アニメや映画などで度々登場することがある魔導書(グリモワール)という書物があります。
魔導書は主に「キリスト教・ユダヤ教にまつわる神話」「魔術や呪術などに関する知識」「悪魔や精霊、天使などの召喚術や呪い」等について記された書籍の事で、主に中世後期から19世紀にかけてヨーロッパで実際に流布されていました。
今回はその中でも特に有名な10冊の魔道書をご紹介します。
1.ソロモンの鍵
「ソロモンの鍵」はヨーロッパの古典的魔道書で、『ゼコルベニ』『ソロモンの真の鍵』『知識の鍵』『秘密の秘密』など様々な題の異本群として存在しています。
内容は降霊術のための魔法円、七惑星のペンタクル、祈祷文、魔術道具の作成や清めといった準備作業、魔術作業の日時の選定(惑星時間)など、占星術的儀式魔術の実際についてなど、幅広く記載されています。
起源は定かではなく作者も不明ですが、遅くとも中世末の15世紀には成立し、17世紀から19世紀初頭にかけて広く流布しました。
原本は現存しておらず、写本が大英図書館、ボドリーアン図書館などに保管されています。
2.天使ラジエルの書
『天使ラジエルの書』はヘブライ語やアラム語で中世(500年~1500年頃)に書かれたカバラ的グリモワールです。
神の知識が記されている書物とされ、詳細な天使学、黄道十二宮の魔術的用法、ゲマトリア、「神」の名、防護の呪文、魔術的な治癒のお守りを書く方法について書かれており、持つ者に神秘の力を授ける書物と言われています。
しかし、ドイツのルネサンス期の魔術においては、『天使ラジエルの書』は非常に悪名高いものとなり、『ピカトリクス』と並び最も忌まわしいニグロマンティア (黒魔術) の書物と評されたこともありました。
現在は原本は失われてしまい、写本のみが後世に受け継がれています。
3.ホノリウスの誓いの書
ホノリウスの誓いの書は、古代エジプトの都市テーベのホノリウスという人物によって書かれた現存する最古の魔法書の一つです。
13世紀に『聖なる書』と呼ばれましたが、保存されている最古の写本は大英図書館に保管されている14世紀ものになります。
本書は、魔術に関する全ての知識を一巻の書物にまとめる為に、811人の魔術師が集まって会合を開いたことが物語られている。93の章があり、「煉獄から自分の魂を救い出す方法」「霊を強請し命令する方法」「天界に関する気宇壮大な情報」「盗人を捕らえたり財宝を発見する方法」まで、多岐にわたる問題を扱っている。
4.ピカトリクス
ピカトリクスは『賢者の極み』と題されたアラビア語の魔術書です。
11世紀に書かれたこの本は、それまでの魔術と占星術とを総合・総説した書物であり、全400ページにものぼる最大級の情報量を誇る魔道書は「アラビア語で記された最も完全な天界魔術の解説書」とされています。
ヨーロッパでは降霊術・黒魔術の書物と非難されることもありましたが、ラテン語版は15世紀に広く流布し、ヨーロッパの魔術世界に非常に大きな影響を及ぼしたとされています。
5.ガルドラボーク
ガルドラボークは1600年頃のものと推定されるアイスランドの呪術書です。
17世紀のアイスランドでは多くの人が呪術師として処刑され、多数の呪術書が燃やされており、本書はその時代のアイスランドの、知られる限り唯一の現存する呪術書です。
ラテン語とルーン文字を素材とした様々な呪いが、4人の魔術師によって記述されています。
6.ネクロマンサーズ・マニュアル(ミュンヘン降霊術手引書)
ミュンヘン降霊術手引書は、ドイツ・ミュンヘンのバイエルン州立図書館所蔵の15世紀のグリモワールの仮称です。
ラテン語で記された本書は、主として鬼神学と降霊術に関して記述されており、敵に恐ろしい幻覚を見せる呪文、強大なモンスターの召喚術、神獣への生け贄のささげ方などが書かれています。
7.術士アブラメリンの聖なる魔術の書
『術士アブラメリンの聖なる魔術の書』は、天使や悪魔を呼出しさまざまな願いを叶える方法を記した魔術書グリモワールのひとつです。
本書は14世紀から15世紀のドイツに住んでいたユダヤ人の魔術師が、神の真理に至る道を求める旅の途中で出会った老賢者のアブラメリンから学んだ数々の秘術を、息子に伝える為の手紙として書かれたものです。
「聖守護天使の加護を得て、悪魔を呼び出し自分の為に働くことを誓わせる方法」について詳しく解説されています。
聖守護天使の加護無しに悪魔を呼び出すのは非常に危険であり、呼び出せる悪魔は4人の上位王子ルシファー、リヴァイアサン、サタン、ベリアル、そして8人の下位王子アスタロト、マゴト、アスモデウス、ベルゼブブ、オリエンス、パイモン、アリトン、アマイモンの、計12人の大悪魔です。
魔術師は、彼ら大悪魔とその配下の使い魔たちに忠誠を誓わせることにより、彼らを使役する資格を得るとされています。
8.アルマデル奥義書
『アルマデル奥義書』は17世紀のキリスト教的魔術書で、パリのアルスナル図書館に写本が所蔵されています。
ジジル(黄道十二宮や惑星などを表す記号)を用いて天使、悪魔、精霊を呼び出す為の図形が数多く収録されています。
アルマデルが何者であるかは不明だが、トリテミウス、パウロ、ルルスなどと並び、17世紀の魔術において権威ある名前の一つであったようです。
9.悪魔の偽王国
『悪魔の偽王国』はヨハン・ヴァイヤーの主著『悪魔による眩惑について』の補足として1577年に著された魔道書です。
地獄の悪霊たちを神聖ローマ帝国の封建体制を思わせる位階秩序をもつものとして記述しており、『ソロモンの小鍵』の第一章である『ゴエティア』と同様に69の悪魔について召喚するのに適した時間と儀式が記されています。
10.大奥義書(グラン・グリモワール)
『大奥義書』は悪魔や精霊などの性質や、それらを使役する方法を記した黒魔術に属する魔術書(グリモワール)の一つです。
「一連の(グリモワールの)中で最も奇想天外なもの」とも評され、召喚において必要な神秘の杖の作製方法、悪魔の階級と名称の一覧、悪魔との取引を行うためにルシファー配下の悪魔であるルキフゲ・ロフォカレを召喚する手順、その他まじないの類が記載されています。
他の多くのグリモワールと同様に、『大奥義書』にも悪魔の階級構造が紹介されています。
地獄は皇帝ルシファー、君主ベルゼビュート、大公爵アスタロトの三柱の精霊が支配しており、支配者の配下に六柱の上級精霊(ルキフゲ・ロフォカレ、サタナキア、アガリアレプト、フルーレティ、サルガタナス、ネビロス)がおり、これら上級精霊がさらに三柱ずつ合計十八の精霊を指揮しています。
さらに、他にも何百万という精霊たちがいて、これらの上級精霊たちに仕えているとされています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
現代の私たちには考えられませんが、病気の治療法(悪霊の除霊法)なども書かれていたため魔術師以外の一般の人にも流布していたようです。今でもアフリカや南米など発展途上の一部の地域では同様の思想が残っています。
しかし、本当に呪術や悪魔の召喚が行われていたらと思うととても恐ろしいですよね。