水深数百mという海底深くを誰にも見つかることなく進むことが出来る潜水艦は各国が秘密裏に開発を進めており、その実態の多くは謎に包まれています。
そんな中、世界トップクラスの軍事力を誇る国々から注目されている潜水艦が日本にあるのを皆さんはご存知でしょうか?
今回は世界各国が保有する世界最強クラスの通常動力型潜水艦(原子力潜水艦は除く)をご紹介します。
世界最強の原子力潜水艦についてはこちら
コリンズ級潜水艦(オーストラリア)
コリンズ級潜水艦はオーストラリア海軍の通常動力型潜水艦である。
設計はスウェーデン海軍の潜水艦を設計していることで知られるコックムス社で、本艦級はスウェーデン海軍のヴェステルイェトランド級等を参考にしている。
兵器は電子機器はイギリスやアメリカ合衆国等多彩な国のものが採用されている。
建造は南オーストラリア州アデレードのオーストラリア潜水艦企業体で行われた。
コリンズ級は設計の段階から様々な問題が指摘されており、導入後も技術的な問題やオーストラリア海軍の人員不足から運用に支障が生じるなどした。オーストラリアのメディアから厳しい批判をあびている。
コリンズ級潜水艦・基本情報
【排水量】 | 浮上時: 3,051 トン 潜水時: 3,353 トン |
【全長・幅・吃水】 | 77.8 m・7.8 m・6.8 m |
【機関】 | 1 × Jeumont Schneider 電動機 7,050 hp (5.25 MW) 3 × Hedemora/Garden Island型 V18B/14 ディーゼル 6,000 hp (4.42 MW) 3 × Jeaumont Schneider 発電機 5,630 hp (4.2 MW) 1 × 推進軸とスキューバックプロペラ 1 × Mactaggart Scott dm 43006 緊急時の油圧モーター |
【航続距離】 | 9000海里 / 10 ノット (シュノーケル航行時) 11,500海里 / 10 ノット (浮上時) 400海里 / 4ノット (潜水時) |
【潜航深度】 | - m |
【乗員】 | 45人 (士官8人) |
【兵装】 | UGM-84 ハープーン 対艦ミサイル 6 × 533mm発射管 予備のハープーンとMk 48 魚雷 - 計22基 魚雷の代わりに44基の機雷 対陸上攻撃用の巡航ミサイルと戦闘システムAN/BYG 1を装備 装備:US Mk 48 ADCAP 戦闘システム AN/BYG 1を基にしたレイセオン CCS Mk 2 |
【その他】 | レーダー:タレス水中システムズ GEC-マルコーニ・カリワラ, トムソン・マルコーニ・ナラマ・トウド・アレイまたはアライドシグナル TB 23 ケルビン・ヒューズ I-バンド航法レーダー ソナー :タレス水中システムのscylla船首ソナー 特殊装備:タレス・オプトロニクス CK043 探索とCH093攻撃潜望鏡 無反響タイル装着 |
ロメオ型潜水艦(北朝鮮)
ソビエト連邦、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国で生産され、北朝鮮では、1973年に2隻を中国から取得し、1976年から1995年までに24隻を国内で建造した。
現在でも保有しているとされるが、燃料不足にあえぐ朝鮮人民軍でどの程度運用されているかは不明である。
通常は水上を騒音の大きいディーゼルエンジンで航走し、会敵の際に潜航して待ち伏せ攻撃を行なう。
潜航能力は低く潜航時の航続距離は10〜20海里、最大潜航可能時間は約半日程度であり、ソナーから逃れても空気補充時にレーダーで必ず探知されてしまう。
基本的に第二次世界大戦の後半に運用されていたレベルの性能の、“潜水艦”と称されるが実情は「可潜艦」というべき旧世代潜水艦であり、現代の基準においては、潜水艦としてもはや時代遅れのものと見なされている。
ロメオ型潜水艦・基本情報
【排水量】 | 基準:1,475t 水中:1,830t |
【全長・幅・吃水】 | 76.6m・6.7m・5.2m |
【機関】 | ディーゼル・エレクトリック推進・2,700ps ディーゼル機関 2基・4,000ps 推進電動機 2基 スクリュー 2軸 |
【速力】 | 水上:15ノット 水中:13ノット |
【航続距離】 | 20海里 |
【潜航深度】 | 300m |
【乗員】 | 54名 |
【兵装】 | 533mm魚雷発射管 8門(艦首 ×6門・艦尾 ×2門) 魚雷 ×14本 または機雷 ×28個 |
ゴトランド級潜水艦(スウェーデン)
設計は、基本的には、ヴェステルイェトランド級(A-17型)をもとにスターリングAIPシステムの搭載や電子装備の更新などに対応して改設計したものとなっている。
タンクに貯蔵した液体酸素とケロシン燃料による燃焼反応で熱(約800度)を生じて、これを熱交換器でヘリウムガスに伝えることによる膨張と、海水冷却による圧縮を繰り返すことでピストンの上下動を生じさせるものである。
本級では24トンの液体酸素が搭載されており、最大で3週間、速力5ノットで14日間の潜航が可能とされている。搭載数は2基だが、さらに2基を追加する余地が確保されている。
スターリングAIPシステムは非常に静粛性に優れており、また船体にはゴム製の水中吸音材も装備されている。
テルマ Tp.IID多機能コンソール3基が配されており、272個の目標を管理し、うち95個を同時に追尾できる。
ゴトランド級潜水艦・基本情報
【排水量】 | 水上:1,384t 水中:1,494t |
【全長・幅・吃水】 | 60.6m・6.06m・5.6m |
【機関】 | ディーゼル・スターリング・エレクトリック方式 ヘーデモラV12A/15-Ubディーゼル機関 (1,300 bhp) 2基 ジューモン・シュナイダー社製発電機 (760 kW) 2基 V4-275R Mk.2スターリング発電機 (75 kW) 2基 推進電動機 (1,800 shp) 1基 7翔式スクリュープロペラ 1軸 |
【速力】 | 水中:20ノット 水上:10ノット |
【航続距離】 | 20海里 |
【潜航深度】 | 200m |
【乗員】 | 23名 |
【兵装】 | 533mm魚雷発射管(Tp.613/62魚雷×計12発) 4門 400mm魚雷発射管(Tp.42/43/45魚雷×計4発) 2門 |
【その他】 | C4I サーブ9SCS Mk.3 レーダ テルマ社製 対水上捜索用 1基 ソナー CSU 90-2 統合式 |
039A型潜水艦(中国)
039A型潜水艦は、中国人民解放軍海軍の運用する攻撃型潜水艦。
セイル部分は039型に類似しているが、全体的には、ロシアから輸入していたキロ型の影響が指摘されている。
本型の最大の特徴が、非大気依存推進(AIP)機関であり、これはスターリングエンジンを用いたものと言われている。
なお、AIPに頼らない通常のディーゼル・エレクトリック方式での航走の際に用いる発電機の原動機としては、039型と同様に、MTU 396 SE84シリーズのディーゼルエンジンが搭載されていると見られている。
ソナーは、艦首のアクティブ/パッシブ両用アレイと、艦側面に貼り付けられたパッシブ・アレイによって構成されており、曳航アレイは備えていないものと見られている。
標準的な533mm魚雷発射管を、上に2本、下側に4本と上下に並べて装備している。
ここからは、YJ-82潜水艦発射対艦ミサイル(USM)と魚雷、機雷を運用できる
039A型潜水艦・基本情報
【排水量】 | 水上2,000t 水中2,400t |
【全長・幅・吃水】 | 72m・8.4m・5.5m |
【機関】 | ディーゼル・スターリング・エレクトリック方式 陜西-MTU 16V396 SE83/84 ディーゼル発電機×4基 スターリング発電機 電動機×1基 スクリュープロペラ×1軸 |
【出力】 | 6,092馬力 |
【速力】 | 浮上時16ノット 潜没時23ノット |
【航続距離】 | - |
【潜航深度】 | 300m |
【乗員】 | 58名 |
【兵装】 | 533mm魚雷発射管×6門 (魚雷、機雷、USM運用可能) |
【その他】 | - |
スコルペヌ型潜水艦(マレーシア等)
スコルペヌ型潜水艦は、フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社が共同で開発した通常動力型潜水艦。通常型のCM-2000型、沿岸向けに小型化したCA-2000型、AIPを搭載したAM-2000型がある。
当初はフランス、スペインの両海軍に導入する目的で開発されたスコルペヌ型だったが、現在は輸出専用としてチリ・マレーシア・インド・ブラジルの4ヶ国の海軍に採用されている。
本型の船体設計において、アゴスタ級からの最大の進歩点である艦首の設計については、リュビ級原子力潜水艦がアメティスト改正で改修された際の設計が流用されたとされている。
これにより、水中高速潜航時の発生雑音は大幅に低減されており、被探知性、さらに自艦装備ソナーによる目標探知能力のいずれもが向上している。
また、本型の戦闘システムについては、フランス海軍が現用する攻撃原子力潜水艦および戦略原子力潜水艦であるリュビ級およびル・トリオンファン級から、多くの技術が導入されている。
スコルペヌ型潜水艦・基本情報
【排水量】 | 水中排水量 CM-2000型:1,668 t AM-2000型:1,800 t CA-2000型 :1,070 t |
【全長・幅・吃水】 | CM-2000型:66.4m・6.2m・5.8m AM-2000型:76.2m・6.2m・5.8m CA -2000型:60.3m・6.2m・5.8m |
【機関】 | ディーゼル・エレクトリック方式 MTU 16V396 SE84 ディーゼルエンジン ×4基 Jeumont Schneider 電動機 ×1基 スクリュープロペラ(7翼スクリュー) ×1軸 |
【出力】 | 3,808馬力 |
【速力】 | 水中: 20ノット以上 水上: 12ノット |
【航続距離】 | 6,400海里(8ノット, 浮上航行) 550海里(4ノット、潜航時) |
【潜航深度】 | 350m |
【乗員】 | 32名 |
【兵装】 | 533mm 魚雷発射管(魚雷/USM×18基)×6門 |
【その他】 | C4I :SUBTICS 指揮統制+SISDEF 通信 レーダー :ケルビン・ヒューズ・コンパクト 航法用 1基 ソナー :TSM-2233 エレドン |
ラーダ型潜水艦(ロシア)
1980年代末、ロシアのディーゼル・エレクトリック潜水艦の系列の後継として設計が開始され、1997年に1番艦「サンクトペテルブルグ」が起工。
2005年6月30日、公試中の「サンクトペテルブルグ」が、サンクト・ペテルブルグ国際武器見本市でメディア向けに公開され、本型の全貌が明らかになった。輸出版は、アムール型潜水艦と呼ばれる。
ラーダ型潜水艦は、"第4世代"のディーゼル・エレクトリック潜水艦として開発され、キロ型潜水艦までの従来の潜水艦に比べ、新しい艤装を有している。
高い隠密性を誇ったキロ型の後継として設計され、機関はディーゼル・エレクトリックだが、艦体を10m延長して燃料電池区画を挿入することで、燃料電池「クリスタール27E」と呼ばれるAIP機関の搭載も可能であり、世界最高クラスの隠密性を誇る。
かなりの大型潜水艦の為、魚雷以外にも機雷、対空・対艦・巡航ミサイルなど潜水艦が運用可能なあらゆる装備を運用可能で、攻撃可能範囲も非常に広い。
魚雷発射管は6門有し、艦首上方に集中配置されている。艦首中心には、ソ連の潜水艦で初めて魚雷搭載用のハッチを有している。
魚雷発射管からは、長魚雷はもちろんのこと、3M54E1「クラブS」対艦ミサイル、91RE1対潜ミサイルも発射できるなど、通常動力型潜水艦の中では世界最強の戦闘力を誇る。
ラーダ型潜水艦・基本情報
【排水量】 | 潜行時:2,700 t 浮上時:1,765 t |
【全長・幅・吃水】 | 72 m・7.1m・6.5m |
【機関】 | 永久磁石モータによる電気推進 長寿命化蓄電池 D49ディーゼル機関2基 1軸 |
【出力】 | 2,700馬力 |
【速力】 | 潜行時21ノット 浮上時10ノット |
【航続距離】 | 650海里 |
【潜航深度】 | 300m |
【乗員】 | 34人 (または38人) |
【兵装】 | 533mm魚雷発射管6基 魚雷 SSM18発 |
【その他】 | - |
212A型潜水艦(ドイツ)
212A型潜水艦は、ドイツが開発したAIP搭載通常動力型潜水艦で、ドイツ海軍のほか、イタリア海軍で運用されている。特徴はAIPにPEM燃料電池を採用することによって数週間の潜水が可能である点と、水中での高度な機動性確保のため舵がX舵である点。
AIPには水素燃料電池が使用されており、長時間の静粛航行が可能なうえ、音も熱もほとんど出ない。
さらに、モーターからの駆動音も極限まで抑えられている。
燃料電池の性能や船殻の丈夫さもあり、最大潜行深度700m・3週間以上の連続潜行可能という圧倒的な性能から諸外国からは世界最高の潜水艦との呼び声も高い。
また、性能を落とした輸出型の214型は韓国やギリシャ海軍など多数の海軍で運用されている。
212A型潜水艦・基本情報
【排水量】 | 潜行時:1,830 t 浮上時:1,450 t |
【全長・幅・吃水】 | 57m・7m・6m |
【機関】 | ディーゼル・エレクトリック方式 電動機: シーメンス Permasyn×1基 (1,700kW) ハイスキュー・プロペラ 1軸 ディーゼルエンジン:MTU 16V 396×1 (3.12MW) AIP: HDW PEM燃料電池 U31: 30-40kW×9基 U32以降: 120kW×2基 |
【速力】 | 潜行時22ノット 浮上時12ノット |
【航続距離】 | 水上: 8,000 海里 (15,000 km)/8ノット時 水中: 420 海里 (780 km)/8ノット時 |
【潜航深度】 | 最大深度 700m |
【乗員】 | 27名 |
【兵装】 | 533mm魚雷発射管×6:(魚雷×12または機雷×24) |
【その他】 | - |
そうりゅう型潜水艦(日本)
海上自衛隊初の非大気依存推進(AIP)潜水艦。
本型ではスターリング発電機による非大気依存推進(AIP)システムが導入されている。
スターリング・エンジンは十分に静かなエンジンですが、静音性や熱量の発生という点で燃料電池には劣る。
しかし、そうりゅう型は11番艦より主蓄電池としてリチウムイオン蓄電池を搭載し、非常に高い隠密性に加え、充電時間が短く、放電による電気容量の低下を抑えられるなど優れた特性を得たことで、数ある通常動力型潜水艦の中でも世界最高の航続力を持ち、無補給で長期間の活動が可能である。
装備面では二重の光ファイバーによるネットワークが施され、多くの情報を迅速に表示することが可能となった。
さらに、7番艦からは新たなXバンド衛星通信装置が装備され船外との通信も高速化された。
探索能力についても原子力型潜水艦クラスの高性能ソナーを搭載し、米国製対艦ミサイルや国産魚雷などを搭載している。
しかし、対空攻撃の手段が無く、VLSも搭載していない。
そうりゅう型潜水艦・基本情報
【排水量】 | 潜行時:4,200 t 浮上時:2,900 t |
【全長・幅・吃水】 | 84m・9.1m・8.5m |
【機関】 | ディーゼル・スターリング・エレクトリック方式(10番艦まで) (水上:3,900ps/水中:8,000ps) ディーゼル・エレクトリック方式(11番艦以降) 12V25/25SBディーゼル機関×2基 川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関×4基(10番艦まで) 鉛蓄電池(10番艦まで) リチウムイオン電池(11番艦以降) 推進電動機×1基 スクリュープロペラ×1軸 |
【速力】 | 潜行時22ノット 浮上時12ノット |
【航続距離】 | 水上:13 ノット (24 km/h) 水中:20 ノット (37 km/h) |
【潜航深度】 | 500 - 600m |
【乗員】 | 65名 |
【兵装】 | HU-606 533mm魚雷発射管×6門 89式 魚雷 ハープーン級[1] USM 潜水艦魚雷防御システム(8番艦以降) |
【その他】 | C4ISTAR:ZYQ-31指揮管制支援ターミナル 情報処理装置(TDBS) ZQX-11潜水艦戦術状況表示装置 ZYQ-51潜水艦発射管制装置 レーダー:ZPS-6F 対水上捜索用×1基 ソナー :ZQQ-7 統合式 |
まとめ
世界の通常動力型潜水艦を総合的に評価するとロシアのラーダ型、ドイツの212A型、そして日本のそうりゅう型が世界最強クラスと言えると思います。
しかし、あくまで通常動力型の話であり、潜水艦の世界基準は確実に原子力型潜水艦に移り変わっているといえるでしょう。
世界最強の原子力型潜水艦についてはまた別の機会にご紹介しますのでお楽しみに。
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