ムカデは身近な害虫です。
都会ではなかなか見ないかもしれませんが、少し離れるだけで見つけることができます。
見た目が不快なだけでなく、噛みつかれると指などが腫れるなど実害もあるため、目の敵のようにしている人もいるのではないでしょうか。
今回は世界最大のムカデを紹介します。
画像付きなので、苦手な人はUターンしたほうがいいかもしれません。
ペルビアンジャイアントオオムカデ
引用元:http://www.exotic-supply.com/
ペルビアンジャイアントオオムカデはブラジルやペルーなどの南米の熱帯雨林に生息する、世界で最大のムカデです。
「ダイオウオオムカデ」、「ペルーオオムカデ」、「ギガスオオムカデ」とも呼ばれます。
体長は通常でも20から30センチ、大きい個体では40センチを超えます。
頭部は鮮やかな赤色、身体は濃い赤色をしていて足は黄色、関節はピンク色という見るからに毒々しい体色をしていますが、これはナナホシテントウやスズメバチ、ヤドクガエルなどに見られる「警告色」と言われる体色パターンのひとつです。
普通のムカデ同様昆虫やクモなどに加え、サソリや大型のクモであるタランチュラ、トカゲ、ネズミ、小型の鳥類、果てにはヘビまで食べてしまうほど獰猛で、威嚇の際には首を持ち上げると言われています。
狩りの際には大きな体長を活かして獲物に絡みつき、顎で噛みつくようです。
顎の力は非常に大きく、プラスチックの網程度であれば平気で噛みちぎってしまうほどで、毒も強いです。
過去には4歳の子どもがペルビアンオオムカデに噛まれて死亡した事例もあるそうです。
日本では当然野生の個体を見ることはできませんが、専用のペットショップで46000円ほどで購入することができます。
飼育は難しいと思われますが、愛好家の方であれば興味を示すのではないでしょうか。
Scolopendra galapagoensis(Darwin's Goliath Centipede)
引用元:https://www.flickr.com/
Scolopendra galapagoensisはペルビアンオオムカデの近縁種で、Scolopendra galapagoensis(ガラパゴス諸島のオオムカデ)という学名通りにガラパゴス諸島やその対岸であるエクアドルに生息しています。
その体長は20から30センチほど、未確認ですがなんと60センチほどに成長した個体もあると言われています。
乾燥地帯に生息し、ペルビアンオオムカデ同様非常に獰猛で、夜間に狩りを行い鳥やトカゲなどを捕食します。
英名にある「Goliath」は旧約聖書に登場するペリシテ人の巨人兵士であるゴリアテ(ゴライアス)のことで、英語圏ではしばしば巨大なものの象徴としてGoliathと名付けることがあります。
このムカデのほかにゴライアスガエルやゴライアスバードイーター、ゴライアスオオツノハナムグリ、大きなブランドになるために名付けた靴のブランドである「Goliath」などがあります。
トビズムカデ
引用元:https://www.insects.jp/
トビズムカデは東アジアからオーストラリアにかけて生息するムカデの一種です。
日本でも北海道から沖縄にかけて生息しており、大きいものであれば20センチにまで成長する、日本でも最大級のムカデであり、毒性のある虫としても最大級です。
ムカデの中では比較的気性がおとなしく、古来より中国では「蜈蚣」という漢方薬の材料として利用されているなど比較的人間との関連も深い種類です。
トビズという名前は漢字では「鳶頭」と書きます。
頭はその名の通り鳶のように赤く、身体は暗い緑色をしています。
トビズムカデの亜種にはマレーシアに生息するマレージャイアントオオムカデというものがあり、こちらは最大で35センチほどにまで成長する、非常に大型のムカデです。
ヤンバルオオムカデ
引用元:http://from-scratch.ocnk.net/
沖縄北部の山原(ヤンバル)と言われる地域の森や川辺などに生息するヤンバルオオムカデは生息域が限られ、個体数も限定されているために「幻のムカデ」と呼ばれています。
タイワンオオムカデなどとも言われるほか、「ヤンバルオオムカデ」と称して沖縄のトビズムカデなど別の種が流通するケースもあるようです。
ヤンバルオオムカデはミミズなどの他に川辺に住む貝類やカニなどを食べます。
ムカデの中でも非常に珍しく、ヤンバルオオムカデは「翡翠色」とも称される美しい青みがかった体色をしています。
体長は20センチ以上に成長し、大きな個体では30センチ以上になった例もあるなど、日本で最も大きなムカデであると考えるケースもあります。
ベトナムオオムカデ
引用元:http://www.exotic-supply.com/
ベトナムオオムカデはベトナムなどの東南アジアに生息するムカデです。
英語ではVientnam Giant Centipede、更に愛好家の間では「ベトナムイエローレッグオオムカデ」と言われています。
最大で30センチほどにまで成長し、名前の通り、黄色い足が特徴的です。
飼育用に販売されていますが性格は非常に凶暴で顎の力も強く、毒も当然あるため注意が必要です。
ベトナムオオムカデの学名はScolopendra dehaaniと言いますが、かつてはScolopendra subspinipes dehaaniというもので、トビズムカデ(Scolopendra subspinipes)の亜種だと考えられていました。
しかし近年では独立した種であると認定されています。
Cormocephalus rubriceps(New Zealand giant centipede, hara, hura)
引用元:https://www.flickr.com/
Cormocephalus rubricepsはニュージーランドの北島やオーストラリアに生息しています。
明るいオレンジ色をしており、最大で25センチほどにまで成長する、ニュージーランド最大のムカデです。
マオリ語ではhara、huraなどと言われています。
昆虫類やクモ、トカゲなどを食べますがニュージーランドの北島では移住者と共に渡ってきたネズミによって成長する前に食べられてしまい、小さな個体しか見られません。
25センチクラスのCormocephalus rubricepsを見ようと思えば、ネズミの生息していない離島にいく必要があります。
もっとも大きなムカデを見にニュージーランドへ行くケースは、愛好家でなければ少し考えにくいものでしょう。
Scolopendra cataracta(Waterfall centipede)
Scolopendra cataractaは見つかっている中で最大の個体が20センチほどの、大きなムカデです。
ラオスやタイ、ベトナムなどの東南アジアで発見され、体色は緑がかった黒色をしています。
実はこのScolopendra cataractaは近年発見された、歴史の新しいムカデです。
2000年、ロンドン自然史博物館の学芸員であり昆虫学者のジョージ・バッカローニがタイのカオソック国立公園に新婚旅行へ訪れた際に発見し、その後バッカローニの同僚とタイの学生によって標本が採集され、DNA検査の結果新種であることが判明、2016年に公開されています。
Scolopendra cataracta最大の特徴は水中でも生活できる点にあります。
通常、ムカデは水辺を嫌う性質があり、水辺に生息する個体でももちろん好き好んで水に入ることはありません。
しかしScolopendra cataractaは川沿いなどに生息し、水中に住む虫などを捕食します。
水中ではウナギのように身をくねらせて泳ぎます。
この種が発見されたきっかけもバッカローニが岩の下に潜んでいたものが水中へ向かって一直線に向かって行ったことがきっかけとなっており、英名も「Waterfall centipede(滝のムカデ)」と言います。
東南アジアでは川辺や小川などに堤防を開発しているため、水辺で生活するScolopendra cataractaも個体数が減少していると言われています。
Scolopendra heros(Giant desert centipede)
引用元:https://cals.arizona.edu/
Scolopendra herosは最大で20センチほどにまで成長する、北アメリカで最大のムカデです。
「Giant desert centipede(巨大な砂漠のムカデ)」、「Giant Sonoran centipede(巨大なソノラのムカデ)」、Texas redheaded centipede(テキサスの赤い頭のムカデ)」、「Giant redheaded centipede(巨大な赤い頭のムカデ)」とも言われます。
メキシコやニューメキシコ州、アリゾナ州、アーカンソー州など北アメリカ大陸の南部、ソノラ砂漠などの砂漠地帯や乾燥地帯に生息しています。
夜行性で昆虫やネズミ、トカゲなどを捕食します。
Scolopendra herosは他のムカデよりも強力な毒を有しており、人間でも噛まれれば吐き気や頭痛などの症状に見舞われます。
基本的にScolopendra herosはredheadedとも言われるように黄色がかった赤色をしています。
しかし外敵に見つからないようにするなどの目的から、地域ごとに色々な体色のバリエーションが発見されています。
Scolopendra viridicornis(Amazonian giant centipede)
引用元:https://photohito.com/
Scolopendra viridicornisは、英名でAmazonian giant centipede(アマゾンの巨大ムカデ)と言われるようにブラジルなど、アマゾンの熱帯雨林に生息するムカデです。
体色は赤色と黒色の縞模様で、体長は20センチほどにまで成長します。
愛好家の間では「ブラジリアンジャイアント」とも言われるようです。
先に紹介したペルビアンジャイアントオオムカデと生息域が重なるため、両者はたびたび混同されます。
ブラジルの北東部では、伝統的にこのムカデを民間療法に用います。
Scolopendra viridicornisはグラム陰性菌に対する強い抗菌作用を持つLacrainというペプチドを体内に有しており、アマゾンの先住民はこれを昔から活用していたのです。
Lacrainは人体に対して無害であるため、抗菌剤としての活用が注目されています。
まとめ
今回は世界最大のムカデを紹介しました。
ムカデは総じて凶暴で顎の力も強く、今回紹介したような大きな個体であればなんと鳥なども捕食する極めて恐ろしい虫です。
日本ではなかなか30センチもするような大物を目にするような機会はないでしょうが、もし海外旅行に行くなどの際にはくれぐれも気をつけてください。
ムカデの毒は死者こそほとんど出ていませんが、強い痛みや頭痛、噛まれた部分の腫れなど「ムカデ咬傷」と言われる重篤な症状を引き起こすことがあります。
すぐに現地の医療機関などを受診するようにしてください。