昔のゲームセンターには、パンチ力を測って競うゲームマシンがありました。
やったことのある人はいるでしょうか?
中には躍起になって、高得点を目指していた人もいるでしょうか。
さて、最強のパンチ力を持つのは?、と聞かれると、多くの人はボクサーを思い浮かべると思います。
しかし、生物の中にはボクサーの約2倍のスピードのパンチを繰り出すものがいます。
ここでは、海のボクサーと呼ばれるパンチ力を持つモンハナシャコについてご紹介します。
モンハナシャコの生態
まずはその姿を見ていただきましょう。
こちらが「モンハナシャコ」です。
引用:https://wadaiiroiro.com
モンハナシャコは、シャコ目ハナシャコ科に分類されています。
姿はエビに似ていますが、エビの仲間ではありません。
姿形はよく似ていますが、エビとはかなり遠い親戚関係にあたります。
和名は「モンハナシャコ」、学名は「Odontodactylus scyllarus」、英名は「Mantis shrimp」です。
英名である「Mantis shrimp」ですが、「shrimp」はエビという意味、そして「Mantis」はカマキリという意味です。
カマキリのように鋭い鎌を持つことから、この名がついたと考えられます。
体長は約15cm、体重は約50gであり、人間の手のひらに乗るサイズだと言えます。
体色は、赤色と青緑色をベースとしていて、とてもカラフルで、緑色の尾扇が特徴的です。
他のシャコの仲間と比べても、とても派手な色をしています。
生息地は、西太平洋~インド洋で、東南アジアや台湾などの海域に生息しています。
実は日本にも生息しており、相模湾よりも南の海で見られるそうです。
モンハナシャコは肉食であり、特に生きたエサを好んで食べると言われています。
モンハナシャコは浅い海のサンゴ礁や砂の海底に穴を掘り、そこを巣として生活しています。
引用:https://nankiseamansclub.com
さらに、掘った巣穴を残後の残骸で補強することも確認されており、知性的な一面も持ち合わせています。
シャコは約4億年前から独自の進化を遂げてきた生物と言われており、モンハナシャコもほとんど現生の姿のまま、恐竜が闊歩していた時代より古代から生きていたされているのです。
モンハナシャコの強さの秘密
1.最強のパンチ力
先ほどモンハナシャコには知性的な一面があると紹介しましたが、同時に攻撃的な一面も持ち合わせています。
特に、パンチの威力は最強だと言われているのです。
モンハナシャコは、通常は体の前で折りたたまれている捕脚肢と呼ばれる部分でパンチを繰り出します。
プロボクサーのパンチスピードが約30~50kmとされています。
しかし、モンハナシャコのパンチスピードは約80kmと言われており、プロボクサーのパンチスピードのおよそ2倍にもなります。
これほどまでに強力であると言われているために、ダイバーの指を骨折させたという噂や水槽を割ったという噂がささやかれています。
この情報が正しいかどうかは分かりませんが、実際に薄いガラスがモンハナシャコのパンチによって割れる様子が収められています。
実は、モンハナシャコのパンチが強烈な威力を発揮する仕組みは、弓矢の仕組みに近いと言われています。
弓矢では、時間をかけて弓をひき、そこで溜めたエネルギーを一気に開放することで、矢を遠くへ飛ばしています。
モンハナシャコのパンチも同様で、ゆっくりと時間をかけて筋肉をひき、溜めたエネルギーを一気に開放することで強烈なパンチ力を生み出しているのです。
この強力なパンチは、エサとなる獲物の動きを止めたり、弱らせるために使われます。
肉食であり、生きたものを好んで食べるモンハナシャコには、それらを捕獲するための攻撃力が必要になるのです。
また、モンハナシャコは貝類も食べることが知られています。
貝類を見つけると、自慢のパンチで貝殻を割って中身を食べるのです。
また、モンハナシャコのパンチでは光が発生することもあると言われています。
大量のエネルギーと威力を持つモンハナシャコのパンチは、衝撃波を発生させ、その衝撃波によって発光現象が起こると考えられています。
この発光現象は「ソノルミネッセンス」と呼ばれる現象だと考えられています。
ソノルミネッセンスは、液体中に含まれる気泡と超音波によって引き起こされる発光現象のことを指します。
モンハナシャコのパンチの威力は、発光現象をも引き起こし得るのです。
2.最強の視力
モンハナシャコは、パンチ力だけでなく視力も優れているとされています。
この超視力は、モンハナシャコだけでなく、他のシャコの仲間も持っているものです。
引用:https://nankiseamansclub.com
人間は赤・青・緑の光の3原色によって色を識別していますが、シャコは12原色で色を識別していると言われています。
人間より優れた色彩視力を持っていると考えられてきましたが、最近の研究で色彩視力はむしろ人間より劣るとされています。
その理由として、人間が3種類の視細胞を“組み合わせて”色彩を認識するのに対し、シャコは12種類の視細胞を“それぞれ独立で”色彩を認識していると考えられています。
人間の場合はそれぞれの視細胞が感じる刺激の強さの程度によって、多彩な色を認識する色彩能力を持っていますが、シャコは12種類の色を単独でしか認識することができないために、色彩視力は弱いということだそうです。
この単純な仕組みは、個々の視細胞の処理能力を上げていると考えられています。
処理能力を上げることで、素早い動きでも瞬時に色彩を認識することができるのです。
一瞬の判断がエサの有無を決する自然界では、素早く色彩を認識する仕組みが重要なのかもしれません。
さらに、シャコには紫外線や赤外線までも見えていると言われています。
このことからすると、シャコは暗い巣穴の中でも、暗視スコープのようにくっきりと対象物が見えていると考えられます。
さらに驚くべきことに、シャコは自然光に加えて、他の地球上の生物には見ることのできない「円偏光」を見ることができるとされています。
デジタル技術などに用いられる「円偏光」は、簡単に言うと回転しながら進む光のことです。
「円偏光」が見えることで、シャコは水の揺れや反射で変化する光の動きが分かると言われています。
シャコの視力に関しては未だ解明されてはおらず、まだまだ研究途中のようです。
3.最強の遊泳力
モンハナシャコなどのシャコの仲間は、遊泳能力も優れています。
甲殻類の中では最も優れていると言っても過言ではないとされています。
実際の遊泳時の様子を見ていただきましょう。
遅いようにも感じますが、甲殻類の中ではとりわけ素早く、方向転換が自在であり、腹部に遊泳脚を有していることが、遊泳能力が優れているとされる理由だと考えられます。
危険を感じた時には、素早く巣穴に逃げ込み、顔を外に向けていつでもパンチを打てる状態で構えているのです。
モンハナシャコの天敵
最強と謳われるモンハナシャコに、天敵はいるのでしょうか。
実は、モンハナシャコは生態系の中ではかなり上位に位置づけされており、天敵と言える生物はいないとされています。
知性が高く、巣穴に隠れながら硬い殻で身を守り、近づく敵は強烈なパンチで撃退する。
まさに最強種と言えるのではないでしょうか。
と、言いたいところですが、モンハナシャコは強力な攻撃力を有するためか、闘争心が高く、仲間同士での縄張り争いによって近年数を減らしているのではないかとされています。
モンハナシャコが見られる水族館
日本でモンハナシャコが見られる水族館の1つとして、「NIEREL(ニフレル)」をご紹介します。
引用:https://onigiriface.com
「NIFREL」は、『感性にふれる』をコンセプトに、生き物をただ水槽に入れるだけの展示でなく、その生き物が持つ特有の技を実際に見ることができるように工夫された展示が魅力となります。
モンハナシャコ以外にも、自然界を生きる生き物の「すご技」を間近で感じることができるので、少しでも興味がある方は足を運んでみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
海のダイバーと呼ばれるモンハナシャコの魅力を感じていただけたでしょうか。
もしもダイビングを楽しんでいる時にモンハナシャコを見つけても、遠くから見るだけにとどめておきましょう。
骨折することはないにせよ、爪が割れて内出血することは免れないでしょう。
安全にモンハナシャコの姿を見たい場合は、ぜひ今回紹介した「NIFREL」へ。
お近くの水族館でも見ることができるかもしれませんので、ぜひ調べてみてください。