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【レッドリスト】世界の絶滅危惧種の動物たち15選

現在地球上には500万~3000万種の生物が生息すると考えられており、そのうち人間が名前を付けているものは180万種程度に過ぎないと言われています。

それだけ沢山の種がいるのであれば、1つや2つ絶滅する種類があっても問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、1つの生物がいなくなれば、それを捕食していた動物、種子を運んでもらっていた植物、といったように繋がりを持つ生物も死に絶え、その連鎖は続いていく可能性もはらんでいるのです。

この記事では、2018年現在、レッドリストで絶滅危惧種として指定されている生物を、15種紹介していきます。

 

IUCNレッドリストとは?

IUCN(世界自然保護連合)が絶滅危惧種について調査、登録をしてまとめたものがレッドリストです。

レッドリストでは、哺乳類や鳥類などから菌類、無脊椎動物に至るまで全ての生物の、個体群の増減の傾向、個体数の集まり方、分布範囲などの状況を総合判断して、生物の絶滅危険性を評価しています。

絶滅のリスクが低い順から、高い順へ

・未評価(NE)

・情報不足(DD)

・軽度懸念(LC)

・準絶滅危惧(NT)

・絶滅危惧Ⅱ類(VU)

・絶滅危惧ⅠB類(EN)

・絶滅危惧ⅠA類(CR)

・野生絶滅(EW)

・絶滅(EX)

と、8段階に分けて評価されます。

 

グーティサファイアオーナメンタルタランチュラ

絶滅危惧ⅠA類に指定されるグーティサファイアオーナメンタルタランチュラは、インドのプラデーシュ州のごく一部に生息する蜘蛛。

1899年に初めて発見されて以降、再発見の報告がなく、2001年に再度姿が見られたことにより、正式な調査を経てレッドリストに登録されました。

生息域は100平方メートル以内と推察されており、この小さな生息域は環境破壊で更に狭く、質が悪いものになっていくことが予測されています。

また美しい紫色の体色を持つことから国際ペット貿易商に捕獲されていることも、この種の個体数の減少に大きく影響をしており、野生下の天敵などは確認されていません。

現在、他の山脈の麓や似たような環境にも生息している群があるか調査が進められていますが、確認されている一箇所のみの生息であった場合、近い未来に消滅する可能性が非常に高い種であると考えられています。

 

タイマイ

絶滅危惧ⅠA類に指定されるタイマイは、熱帯~亜熱帯の水域に生息する遊泳型の海洋爬虫類。

食用や甲羅を目的とした乱獲や、漁業の網などによる怪我、産卵場所である砂浜の破壊、餌場のサンゴ礁の消滅など多様な理由で数を減らし続けていると考えられています。

多くの国でタイマイとその卵の捕獲を禁止する法律が制定されており、特に甲羅に関しては国際的な禁止を図ろうとする働きがあるものの、未だに違法売買は多く見られるのが現実です。

そのため闇市場の摘発や、産卵場所の砂浜の環境改善などが、タイマイの生息数を増やす鍵であると考えられています。

 

アメリカアカオオカミ

絶滅危惧ⅠA類に指定されるアメリカアカオオカミは、世界で最も希少なイヌ科生物の一種です。

かつてはアメリカ合衆国南東部全域に生息しており、カナダでも姿を見ることができましたが、20世紀中に大きく数を減らして1980年には野生種の絶滅が宣言されました。

古くからこの種は家畜と狩猟の邪魔をする害獣であると考えられており、駆除されたことが生息数を減らした原因であり、現在ではコヨーテとの異種交配による混雑種の発生が、種の保存を困難にしているとされています。

1975年には保護された個体を元に飼育下での繁殖が行われるようになり、産まれた個体はノースカロライナ州北東部の非都市部に放たれました。

この再生プログラムは大成功を収め、2010年には野生の集団として定着した個体数は100~130頭になり、現在も発信機を付けた個体の追跡調査が行われています。

ジャワサイ

絶滅危惧ⅠA類に指定されるジャワサイは、ジャワ島とベトナムの狭い区域にのみ生息が確認されているサイで、世界最大の哺乳類の一つです。

かつては東南アジア全土に生息していましたが、現在の生息地は僅か2箇所に限られるうえに、ベトナムには6頭しかいないと考えられています。

ここまで急激に個体数を減らした背景にあるのが、人間による乱獲。角などが漢方薬の原料として高値で取引されていたことから、生息域が減少してもなおジャワサイを狙う密猟者が後を絶ちませんでした。

現在はワシントン条約により国際取引が禁じられ、2つの保護区が設けられているものの、万一保護区域内で病気が流行ったり、繁殖が失敗した場合は、絶滅しかねない状況にあることは変わりません。

 

ベンガルハゲワシ

ベンガルハゲワシは絶滅危惧ⅠA類に指定されるタカ科の生物。

北アジアに生息し、かつては数百万羽は存在したとも言われる世界で最もありふれた猛禽類の一種でした。

しかし現在の生息数は1万羽をきっているとされており、個体数を激減させた背景にあるのが、人間にも解熱、鎮痛剤として利用されるジクロフェナク。

これを投与された家畜の死骸を食べたことが原因で、死に至るベンガルハゲワシが急増したことが明らかになったのです。

ベンガルハゲワシの減少により、この種が食べていたとされる動物の死骸が腐乱したまま放置されるようになり、北アジアの一部では村民の健康被害や、狂犬病の野犬が集まってくるといった被害も生じることとなりました。

現在は飼育下における繁殖プログラムも整備され、インド亜大陸ではジクロフェナクの使用も禁じられる運びになったものの、代替のメロキシカムが高価であることから、未だにジクロフェナクが市場に出回っていることが確認されています。

 

ジャマイカツチイグアナ

絶滅危惧ⅠA類に指定されるジャマイカツチイグアナはイグアナ科の生物で、世界で最も希少なトカゲであるとされています。

ジャマイカ島南部の乾燥した沿岸地域に生息していたこの種は、1940年代に絶滅したと考えられていましたが、1970年代に入って死骸が発見され、その後の調査で1990年に島南部のヘルシャ・ヒルズで再発見されました。

かつての生息域は都市開発のために破壊されたうえ、人間が持ち込んだ外来哺乳類捕食者、特にマングースにより捕食されたことが原因でその数を激減させたと考えられており、現在の生存個体数は僅か100頭程度のみと推測だれています。

現在は保護した幼体をある程度まで育ててから野生に戻すこと、巣の近辺に生息する捕食者を排除することなどを主とした、個体数回復プログラムが実行されており、これまでに100頭以上がヘルシャに戻されてきました。

これにより保護区域内に巣を作る集団が増えており、2箇所の営巣地で見られる雌の個体数はこの20年で倍以上に増えています。

 

リカオン

絶滅危惧ⅠB類に指定されるリカオンは、イヌ科の生物。

死肉を食べず、生きている獲物を集団で食いちぎることで有名なリカオンですが、現在は西アフリカで絶滅、北東~中央アフリカのごく僅かな地域でのみ姿が確認されています。

ライオンなどの大型肉食獣との餌の奪い合いなどが個体数減少の原因と考えられてきましたが、実は人間が連れている家畜犬からうつされた狂犬病や犬ジステンバーといった病気や、車との接触事故など人間の活動が要因で絶滅に瀕していることが判明しました。

現在は保護区域を設けて家畜犬との接触を避け、罠や毒薬などでの意図的な殺害を止めるよう地元民に呼びかけることで、個体数を保全する試みがされています。

 

ヒラシュモクザメ

絶滅危惧ⅠB類に指定されるヒラシュモクザメは、シュモクザメ科に属する大型のサメ。

世界中の熱帯の水域に生息しており、フカヒレ目的による乱獲や、マグロ漁の網に絡まって怪我をすることなどが原因で個体数を減らしてきました。

サメ科の生物は海洋生態系の頂点にいることから個体数が少なく、一回に産まれる卵も少なく繁殖率も低いことから、一度数が減ると元の数に戻すことが非常に困難です。

海洋最強の捕食者であるサメが減ることは、生態系へ与える影響も非常に大きいと懸念されるため、アメリカ合衆国、EU、オーストラリアではフカヒレの採取が禁止されるに至りましたが、未だに違法なサメ猟は横行しているため、更なる国際的な法整備が急がれます。

 

タスマニアンデビル

絶滅危惧ⅠB類に指定されるタスマニアンデビルは、フクロネコ科に属するオーストラリア固有種。

かつてはオーストラリア本土にも生息していたものの、現在はタスマニア島でのみ姿を見ることができます。

最初に個体数を減らした原因は、ヨーロッパからの入植者達が家畜を狙う害獣として殺害したためであり、1941年に保護法が設立されたことで、一時は個体数が回復しました。

しかしその後、デビル顔面腫瘍疾患という致死性の癌がタスマニアンデビルの間で流行するようになり、これが原因で総個体数の40%が命を落とし、病気の流行期間が長かった地域では減少率は90%を超えたとも言われています。

タスマニアンデビルは死んだ仲間が使っていた巣穴を再利用する習性があるため、巣穴を介して病気に感染する可能性もあるとして、現在病原菌を持たない個体を隔離して保護をする計画が実行されています。

 

バンテン

絶滅危惧ⅠB類に指定されるバンテンはウシの一種。

ミャンマーからインドネシアにかけて生息しており、現存の個体数は8000頭を下回ると考えられています。

個体数が減少した理由は、環境破壊による生息域の縮小と肉や角を狙った乱獲。

数多くの保護区域が設けられているものの、未だにこの種を狙った密猟や不法取引が横行しています。

近年行われた遺伝子調査の結果、保護されたバンテンが家畜化されたバリ牛を遺伝的ルーツに持つ可能性が示唆され、緊急の際には交配することで絶滅を防げるのではないかと言われています。

 

トラ

絶滅危惧ⅠB類に指定されるトラは、既にカスピトラ、ジャワトラ、バリトラの3種が絶滅しており、現生の6亜種の中でもカナントラは長期にわたって生きた個体の姿が確認されていません。

インドには現時点でも1400頭のトラが生息しているとされていますが、全世界での合計個体数は3200頭と少なく、それもアムールトラ、スマトラトラ、ベンガルトラ、アモイトラ、マレートラの5種を合わせたもの。

生態系の頂点にいる大型肉食獣であるトラの脅威となるものは毛皮を狙った密猟や、餌となる獲物の減少。これにより生息域は最盛期の7%程にまで縮小してしまったと言います。

絶滅を防ぐためにはトラの保護のみならず、餌となる動物の個体数の回復や生息域の環境改善などが必須とされており、地元住民の協力が不可欠とされています。

 

ジャイアントパンダ

動物園の人気者であるジャイアントパンダも、絶滅危惧ⅠB類に指定されています。

絶滅危惧種を救うための国際的な基金として有名なWWFのロゴマークにも使用されているこの種は、かつては中国南部や東部の広い範囲に生息していたものの、現在は以前の生息域の西端にある6つの山脈でのみ生存が確認されています。

個体群や生息域の縮小の原因となったのは、材木や薪の刈り取りによる森林破壊。これにより住むところを追われた群は孤立化してしまったのです。

餌が確保できる場所が点在化してしまったため、ジャイアントパンダは生息域で食糧難が起きても移動することができません。

そのため周期的な竹の胴枯れの影響も非常に受けやすく、毛皮目的の狩猟などの積極的な介入がなくとも、徐々にその数を減らしているのです。

現在中国国内には60以上の保護区域が設定され、飼育下での繁殖で誕生した個体も300を超えるに至りました。

今後は野生の個体群を強くするために、飼育下で産まれた個体を放して交配を試みる計画が立てられています。

 

アフリカマナティ

絶滅危惧Ⅱ類に指定されているアフリカマナティは、カイギュウ目マナティ科に属する生物。

セネガルからアンゴラにかけての沿岸部の浅瀬や湿地帯、河川に生息しています。

現生するカイギュウ目の中でも最も知られていない種であるアフリカマナティは、魚網に掛かっての怪我や、肉や骨、皮、脂を目的とした狩猟や、生息域周辺環境の破壊により数を減らし続けており、地球の気候変動の影響で更なる悪化が懸念されています。

現在この種はワシントン条約で生息する全ての国で保護するよう明文されていますが、セネガルにおける人間社会の貧困が、効果的な保護を極めて難しいものにしています。

 

ホホジロザメ

シャチやマッコウクジラと並び海洋生物最強と呼ばれるホホジロザメも、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。

ほぼ全ての海域で姿が確認されており、特に熱帯や温帯の沿岸部に生息するこの種は、長い間、人間を殺す海のモンスターとしてメディアで取り上げられてきました。

そのためサメの中でも不当に注目されることとなり、フカヒレ採取のためだけでなく、スポーツとしての釣りや、賞金目当ての乱獲などが横行し、またホホジロザメ自身の持つ好奇心旺盛な気質も手伝って釣り具や漁船のモーターで怪我を負うことも多く、個体数を大幅に減らすこととなりました。

現在ホホジロザメは、アメリカ合衆国や南アフリカ、イスラエル等の排他的経済水域と領海で保護がされており、国際釣り連盟の記録対象からも外すよう働きかけがされています。

また、サメの捕獲で得ていた収入の代替として、サメを見ることができるツアーやダイビングなどの導入が進められており、この案により途上国の教育水準の向上も期待されています。

 

まとめ

古くから生物の絶滅は、多種の進化を促す側面もあるために必要不可欠のものであるとされてきました。

しかしながら天災や自然淘汰により絶滅する種があることと、人間の介入により死滅する種が発生することには大きな違いがあります。

生息域と離れた場所で生活していても貢献できることはあるのか、改めて考えてみる必要があるのかもしれません。



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