日本には大型の哺乳類がほとんど存在しないため、国内にいる危険生物といってもピンとこないという方もいるでしょう。しかし、海や山といった自然豊かで独自の生態系を築いている環境ではもちろんのこと、都市部や家の中にも危険な生き物は多数存在しています。
この記事では地味な印象はあるものの、存在を知っておかないと文字通り痛い目に遭う生物について20位から1位までランキング形式で紹介していきます。
20位 ハシブトガラス
日本国内では全土に分布しているハシブトガラスは、都市部の生態系の頂点に君臨する生物です。高い知能を持つことから自分に嫌がらせをした人間の顔を記憶して仕返しをすることもあるカラスですが、普段は意味もなく人間を襲うことはあまりありません。
しかし初夏に繁殖期を迎え、公園や街路樹に営巣し始めると巣を守るために気性が非常に荒くなり、積極的に巣の付近を歩く人間を攻撃するように変化します。
カラスの鳴き声にパターンがあり、特に自分の縄張りに敏感になる繁殖期には「カァー、カァー」と鳴いて縄張りを主張し、これが無視された時には「カァッ、カァッ、カァッ」と短く鳴き“これ以上近づくと攻撃するぞ”という警告をします。
ここで巣から離れれば追ってくることはないのですが、立ち止まってしまったり更に近づいたりすると「ガァッ、ガアッ」と濁った声をあげながら襲い掛かってくるのです。
大きく太いクチバシを持つハシブトガラスですが人間に攻撃をする際にはクチバシを使うことはあまりせず、急降下してきて鋭い爪で引っかく程度。そのため被害も少し血がにじむか切り傷ができるくらいで済みますが、攻撃を受けたからといって興奮して追い払おうとする、やり返そうとするといった反応をしてしまうと完全に敵と見なされてしまうため、初回の攻撃を受けたら速やかに巣の付近から立ち去るようにしましょう。
そして可能であれ、繁殖期が終わるまでは巣のある道は避けるように心掛けることがおすすめです。
19位 ニホンヒキガエル
ニホンヒキガエルは本州南西部、四国、九州の低地から山地に分布するヒキガエル科の生物で、体長は8cm~17cm程度。ヒキガエル、ガマガエルと呼ばれることもあります。
臆病な性質のため積極的に人間に向かってくることはありませんが、捕まえようとした際に眼と耳の間のふくらみを指で押して耳腺を刺激してしまうと防御のために毒液を噴射してきます。ニホンヒキガエルの持つ毒は日本に生息するカエルの中で最も強く、神経毒の一種であるアルカロイドが含まれるうえに最高で30cmも飛ばすことが可能です。
そのため万一口に入ってしまうと呼吸困難になったり、眼に入ると激しい痛みを感じたりといった症状が起こります。毒液を浴びてしまった場合は決してこすらず、流水で洗い流して病院を受診するようにしましょう。
毒液はだいたい眼に入ることが多いため、どうしても捕まえたい場合は眼鏡やゴーグルなどで眼を保護したうえで、そっと背中を掴んで手のひらに乗せるようにすれば被害に遭わなくて済みます。
18位 イラガの幼虫
イラガは北海道、本州、四国、九州に分布し、幼虫は柿や梨、桜、リンゴの葉を好むためにこれらの樹に付着していることが多くあります。
成虫になると口吻も退化して攻撃の手段も持たなくなるのですが、うっかり幼虫に手を触れてしまうと背中の棘を通して毒が注入され、電気が通ったような痛みを感じます。その後に水膨れを伴う皮膚炎を起こして、1週間程かゆみが続くことも。
毒液にはヒスタミンなどが含まれており、これは自分を空中から狙ってくる鳥などの天敵から身を守る手段であることから、毒針が存在するのは背中のみで腹部はなめくじのようになっています。
イラガの幼虫の姿が見られるのは6月~9月の間で、繭には毒がないため触れても害はありません。しかし、近種のアオイラガやヒロヘリアオイラガには繭の表面にも毒針が見られるため触れないように注意が必要です。
刺された箇所は放置しておいても1週間前後で治りますが、痛みがひどい場合はアロエや抗ヒスタミン薬を塗布したり、皮膚科を受診すると良いでしょう。また刺された直後は水で流すよりも患部に粘着テープを貼ってはがすことで、毒針を取り除くことが可能とされています。
17位 セアカゴケグモ
セアカゴケグモはオーストラリア原産の外来種で、1995年に大阪府高石市で発見されて以来、国内でも分布を広げて2018年現在では44都道府県で姿が目撃され、一部地域では定着も確認されてています。
側溝や人工建造物の隙間、夜間照明のある公園や運動場に巣をかけることが多く、太くて丈夫な意図を不規則に張り巡らせた網の奥に巣を作って身を隠しています。
体長は雌が8mm~12mm、雄が5mm~6mmと、コケグモ類は本種を含めて雄よりも雌の方が体が大きく毒性も強い傾向にありますが、それでも毒を注入する際に使う牙は0.5mm程度のため洋服の上から刺されても被害はありません。
蜘蛛の毒は獲物を捕食する際に対象を麻痺させるために使用されるため死亡例が報告されるような惨事には至りませんが、遅効性の神経毒であるために咬まれた直後は変化を感じなくても、数時間後に発熱や筋肉痛、腹痛、呼吸困難といった症状が表れることが多いです。
もし咬まれたことに気が付いた場合は傷口を水道水で良く洗い、氷で冷やしながら病院に向かうと良いでしょう。また体にセアカゴケグモが付いた場合はそっと払い落とし、首筋や背中などの見えない場所にいる際には木の枝などを近づけて移動させてから靴底で踏みつぶすと安全に駆除できます。
16位 ネコノミ
ネコノミは犬や猫といった哺乳類の体表に最も多くみられるノミで、体長は1mm~3mm。世界各地で1年を通して姿が見られますが、一番被害が集中するのは夏の時期です。
畳の下やじゅうたんから発生し、通常ネコノミに咬まれると激しいかゆみを感じた後に水ぶくれができることが多く見られます。しかし、ネコノミの一番恐ろしいところは吸った血液を介して様々な病気を媒介することで、保護した犬や猫がペスト菌に感染していた場合はネコノミが原因でペストに感染してしまう恐れもあるのです。
そのため、犬や猫を拾った場合はまず動物病院を受診してノミやダニの駆除や感染症の検査をしてもらうようにしましょう。また、ネコノミはバルトネラ・ヘンセラ菌という菌を運ぶことがあり、これに感染した猫に引っかかれると傷口の化膿や発熱、リンパ腺の腫れを伴う猫引っかき病にかかることがあります。
ノミは硬い体表を持つため簡単に潰すことはできませんが、爪の側面を使って力を入れると潰して駆除することが可能です。しかし卵を持っている状態の雌を潰してしまうと卵がばらまかれてしまうため、安易に潰さないように注意をしましょう。
15位 アライグマ
アライグマはカナダ南部~中央アメリカ原産の生物で、1970年代にアニメ『あらいぐまラスカル』がブームになった際にペット用として大量に輸入されたものが野生化して、日本各地にも分布するようになりました。
高い繁殖能力を持ち、本来の生息地であれば大型の肉食獣や猛禽類などアライグマを餌とする生物が存在するため爆発的に数が増えることはないのですが、日本には天敵がいないため数を増やし続け、生態系への影響や農作物の被害の他、家屋に潜り込んで屋根裏などで生活をし、糞をするといった被害も多く報告されています。
雑食の食性のあるアライグマの糞はにおいがきついことも特徴ですが、それ以上に恐ろしいのが糞を媒介してアライグマ回虫に感染する恐れがあることです。アライグマ回虫はアライグマの寄生虫で、糞と一緒に排泄された卵が人間の口に入ると体内で孵化して幼虫となり、幼虫移行症という病気になります。
アライグマ回虫は人間の体内で孵化することはできても成虫になることはできないため、幼虫の姿のまま宿主の中を動き回り、脳に移動することで重篤な脳障害を引き起こすのですが、アメリカにおいては1981年に初めてアライグマ回虫の感染例が報告されて以降その数は25例にも増え、そのうち5例ではなんと死亡が確認されているのです。
また糞だけではなくアライグマ自身も攻撃的な性格を持つため、見かけることがあっても可愛いからと安易に手を出さず、速やかに地域の保健所などに連絡をするようにしましょう。
14位 マダニ
引用:https://www.thoughtco.com
マダニは体長およそ3mm~4.5mm程度で、日本で最も多くみられるヤマトマダニは北海道から屋久島にかけて広く分布し、特に人間の顔面や頭部に寄生する性質を持ちます。
初夏から秋にかけて活発に活動し、平地から山地の葉や草に隠れて人間を含む恒温動物を待ち受け、吸血できる対象が通りかかると素早く飛び移ります。マダニは脚にあるハラー器官という感覚器を使用して、呼吸で排出される二酸化炭素のや体温、移動時の空気の振動などから獲物の存在や距離を感知することができるのです。
獲物に飛び移ったマダニはハサミのように鋭い口吻を使って皮膚を切り裂き、その傷に頭を突っ込んで吸血をします。この時に流れ出る血液が凝固しないように体内に唾液を流し込むのですが、この唾液が原因で様々な病気に罹患する恐れがあります。
ダニが運ぶ病気の中には重症熱誠血小板減少症候群、日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎などがあり、特に重症熱誠血小板減少症候群(SFTS)は2011年に初めて特定されたウイルスが原因となるもので、日本では2013年に初の感染例が確認されて以降50名以上が命を落としています。
マダニは一度人間に咬みつくと数日はとどまって血を吸いますが、発見した際にあわてて引きはがそうとすると頭部が体内に残ってしまう恐れがあります。そのため、マダニの上から消毒用のアルコールをかけて自然に落ちるように仕向けるようにしましょう。また駆除できた場合も念のため病院を受診して、体の中に牙などマダニの一部が残っていないか確認するようにしましょう。
13位 ヒトスジシマカ
蚊は世界に3000種類以上存在するとされ、日本に生息するのは100種類程度です。普段は花の蜜や樹液、果汁などを餌としますが、雌は産卵時期が近付くと栄養を取るために吸血をするようになります。
ヒトスジシマカは日本で姿が見られる蚊のなかでも最も環境に適応した種で、東北以南に分布していますが温暖化の影響でどんどん北に生息域を広げていっています。
本種を含む蚊は、まず眼で人間の姿を確認するのですが黒、青、赤といった色に反応して寄ってきて、触覚で呼吸で排出される二酸化炭素を感知し、触覚の根元にあるジョンストン器官で空気の振動を感じ取って人間の正確な位置を探り、最終的には針である口の温度センサーを使って位置の特定を行うため、体温の高い人ほど蚊に刺されやすくなるのです。
蚊はデング熱、マラリア、フィラリア、日本脳炎、黄熱病、西ナイル熱、チクングニア熱など様々な病気を媒介しますが、蚊に刺されただけでアレルギー反応を起こす“蚊刺過敏症”と呼ばれる症状にも注意が必要です。
蚊刺過敏症は蚊に刺された後いつまでもかゆみが治まらず、水ぶくれになったり深い傷になったりします。そして高熱が出たり傷がいつまでも治らないといった通常の虫刺されでは怒らないような重い症状が見られるため、1ヶ月以上蚊に刺された跡が治らない場合などは病院を受診するようにしましょう。
12位 イノシシ
引用:https://www.naturalnews.com/
日本に生息するイノシシは本州、四国、九州に分布するニホンイノシシと奄美大島から西表島に分布するリュウキュウイノシシの2亜種が存在します。ニホンイノシシの体長は125cm~180cm、肩高は55cm~110cm、体重は50kg~180kg程度で、リュウキュウイノシシはこれに比べて小柄です。
低山帯から山地の森林、農耕地や丘陵地に生息し、食物の根っこや葉、果実や昆虫、両生類などを餌とする雑食の食性を持ちます。また近年では生息域に餌が無くなったことなどが原因で里山に降りてきて農作物を食べたり、人間の生ごみを漁りに来たりする個体も増えていることから、人間と生活圏が被ってきていることが問題となっています。
そのため近年は人間と接触することも増え、警戒心が強いことから人間を見ると時速40kmで突進をしてきて体当たりをしたり、雄の場合は下顎の長い牙を使用して下から突き上げるような攻撃を仕掛けてきます。2016年には群馬県桐生市で60歳代の男女がイノシシに襲われて、男性の方は両足と左手を噛まれて出血性のショックで死亡しました。
もし山中などでイノシシと出会ってしまった場合は、警戒態勢に入られる前にイノシシの眼をみながらゆっくりと後ずさり距離を確保するようにしましょう。背を向けて走ると獲物として認識されてしまうため、決してイノシシに背中を見せないようにしてください。
11位 ドブネスミ
ドブネスミは世界中に分布し、下水などの水がある環境で姿が見られます。咬まれることで鼠咬症という病気になり、発熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛などの症状が見られ、尿のついたものを口にした場合はレプトスピラ症にかかって発熱、悪寒、頭痛、腹痛、目の充血などを起こす可能性があります。
中でも一番恐ろしいのが糞が媒介するサルモネラ症で、感染した場合は8時間~48時間の潜伏期間を経て嘔吐や腹痛、激しい下痢といった症状を起こすため、脱水を起こさないためにも病院での処置が必要です。
木造の住居だけではなくコンクリートの建物にも配管を伝って侵入してくるため、米粒程度の黒い糞や壁や床に黒い汚れが見られた場合はドブネズミが入り込んでいる可能性があるため注意しましょう。