ハワイやグアム、あるいは沖縄など、島と言えばバカンス先、非現実的な体験ができる場所というイメージがあるかもしれません。
しかし世界には何万、何十万という数の島があります。
その中には私たちのイメージとは異なる、足を踏み入れるだけで危険な島もあるのです。
今回は世界にある、危険な島を紹介します。
北センチネル島
引用元:https://www.newsweekjapan.jp/
北センチネル島はインドの連邦直轄領であるアンダマン・ニコバル諸島自治政府に属する島です。
インド洋のアンダマン諸島に属しています。
この島にはセンチネル族という部族が暮らしているのですが、センチネル族は外部からの接触の一切を絶っており、しかも外部から訪れた人を容赦なく襲撃、ときに殺してしまいます。
2006年、カニの密猟をしていたインド人漁師が北センチネル島へ漂着してしまい、島民によって殺害される事件が起きました。
インド政府は遺体の回収のためにヘリコプターで人員を派遣しましたが、投げ槍や弓矢によってヘリが襲撃されたため回収を断念、殺害そのものも「島が現代社会にない」という理由で法的な措置が取られませんでした。
2018年には冒険家を自称するアメリカ人宣教師のジョン・アレン・チャウが北センチネル島へ上陸して殺害される事件が起き、上陸計画に加担した7名が過失殺人の容疑で逮捕されています。
かつてはインド政府もセンチネル族と交流を持とうとしたことがありましたが、1996年に交流プログラムが終了してからは実質的にセンチネル島は独立状態となっています。
センチネル族についてはどうやら島民のほとんどが左利きで、食生活もオンゲ族という部族に似ていること、埋葬に関する独自の風習があることから何らかの信仰を持っていることは間違いないようです。
現在では北センチネル島半径5キロメートル以内への接近は禁止されています。
三宅島
引用元:https://colocal.jp/
三宅島は伊豆諸島に属する島です。
自然豊かで独自の生態系を築いており、バードウォッチングやスキューバダイビングなどを目当てに多くの観光客が訪れます。
しかし三宅島は「雄山」を中心に今も火山活動が盛んに行われる火山島のひとつです。
近年では2000年に噴火しています。
噴火前後に地震活動が観測され、火山弾が住宅地に直撃するほか火砕流も発生しました。
そして世界でも例を見ないほど大規模な火山ガスの噴出が発生し、有毒な二酸化硫黄などが放出されたことから三宅島の住民は全島避難しました。
噴火自体は2013年を最後に確認されていないようですが、三宅島を訪れるときは今も噴火する可能性のある火山島であることを忘れないようにしてください。
サバ島
引用元:https://4travel.jp/
サバ島はカリブ海にある島で、BES諸島(Bonaire, Sint Eustatius en Saba, ボネール、シント・ユースタティウスおよびサバ)、あるいはカリブ・オランダと呼ばれるオランダの海外領のひとつです。
島の地形は急峻で、島内最高峰であるシーナリー山(887m)はオランダの最高峰です。
カリブ海は多くのハリケーンの発生源ですが、特にサバ島の近くはハリケーンがよく発生しやすい地域のひとつです。
サバ島はハリケーンのたびに被害を負い、特に大規模なものでは島内の建物が全壊するほどです。
風と波の被害が大きくなるためサバ島の住居は島の沿岸部には少なく、山にへばりつくようにして人は住んでいます。
この過酷な環境から、サバ島には海賊たちの隠れ家として使われていた歴史があり、今も海賊たちの子孫が暮らしています。
ミギンゴ島
引用元:https://www.msn.com/
島と言えばきれいな砂浜、豊かな自然が思い浮かぶかもしれませんが、ビクトリア湖の中にあるミギンゴ島にはそんなものはありません。
島の全域がほぼ住居、空から見ると全域がトタン屋根に覆われ、さながら大きな亀のようです。
この島は湖でナイルパーチを獲って生活する人々が暮らしており、島内にはホテルや美容室、薬局、バーなどもあるそうで、わずか2000平方メートルたらずの面積に、およそ100人ほどが住んでいます。
2009年時点の調査ではその人口密度はなんと66500人/㎢です。
日本で一番人口の密集しているであろう東京都の人口密度が6349人/㎢なので、ミギンゴ島は東京の10倍も人が密集している計算になります。
こんなに人がいるので問題は山積です。
まず単純に人が多すぎることで衛生面も損なわれ、島内全域がスラム状態です。
災害時などでは避難もままなりません。
更にミギンゴ島は元々ケニアとウガンダの国境線付近にあり、長くケニア領でしたがミギンゴ島周辺は良質な漁場であることが判明したため、ウガンダが領有権を主張しています。
双方がミギンゴ島に治安部隊を派遣するなど、島を挟んで両国の緊張状態が続いています。
トリスタン・ダ・クーニャ島
引用元:https://world-note.com/
トリスタン・ダ・クーニャ島は南大西洋に浮かぶ島です。
260人ほどの定住人口のあるこの島はギネスブックに「世界一孤立した有人島」として登録されています。
事実上の「隣」である「人が定住する最も近い陸地」は2429キロ離れたセントヘレナ島です。
トリスタン・ダ・クーニャ島は決して観光地ではなく、旅行者向けのホテルや観光案内所、レストランなどはありません。
アフリカ大陸から約2800キロ、南アメリカ大陸から約3200キロも離れたこの島を訪れるには事前にアイランド・カウンシルから許可を得る必要があります。
島には空港もないため、南アフリカかナミビアから年に10便ほど船に乗らなくてはなりません。
しかもこのトリスタン・ダ・クーニャ島は火山島です。
もし火山活動が盛んになれば一切逃げ道はありません。
非常時にはとても危険な島であると言えるでしょう。
ブーベ島
引用元:https://oceanwide-expeditions.com/
ブーベ島はケープタウンの南西およそ2500㎞地点、亜南極に位置する無人島です。
最も近い有人の土地が先に紹介したトリスタン・ダ・クーニャ島という、地理的に世界で最も隔絶された島です。
島はほとんどが氷河に覆われ、近海にはアフリカプレートと南アメリカプレート、南極プレートの境界である「ブーベ三重点」があります。
ノルウェーはドロンニング・モード・ランド(南極大陸の東経44度38分から西経20度にかけての範囲)とピョートル1世島、そしてこのブーベ島を属領であると主張しています。
ですがこのうちドロンニング・モード・ランドとピョートル1世島は南緯60度以南にあるため、南極条約によって領土主権・請求権が放棄されており、実質的にはブーベ島のみが属領として認められています。
そのためブーベ島は無人島にも関わらず国家に準ずる扱いを受け、ISO3166による国名コードや国別コードトップレベルドメイン、アマチュア無線のコールサインなどが定められています。
ケイマーダ・グランデ島
引用元:https://bq-news.com/
ケイマーダ・グランデ島(イーリャ・デ・ケマダ・グランデ島)はブラジル南部沖にある孤島です。
近絶滅種である「ゴールデン・ランスヘッド」というマムシの一種が2000から4000匹ほど生息しています。
この蛇は環境変化によってこの島に孤立し、渡り鳥を捕食して大量繁殖しました。
島の面積を考えると1平方メートルあたりに1から5匹ほど生息している計算です。
ゴールデンランスヘッドは渡り鳥を一撃で仕留めるために毒性を高めたと考えられ、同種よりも毒性が5倍ほど強くなっています。
そのためケイマーダ・グランデ島は近隣の住民から足を踏み入れたら帰ってこれない「スネーク島(ヘビ島)」と言われ、恐れられています。
ただゴールデンランスヘッドはピーク時にはもっと数が多かったと考えられており、またこの限られた環境下で近親交配も疑われています。
近い将来、更にその個体数を減らす危険性もあるでしょう。
ラムリー島
引用元:https://world-note.com/
ラムリー島はミャンマー最大の島です。
太平洋戦争などに詳しい人であれば、「ラムリー島の戦い」という名前で知っているかもしれません。
1945年1月に、当時ラムリー島を占領していた日本軍とイギリス軍が交戦、イギリス軍が日本軍を破って島を再占領したという戦いです。
さてこのラムリー島の戦いの末期、イギリス軍の攻撃によって日本軍は島の周辺部にある沼地帯に追い詰められてしまいます。
激戦の最中、当時の日本兵は敵軍の攻撃はもちろん、赤痢や様々な感染症によって生命を落としたのですが、その死因の中になんと「イリエワニ」による襲撃があったと言われています。
ギネスブックには「動物によってもたらされた最悪の災害」としてこのレスリー島の戦いで、日本兵1000名がイリエワニによって殺害されたということが記載されています。
ただいくらイリエワニであっても1000名殺害するのは困難です。
また日本軍側にも生存者は多く、手記にもイリエワニについての記載はありません。
そのためイリエワニが死体を漁ったのを、イギリス軍側が誤認したという説が有力なようです。
現在ラムリー島には中国とインド洋をつなぐ天然ガスのパイプラインが建設されており、大量の中国資本による再開発が進められています。
イリエワニの個体数も減少していると考えられており、ラムリー島の戦い当時ほど危険ではないとも言われています。
レユニオン島
引用元:https://en.reunion.fr/
レユニオンはマダガスカルの東部に位置する火山島です。
フランスの海外地域圏(レジオン)のひとつで、火山活動と多雨によって生み出された渓谷や断崖、高原などの独特な地形や植生などが評価され、2010年に「レユニオン島の尖峰群、圏谷群および絶壁群」という名称で世界遺産に登録されています。
サトウキビやバニラなどが主要輸出品です。
またコーヒーハンターである川島良彰氏が1940年代に途切れたと考えられていた「ブルボン・ポワンテュ」というコーヒーの品種が野生化したものを発見し、復活させました。
レユニオン産のブルボン・ポワンテュは「グラン・クリュ・カフェ」という名前の最高品質コーヒーとして販売されています。
さてレユニオン島自体は独自の厳しい自然環境を有していますが、特に危険ではありません。
ですがレユニオン島近海には多数のサメが生息しており、2011年から2017年の間でマリンスポーツを楽しむ人を中心にシャークアタックが20件も報告され、そのうち8件で死者が出ています。
レユニオン島を訪れる際には、サメに気をつけましょう。
ファラロン諸島
引用元:https://www.nytimes.com/
ファラロン諸島はサンフランシスコ沖にある島々です。
諸島全域が国立の野生動物保護区に指定されており、海鳥やアザラシ、クジラ、ホホジロザメなどが多数生息しているほか島の近海は海流が複雑で、しばしば海難事故も発生しています。
独特の尖った形の岩礁と複雑な海流から、ファラロン諸島は船乗りたちに「悪魔の歯の島」とも呼ばれます。
しかしファラロン諸島が危険なのはそれだけではありません。
ファラロン諸島は1946年から1970年の間、放射性廃棄物の廃棄場として使われており、現在も放射性廃棄物が55ガロン入りのスチームドラムおよそ47000個分も投棄されています。
放射性廃棄物の撤去も検討されたことがありますが、そのままにしておくリスクよりも撤去することによって発生するリスクのほうが高いため、そのままにしてあります。
更にアメリカ軍が行った「クロスロード作戦」で核兵器の標的とされた艦船の一部はファラロン諸島で破壊され、撃沈されています。
太平洋ゴミベルト
引用元:http://chiryou-ka.com/
太平洋ゴミベルトは、正確には島ではありません。
北太平洋の中心部、およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の範囲にかけて存在する海洋ゴミの集まった海域を指します。
特に集中する部分ではゴミが集まって島のようになっていると言われています。
太平洋ゴミベルトは北太平洋の大部分を占める北太平洋亜熱帯環流、つまり黒潮、北太平洋海流、カリフォルニア海流、北赤道海流の作用によって形成されます。
渦は外側ほど流れが激しく、内側になると穏やかになります。
そのため海に投棄されたゴミは環流に乗って内側へ内側へと流れ、太平洋ゴミベルトを形成するのです。
同種の海域としては、大西洋にも「北大西洋ゴミベルト」が存在します。
太平洋ゴミベルトには非常にプラスチックが多く、環境への悪影響が懸念されています。
単純にゴミを誤飲する、投棄された網に水生生物が引っかかるだけでなく、プラスチックが太陽光によって光分解し、細かな粒子となり、動物性プランクトンと間違えて食べてしまうことなども問題です。
粒子となったプラスチックは動物の体内に有機性の有毒物質となったり、体内でホルモンと似た作用を発現してホルモンを攪乱させる可能性があります。
太平洋ゴミベルトは私たちの生活にも深く関係した島であると言えるでしょう。
ヴォズロジデニア島
引用元:https://haikyo.info/
ヴォズロジデニア島は中央アジアのアラル海にある島です。
アラル海が干上がった影響で、現在は島ではなく半島となっています。
ヴォズロジデニア島ではかつて1500人ほどの島民が住んでいました。
しかし1930年代ごろからソビエト連邦の細菌研究所が稼働しており、炭疽菌や天然痘、ボツリヌス菌など40種類以上の細菌が研究され始めます。
管理体制は杜撰なもので、1971年には島民10人が天然痘にかかる事件が、1979年には炭疽菌事件が起きています。
1988年には研究員が国際条約違反を恐れて炭疽菌を島に埋め、1992年に研究所は遺棄されました。
911テロが起きた後、この島に残された炭疽菌がテロに利用されることを防ぐためにアメリカとウズベキスタンが炭疽菌の除染を行っています。
しかし他の細菌は放置されたうえ、細菌に感染したネズミやノミなどが感染症を媒介していると言われています。
ビュルネイ島
引用元:https://www.pinterest.jp/
ビュルネイ島は北極海のバレンツ海にあるノルウェー領の島で、ノルウェー本土とスヴァールバル諸島の中間に位置しています。
ホッキョクグマが多数生息していたことから「ベア島」とも言われます。
1915年よりノルウェー領となり、かつては炭鉱採掘のために民間人が住んでいましたが、現在は測候所のスタッフが住むのみです。
1989年、ビュルネイ島の近海でソ連海軍の原子力潜水艦の「コムソモレット」が沈没しています。
今もコムソモレットは海底に残っており、潜水艦や潜水艦に搭載された核魚雷から放射線が漏れていると言われています。
グルイナード島
引用元:http://scotislands.com/
グルイナード島(グルーナード島)は、スコットランド北部にある島です。
かつては有人島でしたが、1942年にイギリス軍により接収され、病原性の高い炭疽菌の研究に行われました。
研究に際しては島に残された羊に対して炭疽菌爆弾を炸裂させ、炭疽菌に感染させるなど島や島の生物を汚染するもので、当時の敵国であったドイツにも有効であることが証明されました。
しかし同時に島は即座に除染することが困難になるほど汚染され、1945年時に無期限隔離されます。
1986年に島の除染が行われ、1990年には元の所有者のもとへ返還され、1997年には安全宣言も出されました。
炭疽菌は地上では確かに除染されましたが、水中や地底などにまだ残っているのではないか、とも言われています。
ビキニ環礁
引用元:https://digitalcollections.lib.washington.edu/
1946年夏、アメリカ軍は日本海軍から接収した戦艦「長門」や軽巡洋艦「酒匂」、ドイツ海軍の重巡洋艦「プリンツ・ユージン」、更にアメリカ海軍の老朽艦などを標的に核兵器の威力を検証する「クロスロード実験」を行いました。
その実験場となったのがビキニ環礁です。
当時ビキニ環礁はアメリカの信託統治領であり、クロスロード作戦に先立って住人はロンゲリック環礁に移住させられ、更にクワジャリン環礁、キリ島へと住居を転々とさせられています。
1946年のクロスロード作戦を皮切りに、ビキニ環礁では1958年までの12年で23回も核実験が行われました。
1954年に行われた実験では、マグロ漁に訪れていた漁船の「第五福竜丸」の乗組員が被爆し、急性放射線障害により1名が死亡しています。
この事件は広島、長崎に次ぐ第三の放射線災害として大きな話題となり、日本の市場では遠洋漁業で獲ったマグロが「原爆マグロ」、「原子マグロ」として風評被害を受けています。
ほかにも人気の映画シリーズである「ゴジラ」は第五福竜丸の被爆がきっかけとなって制作されました。
また水着の「ビキニ」もビキニ環礁が由来となっています。
フランスのファッションデザイナーのルイ・レアールが「まるで原子爆弾のように“ビキニ”は小さく、破壊力がある」と、原子爆弾になぞらえてビキニと命名したものが始まりです。
このようにビキニ環礁における核実験は様々な方面に影響を与えました。
1958年に核実験が終了したのちビキニ環礁は返還されましたが、住民が健康不安を訴えたために再度の移住とアメリカに対しての訴訟を行っています。
ビキニ環礁の放射線濃度は幾度となく再検査され、現在も島民は戻れていません。
再びビキニ環礁に住めるようになるのは、早くとも2052年ごろのことと言われています。
また2008年に行われた調査ではビキニ環礁のサンゴ礁は80%が復活していますが、28種のサンゴが核実験で絶滅したとされています。
2010年、ビキニ環礁は「ビキニ環礁核実験場」として負の世界遺産に登録されました。
まとめ
今回は世界一危険な島について紹介しました。
危険な島には大自然の作った脅威から、人の手によって作られた死の島など様々あります。
もちろん旅行先になるような島でも、対策が不十分であったりすると思わぬ危険に直面することがあります。
どうしても島だと都会よりも困ったときの対応が遅くなります。
入念な対策をしておきましょう。