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最強戦闘機「F-22 ラプター」の全て!最新の第5世代ステルス戦闘機

F-22ラプターといわれても、一般の人にはなじみの薄い戦闘機かもしれません。

アメリカ空軍で使われている戦闘機ですが、日本では目にする機会もほとんどなく、航空自衛隊が新しく導入したF-35のほうが有名かもしれません。

ですが、このF-22ラプターは世界で初めて第5世代ジェット戦闘機に分類された、高いステルス性をもった凄い機体なのです。

ここでは、驚異のステルス戦闘機F-22ラプターについて、紹介していきましょう。

 

F-22 ラプターとは

引用:https://nationalinterest.org

「F-22 ラプター」はアメリカのロッキード・マーチン社とボーイング社によって共同開発された高いステルス性をもった世界初の第5世代戦闘機といわれる機体です。

愛称の「ラプター(Raptor )」とは「猛禽類」という意味で、当初は第二次大戦で活躍したロッキード戦闘機「P-38ライトニング」にちなんで「ライトニングⅡ」と命名されましたが、のちに、ロッキード・マーチン社を中心として開発されていたJSF(統合打撃戦闘機。F-35戦闘機のこと)にその名称を譲っています。

F-22は様々な任務や用途での運用が可能なマルチロール機で、高い空戦能力をもっており、ロッキード社では「Air Dominance Fighter(航空支配戦闘機)」というキャッチフレーズをつけています。

1981年、アメリカ空軍はF-15 イーグル戦闘機の後継となる新型戦闘機計画としてATF(先進戦術戦闘機計画)を本格化させました。

次期戦闘機には、当時出現しつつあったソ連の第4世代戦闘機を格闘戦で圧倒できる優れた空中戦能力とより高いBVR(視界外戦闘)能力が要求されました。

さらに、当時はまだ夢物語と言われていたアフターバーナーを使用しない高マッハ速度での超音速巡行能力や、本格的なステルス性能という、当時の第4世代機を凌駕する技術革新を達成しない限りは実現不可能な性能が求められていました。

提案要求書(RFP)を送られた5つのメーカーは開発チームを組み、ロッキード社とボーイング社、ジェネラル・ダイナミクス社のチーム、ノースロップ社とマグダネル・ダグラス社のチームという2チームが編成され、各社が試案を提出しました。

このうち、ロッキードのYF-22とノースロップのYF-23が試作され、比較試験の結果、ステルス性能においてはYF-23が勝るものの、総合的な性能ではYF-22が優れているとして、1991年4月アメリカ空軍はATF計画の勝者としてF-22の採用を決定しました。

本来は1994年より配備が開始される予定でしたが、冷戦終結に伴う軍事予算の縮小に加えて、冷戦後に米軍の主任務となった低脅威度戦争への対応のための対地攻撃能力を付与するなど要求変更があったため、F-22の開発・調達計画は大きく遅延しました。

2003年から配備が開始されて作戦部隊での運用は2005年12月となり、第1航空団第27戦闘飛行隊(バージニア州ラングレー空軍基地)を最初として、従来F-15C/DやF-117Aを装備していた部隊を中心に配備が進められていきました。

2007年からは、年に1~2回、嘉手納基地など日本にも飛来していて、運が良ければその姿を見ることができます。

 

F-22の性能

引用:https://en.wikipedia.org

F-22は本格的なステルス性能や超音速巡行能力など開発時に要求されたすべての性能をもつ機体として完成しています。

初の第5世代ジェット戦闘機に分類されるF-22の最大の特徴となるのが、制空戦闘において発揮される従来の第4世代機を圧倒できる高い能力で、高いステルス性能とレーダー、空戦能力、大推力エンジンなどが備わっています。

F-22は非常に高いステルス性能をもっていて、機体の設計においても、機体のエッジ(縁)の角度をできるだけ統一することや継ぎ目は三角形を組み合わせたものとすることや、段差や溝を極力生じさせないようにすること、RAM(レーダー波吸収素材)やRAS(レーダー波吸収構造)の採用など、各所にRCS(レーダー反射断面積)低減のための技術が盛り込まれています。

胴体両側面にあるエアインテーク(空気取入口)も開口部は菱形で、ダクトは内側に曲げるとともに上に持ち上げられる形を採っていて、エンジン前面のファンを隠して正面からのRCSを低減させています。

機体の材質もレーダー波のエネルギーを熱に変換して損失させてしまう電動損失率の高いものが使われていて、F-22のレーダー反射面積は0.001~0.01㎡といわれます。

F-22が真正面から接近してきた場合のレーダー反射信号の大きさは、ビー玉程度(F-35はゴルフボールほど)を探知するのと同じくらいとされています。

ロシア戦闘機Su-35の場合、搭載しているイルビスレーダーでF-22を探知するのに36㎞まで接近しなければなりませんし、ロシア軍のS-400防空システムの射撃管制レーダーの場合は21㎞に接近されるまでF-22に気づくことができません。

さらに、F-22は自らの被発見率を低くするだけでなく、敵戦闘機を捕捉する優れたレーダー性能をもっています。

F-22はアメリカ空軍初となる実用アクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーであるAN/APQ-77を搭載しています。

固定したアンテナ面には2000個もの超小型レーダー用送受信モジュールが配列されていて、探知範囲は水平・垂直方向に120°ずつあり、多彩な走査モードを使うことができます。

F-22は機首部に、自機から発射したレーダーの反射波のみを正確に受信し、その他の電波信号を反射させてしまうハンドパス型レドームを備えています。

レーダーの性能自体はF-15の搭載するAN/APG-63と同等とされますが、F-22のほうが高いステルス性をもっているため、メーカーの標榜する「先制発見(ファーストルック)・先制攻撃(ファーストシュート)・先制撃破(ファースト・キル)」を実現できるとされます。

AN/APQ-77には、こちらのレーダー波照射によって逆に敵機にF-22の接近を知らせてしまうことのないよう、低迎撃確率(LPI)機能という、敵に感づかれない程度の非常に短時間のレーダー走査によって必要な目標データを獲得できる先制探知能力が備わっています。

AN/APQ-77の空対空目標の最大探知距離は185㎞以上ですが、目標に応じて250~300㎞ほどにもなるともいわれ、仏ラファールや英・独タイフーンのようなRCS1㎡の観測性低減(RO)戦闘機の第4.5世代戦闘機であっても、約200㎞の距離から捕捉可能といわれます。

ほかに、地上目標に対する捜索・攻撃の空対地モードや気象マッピング、電子戦など様々な機能が組み込まれています。

現在はF-35用のAN/APG-81レーダーで導入された空対地機能・電子戦機能を加えた改良型のAN/APQ-77(V)1の開発・試験が行われていて、将来はF-22のレーダーがこちらに換装されていくとみられます。

F-22は大推力のプラット&ホイットニーF-119-PW-100ターボファンエンジンを2基搭載し、これはアフターバーナー使用時に推力156kNで燃料満載時の推力重量比(機体が発揮できる加速度)1.14と高い機動性を発揮します。

アフターバーナーを使用しないドライ時の推力(ミリタリー推力)は98kNで、これにより、F-22はマッハ1.82という高い速度レベルで約40分ほどの超音速巡行が可能です。

F-22の機体は、超音速飛行時に機体表面が空気との摩擦によって起こす高温にも耐えられるように、複合材の使用を35%に抑えて、代わりにチタンが多用されており、低抵抗設計による空力的に優れた機体フレームとなっています。

エンジン排気ノズルはベクタード・スラスト・ノズルと呼ばれ、耐熱セラミック・マトリックス製の電波吸収材でできていて、上下20度の角度まで推力軸を傾けることのできる二次元式の推力偏向パドルを備えています。

ベクタード・スラスト・ノズルでジェット噴流を上下に曲げる推力偏向方式によって、F-22は動翼の効きが悪くなる超音速飛行時や低速飛行時、高高度や低空でも高い機動力を発揮することができ、大迎角時の操縦・制御を可能にしたり、短距離離陸性能を向上させています。

F-22のコクピットではHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)に飛行情報や戦術情報・暗視装置などの映像を投影し、その下の戦術状況表示ディスプレイには中央の画面には主な戦術状況を、両側にはそれぞれ攻撃・防御用の情報を表示します。

情報量が多すぎて、パイロットの判断能力が追い付かなくなるということのないよう、コンピューターが情報を一括処理して一本化し、重要かつ必要なものだけがディスプレイに表示されるようになっています。

レーダーや電子戦システムによって敵機や敵ミサイルサイトなどを探知して画面に表示するため、パイロットは敵レーダーの捜索可能範囲を避けて飛行することもできます。

さらに、F-22はデータリンクによるネットワークへの接続性や統合化されたセンサー融合電子機器も現用戦闘機のなかで最高水準にあります。

なかでも、編隊や早期警戒機、司令部などからの広範囲でほぼリアルタイムな情報を、手持ちのデータと融合し、共有できるデータリンクは重要なシステムです。

編隊内で使う飛行間データリンク(IFDL)では、僚機とのあいだで、緊急性を有する音声およびデータメッセージを個別に送受信する秘匿データリンクで、目標データを相互に共有できるのが特徴です。

これによって、例えば、編隊長機が危険を冒してレーダー索敵を実施し、捕捉した敵機の情報はレーダー未使用の僚機にも自動配信されるため、僚機が敵に全く気づかれることなく、優位なポジションに飛行してミサイル攻撃を行うことができます。

このように、ステルス性からレーダー、格闘戦能力に至るまで優れた性能をもつF-22は、まさしく世界最強の戦闘機と呼べるもので、第4世代機以前の戦闘機との交戦において敗北したことのないF-15でも、F-22と交戦すれば120対1の交換比率で敗北すると評されています。

一方で、F-22は精密誘導兵器を用いた対地攻撃による高価値目標攻撃も基本任務の一つとしていますが、戦闘機としては優れているものの、F-35のような多用途性は限定的となっています。

 

F-22の派生形

引用:http://www.codeonemagazine.com

開発当初は転換訓練などに使用するため複座型のF-22Bを生産する予定でしたが、開発費用の高騰に伴う予算縮小や地上シミュレーターにより代替が可能といわれたため、生産されずに終わりました。

F-22が今でもF-22Aと表記されることがあるのはこの名残です。

また、派生形としてロッキード社がステルス爆撃機型のFB-22をアメリカ空軍に対して提案しており、うまくいけば2013年に初飛行、2018年に実戦部隊へ配備される予定でした。

しかし、ベースとなるF-22がそもそも高価であること、従来の爆撃機と比較して航続距離や爆弾搭載量に劣ることから計画は中止となりました。

他に、海軍の向けの艦載戦闘機型F-22Nがあり、F-22と部品を共通化し可変翼を備えた機体とされましたが、これも計画中止となっていて、F-22は試作機などを除きほぼすべての機体が基本形で、これも2009年に生産が終了しています。

2018年4月、ロッキード・マーチン社が日本の防衛省に対し、F-2戦闘機の後継として、F-22の機体にF-35のアビオニクスとステルス性能を組み合わせた戦闘機の開発案を提案したと報道されました。

これは2030年ごろから退役の始まるF-2の後継機選定に際して、防衛相がロッキード社、ボーイング社、そしてイギリスのBAEシステムズ社に対して情報提供を呼びかけ、ロッキード社がこれに応えたものです。

今後、アメリカ政府および議会の承諾を得て、正式提案がされるとみられ、実現すればF-22戦闘機にとって初といえる派生型の誕生となります。

F-22の価格

引用:https://ja.m.wikipedia.org

冷戦終結や開発費高騰によって、F-22の生産数は段階的に削減されていきました。

そうすると、生産数減少によって1機あたりの機体価格が上昇し、それを受けてまた生産数が削減されるということになり、負のスパイラルに陥ってしまいます。

ATF計画当初はアメリカ空軍だけで1000機以上の導入が見込まれていたF-22ですが、予定生産数は750機とされ、最終的には195機(うち8機はテスト機)のみと調達数は大幅に減らされ、配備計画も変更を余儀なくされました。

1機当たりの価格は1億7760万ドル(約195億円)となっていて、戦闘機としては世界一高価な機体です。

それに加えて、最新のステルス性能を維持するために整備費用も高額で、空軍の整備員だけでメンテナンスをすることが難しいためメーカーへの保守費用の支払いが必要になることに加え、機密部分が多いため守秘費用も増大し、固定費を高騰させています。

また、レーダー波吸収素材は雨や擦り傷によってダメージを受けるため、1回の飛行につき30時間以上・4.4万ドル(約500万円)以上の経費をかけた整備が必要とされます。

F-22は日本、イスラエル、オーストラリアへの輸出も検討されていました。

特に日本では、その高性能から航空自衛隊が第4次F-X(次期主力戦闘機)の大本命として熱望していましたが、ステルス技術をはじめてとしてアメリカの最先端技術を結集した機体であるF-22は、高度な技術の国外への流出を防ぐため、輸出は許可されず、アメリカ空軍のみでの運用となっています。

ちなみに、ロッキード社が日本の防衛省に対して提案しているF-35とのハイブリッド戦闘機は1機当たり2億ドル(約220億円)前後が提示されていて、こちらもF-22に負けず劣らずの高価格品です。

F-2後継機に関してはX-2の研究内容を反映した自国開発案やBAE社によるユーロファイター・タイフーンをベースとした機体の案も存在しています。

すでにF-35の導入を決定している航空自衛隊にそれ以上に高価な戦闘機の予算を捻出できるのかという問題もあります。

しかし、空自にとっては念願のF-22の技術を手に入れるチャンスであり、さらにロッキード社は日米同盟や日本の防衛産業を考慮して、生産における日本側の比率を50%以上にするとしていて、ロッキード案はかなりの有力候補とみられています。

 

F-22の兵装

引用:http://barbarossa.red

F-22が空対空戦闘で使用する主兵装は、中距離/射程外射程(BVR)ミサイルのAIM-120 AMRAAM(アムラーム)と短射程/射程内射程(WVR)ミサイルのAIM-9サイドワインダーです。

AIM-120はAIM-120A/Bも搭載可能ですが、基本的にはAIM-120Cが用いられています。サイドワインダーのほうはAIM-9Mと90°のオフボアサイト交戦能力(離れた目標への照準・攻撃能力)を備えるAIM-9Xが搭載可能ですが、F-22ではヘッド・マウント・ディスプレイのJHMCS(統合ヘルメット装着照準システム)の導入が見送られたため、真横の敵をロックして攻撃することなどができず、現状ではAIM-9Xの能力をフルに発揮させることができません。

ほかに、対地攻撃用の装備としてGPS/INS誘導方式の爆弾であるGBU-32 1000ポンド(454㎏)  JDAM(統合直接攻撃弾薬)とともに、F-22にウェポン・ベイに適したGBU-39 SDB(小型爆弾)もあります。

F-22はステルス性の維持のため、兵装を機外搭載せず、すべてウェポン・ベイに収めます。

ウェポン・ベイは中央胴体下面の2か所と左右のエアインテークの側面各1か所の計4か所です。

エアインテーク側面のウェポン・ベイはAIM-9サイドワインダー専用で、各1発ずつ搭載できます。

胴体下面のウェポン・ベイにはAIM-120C AMRAAMを最大3発ずつ搭載でき、AMRAAM の代わりにJDAM 2発もしくはSDB 8発を搭載することもできます。

AIM-120CはF-22のウェポン・ベイに内蔵するために翼端が切り落とされていますが、これによって空力性能や機動性に変化はないといわれます。

今後、F-22にはAMRAAMの最新型で、射程距離100㎞以上で、GPSを搭載やデータリンクによって誘導精度が向上し、後方の敵機も攻撃できるというAIM-120Dの搭載も予定されています。

また、超音速飛行時にミサイルを発射することで、ミサイルの射程を伸ばすことができます。

固定武装としては20㎜のM61A2機関砲(弾数480発)を装備していて、発射口は通常は閉じられていて、発射の際のみ開くようになっているなどここでもステルス性に対する配慮は徹底しています。

F-22は2014年9月22日、イスラム国に対する軍事作戦である「生来の決意」作戦の一環として、第5世代戦闘機としては初めての実戦参加を経験しました。

これは、アメリカ空軍第325戦闘航空団第95戦闘飛行隊に所属するF-22がシリア国内のイスラム国の指揮所に対して、GBU-32 JDAMを2発投下し、指定された建物を破壊することに成功したというものです。

その後もF-22はイスラム国に対する攻撃作戦に参加し、対地攻撃や爆撃機の護衛といった任務に従事しています。

 

まとめ

以上、アメリカ軍の誇る最強のステルス戦闘機F-22について紹介してきました。

F-22は高いステルス性に目が行きがちですが、格闘戦性能においても優れており、この二つを両立したアメリカの技術力は驚くべきものです。

F-22は純粋な制空戦闘機でマルチロール機とはなっていますが、多用途任務はF-35のような機体のほうが得意で、ほかの多用途戦機と組み合わせることで真価を発揮するといえます。

十数年まえから使用されている機体ですが、いまだにステルス戦闘機としては他国の機体を凌駕する性能をもつ驚異の戦闘機であり、最近ではF-2後継機として日本でもスポットがあたっていて、もしかすると、生まれ変わったF-22が日本の空を飛ぶ日もくるかもしれません。

これからどのような展開をみせていくのか楽しみです。

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