遺伝子工学の進歩と遺伝子の解読が進んだことにより、人類にはこれまでに無かった新たな種をクリエイトすることが可能になりました。
医学、農業、そして社会の在り方さえも大きく変える力を秘めた遺伝子工学は、多くの機能的な生物を実際に作り上げているのです。
今回は世界で実際に産み出された、遺伝子組み換えで生まれた12種類の生物をご紹介いたします。
1.光るウサギ
http://karapaia.com/
米ハワイ大学とトルコのイスタンブール大学の研究者たちによって誕生した遺伝子組み換え生物です。
クラゲから採取した緑色発光のタンパク質遺伝子を組み込まれているため、暗闇で緑色に発光することが可能となっています。
体毛を光らせるために製造されたわけでなく、このウサギたちは医学的な研究を行いしやすくするために発光する遺伝子を導入されているのです。
クラゲの発光遺伝子を、目的の遺伝子に対して接続することで、目的となった細胞を選択的に発光させることも可能になります。
そうすることで殺したあとに薬で細胞を染色して観察しやすくする必要がなくなり、より細胞が鮮度を保った状態での観察が可能となるのです。
細胞を染色しなくても顕微鏡などで分別し、より細胞が壊れていない状態で観察することで、実験がスムーズに進む可能性があるという利点があります。
この緑色発光の遺伝子は、生物にとっては非侵襲性が高く……つまりは、この遺伝子を入れられても死ぬことや障害が起こるリスクは少ないという利点もあるのです。
研究のための行程を飛ばし、より生化学的に価値のある状況での情報収集を可能とすること、それをデザインされたウサギたちなのです。
2.成長しやすいサケ
https://sp.fnn.jp/
写真は同時期に生まれたサーモンたちであり、より大きな個体が遺伝子組み換え生物です。
この新たな生命が、倍近い成長速度を持っていることが一目でわかります。
このサーモンはアメリカのバイオテクノロジー企業である、アクアアドバンテージ・テクノロジー社が開発した遺伝子組み換え生物です。
アクアアドバンテージサーモンはアトランティックサーモンに、キングサーモンとオーシャンパウトという魚の遺伝子が組み込まれています。
キングサーモンはサーモン類でも巨大な種ですし、オーシャンパウトは血液に不凍タンパク質を有するウナギです。
オーシャンパウトの不凍タンパク質の生産をコントロールしているプロモーター遺伝子の存在は、血中の成長ホルモン量を増大させます。
その結果、通常は30ヶ月かかる養殖期間が半分ほどに短縮されたと言われているのです。
アメリカとカナダでは販売実績があり、消費者の口はすでにこの遺伝子組み換えサーモンを食べていることになります。
消費者や食料品店の反応は完全な肯定とは言えませんが、このサーモンの多くはレストランなどに販売されたようです。
スーパーで売りやすさがあるというほどの認識ではないようですね。
レストランの魚肉ならば、出自より経済性が選択の理由にもなります。
……ちなみに、逃亡して野生化したときに生態系にダメージを与えないように、「彼女たち」は全てが不妊のメスなのです。
子孫を残す能力が欠損するようにデザインされた生物であり、それが生産性に制限をもたらしてもいます。
アクアアドバンテージサーモンのみで繁殖させられないため、受精卵に毎回遺伝子組み換えの作業を行う必要があるわけです。
製造過程に通常のサーモンの受精卵を確保する必要があるので、そこに手間が発生し、輸入元が国外の場合は輸入に幾つかの制限がかかることがあります。
受精卵を含み、生きた生物が国境を越えることは、生態系を侵す行為であり、先進国では厳密な管理が必要とされているためです。
ちなみに、海洋魚の不凍タンパク質を生産するための遺伝子を接続された酵母もいます。
不凍タンパク質は加工食品を作るときに役立ちます。
不凍タンパク質を利用することで、アイスクリームなどを作るときに、ガチガチに凍ってしまわないように含有しているクリームの量を削減することも可能となるわけです。
つまりは、魚のタンパク質のおかげで、より低カロリーのアイスクリームを我々は楽しめるようになるかもしれないという可能性があります。
人類の健康にとっては、とても有益な遺伝子なのかもしれませんね。
3.海洋生物にやさしいブタ/エンバイロピッグ
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/
養豚をする上では幾つかの自然環境に対するリスクとダメージが存在しています。
そのひとつにリンによる水質の汚染というものがあるわけです。
ブタというか全ての生物は成長するときにリンを必要とするわけですが、そのリンは環境を破壊する物質にもなってしまいます。
ブタの餌はトウモロコシなどを、用いられていますが、トウモロコシのなかにあるリンをブタは分解することが出来ないのです。
そのために、体のなかで消費されなかったリンが尿として排出されることになります。
その尿を河川に排出してしまえば、河川はもちろん海洋さえも汚染することになり、多くの動物、そして環境への深刻なダメージを与えかねません。
それゆえにブタの尿内のリンを減少させるため、リンを分解させるためのフィターゼという薬品の入ったサプリメントをブタに食べさせることもあります。
しかし、そのサプリメントは決して効率が良いとは言えず、完全な処理には大量に使う必要や、他の手段を併用することも必要とされているわけです。
ならば、このフィターゼを体内で勝手に製造してくれるようにブタの遺伝子を変えてしまえばいい。
そういった自然や生産者の経済事情にやさしい生物が、このエンバイロピッグです。
エンバイロピッグは体内でリンを分解するフィターゼを生産しています。
本来のブタには無かった能力を獲得しているわけです。
おかげで尿から排出されるリンの量は激減しているわけです。
どういう処理で、この自然にやさしい新種の生物は製造されたのでしょうか?
まずはリンを分解する能力をもった生物を探し出して見つけます。
ある大腸菌がフィターゼを生産する能力があることがわかりました。
その大腸菌からフィターゼを生産するための遺伝子を採取して、ブタの受精卵に加えていくわけですが……。
ブタが体内で本来は存在しない遺伝子を使えるようするために、工夫が加えられることになります。
ブタと同じ哺乳類である、マウスの遺伝子が利用されているのです。具体的に言えば、プロモーター遺伝子というものを使います。
このプロモーター遺伝子とは、その名のごとく接続された遺伝子を体内で起動させやすくするものです。
プロモーションするということですね、使ってもらうように働きかける存在というわけなのです。
マウス由来のプロモーター遺伝子と、大腸菌由来のフィターゼを生産する遺伝子を組み合わせて、ブタの受精卵に挿入することになります。
そういった作業の果てに、エンバイロピッグは、体内でフィターゼを生産するという新たな能力を持たせれた種として誕生することになりました。
大腸菌と、そしてマウスの遺伝子が接続されたブタ、それがエンバイロピッグというわけなのです。
その結果として、エンバイロピッグが尿として大概へと排出するリンの量は大きく減っています。
環境にやさしい、遺伝子を改造された家畜の誕生というわけですね。
2010年の時点で、すでに8世代目のエンバイロピッグが存在しており、全ての世代でその特性を受け継いでいます。
新機能をデザインされた遺伝子組み換え生物として、エンバイロピッグは世代を重ねているわけなのです。
4.抗凝血薬の入った乳を出すアンゴラヤギ
http://www.nikkei-science.com/
バイオテクノロジーとは、そもそも何を目的としているのかと言えば、機能性のあるタンパク質を製造するためである、という価値観で示すことも許されるでしょう。
生物内のタンパク質というものは、極めて多くの機能を宿しています。
生理現象のほとんどを担っているのは、機能性を有しているタンパク質たちなのです。
つまりバイオテクノロジーが目指すことは、生体内で機能するタンパク質をデザインすることと、より多くのそれらを量産することと言えるのです。
アトリムという抗血液凝固剤の材料が入った乳を、遺伝子組み換えの結果分泌することになったのがこのヤギです。
マウスなどに比べて、このアンゴラヤギは明らかに巨大なバイオテクノロジー薬品の「生きた工場」として期待されています。
どれぐらい、この遺伝子組み換え生物が有益な存在なのかを示すには、ヒトの献血回数と比べることが一番かもしれません。
アトリムの原材料は、ヒトアンチトロンビン……ヒトの血液に含まれる、血液の凝固を防ぐ物質です。
このヤギを開発した企業によると、このヤギ一頭から、一年間で取れるヒトアンチトロンビンの量は、9000回の献血に匹敵するという宣伝がなされています。
ヤギが選ばれた理由は、牛よりも早期に繁殖させることが可能だからという理由からです。
クリエイトされる哲学からして、バイオテクノロジーらしい生物であり、そのことから非難にさらされることもあります。
「生きた工場」は効率的に薬剤を提供してくれる存在であると同時に、人々が持つ遺伝子工学への倫理的な嫌悪や恐怖を煽る存在でもあるのです。
5.ヒツジとヤギのキメラ/ギープ
http://animal.memozee.com/
ヒツジの受精卵から取り出した胚と、ヤギの受精卵から取り出した胚を凝集させることで産み出されたキメラです。
キメラは少なくとも4体の遺伝的な意味での「親」が存在しています。
ヒツジの父母と、ヤギの父母です。
ギープの産業的な価値は不明ですが、このキメラ動物を作ることを目的としてクリエイトされただけの生物と言えるかもしれません。
今のところギープは科学的な技術研究のためにクリエイトされた動物で、それ以上の研究価値は少ないと考えられています。
キメラの特徴は、それぞれの種の両親から受け継いだ胚から成長した部位に、両種族の特徴が融け合うことはなく、モザイク状にそれぞれの種の特徴が配置されることになるのです。
つまりヒツジの部分とヤギの部分に分かれるのが、ギープというキメラの特徴なのです。
ちなみにヒツジとヤギのあいだには、ときおり雑種が生まれますが、これらはキメラという概念には所属することが出来ません。
雑種は二つの種からの遺伝子を継承していますが、全身の細胞が全て同一の遺伝子で作られています。
対してキメラは、部位によって異なる遺伝子が存在しているわけです。
キメラは体の各部位に、それぞれの親たちから受け継いだ2パターンの遺伝子を持つ生物のことを言います。
異種間のキメラは人工的にしか作られることはないわけです。
しかし、例外もあります。
二卵性の双生児の胚が、妊娠の初期で融合した場合、二つの遺伝子を体の各部位に持つキメラとなるわけです。
この場合では内臓により血液型が違うなどの現象が起こることもあります。
6.遺伝子を欠損させたノックアウトマウス
https://ja.m.wikipedia.org/
ノックアウトマウスは特定の遺伝子を意図的に欠損させた(ノックアウトした)マウスのことを言います。
無数の遺伝子が生物にはコードされていますが、それらの遺伝子の機能をノックアウトマウスを使うことで推測することが可能となるのです。
たとえば、FOXN1遺伝子という遺伝子があり、マウスではこれが破壊された場合、T細胞が著しく減少すると共に、体毛が欠如してヌードマウスとなります。
意図的にFOXN1遺伝子を傷つけたノックアウトマウスも、全く同じ症状となるため、FOXN1遺伝子の欠損がマウスにおいて、どんな作用を起こすのかを再現、確証を抱くことが出来るわけです。
無数にある遺伝子のそれぞれが1つからそれ以上の数をノックアウトしたあとで、どんな症状がマウスに起きるのかを観察するのです。
そうすれば、それぞれの遺伝子が持っている機能を確認することが出来るようになります。
ノックアウトマウスは各遺伝子の働きを調べるために有用な遺伝子組み換え生物なのです。
マウスが選択された理由は、ラットよりも技術的に簡単であり、ハードルが低かったためと、ヒトと遺伝子が似ていることが理由にあげられます。
しかし、限界もあります。
ヒトとマウスにある各遺伝子は、必ずしも同じ働きをするわけではないことも判明しているのです。
一つの実験結果では全てを判断することは出来ないということになりますが、遺伝子の謎を解くための重要な手がかりとしてノックアウトマウスは有効な存在なのです。
7.蜘蛛の毒を持たされたメタリジウム
http://savegreen1131.seesaa.net/
メタリジウムは昆虫類に感染する真菌……つまりカビであり、感染した昆虫を殺すことがあります。
そのため微生物農薬として、殺虫剤の代わりとしても使われている真菌なのです。
このメタリジウムを遺伝子組み換え技術により強化して、アフリカなどを中心に蔓延しているマラリア原虫の媒介生物であるハマダラカを排除しようという試みが取られています。
メタリジウムのなかでも、ハマダラカに感染するのは「Metarhizium pingshaense」という種であることが特定されました。
次いで、このメタリジウムに対して、オーストラリアのジョウゴグモの毒を作り出す遺伝子を修飾して組み込んだのです。
ハマダラカにメタリジウムが感染した時に、ジョウゴグモの毒を分泌して毒殺するようにデザインされた新種の生物が誕生しました。
あくまでも実験段階のことですが、600㎡の実験空間に再現された「アフリカの村」において、その能力の高さが示されました。
この再現された「アフリカの村」では、蚊は通常では増加していく傾向にあります。
しかし、この蜘蛛毒を獲得したメタリジウムを用いると、実験空間に放たれていた1500匹のハマダラカが45日後には13匹にまで減少しました。
わずか2世代のうちに蚊の集団を壊滅させたのです。
ハマダラカ・キラーとしての能力を、この遺伝子組み換え菌は発揮してみせました。
Metarhizium pingshaenseはハマダラカ以外の、有益な昆虫であるミツバチなどには感染することがありません。
殺虫剤の散布に対して、抵抗を獲得してきているハマダラカたちに対しては、悪夢のような知らせであり、マラリアにより年間40万人もの人命を奪われている我々、人類にとっては朗報かもしれません。
この遺伝子組み換えメタリジウムは、毎年40万人の命を奪っているマラリアを撲滅させて、人類にとっての救世主となってくれるのでしょうか?
8.不妊遺伝子導入のネッタイシマカ
https://news.livedoor.com/
蚊は、人類に対して深刻な病原体を伝搬する、厄介な生物です。
上述のマラリアを始め、デング熱やジカ熱、脳炎を起こす病原体を吸血と同時にヒトの体内に送り込んできます。
そんな人類にとって最大級の害虫の一つである蚊に対して、ブラジルにおいて画期的な遺伝子組み換え生物による防除実験が行われました。
イギリスにあるOxitec社が開発した遺伝子組み換えネッタイシマカのオスが、蚊の撲滅のために自然環境下に放たれたのです。
このオスの蚊たちには、メスと交尾して子孫を作った際に、その子孫たちに特定の酵素が蓄積し、成長を阻害、繁殖する前に死んでしまうという罠が仕込まれていました。
理想的な作戦でしたが、現在、失敗に終わりそうなのではないかという報告が上がり始めています。
この実験では、1週間ごとに45万匹もの遺伝子組み換えされた蚊が放たれ、それは27ヶ月にも及びました。
当初は蚊の減少が確認されていましたが、18ヶ月後からは蚊の数が回復しています。
研究者はメスの蚊が、遺伝子組み換えされたオスの蚊を避けるようになっているのではないかと考えていましたが……。
野生下で採取されたネッタイシマカから、遺伝子組み換えされたオスたちの遺伝子が見つかったのです。
つまり、計画とは異なり、本来は成熟する前に死ぬはずであった遺伝子組み換えネッタイシマカの子孫が存在していることになります。
生命の多様性や進化の妙が成せる行いかもしれません。
遺伝子組み換えネッタイシマカの子が生まれてくる可能性は予測では3%であり、その後は蓄積された酵素で成長することもなく死ぬはずでした。
二段構えの安全策を乗り越えて、ネッタイシマカたちは繁殖を続けたのです。
計画が失敗しただけでなく、新たなリスクも懸念されることになりました。
ブラジルで放たれたネッタイシマカは、キューバやメキシコにルーツを持つネッタイシマカでした。
大きく距離の離れたネッタイシマカ同士の遺伝子が、人為的に交配してしまったのです。
遺伝子は多様性を確保することで、強さを増します。
そして、遺伝子上の損傷を修復することもあります。
ブラジルのネッタイシマカは、遠くの国から運ばれてきた同族のやや異なる遺伝子を血統に加えたことで、以前よりも丈夫な生物へとなってしまう可能性さえあるのです。
ブラジルの自然下に解き放たれた遺伝子組み換えされた数千万匹のネッタイシマカたち……。
彼らの子孫が今後も繁殖し、自然下に定着することになれば、我々は人類の天敵を強化したことになるのかもしれません。
遺伝子組み換え生物が、自然環境に解き放たれないように徹底された管理が必要なのだと叫ばれる理由のひとつが、このような事態を招く危険性があるということなのです。
9.サントリーブルーローズ・アプローズ
http://suntoryflowers.blog.suntory.co.jp/
バラにパンジーの青色を生み出す遺伝子を導入して産み出された遺伝子組み換え生物の一つです。
青いバラはこの世に無いものの例えでしたが、今では遺伝子組み換え生物の一つとして製造されるようになりました。
オーストラリアの遺伝子組み換え花弁の専門会社、フロリジーンがサントリーと組んで作った青い花シリーズの一つです。
10.青いカーネーション、フロリジーン・シリーズ
https://ja.m.wikipedia.org/
青いバラに先駆けてフロリジーンは、ペチュニアやパンジーから得た酵素遺伝子をカーネーションに導入して、青いパンジー、フロリジーン・シリーズ(和名はムーンダスト)を製造しています。
花の色も様々に編集することが可能となっているわけです。
食用の農作物や、移動してしまう動物や昆虫類と比べて、商品用の花は比較的編集された遺伝子が外部環境に影響を与えにくいイメージがあるためなのでしょうか。
アメリカなどに比べて、遺伝子組み換え生物を好まない風土を持つ日本でも受け入れられているような気がします。
11.科学対政治、ゴールデンライス
http://kunota506.com/
人類を不幸にしているものはいくつもありますが、貧困と栄養素の不足も大きな課題です。
米を食べる人口は24億人いると言われていますが、米ばかり食べて、他の食料を口に出来ない場合、深刻なビタミンA不足を起こします。
ビタミンAが不足すると、免疫は弱り、血液の生産や骨格の成長は阻害され、視力を失う危険もあるのです。
ビタミンA欠乏による死者は、世界で年間200万人、そして年間50万人の子供たちが視力を失っているとも言われています。
スイス工科大学のインゴ・ポトリカスと共同研究者ピーター・ベイヤーは、それらの課題に科学者として一つの有効な策を用意しました。
ビタミンAにまつわるラッパスイセンと細菌エルビニアの遺伝子をイネに導入し、体内でビタミンAに変わるカロテンを含んだ米を開発したのです。
この画期的な食品はゼネカ社により発展途上国の小規模農家に無料提供すると発表されました。
遺伝子工学の分野では前例がない行いです。
2005年にはレイチェル・ドレイクらにより、トウモロコシ由来の遺伝子を導入することで初代を23倍上回るカロテン=ビタミンA提供能力を有する、ゴールデンライスⅡが開発されました。
ゴールデンライスは、貧困による重度の栄養失調から多くの死者を減らすために開発された遺伝子組み換え生物です。
……それゆえに、政治的な論争の具にもされてしました。有力な環境保護団体などからしてみれば、絶好の攻撃対象です。
環境保護団体は身勝手なエゴにより猛獣や自然環境を保護しますが、人道主義の団体ではありません。
彼らは珍獣やジャングルが好きなのであり、貧困に苦しむ人々や現地の人々の文化に関心はないのが現実です。
……遺伝子組み換え作物については、増加していく人類の総人口を考えれば、導入するほかありません。
環境保護団体の人々が貧困対策に反対する理由が分かりますね。
環境を汚染する人類が減って欲しいと願っているからです。そちらの方が自然は保護されますからね。
さて、かつて米の輸入国であったベトナムは、輸出国に変わりました。
高度にデザインされた遺伝子組み換え作物である農作物たちは、政治的な論争の具になる以前に、経済的な勝者として世界に広まっています。
殺虫剤を使うこともなく、年間に3~4回収穫出来て、田植えが必要ないどころか、ただ種を撒けば育つような米に対して、伝統的な農法で太刀打ちなど出来るはずもないからです。
12.ヒト
2018年11月27日、中国で人類初のデザイナーベビーが誕生したという報道がありました。
遺伝子を編集された双子の女児、ルルとナナ(どちらも仮名)が誕生したようです。
エイズウイルスに抵抗を持たせるという名目で、一部の遺伝子が変えられています。
彼女たちは人類最初の、デザイナーベイビーかもしれません。
エイズウイルスへの抵抗性と共に、知能が強化される処理も行われているのではないかという報道もあります。
医学界から激しく非難された出来事です。
しかし、ヒトの遺伝子を操作し、任意の遺伝子を書き換えることが可能であると証明された事例になりました。
ルルとナナの詳細は不明ですが、今後も同じような事件が起こらないとは誰にも断言できません。
そして、もしかするとルルとナナのケースは人類が自分たちの遺伝子を好きなように変化させて、人工的な進化を行い始める未来を示唆しているのかもしれません。
人類は自然環境による淘汰を受け付けない強さがありますが、自ら遺伝子を操作するのであれば、いくらでも進化が成立してしまいます。
難病や短命な命として生まれてくるヒトもいます。
それらの病や不自由の苦しみから解放されるという手段に、正義が全くないとも言い切れません。
マラリアや睡眠病、エボラにならない遺伝子を導入することが可能であれば、アフリカの人々はそれを受け入れないのでしょうか?
我々、日本人の場合、胃癌や高血圧由来の心不全や脳出血で死ぬリスクは高い傾向があります。
これから生まれて来る子供たちの遺伝子を組み換えることで、それらのリスクを減らせるとすれば、その技術を否定すべきでしょうか?
ルルとナナが知能を強化されていて、とてつもない知能指数を持っていたとすれば、世界の金持ちたちは我が子や孫に、同様の措置を願わないでいられるのでしょうか?
あるいは保険が適応され、安価になった場合はどうなのでしょう。
検診の費用にプラス5万円で高血圧、胃癌、糖尿病などのリスクを減らせる遺伝子組み換え措置が胎児に与えられるなら、あなたは我が子に受けさせないのでしょうか?
人類という種の行く末が、双子の赤ちゃんたちの成長と結果に委ねられているのかもしれません。
まとめ
遺伝子組み換え技術の進歩により、人類は多くの科学的な選択肢を得ました。
それと共に、新種の政治闘争や倫理的な葛藤と遭遇することにもなっています。
遺伝子組み換え作物による人的な被害は報告されていませんが、環境を変化させる可能性も完全には否定できません。
しかし、これらの商品が製造・計画される理由は、需要があるからです。
そして間違いなく遺伝子組み換え生物たちは合理的な結果をもたらし、世の中を変える可能性を有しています。
その変貌を望まない政治心情や価値観、利害関係なども存在するわけですが……。
日進月歩で遺伝子組み換え生物たちの商品としての価値は上がり続けていくわけです。
今後も様々な新しい商品がクリエイトされていくはずです。
遺伝子組み換え生物にあふれた未来は、遅かれ早かれ来るのかもしれません。