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世界最大のワニ・イリエワニのすべて

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地球上の様々な場所にある、水と陸地が交わる水辺。

その水辺に生息する最強の捕食者がワニです。

ワニは恐竜時代から存在していて、地上を支配していた恐竜たちが滅びた隕石衝突すら生き延び、現在も水辺で最強の地位に君臨し続けているのです。

今回はその中でも現生しているワニの最大種・イリエワニについてご紹介していきます。

イリエワニとは

引用:https://commons.wikimedia.org/

イリエワニは、世界中の河川や湖、池沼、湿原などの淡水域に生息するクロコダイル科に分類されるワニの一種です。

クロコダイル科最小種のニシアフリカコビトワニでも人間より大きく、全長は2メートルとされています。

最大種のイリエワニの平均的な大きさは全長4メートルで、体重は200キログラムから1000キログラムと言われていますが、中には大型になるものもあり、全長が7メートルを超える個体や、体重が1000キログラムを超えるものも確認されています。

クロコダイル科のワニは、吻が長く真上から見ると頭部は二等辺三角形に近い形状をしています。

動物食で、魚や爬虫類、鳥や昆虫など様々な生き物を捕食しますが、大型種であるイリエワニやナイルワニなどは、家畜や人間を襲う場合もあるので、人食いワニと呼ばれることもあります。

足の指の数が前後で異なっており、前足は5本、後ろ足の指は4本となっています。

また水中で泳ぐ際に役立つ水かきを持っており、前足は指の基部についているだけですが、後ろ足はそれより発達していて指の間全体についています。

爬虫類の中では最も脳が発達していて、犬や猫と同等の学習能力があると言われています。

水際で生活しているので、暑いときには水中に潜って目と鼻腔だけを水面に出しながら体を冷やし、寒い時には岩の上や陸地に上がって太陽の光を浴びるなどして体を温め、体温を調整しています。

日光浴の際にワニが口を大きく開けていることが多いのですが、その理由としては所説あり、口を開けることで効率的に体温を上げることが出来るという説や、逆に頭部が熱くなり過ぎないよう、余分な熱を逃がして調節している、または口の中の寄生虫や歯についた食べかすなどを鳥に食べてもらうなどと言われています。

イリエワニは卵生で、雨季に繁殖を行い、泥に枯れ葉や木の枝を積み上げた、塚のような形の巣を作り、そこに70個前後の卵を産み付けます。

卵が孵化したあとは、ある程度成長するまでの間、メスが一匹で面倒をみます。

ワニの卵は、カメと同じように巣の温度によって雌雄の決定が左右されますが、成体として成熟するには10年以上の年月がかかるため、卵から孵化しても、ほとんどが子どものうちにニシキヘビや大型の魚、哺乳類などに襲われて命を落とし、成体になるのはほんの一握りです。

寿命は約70年と言われていますが、100年以上生きる場合もあると報告されています。

 

イリエワニの生息地

引用:https://www.biolib.cz/

和名の『入江鰐』に由来する通り、入り江や河口付近など、海水と淡水が混じり合う汽水域に生息しています。

主にマレーシアやインドネシア、東南アジアに分布していますが、インド南東部やパプアニューギニア、オーストラリア北部の沿岸部など幅広い地域に生息しています。

更にはフィジーやパラオ、ソロモン諸島などの西太平洋諸島、日本でも八丈島、奄美大島、西表島などで発見例があるとされています。

塩分に強いため、アジアから海を渡り様々な場所に生息地を広げていったと言われています。

絶滅危惧種には指定されていませんが、食用や皮革目当ての乱獲で一時期数が激減する事態にも見舞われました。

それを受けてオーストラリアでは保護動物に指定するなどの保護活動が実を結び、現在は徐々に数を増やしているということです。

しかしその一方で、かつては分布していたと言われるインドシナ半島のタイやベトナム、カンボジアなど地域では既に絶滅したとされていて、フィリピンやインドネシアでも現在の生息数は少ないと言われています。

 

イリエワニの噛む力

引用:http://reptile-database.reptarium.cz/

上下に開く大きな口は、ワニのシンボルとも言えますが、イリエワニの噛む力は現生している陸上生物の中でも最強と言われています。

百獣の王であるライオンが噛む時に加わる力は、およそ450キログラム。

成人男性の噛む力が90キログラムですので、ライオンは人の5倍もの力で噛みつくことが出来るということが分かります。

ですが、ワニの場合はそれ以上に強力で、その中でも最大種であるイリエワニの噛む力は1.7トンにも及ぶと言われています。

その強力なあごを武器に、水中にいる魚類や水辺にいる爬虫類、鳥や哺乳類を捕らえて獲物にしています。

大きな巨体からは想像出来ないようなスピードで、水中から一気に飛び出して獲物に襲い掛かり、そのまま水の中へ引きずり込んで、溺死させるのです。

そして、1頭または数頭で獲物に噛みついたまま水中で回転し、獲物の肉を引きちぎる「デスロール」を行います。

しかし、強力な噛む力とは裏腹に口を開ける力はとても弱いため、イリエワニを捕獲する際には口に輪のようなものをはめて噛みつかれることを防いでから捕まえることが多いそうです。

 

イリエワニのジャンプ力

引用:https://jumpingcrocodilent.rezdy.com/

水辺を歩いている時、ワニは大きな尾を引きずりながら、ゆっくりと動いているイメージですよね。

いかにも重そうで邪魔なようにも見える太い尾ですが、水中では機敏に動く舵の役目を果たすと同時に、獲物に襲い掛かる際には、猛スピードで突進出来るほどの力を生み出します。

筋肉のかたまりとも言える太い尾を水中でくねらせて、爆発的な推進力を作り出すことで水面上にジャンプすることが可能となり、その高さは後ろ足まで水の上に飛び出してしまうほどです。

オーストラリアでは、水中から飛び出すそんなイリエワニの姿を船の上から見ることが出来る、ジャンピングクロコダイルというクルーズが行われています。

川の真ん中で、船の上から水牛の肉などを竿にぶら下げて水面に近付けると、水中から勢いよく飛び出す、野生のイリエワニを間近に見ることが出来るので、人気のクルーズとなっているようです。

ただ水が濁っていることが多く、船上からはその姿は見つけにくいため、身を乗り出したり、船から手を出していると襲われる危険があるので、要注意です。

実際、イリエワニの生息域では近隣に住む住人などが、ワニに襲われて命を落としたり、負傷したりする事件が相次いで報告されています。

観光などでイリエワニのいる場所に行ったとしても、水辺には近づかないなど十分注意しなければ、突然飛び出してきたイリエワニに川の中に引きずり込まれることがあるかも知れません。

 

イリエワニの先祖

引用:https://www.sciencesource.com/

イリエワニを始め、ワニの始原は中世代三畳紀中期頃に出現していて、その姿は現在とは違い、四肢が長く、恐竜によく似ていました。

その後、大陸移動により浅瀬や沼地などが多く出現したため、水辺と水中の両方で生息することが出来るように体が特殊化していったということです。

体全体が平たくなり、水中に潜ったまま、突き出た眼と鼻腔だけを水面上に出すことが可能になったことで、獲物に気付かれることなく近付き、狩りを行うことが出来るようになったと考えられています。

ただし、陸上に上がると浮力を失うため、水の中では役立つ太くて長い尾も、地上では重くて邪魔になってしまい、動きが極端に鈍くなってしまいます。

このように水中での生活に特化した特殊化により、ワニは水辺を離れて暮らすことが出来なくなったとされています。

そして水辺に適応する形で進化を続け、恐竜たちが種を広げて繁栄を極めていたころには、ワニもそれに並ぶ形で、巨大化していきました。

最強と言われるティラノサウルスや、史上最大の肉食恐竜とされているスピノサウルスが生息していた時代には、イリエワニと同じクロコダイル科に属するデイノスクスや、現生種とは科の異なるフォリドサウルス科のサルコスクスなど、体長11メートル超える巨大なワニが川や水辺を支配していました。

これらの巨大なワニは魚などの他に、水辺にやってくる草食恐竜をも獲物にしていたため、時には獲物を巡って肉食恐竜と対峙することもあったであろうと言われています。

噛む力は現生ワニ以上に強力で、史上最強と言われているティラノサウルスに匹敵する、もしくは上回っていたと考えられています。

恐竜が絶滅した隕石落下時に、これらの大型のワニは巨体を維持するだけの食料を確保出来なくなり滅んでしまいますが、ワニの一部の種は外気温の影響を受けにくい水中で生き延び、恐竜や翼竜と同じ主竜類に属している生物の中では唯一の現生動物として、現在まで淡水域の生態系の頂点に君臨し続けています。

他の捕食動物に生息域を奪われることもなかったことから、水辺に適応する進化を遂げた後は、形態的に恐竜時代とほとんど変化することなく、現在に至っていると考えられています。

人食いワニ・ロロン

引用:https://the-rankers.com/

先にも少し述べた通り、イリエワニはその巨大な体と貪食さから、『人食いワニ』の異名を持つワニ類の一種です。

その中でも最大と言われている人食いワニについて、少しご紹介しましょう。

フィリピン南部の島・ミンダナオ島にある南アグサン州ブナワンで当時12歳の少女の頭部が喰いちぎられた状態で発見されました。

他にも近隣の農民や漁師などが行方不明になるなど、ワニに襲われ、捕食されたと思われる事件が相次いだため、100人以上を動員してワニの捕獲作戦が行われ、2011年9月に巨大なイリエワニの雄を捕まえることに成功しました。

捕らえられた巨大ワニの体長は6メートル17センチ。

体重は1075キログラムと1トンを超えていました。

捕獲されたこの巨大なイリエワニは、すでに亡くなっているワニ捕り名人の名前から『ロロン』と命名され、専用の施設で飼育されることになりました。

『捕獲された世界最大のワニ』としてギネスブックにも認定されたこともあり、展示されていたその施設には多くの観光客も訪れていましたが、ロロンは2013年2月に飼育施設で亡くなりました。

その死因は定かではありませんが、一説によると肺炎と心不全によるものと言われています。

ブナワンではロロンより更に大きな個体も目撃されているとのことですので、捕獲されればロロンの持つギネス記録を塗り替えることになるかも知れません。

 

イリエワニと旧日本軍(ラムリー島の戦い)

引用:https://world-note.com/

1945年、太平洋戦争中にビルマ(現在のミャンマー)のラムリー島でイギリス軍と日本軍がこの島を巡って戦い、1ヶ月間の戦闘の末にイギリス軍が島を占拠し、日本軍は撤退を余儀なくされました。

そしてその撤退の際にイリエワニの生息する川を渡っていた日本兵が多数襲われ、命を落としたと考えられています。

ギネスブックにも『動物による最大の災害』として登載されており、島にいたとされるおよそ1000人の日本兵が犠牲になったと記されていますが、日本軍側の記録にはイリエワニに襲われたという記述は無く、その半数は戦死し、残りの半数は地元民の協力もあって無事に島からの撤退に成功したと言われています。

このことから、渡河中にイギリス軍に襲撃されて死亡した日本兵の死肉に、後日多数のワニが群がっただけで、実際にイリエワニに襲われて命を落とした日本兵は少ないと思われ、2017年度版のギネスブックには死亡者の数については疑問が残るという旨が追記されています。

 

イリエワニが見られる動物園

引用:https://ueno-zoo.mamakoe.jp/

国内でイリエワニを見ることの出来る動物園は2ヶ所あります。

どちらも関東圏となりますが、まずひとつはパンダのシャンシャンでも有名な上野動物園です。

上野駅の目の前にあるこの動物園には、1966年3月に来園したイリエワニが飼育されていて、このイリエワニは左前足がなかったことから、ピーターパンのフック船長にちなんでフックと名付けられました。

こういった足が欠損しているワニは野生でも多数報告されており、その理由として、数頭でエサを取り合った際に誤って他のワニの手足を喰いちぎってしまう『誤食』ではないかと考えられています。

 

もう一ヶ所は静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本にある、熱川バナナワニ園です。

こちらの園内では17種類およそ140頭のワニが飼育されていて、その中にはイリエワニのアルビノ個体であるシロワニも含まれています。

他にも様々な動植物が飼育されており、国内唯一のアマゾンマナティーやニシレッサーパンダを見ることが出来ます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

普段、動物園や国によっては人の身近な場所で生息しているワニですが、恐竜と同じころに出現し、恐竜が滅びた後も現在まで生き続けていると思うと貴重な生き物だと思えますね。

しかし貴重とはいえ、うかつに近付くのは危険なのでご注意を。

先ほど陸上ではゆっくり動くとお話しましたが、本気を出すと以外とワニは早く走ると言われています。

ですので、イリエワニを間近に見られる機会があっても、獲物として認識されないように、十分な距離をとって観察することをお勧めしたいと思います。




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