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世界で最も危険な有害化学物質10選

現在では生活のあらゆる分野で様々な化学物質が利用されています。

それらは私たちの生活を豊かにしてくれる反面、普段生活するだけでは考えられないような害をもたらすこともあります。

今回は一歩間違えれば簡単に死に至る、世界で最も危険な化学物質について紹介します。

 

エチレングリコール


引用元:https://sciencing.com/

エチレングリコールは単にグリコール、あるいはエタンジオールとも呼ばれる、2価アルコールのひとつです。

融点が-12.6℃と低いため不凍液として使われるほか、非水系洗浄剤や塗料の溶媒としても利用されています。

ダイナマイトの原料のひとつでもあります。

エチレングリコールが危険なのはその毒性にあります。

エチレングリコールは体内で代謝されると「シュウ酸」という物質に変わり、腎障害を引き起こすことで少量でも死に至ることがあります。

色がコーラに似ており、甘い味をしているので、アメリカでは年間5000件、不凍液をよく使うスウェーデンでは年間に100件も誤飲事故が発生しています。

子どもはもちろん、子どもよりも致死量の少ない犬や猫などの誤飲事故も少なくありません。

現在は不凍液の原料を無毒な「プロピレングリコール」という物質へ変える試みもありますが、まだ普及には至っていません。

 

ダイオキシン


引用元:http://earth-kyoto.jp/

私たちが俗にダイオキシンと呼ぶものは正式にはダイオキシン類というもので、「ポリ塩化ジべンゾジオキシン(PCDD)」、「ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)」、「ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCB)」(「コプラナーポリ塩化ビフェニル」(co-PCB)とも)の総称です。

塩素を含むものを不完全燃焼にした際に発生するためゴミの焼却や自動車の排気ガスが主な発生源になるほか、かつては農薬などにも含まれていました。

難分解性を持っているため土壌や水中、体内に蓄積して毒性を示します。

毒性は非常に多様で、発現する量も症状ごとに変わります。

一般毒性の症状としては体重の減少や代謝障害、ホルモンの分泌障害、クロロアクネなどがあげられます。

体内蓄積によっては発がん性の上昇や生殖毒性(奇形の増加、成長遅延)、免疫力の低下などの症状も引き起こすと言います。

日本では「カネミ油症事件」などダイオキシンが実際に健康被害をもたらした事件もあり、1999年にはダイオキシン類対策特別措置法が施行され、汚染は減少しています。

 

バトラコトキシン


引用元:https://www.gizmodo.jp/

バトラコトキシンは南米に住むモウドクフキヤガエルや、有毒の鳥類ピトフーイなどが持つ毒です。

現地では矢毒として利用される猛毒で、神経細胞や筋細胞の正常な働きを阻害し、心筋を収縮させることで心不全を引き起こします。

バトラコトキシンは致死量の非常に少ない毒で、1匹のモウドクフキヤガエルから取れるおよそ1㎎のバトラコトキシンでハツカネズミなら1万匹分、ゾウなら2頭、人間なら20人分の致死量となります。

1㎏に直すと致死量はわずか2マイクログラムとなり、バトラコトキシンと並ぶものだと致死量が1マイクログラムであるボツリヌス菌の毒素であるボツリヌストキシンくらいしかありません。

 

シアン化カリウム


引用元:https://mvpharmagroup.com/

シアン化カリウムは「青酸カリ」という名称のほうが有名かもしれません。

シアン化カリウムが体内に入り胃酸と触れると青酸ガスが発生します。

青酸ガスは血中のヘモグロビンと反応することで酸素の運搬機能を破壊し、細胞内低酸素の状態にすることで死に至ります。

致死量が150から300mgと少なく、服毒後15分程度で死に至ることから世界中のスパイや兵士が自殺に使う毒物として有名となりました。

ミステリー作品などでは殺人に使う毒物として登場することも多いですが、シアン化カリウムは苦みが強いため飲食物に混入させるには向きません。

シアン化カリウムを飲んだ人間からは強いアーモンド臭(正確にはアーモンドの花の香り)がすると言われますが、これは青酸ガスの匂いなので、フィクションのように嗅ぐと中毒症状に陥る可能性もあります。

シアン化カリウムはシアン化ナトリウムと共に「シアン化合物」という名前で、現代では冶金や鍍金、昆虫標本の保存、農薬の安定剤などで多く利用されます。

シアン化ナトリウムのほうが一般的に使用されますが、一部ではシアン化カリウムも使われ、日本ではその毒性の高さから「毒物及び劇物取締法」によって厳しく規制されています。

 

チオアセトン

チオアセトンは水素化された硫黄を末端に持つ「チオール(メルカプタン類)」という物質のひとつです。

毒性はなく、安全ではあるのですがとにかく悪臭がひどく、嘔吐や吐き気、ときには失神などの症状が出ることがあります。

1889年に、ドイツのフライブルクでチオアセトンを作る実験をしたところ実験室の外にまで悪臭が広がり、フライブルク市民全員が避難をする羽目に陥ったこともあります。

1967年にはイギリスのオックスフォードでチオアセトンの分解実験を行ったのですが、うっかりチオアセトンを少量流出させてしまったがために180m離れたビルにいた同僚が吐き気を覚え、悪臭が半径400mも広がったという結果が報告されています。

チオアセトンの悪臭はチオールによく見られる「メルカプタン臭」と呼ばれる刺激臭で、同じチオールである「トリチオアセトン」は食物香料として使われているほか、「エタンチオール」という物質は2015年に「世界一臭い物質」としてギネスに登録されました。

 

水銀


引用元:https://ameblo.jp/

水銀は常温で唯一凝固しない金属元素であり、昔から人間の生活で使われてきました。

硫化化合物として産出される辰砂は「丹」と呼ばれ、赤色を帯びる独特の見た目から赤色の原料として使われたり不老不死の薬として服用されていました。

また有機水銀は農薬としても利用されていたほか、近年まで金属水銀は体温計や電池、朱肉などにも利用されていました。

ですが有機水銀は毒性が強く、神経系や内分泌器や腎臓などに障害を与え、特に子どもだと脳に障害を受けてしまいます。

辰砂を服用していた秦の始皇帝や持統天皇など古代の権力者は水銀中毒で命を落としてきたと言われています。

イラクでは農薬として水銀を利用した小麦で作ったパンで、400人以上も死亡する事件が発生しました。

日本では熊本県水俣市で化学工業メーカーであるチッソの水俣工場がメチル水銀を含む工業廃水を水俣湾に放出しており、食物連鎖によってメチル水銀が生物濃縮され、魚介類を食べた住民が水銀中毒症状になる事件が起きました。

この水銀中毒は「水俣病」と呼ばれ、現在も補償が続いています。

 

フルオロアンチモン酸


引用元:http://cosmobiologist.blogspot.com/

化学の世界では100%硫酸よりも強い酸性を示す酸を超酸(超強酸)と言います。

超酸には「マジック酸」や「トリフルオロメタンスルホン酸」などがありますが、中でも最も強い、人類最強の酸がフルオロアンチモン酸です。

フルオロアンチモン酸の酸性は100%硫酸の2000京倍も強く、テフロン容器でしか保存ができません。

研究でフルオロアンチモン酸を使うときには実験用具であるガラス製の製品を使うために、何千倍もフルオロアンチモン酸を希釈することを余儀なくされています。

もし体内に入ってしまえば骨や皮膚も構わず溶かしてしまいます。

 

Azidoazide Azide

-N3原子団を持つ化合物の総称を「アジ化物(アジド)」と言います。

アジ化物は有機化学の分野では重要な物質ですが、強い爆発性を有しています。

アジ化物のひとつである「アジ化鉛」は起爆剤として使われるほか、金属のアジ化物は危険物第5類に認定されています。

アジ化物の実験の際には細心の注意を払わなければ、不慮の事故を招くこともあります。

そんなアジ化物の中でも最も爆発力があるのが「1-Diazidocarbamoyl-5-azidotetrazole」、通称「Azidoazide azide」です。

Azidoazide azideはどんな些細な刺激であっても反応し、爆発してしまうため実験をまったく行うことができません。

その性質はまったく謎に包まれています。

 

三フッ化塩素

三フッ化塩素は刺激臭のする有毒ガスです。

吸ってしまうと息苦しさや喉の腫れなどの症状に襲われ、皮膚に触れただけでも重度の火傷を負ってしまいます。

更に三フッ化塩素に対して水をかけると爆発する性質もあるため、化学火災などで三フッ化塩素が発生してしまった場合に水系消火剤を使用すると被害が拡大する恐れがあります。

このような厄介な性質があるため、ナチスドイツでは三フッ化塩素を毒ガスや燃焼ガスとして利用すべく暗号名「N-stoff」という名称で研究を進めていました。

ただ輸送や保管が難しく、製造コストもかかったために実用化には至らず、現在も三フッ化塩素を軍事利用する動きはありません。

 

カドミウム


引用元:https://www.naturalpigments.com/

カドミウムは自然界に広く存在する金属のひとつで、土壌や水中の分布するため様々な食品や水に微量に含まれています。

金属としては青みを帯びた銀白色をしており、合金やメッキ、電池、原子炉の制御用の材料にも利用されています。

またカドミウムは塗料の顔料としても使われており、「カドミウムイエロー」などの顔料名がつけられています。

ただしカドミウムを過度に体内に取り入れると毒性を示し、骨や関節の脆弱になる「イタイイタイ病」や腎障害、肺気腫などの症状が表れます。

1950年代には富山県にある三井金属工業神岡鉱業所がカドミウムを含む廃水を神通川へ流したことがきっかけとなり、大規模な公害が発生しました。

現在では世界中でカドミウムを利用した製品の生産・輸出入が厳しく制限されており、日本では食品衛生法によってカドミウム濃度が0.4ppm以上1ppm未満の米は食用として販売禁止、1ppm以上の米は栽培禁止と定められています。

まとめ

今回は世界一危険な物質について紹介しました。

危険な物質は使いようによっては私たちの生活を豊かにしてくれるため、身近なところに潜んでいます。

反面、使い方を誤れば毒性や爆発性などで私たちに牙をむきます。

危険な物質は今回紹介したほかにも数多くあり、今後も発見されるかもしれません。

化学の発展に期待しましょう。

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