いて麻痺させてしまうのです。
さらに驚くことに、このハチの勝率はほぼ100%だと言われています。
狩ったタランチュラは巣へと運び、その体に卵を産み付けます。
その卵から孵化した幼虫は、そのタランチュラをエサにして育っていくのです。
ゴライアスバードイーターはおいしい・・・?
見た目不気味なゴライアスバードイーターですが、なんと、は美味しくいただくことができるそうです。
南米北東部に住む人々の多くは、ゴライアスバードイーターを美味しい食べ物と思っているのです。
その調理法ですが、まず刺激毛を火で炙ってから、バナナの葉にくるみ蒸し焼きにするのです。
ゴライアスバードイーターを食したことがあるタランチュラ専門家のリック・ウェスト氏は、以下のような感想を残しています。
「白い筋肉は、スモークしたエビのような味がした。 ねばねばした腹部の中身は、バナナの葉の中で固くなるまで加熱され、じゃりじゃりとした砂まじりの食感で、苦かった。 2cmほどの鋏角は、食後歯に詰まったクモの外皮を取るための爪楊枝として重宝したよ」
以上がリック氏のユーモラスな感想です。
爪楊枝が内蔵された食事にありつける機会は人生の中に数回もないでしょう。
ゴライアスバードイーターは飼育できる!?
この記事を読んで「飼ってみたい」と思った方、朗報です。
ゴライアスバードイーターは飼育することができます。
引用:http://blog.livedoor.jp
近年、タランチュラをペットとして飼う人が増えたため、専門のペットショップに足を運べば、入手することは困難ではありません。
飼育方法としては、大きめのケースに床材と水を用意し、巣穴になるようなシェルター(中が空洞になった木など)を作っておきます。
南米の熱帯雨林に生息するクモなので、温度は26~32℃前後、湿度は60%以上を保つように注意します。
エサは大きめの昆虫やマウスなどを、個体のサイズに合った大きさで用意します。
ペットショップで、サイズ別のコオロギや冷凍のマウスなどを入手することができます。
先ほど述べましたが、噛まれると小型犬に噛まれたほどの怪我を負うので、飼育には十分注意する必要があります。
しかし、ゴライアスバードイーターは夜行性が強く、日中は動きが鈍いので、タランチュラを飼い慣れている人にとっては、飼育する上で特に危険なわけではないと言われています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
もしゴライアスバードイーターを見つけても、うっかり近づいたり触ることのないようにご注意を。
この記事を通して、ゴライアスバードイーターやオオベッコウバチ、昆虫食、タランチュラの飼育などに興味を持っていただけたら嬉しい限りです。
最近では、昆虫を食べることができるカフェやレストランも増えていますので興味のある方はぜひ!