音響兵器(sonic weapon)とは、その名の通り、敵に向けて音波を投射することによって、人間を行動不能にすることを目的とした兵器です。
人間の聴覚にダメージを与えて判断能力を奪うだけでなく、脳にまでダメージを与えて行動能力を奪ったり物体を破壊したりといったことまで可能とされます。
まるでSFの世界のような話ですが、本当に音を発射するだけにそんなことができるのでしょうか。
ここでは、歴史上実用化された音響兵器を取り上げ、その威力がどのようなものであるかを探っていきたいと思います。
音響兵器とは
引用:www.newsweekjapan.jp
音を軍事行動や兵器の一部として利用するということは、音響兵器に限らず古くから広く行われてきたことです。
広い意味でいうならラッパなどの楽器を使って軍隊を統率することも音の利用いえますし、ドイツのスツーカ爆撃機につけられたサイレンのように大きな音を使って敵に対する威嚇効果を狙ったものもあります。
アメリカ軍では、イラク戦争において進軍中に大音量でヘビメタ音楽を鳴らし続け、イラク軍に心理的なストレスを与えたりというように、音を使って敵に嫌がらせをするという作戦を行っています。
潜水艦が使うソナーでは、音波を発射してその反響を分析することで敵潜水艦を発見したり、逆に敵潜水艦の発する音波をキャッチして敵の居場所をつきとめるといったことが行われています。
しかし、ここでいう音響兵器とはそうした単なる音の利用とは違い、音波そのものを使って敵に身体的な被害を及ぼすものです。
音波とは、空気中や液体、固体中を伝搬する弾性波のことを指し、ヒトをはじめとする生物はこの音波による振動を鼓膜等の聴覚器官を使って捉えることで「音」として認識しています。
人間が音として捉えることのできる周波数を可聴周波数といい、20~20000Hz(ヘルツ:音の高さを表す単位)とされ、この領域を可聴域と呼びます。
人間の可聴周波数より高い周波数の音波を超高周波(聴音波)、低い周波数の音波を超低周波といいます。
音響兵器は主にヒトの可聴域外の音を使用して聴覚器官等にダメージを与えようというもので、超高周波を使ったものと超低周波を使ったものの2種類が存在します。
欧州宇宙機関(ESA)の試算によると、人間の聴覚器官が耐えられる上限である120dB(デジベル:音の強さを表す単位)の2倍の大きさである240dBという大音量を使用すれば頭部を破壊することができ、理論上人を殺すことも可能とされます。
とはいえ、実際に音響兵器を使って敵にダメージを与えるのは簡単なことではありません。
音波は通常、発生源から放射状に広がる性質をもっており、そのままだと空気中に拡散して消えてしまい、狙った相手を攻撃することはできません。
さらに、兵器から投射した場合には後方に伝搬するため味方に被害を及ぼす恐れもあります。
そのため、音響兵器を作る場合にはまず投射する音波に指向性をもたせる必要がありますし、実際にはもっとピンポイントで相手に音波を当てなければなりません。
超高周波を使った兵器の場合には拡声器と音の通り道があればよいのですが、超低周波を使った兵器の場合には、巨大な低音用スピーカーが必要で、そのぶん敵にも見つかりやすくなってしまいます。
しかし、目に見えず、空気さえあれば伝播する音を兵器として用いるというアイデア自体は魅力的で、音響兵器の開発についてもいくつかの実例があります。
次からは、実在に開発された音響兵器をみていきましょう。
音波砲
引用:www.welt.de
音波砲は、第二次大戦中のドイツで開発された音響兵器です。
世界初のジェット戦闘機や弾道ミサイルの原型となったV2ロケットなど先進的で画期的な兵器を開発し、高い技術力をもっていたことで知られる当時のドイツですが、実はこうしたトンデモ兵器と呼ばれるような奇妙な秘密兵器も数多く研究されていました。
音波砲は対空兵器として開発されたもので、ドイツを攻撃する連合軍の航空機に対して使われ、音を使って搭乗員に対してダメージを与えようというものでした。
音波砲は、リヒャルト・ヴァラウシェク博士によって考案されたもので、チロル地方のアルプス山中にあるローファー研究所で開発が進められていました。
ローファーではほかにも石炭粉末を封入した砲弾に粉塵を飛散させて着火し、強力な粉塵爆発による空気噴流を起こして航空機を攻撃する対空兵器である「竜巻砲」の開発も行われていました。
音波砲は、メタンと酸素の混合物を数種の発火チューブでできた燃焼室の中へ入れ、2種類のガスを周期的に連続的に爆発させます。
燃焼室の長さは、連続爆発で生じる音波の波長のちょうど4分の1の長さになっていました。
1つ1つの爆発は共鳴によってより強度な衝撃波となっていき、次々に爆発を誘発、増幅されて非常に強い超高周波音波になります。
燃焼室はパラボラアンテナ(放物面反射器)と直結しており、これによって音波を収束して投射する方式になっていました。
いくつかの試作が作られ、最終的には直径3.3mもの巨大なアンテナになり、投射される音波は人間の聴覚器官には耐えられないものになりました。
230mほどの距離なら浴びた人間に耐えがたい苦痛を受けさせて、長時間にわたって行動不能にすることができました。
音波砲の有効射程は最大300mにもなり、威力は1000㎜bar(バール:圧力の単位)以上で、30~40秒で人間を殺害することができました。
音波砲は、いくつかの動物実験が行われたとされ、ある程度は実用段階にあったとされますが、実戦テストや人間に対する生体テストなどは実施されず、実戦に投入されることもありませんでした。
理論上は確かに人体に対して強力な威力をもっていた音波砲ですが、装置の巨大さから移動など運用に柔軟性を欠くといった問題点も多く、実戦で使われたとしてもどれほどの戦果を上げられたかについては疑問符がつきます。
アイデアや設計は斬新であるものの、音波砲を使うくらいなら通常の対空兵器を量産したほうがまだ戦局に寄与したものと思われます。
LRAD
引用:ja.wikipedia.org
LRAD(エルラド:Long Range Acoustic Device)はアメリカのカリフォルニア州サンディエゴに本社をおくLRAD Corporation社によって開発された長距離音響発生装置です。
LRADは非致死性兵器として開発されたもので、人間を殺傷するような威力はもっていません。
非致死性兵器
引用:latinpeople.jugem.jp
非致死性兵器(Non-Lethal Weapon)とは、その名の通りに人間を殺傷することのない兵器で、暴動の鎮圧や抵抗する犯罪者を一時的に行動不能にするためなどに使われ、催涙ガスや放水車などもこれに当たります。
暴動への対処で重要になるのが、必要以上に刺激することなくデモを速やかに沈静化させることです。
もし過剰な武力を行使して不必要な刺激を与え、鎮圧に失敗するようなことがあれば、群衆は暴徒化して手がつけられなくなる恐れもあります。
しかも、相手は自国の国民であり武器らしい武器も手にしていないため、あまりに強力な兵器を使った鎮圧活動は世論の反発を招くことにもつながります。
それ以外にも、不審船舶や海賊の取り締まりなど、相手が武装しているにしても、軍隊が本気を出して戦えば明らかにオーバーキル気味になってしまい、こちらも世論の非難を招く懸念が出てくるという場合もあります。
そこでこうしたケースで、対象を傷つけたり、殺したりすることなく無力化して行動不能にするための兵器として作られたのが非致死性兵器です。
非致死性兵器は占領地における治安維持活動でも使用され、世界各地で平和任務や治安任務を行うことの多いアメリカではこうした兵器の開発に熱心です。
非致死性兵器は、軍隊だけでなく警察、ほかにも警備会社など民間人の自衛手段として使われることもあります。
ただ、暴徒鎮圧のためのゴム弾やスタンガンで死者を出したケースや、無力化用のガスによって後遺症が残ってしまったケースなど、非致死性といっても必ずしもすべての兵器が安全とは言い切れない面があり、アメリカの警察などでは非致死性(non-lethal)ではなく、低致死性(less-lethal)という言葉を使用するようになっています。
LRADの性能
引用:www.moma.org
LRADは、こうした死亡事故や後遺症を引き起こすこれまでの非致死性兵器に代わる、安全な期待の新型非致死性兵器として開発が行われました。
開発の直接のきっかけとなったのは2000年にイエメンで起きた駆逐艦コールの爆破事件で、この事件では小型ボートによる自爆攻撃が行われ、こうしたボートが米軍艦艇に接近するのを防ぐために開発が行われることになったといいます。
LRADは、人間の耳に不快に感じる、飛行機のジェットエンジンの騒音よりも高い150デシベルの音を照射して、相手に聴覚障害を起こさせ行動不能にすることができます。
LRADは、様々なモデルが発売されていますが、一般的なものとしては、直径80㎝程度の椀型もしくは四角形、六角形の形状で、重量は30kg前後で、有効範囲にある対象へ向けて作動させることで効果を発揮します。
音波を一定方向に15~30度のビーム角を放射でき、暴動の首謀者がいる方向へ向けてピンポイントで投射することも可能です。
最大有効距離は300mで、距離90mでその場にいられなくなるほどに気分が悪くなり、距離30m以内で投射されると耳が痛くなるほど聴覚器官へのダメージを受け、15m以内にいる人間は失聴します。
LRADは車両や船舶などに搭載することができ、アメリカ軍のハンヴィーやニューヨークの警察車両、アメリカ海軍の艦艇などへの搭載例があります。
ほかにも、指向性をもって音を照射することが可能なため、距離の離れた場所の限られた範囲に向けて音声メッセージを送ることもできます。
災害の発生時に相手側に無線受信機がなくても被災者に適切な指示や情報を伝えたり、群衆の中から特定の集団にのみ指示を与えたりするといった使い方も可能です。
最大9㎞まで明瞭に音を届けることができ、警察などが導入している音波を抑えたモデルでも、2㎞までは音声を届かせることができます。
人体に無害な治安維持兵器として開発されたLARDですが、実際には断続的に強力な音波を照射されると聴覚に障害が起こる危険性があるのではという指摘もあります。
そのため、メーカーからは運用において制圧目的の場合は一度の照射は数秒程度とし、連続照射は前提としていないことが明示されています。
LRADの実用例
引用:ja.wikipedia.org
LRADは、2004年からイラクに駐留するアメリカ軍に採用され、暴動の鎮圧などで実験的に使用され、成果を上げました。
メーカーの発表によると、最終的にイラクのアメリカ軍には300台以上が配備され、他にも世界各国の軍や警察、消防などに導入されていきました。
この時期、ニューヨーク市警でも暴動鎮圧や犯罪抑止のためにLRADを購入しています。
2005年8月末にアメリカ南東部を大型ハリケーン・カトリーナが襲った際には、被害の甚大だったニューオーリンズ一帯で治安が悪化したため、LRADが投入されて十分な成果を上げたと報告されました。
2005年11月5日には、エジプトからケニアへの航海途上にあったアメリカの商用豪華客船がソマリア沖でLRADを使って武装海賊の襲撃を撃退したことが報じられており、LRADが民間でも使用され始めていたことがわかります。
民間では、このように武装が難しいもののスペースには余裕のある民間の大型船がテロリストや不審船の接近から身を守るために搭載している例があり、他には災害時等の非難勧告やスポーツ会場での呼びかけを行うといった目的で自治体が導入していることがあります。
2009年2月からは、日本においても、水産庁が南極海で日本の調査捕鯨船に対して過激な妨害活動を行っている環境保護団体シー・シェパードの船舶に対してLRADを使用を開始し、捕鯨船への接近を阻止したことが報じられました。
引用:www.mod.go.jp
水産庁では、事前に警視庁などと協議し、国際法、国内法に照らし合わせて違法性がないことを確認した上で使用に踏み切りました。
これに対して抗議船の船長は、「妨害活動に集中することが困難になったと認めざるをえない」というコメントを出していて、LRADが大きな成果を上げたことが分かります。
LRADはソマリア沖で海賊対策活動任務を行っている海上自衛隊の艦艇にも搭載され、不審船を追い払うために、現地語で「こちらは日本の海上自衛隊」と録音した内容の音声を流しています。
2009年9月には、アメリカのピッツバーグでG20が開催された際にピッツバーグ市警がサミットに対する抗議デモに対してLRADを使用しました。
これは、アメリカ国内で警察によってLRADが使われた最初の例とされていますが、この時は一般の見物人が聴覚障害の被害に遭い、ピッツバーグ市が72000ドル(約780万円)の賠償を行ったことが報じられています。
LRADは、人体に対して絶対に無害というわけでなく、完全な非致死性兵器というわけではないようです。
ですが、その有効性は広く認められるところであり、アメリカや日本だけでなくイスラエル、ポーランド、シンガポール、ブラジルなど世界70か国以上で導入されています。
スクリーム
引用:www.amnesty.or.jp
叫びという名のスクリームは、イスラエル軍が開発した音響兵器です。
スクリームはジープなど車両に搭載して使用され、対象に対して不快感を与えたり、一時的に平衡感覚を喪失させたりすることができます。
スクリームは、10秒間隔で断続的に不快音を発生させます。
人間の平衡感覚をつかさどる内耳に対して作用する周波数を発生させ、これは内耳に共振を起こさせる非常に低い周波数であると考えられています。
最大射程は75mで、耳栓も効果はありません。
音波は特定の方向に向けて照射され、後方にいる兵士が影響を受けることはありません。
2005年にヨルダン川西岸でデモ隊に対処するために使用され、そのとき照射を受けた人々には頭痛やめまい、胃のねじれるような感覚に襲われたり、膝ががくがくしたりといった症状が発生したといいます。
スクリームに対してもLRADと同じように、長時間の使用によって人体への健康被害を与える危険性が指摘されており、近距離で照射されると聴覚障害を引き起こす恐れがありますが、あまりにひどい騒音のためにスクリームを受けた人はその場所に長くとどまることができないため影響は少なく、イスラエルでは非致死性兵器として問題はないと考えているようです。
ハバナ症候群
引用:www.iza.ne.jp
2017年2月、アメリカ政府がキューバ政府に対して、キューバのアメリカ大使館で働く職員の体に不調が起きていることを明らかにしました。
アメリカの報告書では、2016年以降、在キューバのアメリカ外交官が原因不明の頭痛やめまい、吐き気といった健康上の問題に悩まされているとしています。
症状が重くなると、難聴や平衡障害も発症し、軽度の脳損傷や中枢神経の損傷も見られるようになります。
10人以上のアメリカ外交官とその家族がこの症状によって治療を受け、そのうち2人は難聴などを発症し、長期治療が必要な状態でした。
さらに、この症状はカナダの外交官にも起きており、カナダ外交官5人とその家族も同様の症状を訴えました。
これら一連の体調不良は、マスコミの報道によってハバナ症候群と呼ばれるようになりました。
そして、アメリカの捜査では、このハバナ症候群の原因が不特定の技術を使った何者かによる攻撃であり、この攻撃に使用されているのが音響兵器ではないかと結論づけられています。
アメリカ政府は最初、この問題でキューバ政府の責任を追及することを避けていましたが、アメリカは諜報機関やFBIを使った数か月による調査を行い、これらの攻撃にキューバ政府が関与しているとして非難しました。
この攻撃はおそらく音波を利用した兵器によるものであり、攻撃は大使館内部または大使館の宿舎近くで行われたものと考えられています。
被害に遭った外交官らはいずれもキューバ政府が所有、管理する物件で生活していました。
攻撃には何らかのデバイスが使われ、このデバイスからは人間の耳には感じ取れない超音波もしくは超低周波が発せられ、それによって人体に影響を起こす兵器ではないかとされています。
複数の被害者が何かの擦れるような奇妙な音を聞いたといっていて、圧力や振動のようなものを感じた人もいます。
こうした奇妙な感覚の持続時間は20秒から長い時には30分にもなり、外交官やその家族が自宅やホテルの部屋にいるときに起こりました。
キューバ政府は独自の調査を行ったものの、原因となるものは特定できなかったとして、攻撃への関与も否定しました。
外交官が聞いた奇妙な音を録音したものもありましたが、キューバの科学者はこれをキューバ原産の巨大なコオロギの鳴き声だと結論づけました。
これに対しアメリカ側は、キューバ政府には犯人を捜す責任があるとして、キューバが外交官の安全を守るというウィーン条約の規定に違反したという理由で、2017年5月に在アメリカのキューバ大使館関係者2名を国外退去処分とし、10月にはさらに15人のキューバ人外交官を退去処分にしました。
アメリカは在キューバの大使館員を減らすとともに捜査を進め、ドナルド・トランプ大統領もキューバ政府がこの攻撃に関与していると信じていると述べました。
しかし、外交官の住居を捜索してもそれらしい装置は見つけられず、犯人の正体も不明のままでした。
2018年6月の時点で、ハバナ症候群による被害者の数は26人にもおよんでいます。
メディアでは、今回の事件について第三国の関与も指摘され、アメリカとカナダへの攻撃に加え、アメリカとキューバの外交関係を悪化させる意図もあったのではといわれ、犯人としてロシア、中国、北朝鮮、イランといった国の工作員の可能性が上げられました。
中国での事件
引用:www.newsweekjapan.jp
2018年初頭、中国のアメリカ領事館職員の間でもキューバで起こったのと同じハバナ症候群の症状が報告され始めました。
最初の事件が起きたのは2018年4月、広州にある中国最大のアメリカ領事館である総領事館で1人の職員が症状を訴えました。
この職員は、2017年後半からこの不調に苛まれていると訴え、アメリカに帰国して精密検査を受け、軽度の外傷性脳損傷と診断されました。
この症状は、キューバで報告された音響兵器を使った(と思われる)攻撃と一致していると判断されました。
アメリカ国務省は、事件の調査を開始するとともに、中国全土の外交官に対して健康に対する警告を発しました。
こちらの事件に関しても、キューバのときと同じく音響兵器による攻撃に可能性も疑われていますが、キューバの時同様に、いったいどのような兵器が使われたのか、また誰が犯人でどのような目的で攻撃を行っているのかについては未だ明らかになっておらず、キューバの事件との関連性も明らかになってはいません。
中国当局による調査も行われたとされますが、キューバ同様、音響兵器による攻撃が行われた形跡は見つからなかったということです。
今回の場合はキューバのケースのように変わった音を聞いたという話もなく、一説によると、超音波を使って会話を盗聴しようとしていたところ、装置の不具合によってこのような現象が起こったのではないかともいわれます。
ハバナ症候群が果たして本当に音響兵器による攻撃なのかは定かではありませんが、もしそうだとすると、音響兵器がどこかの国の諜報機関によってテロ攻撃にように使われている可能性があるということになります。
まとめ
以上、様々な兵器の例をもとに、音響兵器の威力について迫ってみました。
音波を利用して敵を攻撃する兵器というのは、アイデアとして奇抜に見えますが、実現すれば目に見えない音で敵を殺傷できる強力な兵器となりえます。
しかし、実際に開発された音響兵器の例を見てみるとわかると思いますが、その多くは体の不調を起こすものの、実際に人を殺傷するほどの破壊力はもっておらず、ナチスドイツの音波砲のほうが特殊な例であり、それもほぼ失敗に終わったといえます。
音響兵器自体には、人を殺すほどの威力はなく、暴動を抑えたり体に不調を起こしたりと、妨害や嫌がらせといった補助的な兵器として使われるものであるといえるでしょう。
そういった意味では、攻撃的な音響兵器が登場して以降も、相手への脅しのためにスツーカに取り付けられたサイレンや、ストレスを与えるために大音量の音楽をかけるといった使われ方をしていた時代と変わらず、銃や大砲・戦車といった兵器の代わりになるようなものではないといえます。
もちろん将来的には敵を直接殺傷するような音響兵器が開発される可能性もありますし、現代の音響兵器は人間の体に影響を与えることができるのも事実であり、治安維持の目的においては有効性が高く、使用の範囲はこれからも広まっていく可能性は高いと考えらます。