最近、小動物などの手軽に飼うことのできるペットを飼う方が増えたように思います。
トカゲやヘビなどの爬虫類も、ペットとして飼う人が増えてきました。
飼い方なども書籍化されたり、ネット検索で簡単に調べることができるようになったことも影響していると言えるでしょう。
しかし、いくら詳細な飼い方を説明されたとしても、ナイリクタイパンをペットにしようなどと考えない方が身のためです。
どうして?、と思った人のために、ここでは世界最凶のヘビ、ナイリクタイパンについてご紹介します。
ナイリクタイパンの生態
まずはその姿を見ていただきましょう。
こちらがナイリクタイパンです。
引用:http://outdoor.ymnext.com
ナイリクタイパンは、コブラ科タイパン属に属する毒蛇です。
学名は「Oxyuranus microlepidotus」、英名は「Inland Taipan(インランドタイパン)」です。
日本では「ナイリクタイパン」と呼ばれ、人に危害を加える恐れのある危険な動物であるとして、特定動物に指定されています。
1800年代後半に発見されてはいましたが、1972年に再度発見されるまでは、その存在は謎に包まれ、長らく不明のままでした。
ナイリクタイパンの体色は茶褐色で、個体によっては黒い斑紋の入るものもいます。
また、季節によって体色が変化することが知られており、夏にはオリーブ色に、冬には濃い体色になります。
これは、夏には体色を薄くして熱を発散させやすくし、冬には濃い色にして体温を速く上げるという効果があると言われています。
ナイリクタイパンは昼行性で、特に早朝に活発になる性質を持っています。
夜や気温の高すぎる時は、岩の割れ目や巣穴に隠れて出てきません。
ナイリクタイパンの巣穴は、他の動物が作った巣穴の中で既に放棄されている巣穴を利用しています。
エサは、哺乳類が中心で、げっ歯類などの小型・中型の哺乳類や鳥類などです。
発達した嗅覚で獲物を発見し、強力な毒牙で狩りを行います。
強力な毒を持っていますが、無敵と言うわけでもなく、大型のトカゲの仲間がナイリクタイパンの天敵となっています。
現在では年々個体数が減少しており、オーストラリアでは希少動物として保護されています。
ナイリクタイパンの分布
引用:http://www.geocities.co.jp
ナイリクタイパンは、その名前が表す通り、オーストラリアの内陸部に生息しています。
オーストラリアの内陸部とは、具体的にはクイーンズランド州北西部と南オーストラリア州南東部のことを指します。
主に乾燥した草原や岩場に生息し、げっ歯類などの他の動物が掘った穴を巣穴として利用することもあると言われています。
ナイリクタイパンの体の大きさ・毒牙の大きさ
ナイリクタイパンの体長は、1.8~2.5m、大きいものでは4mに達すると言われています。
同じコブラ科のヘビの中では、キングコブラ、ブラックマンバに次いで、3番目に長くなる大型種です。
毒牙の長さは、3.5~6.2mmです。
小さいように思いますが、その小さな牙に非常に強力な毒を蓄えているのです。
ナイリクタイパンの毒性の強さ
ナイリクタイパンの毒の主成分は、コブラ科のヘビに共通な神経毒です。この毒はその名の通り、神経に作用して体の麻痺を急速に引き起こすものです。
ただし、ナイリクタイパンの毒には、溶血毒や出血毒も含まれていると言われています。
溶血毒とは、血液内の赤血球に作用して、赤血球を破壊し、酸素が流れにくい状態にしてしまう毒です。
出血毒とは、血液内の止血に関与する成分に誤情報を与え、さらに出血しやすくなる毒素を併せることで、多量出血を引き起こす恐ろしい毒です。
ここで、実際にナイリクタイパンと同じコブラ科のヘビの毒素を抽出して、人間の血に垂らして実験した動画をご紹介します。
この毒を注入された場合、どのようになるのかをぜひ確認してみてください。
毒素は、血液の流れに沿って体内に侵入します。
流れていく先の血液を固めてしまうため、行き場をなくした血液が咬まれた傷からどんどんあふれ出してしまい、多量出血につながると考えられています。
ナイリクタイパンの毒性は、毒ヘビの中ではナンバーワンの強さだと言われています。
その毒性は、同じコブラ科のヘビであるキングコブラの約50倍、日本に生息している毒ヘビであるニホンマムシの約800倍だと言われており、かなりの猛毒です。
毒性もさることながら、毒の量も多く、人間の成人男性100人など軽々殺せてしまう量を持っているのです。
このヘビに咬まれてしまうと、45分以内に血清を打たなければ、確実に死に至ると言われています。
しかし幸いなことに、ナイリクタイパンは人があまり住んでいない地域に生息しているうえに、かなり臆病な性格をしています。
人間の足音を聞いただけですぐに隠れてしまうため、人前に姿を現すことはほとんどないと言われています。
そのため、普通に暮らしていれば人間が咬まれることはまずないのです。
もしもナイリクタイパンに出会ってしまっても、すぐに攻撃されることはありません。
ナイリクタイパンは襲い掛かる前に、上体をS字に持ち上げて警告のポーズを取ります。
引用:http://karapaia.com
この警告を無視して近づいてしまうと、彼らは身を守るために咬みついてきます。
良い写真を撮ろうと、警告を無視して近づいてしまうと命はありません。
と、言いたいところですが、実はナイリクタイパンはこれほど強い毒を持っていながら、死者が出ていないという事も特徴的な事実です。
毎年60名ほどがナイリクタイパンに咬まれて病院送りになっているそうが、近年は血清がしっかりと整備され、死に至るというケースはないようです。
「最強」の毒ヘビ
世界一強力な毒を持つヘビとしてナイリクタイパンを紹介しましたが、「最強」と言われてはいません。
ナイリクタイパンは臆病なヘビなので、好んでこちらに飛びかかってくることはありません。
しかし、世界には強力な毒を持ち、殺す気満々で襲い掛かってくる毒ヘビも存在します。
それは、ブラックマンバです。
引用:https://ikimono-matome.com
ブラックマンバはアフリカの東部から南部に生息しており、サバンナや草原地帯、森林、岩場など、様々な環境に適応して暮らしています。
基本的には地面で生活しますが、木登りも得意です。
ブラックマンバはアフリカの毒ヘビの中では最も長いヘビです。
全長2~3.5mにもなり、最大4.5mの個体も確認されている大型のヘビです。
体色は暗みがかった灰色ですが、名前の由来は体色ではありません。
引用:https://ikimono-matome.com
ブラックマンバの名前の由来は、この口の中の色です。
このように口の中が真っ黒であるため、ブラックマンバと呼ばれています。
ブラックマンバは肉食性で、小型の哺乳類や鳥類を獲物としています。
また、木登りが得意なため、卵を狙って鳥の巣を襲うこともあります。
ブラックマンバは専門家の間でも、世界で最も危険な毒ヘビと言われることが多いです。
アフリカのチンパンジーの群れが、たった1匹のブラックマンバの出現によって、大パニックになったという事例も確認されているほどです。
彼らが最強と言われる所以は、3つあります。
1つ目はその毒性の強さと量。
ブラックマンバは、コブラ科に属しており、コブラ科に共通の神経毒を持っています。
ブラックマンバの毒の毒性は、ニホンマムシの60倍であると言われています。
さらに、ブラックマンバは頭部が大きく、それに比例して毒の量も多いのです。
世界最大の毒ヘビであるキングコブラも毒の量が多く、危険だと言われます。
引用:https://ikimono-matome.com
しかし、キングコブラの毒はブラックマンバと比較するとそこまで強力ではなく、血清を打てば助かるため、致死率は低いと言われています。
ブラックマンバは毒の量が多いうえに、非常に強力な毒を持っています。
血清は作られており、今なお研究が進められているにも関わらず、致死率は高いそうです。
その理由は、毒が体に回るのが相当早いことにあります。
つまり、ブラックマンバの毒は「強力」「多量」「回りが早い」という最悪の毒であると言えるのです。
2つ目は、そのスピードです。
ブラックマンバは時速60kmで移動することができます。
50mを11秒で走るという計算なので、そこまで速くないようにも思います。
ブラックマンバ以外に、ここまで速く移動できるヘビはいないのですが、人間が本気で逃げれば追い付かれることはないスピードです。
それが、見通しの良いグラウンドであれば。
ブラックマンバが追いかけてくるのは、足場や視界の悪い草原や森林。
その最悪の環境の中を、これほどのスピードで追いかけられればひとたまりもありません。
ヘビ界最速のスピードも、ブラックマンバの最強たる所以です。
3つ目は、その性格です。
ブラックマンバは非常に凶暴な性格をしていると思われています。
しかし、実際にはナイリクタイパンよりも臆病な性格をしていると言われています。
この臆病な性格が、その凶暴性を増長しているのです。
臆病であればあるほど、自分の身を守るために必死になります。
つまり、確実に相手を殺すことができる行動を起こすという事です。
ブラックマンバは危険が迫ると、ナイリクタイパンと同じような警告のポーズを示し、「シュー」という威嚇音を出します。
それでも相手が怯まなければ、何度でも咬みつき、何度でも毒を注入するのです。
相手が息絶えるまで、何度も、何度も。
「最強」の毒ヘビは、最も臆病なヘビでもあるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
世界一強力な毒を持つ陸棲のヘビはナイリクタイパンですが、世界には他にも危険なヘビが存在しています。
その一例として、ブラックマンバをご紹介しました。
他にも、エラブウミヘビというコブラ科で、海を泳ぐ毒ヘビも存在します。
これからヘビを飼いたい!、と思っている人も、このような危険なヘビには手を出さないようにご注意を。