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世界最強の海兵隊ランキングTOP10

「海兵隊」と聞けば、多くの人は一番にアメリカ海兵隊を思い浮かべるのではないでしょうか。

アメリカ軍の尖兵となる殴り込み部隊、荒くれ者の海兵隊員というのが海兵隊のもつイメージかもしれません。

海兵隊とは主に水陸両用作戦を任務とする組織を指し、その代表はなんといってもアメリカ海兵隊ですが、実は世界60か国以上の国々で海兵隊と名の付く組織やそれに類する水陸両部隊が存在しているのです。

その中にはアメリカ海兵隊のように国外への派遣を前提とした部隊もあれば、長い海岸線や島嶼をもつ国で海からの侵攻に備えた国土防衛を担っている部隊もあり、その国によって目的に応じた様々な「海兵隊」が存在しています。

今回は世界中のバリエーション豊かな海兵隊の中でも最強と言われる10ヶ国の海兵隊をご紹介します。

 

海兵隊と海軍の違い


一見、海兵隊と海軍は同じ組織のように思われる方もいるかもしれません。

「海兵隊」は「海軍」の中の一つの組織では?、「海兵隊」という「海軍」の別称なのでは?と誤解している方も多いと思います。

そこで、海兵隊のランキングをご紹介する前に、海兵隊と海軍の違いを解説します。

まず、海軍は多くの人がイメージしているように戦艦や潜水艦などで海上で戦う軍隊のことです。

そのための艦艇を操ったり、艦艇から砲弾を撃ち込んだり、ミサイルを発射したりして敵と戦います。

それに対して海兵隊は、陸戦兵器の取り扱いを専門としており、主に艦船で敵地に輸送されて、沿岸などから敵地に上陸することを専門とする軍事組織のことです。

戦争が起こった際に一番最初に戦場に送り込まれる軍隊でもあります。

海兵隊を保有している国は限られており、所属や規模、任務は各国ごとに微妙に異なります。

ちなみにアメリカでは、陸軍、海軍、空軍の3軍とは全く別の、4番目の独立した軍隊として「海兵隊」が組織されています。

 

10位 ブラジル海兵隊

引用:http://www.kjclub.com/jp

ブラジルに海兵隊、というイメージはないかもしれませんが、現在のブラジル海兵隊はブラジル海軍に属し、南米最大の規模を誇っています。

その歴史は古く、ナポレオン戦争時に、南米でのさらなる植民地拡大を目論むフランスにより1808年に創設されたポルトガル南米植民地警備部隊にまで遡ります。

1822年にブラジルが独立を果たした時、海兵隊もともに独立し、第二次大戦中は欧州に派遣されてイタリア戦線で戦ったこともある由緒ある部隊です。

人員は約14600人の1個師団規模で、第1海兵師団は上陸作戦などを受け持つ第一線の部隊で、アメリカやスウェーデン、フランス製の輸入兵器を装備しており、また、オーストリア製の軽戦車の改修型を装備した戦車大隊もそなえています。

また、なんといってもブラジル海軍は現在空母を運用している世界でも数少ない海軍の1つで、他にもフリゲート10隻、潜水艦5隻、両用戦艦5隻など、他国から中古で購入した旧式が多いものの、南米最大の充実した戦力を誇ります。

空母サンパウロはもともとフランス海軍の空母を購入したもので、攻撃機12機に加え、最大40機のヘリを搭載でき、強襲作戦の母艦として運用可能な海兵隊にとって頼もしい存在です。

ブラジル海兵隊の最大の特徴として、世界最大の流域面積を誇るアマゾン川やラプラタ川水系などブラジルの国土を流れる大河の防衛のため、海兵隊が河川戦部隊をもっていることです。

河川戦部隊は国境警備隊も兼ねており、ブラジル海軍は河川専門の艦隊をもっていて、その筆頭である河川砲艦パルナイバは76㎜砲を装備し、1937年建造という老兵ながら2500kmを2週間で哨戒できる航行性能を有し、現在も重宝されています。

 

9位 フィンランド ウーシマー旅団

引用:https://ja.wikipedia.org

スカンディナビア半島に位置し、北欧三国と呼ばれるスウェーデン、ノルウェー、フィンランドはそれぞれ海兵隊を有しています。

三国とも海兵隊という名称は用いず、水陸両用部隊や沿岸猟兵などの呼称を使っています。

北欧諸国は長い海岸線やフィヨルドの複雑な地形をもっており、これらはアメリカ海兵隊のように上陸作戦を主とする軍隊とは異なり、自国の沿岸防衛を主任務としています。

フィンランドの海兵隊は現在、北欧において最大の規模を誇ります。

もともとはスウェーデンが北欧最大の水陸両用部隊をもっていましたが、冷戦後、沿岸要塞の閉鎖や部隊の廃止など軍縮を行いました。

一方、ロシアと国境を接し、かつては侵攻を受けたり領土を割譲させられた歴史をもつフィンランドは合理化を行いつつも部隊の縮小には慎重で、結果として、フィンランドが北欧最大の兵力となったのでした。

フィンランドの水陸両用戦部隊はウーシマー旅団といい、ウーシマー県に駐屯することからこの名で呼ばれます。

ウーシマー旅団は沿岸防護部隊で、その歴史は古く、スウェーデン王グスタフ2世によって1626年に設立されたニューランド連隊にまで遡ることができます。

なお、部隊所在地にはスウェーデン語話者が多いため、部隊内ではスウェーデン語も使用されています。

ウーシマー旅団の兵員数1500名で、歩兵である沿岸猟兵部隊や浅海域での機雷対処や障害除去を行う工兵部隊などで構成されます。

37ノットの高速で兵員22名を輸送できるユルモ級高速揚陸艇30隻、その他の上陸用舟艇70隻を装備し、有事の際には即座に部隊展開を行うことが可能です。

 

8位 タイ海兵隊

引用:https://commons.wikimedia.org

タイ王国はインドシナ半島のほぼ中央に位置する国です。昔から「東西の十字路」と呼ばれ海上交易で栄えてきた反面、欧米諸国の植民地獲得競争が激しかった時代には常にその脅威を受けてきました。

しかし、歴代の国王の外交手腕や地理的な要因により、一度も植民地になることなく現在まで独立を保ち続けてきました。

タイにとって昔から海上交通の安全は重要な関心事で、伝統的に海軍が重んじられ東南アジアでは最大の規模を誇っており、空母を運用している数少ない国の1つです。

海兵隊の歴史も古く、1833年にラーマ3世の命令により、それまでの海賊対策部隊が、イギリス海兵隊に範をとって独立したのがはじまりです。

1951年からアメリカ海軍・海兵隊の支援のもと、水陸両用作戦能力を強化し、揚陸艦と上陸用舟艇による強襲揚陸能力をもつ部隊へと改編され、朝鮮戦争やベトナム戦争にも派遣されて精強な海兵隊として成長していきます。

タイ海兵隊は1個師団編成の兵力は約23000名で、王室をもつタイらしく9個あるライフル大隊のうちローテーションにより常時1つが王宮近衛兵任務につきます。

また、タイ原産の高級木材ローズウッドの不法取引を摘発することも重要な任務です。

タイ海兵隊はM4カービン銃などアメリカ海兵隊の影響を強く受けた兵器を装備していて、アメリカ製の水陸両用車両AAV-7も36両保有し、アメリカ海兵隊とも継続的な訓練を行ってきたことから水陸両用戦に関して高いノウハウをもっています。

また、タイ海軍にはアメリカのネイビー・シールズにならった海軍特殊作戦部隊タイシールズも存在します。これはアメリカ海軍ダイバー部隊(のちのネイビー・シールズ)とアメリカ海兵隊の支援のもと創設されたもので、潜水爆破や水路進入、高高度空挺降下などを行います。

 

7位 フランス陸軍海兵隊

引用:https://fr.m.wikipedia.org

海兵隊という呼び名はもともと、帆船時代に接舷斬り込みをかける船舶兵を指していて、それが時代とともに植民地警備部隊、さらには水陸両用戦部隊指す言葉として変化していきました。

そのため、特に欧州には伝統的な名称として「海兵隊」の名前を冠している部隊が多数存在しており、その典型がフランス陸軍海兵隊です。

フランスはかつて、北アフリカからアジア、中南米に至る広大な植民地を有していました。

フランス海兵隊は1622年当時の宰相リシュリューによって創設されたもので、当初は艦上勤務を主とする船舶兵でしたが、やがて植民地警備を主任務とするようになり、1900年にはついに陸軍に移管されました。

第二次大戦後、各植民地が次々と独立していったあとも、フランスには旧宗主国としてこれらの国々の近代化にも責任を負っているという考えがあり、特に、旧植民地諸国の安定化のため軍事的援助は惜まず、海兵隊はその中核を担います。

現在のフランス海兵隊は旧植民地諸国の駐留部隊がこれらの独立とともに帰国し、陸軍の部隊として存続しているというもので、フランス軍には猟兵や狙撃兵、竜騎兵といった伝統的な部隊の呼び名が今でも残っていて、海兵隊もその1つといえます。

名称こそ海兵隊ながら、実質は両用戦部隊というよりふつうの地上軍とほとんど変わらない編成となっていますが、旧植民地への防衛責任を負っているため、外征型の軍隊であり、そういう点ではアメリカ海兵隊と似通っています。

フランス海兵隊は18000名の規模で、旅団制で、即応性の高い空挺旅団やルクレール戦車を装備した強力な戦車旅団も存在します。

また、ポリネシアやニューカレドニアなどの海外領土やアフリカのジブチやセネガル等旧植民地に駐留している部隊もあり、かつての植民地防衛任務を受け継いでいて、海外領土に展開している部隊に関しては現地住民も入隊することができます。

また、フランスには海軍のコマンドー部隊も存在し、こちらは陸軍の海兵隊と違い、特殊部隊の性格が強く、上陸作戦において上陸用舟艇の誘導や陸軍海兵隊と連携しての沿岸部確保、原子力艦艇の防護や搭載核兵器の保安、臨検や対テロ海上阻止などの任務にあたります。

 

6位 イタリア サン・マルコ海兵旅団/ラグーン両用戦連隊

引用:https://en.wikipedia.org

イタリアには海軍の「サン・マルコ海兵旅団」と陸軍の「ラグーン両用戦連隊」という二つの水陸両用部隊が存在していて、国際的安全保障を任務とする海外派遣用の「海兵旅団」とイタリア本国の沿岸防衛を担う「両用戦連隊」というように、この二つの役割は攻守で明確に分かれています。

サン・マルコ海兵旅団の歴史は1713年サルデーニャ王国のサヴォイア家船舶親衛部隊にまで遡り、その後、イタリア統一戦争や第一次大戦、第二次大戦ではイタリアの降伏後も枢軸側に残って戦い続け、勇猛さで知られました。

旅団の兵力は3800名で、3つの連隊からなり、第1連隊は独立した作戦行動が可能な部隊で、第2連隊は海軍艦艇とともに行動してヘリや高速艇での緊急展開が可能で臨検などの海上阻止行動も担う部隊、第3連隊は基地警備部隊となっています。

イタリア海軍はジュゼッペ・ガリバルディ、カブールという2隻の軽空母をはじめ、サンジョルジョ級揚陸艦など地中海において有数の海軍で、その上陸作戦能力も高いとみられます。

一方のラグーン両用戦連隊は、イタリア陸軍第1軍団の緊急展開部隊ポッツォーロデルフリウーリ騎兵旅団に所属する部隊です。

もともとは海洋都市国家ヴェネチィアにおいて、その多島海域を防衛するために1192年に創設された由緒ある部隊で、海兵隊というより離島防衛部隊という性格をもっていました。

近代に入りオスマントルコ帝国の脅威が高まると、ヴェネツィア防衛の要となり、現在も同市に駐屯していて、必要な時に全国へと展開する機動運用部隊です。

現在は上級部隊であるポッツォーロデルフリウーリ騎兵旅団の水陸両用戦担当部隊といった位置づけで、銃器類では共通して使用しているものも多く、どちらもアメリカ製のAAV-7水陸両用強襲車を運用するなど装備の面で似通っており、こうした部隊が求められる背景には、長大な海岸線と多数の島嶼をもつイタリアにおいて水陸両用作戦のすべてを海軍だけに一任するのは難しいという事情もあるようです。

 

5位 イギリス海兵隊

引用:https://www.royalnavy.mod.uk

イギリス海兵隊は1664年に陸軍ロードジェネラル近衛歩兵連隊を改編し、艦上での指揮官の身辺警護や艦内の治安維持を目的として創設されました。

その後、国王ジョージ3世によって現在の名称に改められ、スペイン、ポルトガル、フランスに続いてヨーロッパで4番目に古い歴史をもちます。

1805年のトラファルガル海戦では接舷戦闘により18隻の敵艦を制圧など偉大な戦歴をもち、イギリスの海外領土拡大とともにその組織と任務も拡大していきました。

旧日本海軍の陸戦隊もイギリス海兵隊を手本として編成されていました。

第二次大戦中には80000名を超えていたイギリス海兵隊も、7600名の規模となっています。

「Per Mare Per Terram(海に、陸に)」をモットーとするイギリス海兵隊は、コマンドー課程としてアメリカ軍のレンジャー部隊に相当し、要員選抜では事前選抜と選抜教育により応募者の9割が脱落するという精鋭集団です。

海兵隊は歩兵部隊であるコマンドー部隊や砲兵部隊のほか、ヘリ18機からなる飛行隊などで構成され、また、スウェーデン製のBvS-10という前後2両のジョイント連結型構造をもつユニークな外見の装甲車両を採用しています。

イギリス海軍にはヘリ18機と揚陸艇4隻、兵員830名、車両40両を搭載できる強襲揚陸艦オーシャンとヘリ空母イラストリアスを保有していて、高い輸送能力と上陸支援を行うことができます。

上陸作戦の際は、まず第539襲撃中隊が上陸地点付近を潜入偵察し、沿岸監視網を無力化するなど上陸に必要な条件を整えることになっています。

この第539襲撃中隊はイギリス海兵隊が大活躍したフォークランド紛争の際に臨時編成されたものがのちに常設化されたもので、海兵隊の露払いを担います。

そして、オーシャン、イラストリアスをともなった第1突撃任務群が海岸線における揚陸戦闘を指揮し、揚陸艦との共同戦闘を行います。

イギリス海兵隊はアメリカ海兵隊と同様に世界中への派遣を念頭においていて、2003年のイラク戦争への派遣をはじめとして、2007年にはアフガニスタンでタリバンとの戦闘を行い、2000年のシエラレオネにおいては武装勢力によって孤立したPKO部隊の救出と武装勢力制圧をわずか100時間で成功させるなど海外においてもその能力の高さをあますことなく発揮しています。

また、近年では海を挟んだ隣国のオランダ海兵隊との連携を深めていて、「UK(イギリス)/NL(オランダ)上陸部隊」と呼ばれるほど技術・装備などの共通化が進んでいます。

 

4位 大韓民国海兵隊

引用:https://jp.sputniknews.com

韓国の海兵隊である大韓民国海兵隊は、1949年に創設された沿岸警備部隊を始祖としています。

初代司令官の申鉱俊は戦時中満州国軍の将校をつとめていた人物で、当初は装備も旧日本軍のものを使った間に合わせでした。

朝鮮戦争が勃発すると、いくつかあった警備隊が統合されて海兵第1連隊が誕生します。

朝鮮戦争で韓国海兵隊は5倍から13倍という数で勝る共産軍を相手に奮戦し、勇猛さを知られるようになり、このときから海兵隊は韓国軍最強の精鋭部隊となりました。

その後、砲兵や装甲車両、航空部隊などが整備されていき、休戦後も続けられていた北朝鮮特殊部隊による浸透作戦に対処していました。

1965年からはベトナム戦争にも参戦し、戦闘での損害比36:1という圧倒的な戦果を上げ、北ベトナム軍を苦戦させました。

しかし、一方で海兵隊は現地で民間人の虐殺や強姦事件を起こしたとされ、戦後まで問題を残すこととなりました。

1987年、海兵隊は海軍の一部という運用は維持しつつ、独自の教育体系と本部をもつ組織となり、現在の兵力は約28000名となっています。

第1師団(海龍師団)、第2師団(青龍師団)、第6旅団(黒龍旅団)、そして、2015年に済州島に新たに配備された第9旅団(白龍旅団)からなります。

韓国海兵隊の任務は、休戦状態にある朝鮮戦争が再開された場合に北朝鮮領内に上陸を行い、国家の分断状態を解消するというもので、有事の際には在韓米軍と共同して北朝鮮の首都平壌を攻略する作戦計画が準備されていて、上陸地点についても事前に検討が進められるなど他国の海兵隊と比べてより具体的な上陸作戦のビジョンをもっているといえます。

韓国海兵隊は主力のK1戦車やAAV-7の韓国ライセンス生産版であるKAAV-7、K9自走榴弾砲など優れた装甲戦力を装備していて、揚陸艦には韓国唯一の強襲揚陸艦独島(ドクト)に戦車揚陸艦4隻に加え、独島級の2番、3番艦も配備予定とされています。

2018年現在、韓国と北朝鮮のあいだには融和ムードが広がっていて、長い間休戦状態だった朝鮮戦争を本格的に終結させるという話も出ていて、もしそうなったときには、北朝鮮への上陸作戦を主目的とする韓国陸戦隊も、組織の在り方や目的について変化を迫られるかもしれません。

 

3位 中国海軍陸戦隊

引用:http://www.atimes.com

中国海軍陸戦隊は、中国人民解放軍海軍の5つの兵種のうちの1つで、即応戦力は12000名ですが動員可能兵力や基地警護部隊等を含めれば全体で40000名ほどの戦力となるアジア最大の水陸両用戦部隊です。

中国陸戦隊は第二次大戦終結後の国共内戦において、長江をはじめとする中国国内の河川や湖沼で行われた渡河作戦用の専門部隊から始まりました。

最初は、上陸作戦といっても河川の対岸に渡ることを主眼としていた部隊で、台湾に逃れた蒋介石を追って実施された金門島上陸作戦では上陸部隊が全滅するという大失態を演じています。

その後も蒋介石軍との間で幾度かの島嶼戦を経験した共産党軍は、渡河作戦と上陸作戦がまったくの別物であるということを思い知り、本格的な水陸両用部隊の建設に着手しました。

新編された海軍陸戦隊は台湾への本格的な上陸作戦を行う部隊となるはずでしたが、その矢先、台湾がアメリカとの相互防衛条約を締結したことで中国による台湾上陸作戦は事実上放棄され、内戦は沈静化することとなり、陸戦隊も一度は解体の憂き目を見ます。

しかし、1979年にベトナムとのあいだで中越戦争が勃発すると、以前から領有権問題のある南沙諸島への進出を視野に水陸両用作戦の重要性が再認識され、陸戦隊も再編成されることになったのでした。

現在の中国海軍陸戦隊は海軍の組織化にあるものの、独自の教育体系をとる独立性の高い組織で、とくに2000年代からは、それまでの旧態依然とした揚陸艦や上陸用舟艇などを改め、艦艇や装備の近代化を進めてきました。

西沙諸島や南沙諸島などを防衛する南海艦隊に1個旅団、台湾海峡や東シナ海、黄海を防衛する東海艦隊に2個旅団が置かれています。

近年では沿岸から離れた海域から行う超水平線作戦による上陸に重点が置かれているため、アメリカの開発した海兵遠征車に対抗するために造られた世界トップクラスの両用戦車である05式両用戦闘兵車をはじめとして、両用戦車、両用装甲兵車、両用自走砲など機械化された強力な両用装備をもっています。

海軍の水陸両用戦闘艦艇も1990年代後半からLST(戦車揚陸艦)を大量建造し、それまでの旧式艦を更新するとともに、ドック型揚陸艦の建造も始め、現在では強襲揚陸艦の配備計画が進められています。

中国陸戦隊にとってのネックは空中戦力で、これは中国軍全体にもいえることで、ヘリコプターの保有数が十分とは言えず、陸上自衛隊の10倍以上の規模をもつ中国陸軍でも陸自とほぼ同数のヘリしか保有していません。

陸戦隊も配備ヘリの不足は弱点であり、本格的な上陸作戦を行う際には、上陸部隊への空からの支援に不安が残ります。

また、中国には陸軍にも水陸両用戦部隊が存在していて、広州軍区の第41集団軍がそれにあたり、こちらも強力な水陸両用戦車などを装備しており、海軍と共同で陸戦隊の支援にあたり、第2波の増援部隊としての役割を果たします。

中国は近年、太平洋へと積極的に進出していく政策を推進し、空母をはじめとする海洋戦力の増強につとめており、海軍陸戦隊もこれからさらに重要な戦力として拡大されていくとみられます。

 

2位 ロシア海軍歩兵

引用:https://www.veteranstoday.com

ロシア海軍歩兵はロシア海軍配下の水陸両用戦部隊です。

胸元からチラリとのぞくテルニアシュカと呼ばれる青縞模様のアンダーシャツは、水兵服をもとにした海軍歩兵のトレードマークで、空挺部隊も若干色が薄めのものを着用しています。

海軍歩兵と空挺部隊出身者が多数を占める特殊部隊スペツナズも訓練のときにはテルニアシュカを愛用しているそうです。

その歴史は古く、1705年ピョートル大帝によって編成され、当時の海戦で主流だった敵艦戦への斬り込みと白兵戦用の部隊として勇猛さを知られました。

その後いくつもの戦いで善戦を重ね、露土戦争やナポレオンのロシア遠征、クリミア戦争のセヴァストポリ要塞防衛線、また日露戦争では旅順要塞で日本軍と戦いを繰り広げ、要塞の陥落直前まで戦い続けました。

第二次大戦では、大陸での戦いが主であり本格的な上陸作戦はなかったものの、200回近くの渡河作戦を行い、オデッサやセヴァストポリの防衛線では白兵戦で勇敢に戦い、海軍歩兵の着用する黒のコートから「黒い死」と呼ばれドイツ軍に恐れられました。

終戦後、地上軍に編入されて一度は解体されますが、冷戦によって1960年代に再編成されて水陸両用作戦部隊として整備され、アフガニスタンやチェチェン紛争などでも戦っています。

その後のソ連崩壊によって、経済危機から国防費が削られる中でも海軍歩兵と空挺部隊は一定の戦力が維持され続けてきました。

そして、2000年代に入ると、国内経済の復活とともに「強いロシア」を唱えるプーチン政権はロシア軍の強化に邁進し、海軍歩兵も急速な近代化が進められてきました。

ロシア海軍は、海軍最大規模の北海艦隊、バルト海に配備されたバルチック艦隊、クリミア半島に駐屯する黒海艦隊、カスピ海沿岸のエネルギー地帯を防衛するカスピ海艦隊、極東を防衛する太平洋艦隊の5つの艦隊から構成されており、海軍歩兵もそれぞれに旅団・連隊規模で配備されています。

バルチック艦隊には、海軍歩兵で唯一「親衛」を冠する第336親衛海軍歩兵旅団が所属しており、これまでソ連邦英雄やロシア連邦英雄を輩出してきた海軍歩兵の筆頭といえる精強な部隊です。

海軍歩兵は水陸両用戦車に加えてT-90、T-80などの主力戦車も装備し、BTR-80装輪装甲兵車や自走砲、Mi-24攻撃ヘリなどの戦闘ヘリといった強力な装甲・空中戦力をもっています。

ただ、揚陸艦については、フランスから最新型のミストラル級強襲揚陸艦を2隻購入することが決まっていて、「ウラジオストク」「セヴァストポリ」と命名される予定でした。

しかし、2014年のクリミア紛争からフランスが引き渡しを延期すると表明し、2015年8月には正式に引き渡しの中止が決定してしまいました。

これを受けてロシアでは新型揚陸艦の建造を計画しているようですが、そもそも自国生産よりメリットがあると考えたから外国からの購入を決定したはずで、イチから建造するとしてもそう簡単な話ではないと思われます。

少なくとも、2015年までに大型揚陸艦2隻を調達するという計画は頓挫しており、戦力拡大と近代化を目指すロシア海軍と海軍歩兵にとって躓きといえるでしょう。

 

1位 アメリカ海兵隊

引用:https://www.military.com

アメリカ海兵隊は陸・海・空軍に次ぐアメリカ第4の軍隊と言われています。

アメリカ海軍の隷下部隊という位置づけにはなっていますが、独自の予算をもち、装備品もヘルメットひとつとっても独自のものを使い、海兵隊の長は陸・海・空軍と並んでアメリカ軍の最高機関である統合参謀本部の一員となります。

世界中に海兵隊やそれに類する組織はたくさんありますが、アメリカ海兵隊ほどの独立性をもった組織は他に例がなく、世界中でほぼ唯一の、海兵隊のなかの海兵隊といえるでしょう。

アメリカ海兵隊は本土の防衛が任務に含まれていない外征専用部隊であることから、しばしば「殴り込み部隊」などとも呼ばれます。

今でこそ、海兵隊=アメリカ海兵隊とイメージされるほどの存在になったアメリカ海兵隊ですが、実は設立当初から何度も組織としての価値を問われていて、幾度となく解散の危機に立たされてきた組織でもありました。

アメリカ海兵隊はアメリカ独立戦争中に、イギリス軍と戦うために酒場で人員を募集したことがはじまりで、「タン・タバーン」というこの酒場は今も海兵隊誕生の地とされています。

しかし、このときの創設理由もただ単にイギリス軍に海兵隊という組織が存在していたためにそれと同じものをアメリカでも作ろうと考えたからで、なにか海兵隊を運用する特別な目的があったわけではありません。

海兵隊はその後、トリポリ戦争や米墨戦争、第一次世界大戦で勇敢な戦いぶりを見せたものの、特に大規模な上陸作戦等を行ったわけでもなく、その活躍についても陸軍でも同様のことができると考えられ、第一次大戦後の国際的な軍縮の流れの中で、予算削減を目的として解散も議論されるようになります。

しかし、海兵隊は陸海軍と並立して別の組織を設置するという法律が制定されていたため、アメリカ軍独自の判断で解散させることはできず、なんとか組織を保っていました。

そんな逆境の中、海兵隊にとって光明となったのは仮想敵国日本の存在でした。

第一次大戦後、日本が中部太平洋の島々を委任統治領として保有したことで、アメリカではもし日本と戦争になった場合、要塞化されたこれらの島々を奪取するための上陸作戦が不可欠であると考えられ、海兵隊の存在がクローズアップされることになったのです。

そして、実際に太平洋戦争が始まると、海兵隊への評価は180度転換することになりました。

戦争中、海兵隊は太平洋の島々で幾度も大規模な上陸作戦を成功させ、アメリカの勝利の原動力となりました。

こうして、海兵隊は自他ともに認める精鋭集団として、アメリカ軍の中で確固たる地位を築くこととなったのです。

第二次大戦後も、朝鮮戦争の仁川上陸作戦、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争など、アメリカの行った戦争や大規模軍事行動において常に最前線に投入されてきました。

現在のアメリカ海兵隊は現役18万名、予備役4万名の規模を誇り、M1A1戦車やAAV-7水陸両用強襲車といった装甲戦闘車両をはじめ、戦闘ヘリだけでなく最新型のF-35Bを装備した独自の航空部隊ももっており、規模・装備兵器ともに他国の海兵隊を凌駕します。

アメリカ海兵隊にはすべての海兵隊員はライフルマンであるという基本思想をもっており、あらゆる職種・階級の隊員を対象として定期的にライフル検定が行われ、戦闘機のパイロットを含めて全員がこれに合格しなければなりません。

また、海兵隊はすべてが戦闘員であるという考えから、国際法上戦闘に参加できない衛生兵という職種をあえて設けていません。

アメリカ海軍は強襲揚陸艦を中心とした7つの揚陸即応群(ARG)をもっており、それを常に複数個ずつローテーションで世界展開し、海上に遊弋させています。

揚陸即応群は強襲揚陸艦1隻を中心とし、これに輸送揚陸艦、1万トン級の揚陸艦、で構成されていて、2006年からはこれに攻撃型原子力潜水艦が加わっています。

実際の作戦行動時にはさらにイージス巡洋艦、駆逐艦が随伴し、艦体を護衛します。

ひとつの揚陸即応群にはひとつの海兵遠征部隊(MEU)がセットになっていて、これは海兵大隊を中心に機甲・砲兵部隊や航空部隊を組み合わせた独立した戦闘単位として行動できる部隊です。

強襲揚陸艦1隻にはヘリ約24機、攻撃機6機、上陸用舟艇4隻、戦車・水陸両用車・トラック等車両が200両、そして海兵隊員約2000名を搭載することができ、輸送揚陸艦には海兵遠征部隊が15日にわたって独力で活動できる大量の物資が搭載されています。

揚陸即応群は出撃命令から5日以内に地球上の75%の沿岸地域に対して6時間以内に水陸両用作戦を展開できる能力をもっており、世界で米国のもつ軍事プレゼンスに絶大な力を発揮し、有事の際にはいついかなるときも迅速かつ強力な軍事作戦を実施できる最強の殴り込み部隊です。

アメリカと敵対する国家にすれば、空母部隊よりも実際に領土に侵攻してくる海兵遠征部隊のほうが脅威なのではないでしょうか。

さて、このように強大な兵力をもつアメリカ海兵隊ですが近年では、AAV-7の後継として開発されていた遠征戦闘車が開発費高騰を理由に開発中止となったり、最新型のアメリカ級強襲揚陸艦が調達費用高騰を理由として当初ウェル・ドック(艦尾に設けられる注水して上陸用舟艇を発進させられるドック式格納庫)を設けない仕様となっていたのが、揚陸能力の低下を危惧した海兵隊からの要望で3番艦からはウェル・ドックを装備することになったりと、装備品の調達において迷走がみられます。

世界最強のアメリカ海兵隊といえども予算という敵には苦しめられているようです。

 

まとめ

以上、世界の海兵隊ランキングをご紹介してきました。

やはり1位はアメリカ海兵隊という結果になりましたが、どの国にも様々な歴史をもち、それぞれの国の事情にあわせた海兵隊が存在しているのをご覧いただけたと思います。

そして、2018年3月ついにこの日本でも、陸上自衛隊に「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団が誕生して、ここで紹介した国々の仲間入りをしました。

主に島嶼や離島などを防衛するための部隊で、今はまだ発足したばかりですが、島国である日本にとって必要な部隊だと思いますし、これから日本の国土防衛に合わせた日本独自の「海兵隊」となっていくことでしょう。

将来、このランキングを作り直すとしたら、きっとそのなかに「日本版海兵隊」も加わることだろうと思うと、今からその発展が楽しみです。



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