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中国最新J-20戦闘機の実力は!? 性能・戦闘力を徹底解説

みなさんは、J-20という戦闘機を知っているでしょうか。

これはお隣の国、中国が開発した最新のステルス戦闘機で、アメリカ空軍のF-22ラプターやF-35ライトニングなどと同じ第5世代戦闘機に匹敵する性能をもっているといわれています。

しかし、中国の国家体制や中国人民解放軍の秘密主義から、J-20に関してはこれまで多くのことが謎とされてきました。

最初にJ-20の存在が確認されたのもインターネット上の正体不明機の写真でしたし、出回っている情報の量もアメリカ軍機などに比べればずっと少なく不確かなもので、確定情報ではない専門家等による予測なども多くを占めています。

この記事では、そうした限られた情報の中から、厚い秘密のベールに覆われたJ-20の実態について、可能な限り解明していきたいと思います。

J-20戦闘機とは

引用:https://jp.sputniknews.com

J-20(殲-20)または殲撃(ジエンジー:戦闘機の意)20型戦闘機とは、中国航空工業集団公司が中国人民解放軍のために開発した第5世代双発ステルス戦闘機です。

コードネームは「威龍(ウェイロン)」ですが、開発時のコードネームは「鯤鵬」(こんぽう:伝説上の巨鳥)だったともいわれ、こちらは現在大型輸送機Y-20(運-20)のコードネームになっています。

欧米ではChengdu(成都) J-20と表記されることもあり、これはテスト飛行場を所有している成都飛機工業公司の所在地である四川省成都に由来しています。

アメリカのF-22が初飛行した1997年から中国はステルス戦闘機の研究「718工程」を本格化させました。

1999年、コソボ紛争中のセルビアでアメリカ軍のステルス戦闘機F-117ナイトホーク「ヴェガ31」がユーゴスラビア軍によって撃墜されました。

これはステルス機史上唯一の被撃墜事例で、この残骸がセルビア側の手に渡り、ロシアや中国に流れてステルス戦闘機開発の参考になったともいわれています。

2009年には成都飛機工業公司の楊偉技師を中心として設計された技術実証機が完成します。

2010年ごろから軍事サイトに非公式にJ-20と思われる画像が掲載され、その存在が徐々に明らかになりました。

中国では公式発表の前に兵器の画像や情報などがネット上に流れることがあり、非公式とはされているものの、これも中国政府や軍の意向を汲んだものだといわれています。

2011年1月11日には2001号機(2001の番号についてはJ-20の01号機といわれています)が初飛行を行い、その画像や動画は非公式にインターネット上に流れ、世界の軍事関係者を驚かせました。

j-20戦闘機は水平尾翼をもたないデルタ翼の双発戦闘機で、開閉式のウェポン・ベイ(兵器格納庫)をもち、機体には突起物がほとんどないステルス性を重視した設計がなされていて、アメリカのF-22やF-35またはロシアのSu-57といった第5世代戦闘機に匹敵する性能をもつとされる中国初の本格的なステルス戦闘機です。

中国では西側の第5世代戦闘機は四代機と呼ばれ、「四」と「絲帯(リボン)」の発音が似ているため、中国の軍事マニアの間では非公式な愛称として「絲帯」と呼ばれています。

これはJ-20の機体が、胴体が薄く平べったい印象を与えることにも由来しています。

J-20は飛行試験を経て、2016年11月1日に珠海(ズーハイ)航空ショー(エアショー・チャイナ)で2機が飛行し、初の公式お披露目の場となりました。

その後、2017年7月の中国人民解放軍建軍90周年のパレードにも姿を現し、中国空軍の報道官はJ-20について、「空軍の総合作戦能力がさらに引き上げられ、国家の主権・安全・領土を守る神聖な使命を担うのに有益だ」と述べました。

2017年3月にはCCTV(中国中央電視台)が中国人民解放空軍へのJ-20の配備が開始されたと発表し、2018年2月9日、中国空軍はJ-20を前線配備したと発表しました。

J-20の性能

引用:https://www.nextbigfuture.com

J-20戦闘機の推定機体サイズは全長20.3m、全幅12.88m、全高4.45mで、F-22よりは若干大きく、Su-57とほぼ同サイズです。

自重は約17000㎏~19000㎏で、最大離陸重量は36300㎏とみられています。

J-20は、外部燃料タンクをつけず、空中補給を受けなくても、作戦行動半径は2000㎞に達するとみられており、また、4基の2400ℓ増槽を装備したJ-20が試験飛行を行っている様子も確認されています。

主翼は翼端部を切り落としたデルタ翼で、胴体と主翼が一体化したブレンデット・ウィング・ボディとなっていて、これはタイフーンやラファールなど欧州の戦闘機によく見られる形状です。

中国機でも国産機であるJ-10単発戦闘機が採用していて、J-20は機体レイアウトの多くでJ-10の方式を踏襲しています。

機体前部には、上反角をつけた小翼であるカナード(先尾翼)を装備しています。

尾翼は大きく外側に傾いた垂直尾翼が2枚あり、垂直安定板と方向舵が一体となった形式で、カナード翼と同じく全遊動式でヨー操縦を行う仕組みとなっています。

J-20のエンジンは双発で、現在は渦扇10「太行」(WS-10G)(A/B時140kN)を搭載しています。

これは第4世代戦闘機に搭載されていたロシア製AL-31をベースにした国産エンジンです。

2016年2月、香港アジア時報は軍事専門家のコメントとして、「J-20は強力なエンジンを搭載していないため、ステルス戦闘機の『超音速の巡航性能』は発揮できない」と指摘しています。

このため、いずれは新型の渦扇15「峨眉」(WS-15G)(A/B時180kN)に換装し、現在はできないとされている超音速巡行能力を得ることを目指しています。

これを装備すれば、J-20は比較的突出した超音速巡行能力を得るとされています。

現在のところ、新エンジンの開発は行われているようですが、実際に現在のJ-20に搭載されているかどうかは不明です。

中国国内では新型エンジンWS-15Gの開発ドキュメンタリーが製作されましたが、そのなかでも、実際にJ-20にこのエンジンが搭載されている様子は放映されていないようです。

しかし、2017年7月、内モンゴル自治区で行われた軍事パレードに参加したJ-20は既にWS15を試験搭載していたと、複数の専門家が報告しています。

現在のJ-20のエンジンノズルは、従来機のノズルに近い形で、F-22やF-35のようにステルス性を重視したノズル形状にはなっていません。

エア・インテーク(空気取入れ口)は胴体との間に隙間がないダイバーターレス超高速インレットになっていて、これだと速度性能はやや下がりますが、ステルス性能は向上します。

このために、最高速度はマッハ1.8程度にとどまるのではないかという説と、インテークの形状に関係なくマッハ2.5は出るのではないかという説があります。

操縦装置はデジタル式フライ・バイ・ライトとされていて、レーダーは、試作2号機には、タイプ1475(KLJ-5)というアクティブ電子走査アレイレーダー試作品が搭載されていたようです。

センサーとしてはF-35と同じようなEODAS(電子光学分散開口システム)を搭載しているとみられています。

J-20のステルス性能

引用:https://www.chinatimes.com

J-20の大きな特徴としてあげられるのが、機体前部に取り付けられたカナード翼で、これによって空戦時に高い起動性能を発揮できるとされています。

カナード付き無尾翼デルタ機は運動性・超音速性に優れ、デルタ機特有の離着陸時の不安定性を解消するという役割をもっています。

その反面、このカナード翼はステルス性能に関しては大きくマイナスに作用し、前方から来るレーダー波に対して、水平尾翼のように主翼の陰に隠すこともできずに、大きな電波反射源となり、レーダー反射断面積(RCS)を大きくしてしまいます。

セオリーからすれば、ステルス性能を向上させるには、カナードや水平尾翼は前方から見た際には主翼と角度を統一し、機体に「溶け込ませる」必要がありますが、J-20ではそういった措置もとられていません。

そのため、「カナードはいずれ取り外すのでは?」という説もありましたが、最近になって公表された画像でもカナード翼が存在していて、J-20にとってはこれが本来の姿のようです。

また、尾翼の垂直安定板の下には外側に傾いたベントラル・フィン(腹ビレ)がついていますが、これもステルス性のセオリーからは外れるものです。

J-20がステルス面で不利になるカナード翼を採用した理由としては、J-10開発の経験から、これと同じカナード付き無尾翼デルタ機という形状が最も開発リスクの低い実用戦闘機のデザインと判断し、ステルス性を多少犠牲にしたとしても、実際に作戦で使用できるステルス戦闘機を早期に配備することを選んだのではないかという見方もあります。

カナード翼は戦闘機の基本的な飛行性能を左右するような根本的な部位であるため、簡単に外すことはできず、このような苦渋の決断をしたということかもしれません。

このように、J-20のステルス性能については、いろいろと疑問視される点があり、電波吸収素材や各部の細かな処理も長年のノウハウをもつアメリカ軍と同等とは考えにくく、J-20がF-22やF-35と同程度のステルス性を有しているという見方もありますが、全方位に対し、高いステルス性を発揮できるF-22やF-35と違い、J-20が高いステルス性を発揮できるのは正面からのみではないかという説もあります。

2016年8月、アメリカ空軍の参謀総長で現役時はF-117のパイロットでもあったデービッド・ゴールドフェイン大将は米国防省で開いた会見において、J-20のステルス性能について30年前のF-117と同程度で、F-22やF-35とは「比較する意味もない」と一蹴しました。

2018年5月、インド国防研究所が報じたところによると、インド空軍がチベット自治区上空の高空で飛行訓練を行っていたJ-20をインド空軍のSu-30(ロシアのスホーイ社が開発し、インドがライセンス生産している第4世代戦闘機)のレーダーで捕捉したということです。

さらに、J-20がチベット近くの標高の高い地域で離着陸に苦心していたとも報告しています。

インド空軍のアルプ・シャハ司令官は、J-20にステルス性はほとんどなく、通常のレーダーでも探知でき、Su-30のレーダーは高性能で遠距離からでもJ-20を捕捉できると語っています。

この報道に対して中国国営メディアは、J-20はチベットでの飛行訓練など行っておらず、捏造だと批判しています。

しかし、2018年初めに発行された中国人民解放軍の広報誌ではJ-20などの中国軍用機が「高原地区」で離着陸訓練を行う予定であると記載されていて、インド側の情報にはある程度高い信憑性があるとされます。

英国王立防衛安全保障研究所の空中戦の専門家であるジャスティン・ブロンク氏は、Su-30のレーダーはJ-20を捕捉できるだろうと『ビジネスインサイダー(Business Insider)』誌に語っています。

それによると、Su-30のレーダーならかなりの遠距離からJ-20を捕捉、追跡することも可能としながらも、追跡はかなり断続的なものとなり、Su-30 とJ-20の飛行ルートや位置関係に依存するとしています。

ブロンク氏はF-22などと違い、J-20は全方向に対するステルス性をもってはおらず、つまり、ある方向から見るとJ-20はステルス機になりえないと語っています。

J-20のステルス性能は前方が最も高く、もし中国がインドに向けて真正面以外からJ-20を向かわせれば、Su-30のレーダーはJ-20をより簡単に捕捉するだろうとしています。

一方で、中国は平時にJ-20にレーダー反射板を装着してレーダーに映る姿を拡大し、本来のステルス性能を隠蔽している可能性もあるとしています。

F-22やF-35も訓練の際には安全対策を兼ねて、ステルス性能を落とすマーカーをつけて飛行しており、今回のJ-20もそうであったなら、「インドは次回、想定外の驚きに直面するかもしれない」と指摘しています。

J-20のステルス性能はいまだ不明確な部分も多く、これからの活躍を通じて徐々にそのベールが剥がれてくるものと考えられ、多くのアナリストは現時点ではF-22には及ばないと分析していますが、Military Watch Magazineのチーム・エディターであるアブラハム・エイト氏のように、「すぐにF-22を上回るかもしれない」という見方もあり、今後も軍事関係者の注目を集めるところだといえます。

J-20の兵装

引用:https://s.webry.info

オーストラリアの国防専門家であるカーロ・クーパー氏とピーター・ガン氏によると、J-20は高い空戦能力に加えて対地・対艦攻撃能力も備えており、戦闘爆撃機としても使用可能な、多様な任務を遂行できるマルチロール機とされています。

J-20は胴体下に主兵器庫1つと胴体左右に1か所ずつの側面兵器庫をもっています。

主兵器庫には4つ、側面兵器庫にはそれぞれ1つずつの搭載部があり、ミサイルまたは爆弾6発を機内搭載できるとされます。

装備できる兵装は、短射程AAMとしてイスラエル製のパイソンミサイルを中国がライセンス生産したPL-8(霹靂8)(射程15㎞)やセミアクティブレーダー誘導ミサイルのPL-10(霹靂10) (射程15㎞)、中射程AAMのPL-12(霹靂12)(射程70㎞以上) とPL-15(霹靂15)(射程400㎞)、長射程AAMのPL-21(霹靂21)(射程200~400㎞)、誘導爆弾のLS-6(雷石6)、雷霆レーザー誘導爆弾、飛騰GPS誘導爆弾などマルチロール機として幅広い兵器を運用できるとみられています。

ウェポン・ベイのほかに、主翼下に計4か所のハードポイントが設けられており、4か所の合計ペイロードは8tとされます。

J-20の量産と配備

引用:https://sputniknews.com

J-20の1機あたりのコストは約1億1000万ドル(約125億円)程度と見積もられ、F-22(約195億円)とF-35の9460万ドル(104億円)のあいだくらいの位置となります。

これをどう見るかはJ-20が実際にどれほどの性能をもっているかによりますが、J-20は頻繁にアップデートを行っていて、電子機器の拡張や兵器格納庫の変更やステルスコーティングの更新などを進めていて、価格・性能ともにこれから変化していく可能性があります。

F-22が実戦配備から13年を過ぎてもまだ第2弾の改良を追えていないのと比べると、その改良ペースはかなりのものといえます。

J-20は技術検証機の2001号機と2002号機、地上強度試験機である2003号機と2004号機(2004号機は2002号機からの改造)が製造され、原型機は2011号機~2013号機、2015号機~2017号機、2021号機、2022号機の8基が製造されたとみられています。

量産型については現在までに20機程度が生産されているのではと予想されています。

技術実証機は前面黒塗装に国籍標識が赤黄で塗られていましたが、量産機は実戦的なロービジ(low visibility/低視認性)塗装が施されており、F-22のような全面グレー系の塗装に、国籍標識も白で塗られるようになっています。

2018年9月6日、韓国の中央日報はJ-20が今年末にも量産体制に入る見込みと報じ、9月9日にはRecord Chinaにより年間の生産機数は40機程度になると報じられ、これから本格的な量産体制に入っていくものと思われます。

そして、J-20の配備先としては山東半島の基地に配備するのではという見方が強まっています。

これについては中国国内の世論から落胆の声も上がっており、というのも、J-20は中国が台湾やベトナム、フィリピン等東アジア諸国との領土紛争を抱えており、尖閣諸島にも睨みをきかせる、南沙諸島や西沙諸島に配備されるのではないかと思われていたからです。

これらの諸島の多くは中国が強大な軍事力を背景に実効支配をしていて、人工島に滑走路や格納庫などの施設を建設し、海空軍の軍事基地化を進めています。

中国国内でも一般には、J-20が当然にこの地域に配備され、中国の軍事パフォーマンスをさらに向上させるものとみられていたようです。

2018年2月21日、中国の大手ポータルメディアサイト『捜狐』は在日米軍への対抗は南シナ海方面への対応よりも戦略的に重要であり、正しい措置と評する論評を発表しました。

この中で、アメリカがアジアで重点を置いているのは韓国と日本であり、特に日本には第7艦隊司令部があり、中国にとって本当に脅威となるのは米日・米韓の同盟であるとしています。

中国空軍が本当に在日米軍に対抗するためJ-20を山東半島に配備しようとしているのかはわかりませんが、山東半島の最南端は韓国の仁川から海を隔ててわずか90㎞の距離にあり、ここにJ-20を配備すれば韓国の全域と日本の大部分が作戦行動空域となり、米軍がF-35を配備する岩国基地(山口県)もこのなかに含まれると指摘されています。

南シナ海方面についても、J-20は現在海上での飛行訓練を行っているとされ、将来的にはこちらにも配備されることが考えられます。

まとめ

以上、謎に包まれた中国戦闘機J-20について紹介してきました。

J-20に関してはいまだわからないことが数多く存在していて、今後も明らかになる情報は限られたものになると思われます。

中国がはじめて開発した本格的なステルス機ということで、その性能を疑問視する声もありますが、その実態がわからない以上、侮ることもできません。

アメリカ空軍ではJ-20の大量配備に備えてF-22の生産を復活させるべきかが問題とされていて、もしかすると、J-20が将来アメリカや日本の戦闘機の強力なライバルとなるかもしれません。

今後も、J-20は世界からの注目を集める戦闘機となるでしょう。



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