陸上最速の動物と言えば真っ先に思い浮かぶのはサバンナを駆けるチーターの姿ですが、他にも人類の最高記録をはるかに上回る速度で走ることができる動物というのは数多くいます。
今回は、現生の陸上動物の最高時速をランキングで紹介していきます。
陸・海・空あわせて最速なのは?
現生の動物の中で、陸・海・空あわせて最速なのはハゲワシで、時速は最高で208kmにも及ぶという桁違いのスピードを誇ります。また、イヌワシは時速192km、アホウドリは時速160km、のろまな印象が強い鳩でさえ最高時速155kmが出せるうえに長距離を飛ぶことができるという優れた飛翔能力を持ち、鳥類全般の大胸筋の凄さを窺い知ることができます。
また、獲物を見つけた際の瞬間的な滑空スピードでは、オオグンカンドリが最高で時速418kmと新幹線より遥かに速く、ハヤブサも時速300km以上で急降下することができたりと、鳥類を含めて最速ランキングを作った場合は上位が独占されてしまうほどのスピード自慢ばかりです。
20位 パタスモンキー
アフリカのサハラ砂漠に生息するオナガザル科の生物で、最高時速は55kmと人間を含む霊長類の中で最速です。人間最速と名高いウサインボルトが100mを9秒58で走るのに対し、パタスモンキーは100mを6秒57で走ることが可能です。
体長49cm~62cm、体重4kg~13kgとサルの中では大柄ですが、長い手足を持つことが特徴で、樹上ではなくサバンナを駆けまわって生活をしており、1日に10km以上も移動することがあるほどの持久力も持ちます。
19位 インドサイ
インド北部とネパールの限られた地域に生息する1本角のサイで、体長3.5m、体重2000kgを超える巨体の持ち主ながら時速55kmで走ることが可能です。
屈強な鎧を持つため成獣になると天敵がおらず、全力疾走をする機会はあまりない様子ですが、潜水時間もサイの中で最も長く優れた身体能力を誇ります。
角を狙った乱獲や生息地の破壊により2018年現在は個体数が2500頭前後と推測されており、レッドリストで絶滅危惧種(VU)に指定されています。
18位 ハイイログマ
北アメリカからユーラシア大陸にかけての広い範囲に生息するヒグマの1亜種で、最高時速は56km。体長1.8m~2.13m、体重130kg~360kgと大柄な体からは想像ができない速度で走ります。
雑食性で植物の根や果物、ハチミツ、昆虫などを食べますが、トナカイやムースといった大型の獣を襲って食べる姿や狼などの獲物を奪う姿も目撃されており、ホッキョクグマほどではありませんが、クマ科の中では積極的に狩りをする種です。
17位 ウィペット
ウィペットはイギリス原産の中型のサイトハウンドで、最高時速は56km程度。1800年代にウサギ狩りを行うためにテリアと小型のグレイハウンドを交配して作られた種です。
走る姿が鞭のように敏捷で美しいことから“スナップ・ドッグ”という別名を持ちます。狩猟などの野外活動時以外は温厚で愛情深い性格をしているため、運動欲求さえ満たせれば、家庭県としても素晴らしい資質を持っています。
16位 キリン
体高4.3m~5.3mと現生の陸上哺乳類の中で最も背が高いキリンは、長い脚を活かして時速60kmで走ることが可能です。生まれたての赤ちゃんの時点で体重60kg、体高1.8mと、やはり陸上哺乳類の赤ちゃんの中では群を抜いて背が高く、生後3週間で自分で餌を探すようになります。
現存する種は一種類のみと考えられていたキリンですが、2016年にDNA研究の結果、マサイキリン、キタキリン、アミメキリン、ミナミキリンの4種が存在することが分りました。
15位 シマウマ
現生のシマウマはヤマシマウマ、グレビーシマウマ、そして最も広い範囲に生息するサバンナシマウマの3種に分類され、ハイエナやライオンといった天敵に襲われた際には時速65km程度で逃げる姿が確認されています。
ヌーやキリンといった他の草食動物と共に群れを作ることもあり、小型のハイエナに襲われた際には後ろ脚を蹴りだして応戦することもあります。
家畜の馬と比べて気性が荒いと言われていますが、2005年に公開された映画“レーシング・ストライプス”では、調教されたシマウマが主人公として出演しており、他種のウマ科の生物同様に高い知能を持つことが窺えます。
14位 ハイイロギツネ
北アメリカ中部から中央アメリカ、南アメリカ北部にまで広く分布するキツネで、体長は54cm~60cm、体重は2kg~5.5kgと小柄です。脚も短くずんぐりとした体形ですがコヨーテやボブキャット、イヌワシなどの猛禽類といった天敵に襲われた際には、時速68km程度で走って逃げます。
イヌ科の動物の中では珍しく木登りを得意とし、木のうろを巣として利用することもあるために“木登りギツネ”という異名を持ちます。
13位 グレイハウンド
グレイハウンドは時速69kmで走ることができる現存する中で最速の犬種です。体高は69cm~76cm、体重は27kg~32kgと大型で、4900年前のエジプトの墓地から、この犬の原種をかたどったと思われる犬の彫刻が出土しており、古くから存在していたことが分っています。
グレイハウンドという名前は古サクソン語で“見事な”“美しい”を意味する単語・greiに因んでおり、サイトハウンドとして優秀なだけではなく、のんびりとした性格から、コンパニオンドッグとしても高い人気を誇ります。
アメリカの人気テレビアニメ“シンプソンズ”で主人公一家が飼っている犬もこのグレイハウンドで、コミカルながらも献身的で愛情深い性格として描かれています。
12位コヨーテ
コヨーテはアメリカ大陸の森林や山間部に生息するイヌ科の動物で、体長は81cm~94cm、体重は9kg~23kg。食性は肉食でウサギや齧歯類、鹿や牛などの家畜を捕食し、狩りの際には時速69km程度で急激に加速して走ることがあります。
嗅覚、視覚ともに優れており、明け方と日暮れに遠吠えをすることから学名の“latrans”(騒がしく吠えるもの)が付けられました。
高い繁殖力を持ちイエイヌやオオカミとの交配も可能で、多種との交配で産まれた個体は“コイドッグ”と呼ばれ、地域によってはペットとして普通に飼育されていることもあります。
11位 ダチョウ
体高1.7m~2.7m、体重120kgと現生する鳥類で最大の大きさを誇るダチョウは、100cm~120cmはある長い脚と爪先から踵まで30cmはある足を使って時速72km程度で走ることができます。
大胸筋を支える竜骨突起がないため飛ぶことはできませんが、走行中に進路を変える際などには翼で舵をとる姿も見られます。
2本ある指の1本には10cmを超える大きな鍵爪がついており、キック力は4.8tもの威力を誇ることから、天敵となる肉食獣が多いサバンナにおいても強者の地位につけそうなものですが、脳が40gしかないうえにネズミのように皺がなくツルツルで、知能が低いことから群居性にも関わらず群れを活かした戦いをすることができないという残念な生態の持ち主です。
近年では京都府立大学の研究でダチョウから抽出した抗体が新型インフルエンザ・H5N1型に有効であることが分り、医療面での貢献が注目されています。
10位 リカオン
リカオンはアフリカ中央部から南部にかけて生息するイヌ科の動物。体長は84.5cm~141cm、体重は18kg~34.5kgですが、同じく30kg前後の大きさを持つ大型犬であるレトリーバー等と比べると、足が細長くスマートな体形をしています。
集団で生きた獲物を食いちぎりながら狩りをすることで知られるリカオンですが、その残酷ささえ感じさせる強烈な狩りを可能にするために発達した脚力を持ち、時速70km以上で走ることができます。
社会性が非常に高く、群れの中での役割分担もしっかりと決められているために、全肉食動物の中でトップクラスである80%以上の確率で狩りを成功させるという能力の高さも特徴です。
知力、身体能力ともに恵まれたリカオンですが、ペットとして持ち込まれた犬から犬ジステンバーを移されたことや、交通事故などが原因で数を減らし続け、2018年現在は野生の個体は3000頭~5500頭程度しか存在しないと考えられており、レッドリストで絶滅危惧種ⅠBに指定されています。
9位 ジャックウサギ
ジャックウサギは北アメリカ西部に生息するノウサギで、最高時速は72kmとウサギの中で最も速く走ることができる種です。後ろ脚を使って3m以上も跳躍することもでき、跳躍力と俊足を活かして天敵から逃げ切ります。
体長60cm、体重1.4kg~4kgでありながら、食欲が旺盛で日に1.5kg以上の牧草や果実、樹皮を食べることがあり、酪農家からは害獣扱いをされているものの、他種のウサギ同様に繁殖力も非常に高いことから、保護が必要なほど数が減少したことはありません。
8位 オオカンガルー
オーストラリアのクィーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア島に生息するオオカンガルーは、平衡器官となる短い前脚と、発達した後ろ脚を使うことで一回で8m~13mも飛ぶことができ、最高で時速72kmで移動することが可能です。また、垂直にも1.8m程度跳躍することができるとされます。
全長は95cm~230cm、体重は3.5kg~66kgと個体により体格差が激しく、25kg以下の小型種をワラビー、50kg以下の中型種をワラルー、それ以上の大型種をカンガルーと分けて呼ぶこともあります。
体と同程度の長さの尾を持ち、この尾を使って直立して雄同士がボクシングのような殴り合いをする姿が知られていますが、これは繁殖期のみならず、通常の時期にも遊びやスポーツとして行われており、この習性を利用してサーカスで人間を相手にボクシングをさせることもあります。
7位 ライオン
アフリカ東部、南西部、西部とインド西部に生息するライオンは、200m程度の短距離であれば時速80kmで走ることが可能です。
ネコ科の動物の中では珍しく群れで生活をすることが知られており、4頭~6頭の血縁のある雌と1頭から数頭の雄によるプライドと呼ばれる単位で行動をし、狩りもプライド内の雌が中心となって行います。百獣の王として知られるものの狩りの成功率が低いライオンですが、新月や嵐の夜は狩りの成功率が高いとされています。
プライドを築いていない単独で生活をする若い雄は、群れを率いる雄に戦いを挑み、勝った後にはプライドを乗っ取ります。その際に群れの中の子どものライオンを全て食い殺すことがあり、その他にも幼体のライオンはハイエナや大型の蛇、猛禽類に捕食されることから成獣にまで成長できる確率は20%前後とまで言われています。
6位 ヌー
南アフリカに分布するヌーは、体長1.4m、体重150kg~250kgと大型の草食動物。雄雌ともに2本の角を持ち、恐ろし気な外見をしていることからアフリカーンス語で“野獣”を指すヌーという名前が付けられました。
毎年初夏になると、キリンやシマウマなど他種の動物とともに、数十万頭にも及ぶ群れを作って豊かな餌場を求めて移動することで知られるヌーですが、移動中は時速60km程度で進み続け、ライオンやリカオン、ワニなどの天敵に襲われた際には最高で時速80kmの速度で逃げることがあります。
5位 トムソンガゼル
東アフリカに生息するアンテロープの仲間で、体長80cm~120cm、体重15kg~35kgと小柄なガゼルです。チーターやジャッカルといった天敵に襲われた際には時速80km以上で走ることがあります。
時速の数値だけを見るとチーターに劣りますが、持久力に優れているために逃げ切ることが可能なのです。一説にはチーターから逃げるために、より速く走れる現在の姿に進化した生物であるとも言われています。
4位 アメリカンクォーターホース
馬の中で最速の種と言えば、当然時速70km以上で走るサラブレッドであると思われがちですが、実はアンダルシアンとサラブレッドやアラブ種を交配して作出したクォーターホースという種が最高時速88.5kmというレースでの最速記録を保有しています。
体高は150cm、体重は400kgとサラブレッドに比べて小柄で、クォーターマイルレースと呼ばれる400m程度の短距離レースの競走馬として出場するほか、乗馬や家畜として飼育されています。また、シルエットがサラブレッドほど洗練されていないことから、西部劇の他に黒澤明の映画にも度々登用されています。
3位 スプリングホック
アフリカ南部に生息するアンテロープの仲間で、最高で時速90km程度で走ることが可能です。
体長は1.2m~1.4m、体重は30kg~48kg程度。背中の中央から腰まで背腺と呼ばれるにおいを分泌する腺が伸びており、その腺に沿って尾の付け根まで白い毛が生えています。
外敵が近づいている場合に、この白い毛を逆立てて仲間に危険を伝え、緊急性が高い際などは背腺からにおいを発して2m程もジャンプすることがあります。
2位 プロングホーン
北アメリカ大陸に広く分布するプロングホーン科の動物で、主に低地から標高3500mまでの草原などに生息しています。最高時速は95kmを超えるとされており、800m前後であれば時速90km、6000m前後であれば時速55km程度を維持して走れるため、現生の動物の中では最も長い距離を早く走れる種であると言えます。
枝分かれした2本の角を持つことから、アンテロープやシカに近い種であると考えられてきましたが、DNA検査の結果、この2種よりキリンに近いことが分っており、トムソンガゼル同様に天敵の肉食獣から逃れるために現在の姿に進化したと考えられています。
1位 チーター
陸上哺乳類最速の生物のチーターは狩猟時に見せる最高時速は102km~120kmに及ぶうえに、スポーツカーより急に加速することができ、走り始めてからわずか3秒で時速100kmに達することが可能です。
とはいえ全速力で走れるのは400m程度であり、持久力ではガゼルやプロングホーンといった大型の草食動物に劣るため、狩りを成功させるためには短時間で勝負をかける必要があります。
アフリカ南部から東部、サヘル地域やイランに分布し、体長は1.2m~1.45m、体重は43kg~54kgとネコ科の動物の中では大型の部類に入りますが、サバンナに生息する肉食獣の中では小柄で小さな頭と長い脚を持つスマートな体形をしています。
このようなスピードに特化した体のつくりをしているために攻撃力が低く、捕えた獲物をハイエナやライオンといった他の獣に脅し取られることも多く、狩りの成功率は50%と高いものの、狩りに成功した後の方が警戒から体温が情報すると推察されるデータもあります。
まとめ
やはり陸上最速の動物はチーターでしたが、日本の動物園では見られないプロングホーンや、なじみの薄いアメリカンクォーターホースといった動物も上位に食い込んでくるという結果になりました。
ランク外となりましたが、ペットとして飼育されている一般的な、寝てばかりいる印象のあるイエネコも最高で時速48km程と人類の最高速度(時速換算した場合38km)をはるかに上回る速さで走ることができ、動物の筋力と身体能力の高さには驚かされるばかりです。