地球や他の惑星の地下に住む「地底人」は多くのフィクション作品で登場します。
ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』やエドガー・ライス・バローズの『ペルシダ-』シリーズをはじめ『サイボーグ009』や『ゲッターロボ』にも地底人が描かれています。
しかしフィクションの枠を越え、実際に地底人が実在しているという話もまことしやかに囁かれています。
今回はそんな地底人が実在するかもしれない話について紹介します。
実際に語られる「地球空洞説」
地底人の実在を語るときに欠かせないのが「地球空洞説」です。
私たちはちょうど卵のように地球の内部には核(内核、外核)とマントルがあり、その外側に地殻が乗っていると教わったかと思います。
ですが地底人が存在するには地底に生活空間がなくてはなりません。
そこで地底人の実在を語るときには、同時に地球空洞説が語られる場合が多いです。
アガルタ
引用元:https://urbanlegend-jp.com/
アガルタは19世紀末から20世紀初頭にかけてオカルトの分野で盛んに語られた、アジアのどこかにある地下都市です。
地表や地球の中心部から出入りすることができ、理想郷と呼ばれるほど高度な科学技術や文明が発展していると言われています。
アガルタについて最初に言及したのは、フランスのインド植民地シャンデルナゴルで裁判官をしていたルイ・ジャコリオです。
ルイ・ジャコリオは裁判官のほかにオカルティストとしての顔もあり、西洋オカルティズムの起源をインドに求めて研究を重ね、独自の成果を書物にしていました。
1873年に著書『神の子』でルイ・ジャコリオは謎のバラモン僧から超古代アスガルタ文明と、その中心であった太陽の都市アスガルタの物語を著述しています。
同時期、1876年にはフランスの思想家であるエルヌ・ルナンが著書『夢』で北欧神話に伝わる地下世界アースガルドについて語っており、アスガルタとアースガルズの名称が似ていることから両者が互いに影響し合った可能性がオカルティストの間で囁かれるようになります。
1886年にはフランスの神秘思想家であるアレクサンドル・サン=ティーブ・ダルヴェードルが『インドの使命』においてルイ・ジャコリオとエルヌ・ルナンの記述を合わせたような、現在に伝わる地底都市アガルタの原形となる記述を残しています。
神智学を創始したヘレナ・P・ブラヴァツキーは自らの主著『シークレット・ドクトリン』において、アガルタの存在に触れています。
ヘレナは神智学を体系化する際にインド哲学を参考にしており、ルイ・ジャコリオらの著書も読んでいたのです。
カール・ハウスホーファーやアドルフ・ヒトラーらもアガルタの存在を信じていたと言われています。
シャンバラ
引用元:http://rapt-neo.com/
シャンバラはインド仏教の最後の教典である『時輪タントラ(カーラチャクラ・タントラ)』に記された伝説の仏教王国です。
元々はヒンドゥー教における10番目のアヴァターラであるカルキの治める理想郷を指し、『時輪タントラ』ではカルキが国民を仏教徒へと回収し、「金剛のカースト」という新しい身分制度を導入することで既存のカースト制度を改めるとしています。
シャンバラは大きな7つの山々に囲まれた蓮の花のような形の王国だと言われています。
蓮の花は8枚の花弁がついていますが、1つの花弁に12の属国が存在し、それぞれを領主が治めています。
1つの属国には10万人の民が住む都市が100もあると言います。
つまり属国だけで10万×100×12×8=9億6000万人もの人口を有している計算となります。
シャンバラは「シーター河」という川の北岸にあると言われ、現在もその場所は明らかとされていませんが、少なくとも中央アジアのどこかだとは言われています。
ただ中央アジアに『時輪タントラ』の記述通りの形をした、本国、属国合わせておよそ10億人もの人口を有する国家が存在した痕跡はありません。
そのため普通であればシャンバラは非実在の、幻想の王国として考えるべきでしょう。
ですがオカルティストはシャンバラは中央アジアの地底に存在し、チベットの首都ラマにあるポタラ宮殿にシャンバラへつながる秘密の回廊がある、シャンバラはゴビ砂漠の地底にある、などと噂していました。
シャンバラとアガルタは地理的にも類似した部分があるためしばしば混同され、アガルタの首都がシャンバラであるという説も囁かれています。
ナチス・ドイツはアガルタ、シャンバラの伝説に深く関心を抱いており、チベットから僧侶をベルリンへ連れてきていた事実が1945年のベルリン陥落の際に明らかになっています。
アルザル
第二次世界大戦が終わって間もない1946年、アメリカ海軍は「ハイジャンプ作戦」と銘打った大規模な南極観測を行いました。
ハイジャンプ作戦は南極で基地を作れる環境探しと、極地での人員や設備の稼働状況の確認や研究を目的に行われ、13隻の艦船と多数の航空機、4700名もの人員を動員しています。
南北両極への飛行を成功させた国民的英雄リチャード・バード少佐が作戦の指揮を執りました。
1969年に刊行され、バード少佐の証言を世界に発信したことで知られるレイモンド・バーナードの『空洞地球 地球最大の地理的発見』によると、ハイジャンプ作戦では南極で不可解な現象が相次いで発生したと言われています。
原因不明のエンジントラブルや機器の故障に始まり、なんとバード少佐が南極を飛行中およそ5時間にわたって行方不明になったと言うのです。
バード少佐は飛行日誌に行方不明になった際に見たものを記録していたのですが、南極圏にも関わらずジャングルとマンモス、サーベルタイガーなどという信じられないような光景を見たと言う記述が残されています。
外の気温は20度を超え、ピラミッドや橋などの建造物も建っていたようです。
着陸したバード少佐はアジア人のような外見の人に出会い、葉巻型UFOに監視されながら、元の南極へ戻ったと言います。
1913年にはアメリカのマーシャル・B・ガードナーが『地球内部への旅』という本で、南極と北極に地底世界へと通じる穴があると書いていたために、バード少佐が地底世界へ行ったのではないかという考えが生まれました。
アメリカではこのバード少佐の訪れた世界を「アルザル」と名付けました。
アルザルは地底世界だとも、プラズマ亜空間の向こうにある「地球内天体」だとも言われています。
科学の分野における地球空洞説
引用元:http://gakkenmu.jp/
アガルタやシャンバラなどはいわゆるオカルトの分野で語られる地球空洞説ですが、現在の地球の構造が明らかになる前には実際に科学的に地球空洞説が検証された歴史もあります。
最初に地球空洞説を唱えたのはイギリスの天文学者エドモンド・ハリーです。
ハリーはあの「ハリー彗星」の発見者として知られる高名な天文学者で、1692年に極地での変則的な磁気変動を説明するために内部構造に空洞のある地球のモデルを考案しました。
ハリーのモデルでは地球の内部には中心に太陽のような高熱を発する中心核があり、その外側には二層の中空の球核があると言われています。
地球の外側と球核、中心核は空気によって切り離されており、空洞部には生物が居住できるとハリーは述べています。
1770年ごろには「オイラーの公式」などで知られる数学者ラインハルト・オイラーが、地球の内部に太陽のような光と熱を放つ球体が存在するモデルを考案しています。
地球空洞説がポピュラーな考えとなったのは、1818年にアメリカの退役軍人だったジョン・クリーブス・シムズが『同心円と極地の空洞帯』という本を出版したことがきっかけとなりました。
シムズは地球の内部には四層の同心球が入れ子となっており、各々の球の極地に開口部があると主張、自説を証明するために北極探検を計画しますが、実行することはできませんでした。
その後もシムズのモデルを元に『シムズの同心球理論』、『空洞地球』、『シムズの同心球理論-地球が空洞であり内部は居住可能で、両極に広大な口があることの論証』などが出版されました。
地底人の実在を示す証拠
地球空洞説は数多く語られてきましたが、実際に地底人と接触した例はアガルタを訪れたリチャード・バード少佐などごく限られたものしか存在しません。
バードの証言もあくまで記録上のものであり、作り話である可能性は否定できません。
そこでここからが実際に地底人の実在を示すとされる証拠を紹介していきます。
地獄の音
ソビエト連邦時代、シベリアの地面を深く掘削する科学プロジェクトが行われたという噂があります。
アザコフという人物の率いるチームが地下14.4㎞地点まで掘削したところ、大きな空洞に行き当たったため、他の観測装置と共にマイクを空洞へと下ろしました。
空洞はおよそ1000℃という高熱の空間でしたが、下ろしたマイクには何百万もの人間によるうめき声のような音が録音されていたというのです。
この音は「地獄の音」と呼ばれ、チームの責任者であるアザコフは「共産主義者として私は天国や聖書を信じていないが、科学者としてジオ区(おそらく実験地点のこと)を信じる」と述べたそうです。
実際にこのとき録音された「地獄の音」はYouTubeなどで聞くことができます。
「地獄の音」が録音された掘削地点は明らかになっていませんが実際に1970年、当時のソビエト連邦で地球の地殻深部を調べるために「コラ半島超深度掘削坑」というプロジェクトが発足しました。
当初は1993年までに15㎞の深さの縦穴を掘る予定でしたが、土中の温度が想定以上に高かったため12㎞ほどの地点で掘削を断念しています。
15㎞も掘ると地中の温度が300度にまで達してしまい、ドリルに異常をきたしてしまう恐れがあったのです。
このコラ半島超深度掘削坑のことを踏まえると、「地獄の音」が録音された実験は内容に無理があるように思われます。
また「地獄の音」とされている音も解析が進んでおり、実は『バロン・ブラッド』という、1972年に放映された映画のサウンドトラックを利用したもので、元の音声をループさせていることで音声を作っていることが分かっています。
参考記事
スノーデン事件
引用元:https://www.newsweekjapan.jp/
スノーデン事件とは2012年から2013年にかけて行われた、NSA(アメリカ国家安全保障局)に対する内部告発事件です。
元NSAおよびCIA(中央情報局)の職員でありエドワード・スノーデンがイギリスのガーディアン社やアメリカのワシントン・ポスト社など複数の新聞社にNSAによる監視網の実態を告発したのです。
スノーデンの告発にはNSAが極秘ツールを使って電話回線や電子メール、チャットを傍受していたほかアップルやマイクロソフトなどの大手IT企業に協力を要請してソフトにバックドアを仕込んだり、日本やフランスなどの同盟国の大使館を盗聴しているなど、驚きの内容が数多くありました。
スノーデンは香港、ロシアと逃亡生活を続けながら「インターネット・クロニクル」というサイトで告発を続けているのですが、その中に地底人に関する記述があるのです。
スノーデンの告発によると地球のマントルには人間よりも高度な知能と技術を持った地底人が住んでおり、ときおりUFOに乗って宇宙へ旅立っていると言います。
人類の文明や技術は地底人からすれば取るに足らないものであり、地底人はまったく相手にしていないとのことです。
もしこの告発が真実だとすればNSA、ひいてはアメリカ政府が地底人の存在を知っていて秘匿していることになります。
アメリカ政府を巡る都市伝説としてはこの地底人やアルザル、ロズウェル事件など枚挙に暇はありません。
スノーデンのほかにも、NASA(アメリカ航空宇宙局)の職員も地底から高度な知的生命体によるものとしか思えない無線信号が送られ続けていると言った内容を供述しています。
アメリカでは機密情報は25年後までに公開しなければならないと大統領令によって定められており、2017年にはジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件に対するFBI(連邦捜査局)の文書が一部公開されました。
スノーデンの告発がすべて正しいものかはわかりませんが、告発された内容に真実があったことは間違いありません。
今後時代が進む中で、告発の内容を裏付けるような文書が開示される可能性はゼロではないでしょう。
まとめ
今回は多くのフィクションで題材となる地底人が実在するかどうかについて紹介しました。
地底人が実在するためには地底に生活空間が必要となりますが、地球空洞説は科学が発展することで下火となり、現在ではアガルタやシャンバラなどオカルトの分野でしか盛んには語られません。
ですが不確かながらも地底人の目撃談や存在するという証言はあるため、まったくのデタラメとも断言はできないでしょう。
もし地底人の存在が明らかになれば、今日の常識は大きく変わることでしょう。
場合によっては学校で習ってきたプレートテクトニクスなども、過去のものになってしまうかもしれません。
いずれ私たちの技術が地底人の住処を明らかにすることがあれば、そのときは人類の新たなステージとなることでしょう。