土星(Saturn)は太陽系の中で唯一恒常的な環(わ)を持つ惑星です。
その環によって最もよく知られており、比較的性能が低い望遠鏡でも手軽に観測できることも人気の一つです。しかし土星は、その特徴的な環が存在すること以外のことはあまり知られていません。
今回は恒常的な環を持つ土星の真実と謎をご紹介します。
土星までの距離
土星は太陽から6番目に位置する惑星です。土星は太陽から平均14億km。地球からは約13 - 15億kmの距離に位置しています。
地球から打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」が土星に到着するまで7年弱の年月を要しました。
土星の構造
土星は中心にのみ固体の核が存在し、主要成分はガスで構成されているめ巨大ガス惑星です。中心核は岩石質で、質量は地球の9-22倍、直径は約25,000kmと試算されています。
この核は濃い液体状の金属水素の層に覆われており、その外側にヘリウムが飽和した水素分子の液体層が、更に高度が増すにつれて気体の層になっていきます。最も外側の層は厚さ約1000kmのガスの大気で構成されています。
土星の大きさ
土星の直径は約116,464km(地球の9.5倍)で、太陽系惑星では木星に次いで2番目の大きさです。
土星は巨大ガス惑星のため、自転によって土星は扁平しており、極よりも赤道部分が約10%も膨らんでいます。木星・天王星・海王星といったガス惑星もやや扁平していますが、土星ほどではありません。
また、土星は太陽系で唯一水よりも30%ほど軽く、体積は地球の764倍にもなりますが、質量は95倍に過ぎません。
土星の大気
外層の大気は96.3%が水素、3.25%がヘリウムで構成され、その他にもアンモニア、アセチレン、エタン、プロパン、リン化水素、メタンなどが大気中に存在することが分かっています。
上空に見られる雲はアンモニアの結晶で、下に行くと硫化水素アンモニウムや水に変わります。太陽からの紫外線が上層大気層で化学反応を起こし、各種の炭化水素が渦巻きや拡散し、大気層で地球の雷の1000倍ものエネルギーに匹敵する非常に強烈な稲妻を発生させています。
また、土星では太陽系で2番目に早い1800km/hにも達する風が吹いています。
土星の温度
土星の温度は、大気表面から内部に進むほど徐々に高くなります。
大気上層の表面はアンモニアの氷で構成され、その温度は-180℃から-110℃。次の層は水の氷が雲をつくるようになり、温度は-90℃から-20℃。さらに下層では硫化アンモニウムの氷が混合するようになり-40℃から20℃。そして最下層では液化したアンモニウムの水滴が含まれるようになり、温度は0℃から60℃程になります。
更に、土星内部は非常に高温で、中心核は約11,000℃にもなります。
土星北極の六角形の雲
土星の北極は六角形の雲によって覆われていることが、ボイジャー1号によって観測されています(2006年にはカッシーニでも観測)。北極の六角形構造は、直線部の一辺が地球の直径を越える約13,800kmもの長さであり、土星の自転と同じ速度で回転しています。
この六角形の雲がなぜ出来上がったかについては、雲が初めて観測されてから30年にわたって謎とされてきましたが、ニューメキシコ工科大学の惑星学者ラウル・モラレス=フベリアス教授の最新の研究によって解明されました。
ラウル教授によると、「この六角形の雲のある大気層で極周囲に吹くジェット気流が、その下に流れる風に押されて六角形を形成している」という事です。
土星南極の巨大台風
2006年11月、土星の南極を観測したカッシーニの撮影データから、土星の南極には明らかな台風の目を持つハリケーンのような嵐が固着している事が発見されました。
台風の目は、木星の大赤斑にも存在せず、地球以外の太陽系天体で雲がつくる台風の目が発見されたのは初めての事でした。
土星の一日と一年
土星の外周上の自転速度は、木星と同じく、緯度によって異なった回転周期を持っています。その為、土星の一日は緯度によって10時間14分から10時間45分ほどになります。
太陽から土星までの平均距離は14億km。公転速度は平均9.69km/秒で、地球時間の10,759日(約29.5年)で太陽のまわりを一周します。
土星の輪
一般的に「土星の輪」と呼ばれていますが、実は正確には「土星の環」というそうです。
土星の輪の発見
土星の輪は1610年にガリレオ・ガリレイによって初めて観測されました。しかし、望遠鏡の性能が良くなかったためにガリレオは環であることを把握できず、当初は土星には2つの大きな衛星があると思われていました。
「土星は一つではなく3つの星の集まったものです。それらはお互いに結合しており、動いたり変化したりすることはありません。これらは黄道上を同様に行き来し、中心になる土星と、その横にリングのようにくっついた構造をしています。」
1655年、クリスティアーン・ホイヘンスがガリレオより数段性能のいい望遠鏡を使って、それが土星の周りのディスクであることを初めて発見しました。
土星の輪の構成
土星の輪は、土星の赤道から7000kmから12万kmの距離に広がっていて、その厚さは最も厚いところで約1km、最も薄いところでは約10mしかありません。
土星の輪は内側から順にD環、C環、B環、A環、F環、G環、E環の主に9つの環で構成されています。
それらを構成しているのは、99.9%が純粋な水の氷です。不純物としてソリンやケイ素を含んでいるものもあり、その大きさは直径1cmから10m程度です。それが何十億個も集まって土星の輪を形成しています。
土星の輪の起源
土星の輪の起源には、主に3つの説があります。
- 土星の輪は、かつてはヴェリタスと名付けられた衛星であり、その軌道がロッシュ限界よりも近くなり、潮汐力によって粉々になって環を形成したとする説
- 土星の輪は、土星を形成した物質の残りから形成されたという説。
- 約40億年前の後期重爆撃期に、ミマスよりも大きい直径400kmから600kmの衛星に大規模な衝突が起こり、破壊されてできた塵から形成されたという説(現在もっとも有力な説)
土星の衛星
土星は少なくとも62個の衛星を持ち、うち53個には正式な名称がつけられています。
土星最大の衛星『タイタン』
タイタンは1655年3月25日にクリスティアーン・ホイヘンスによって発見されました。
土星最大の衛星であり、その直径は約5,150kmと、惑星である水星よりも大きく、衛星では木星最大の衛星であるガニメデに次ぐ大きさを持ちます。
タイタンは主に窒素(97%)とメタン(2%)で構成される濃い大気と雲を持っており、液体メタンの雨が降り、メタンおよびエタンの川や湖が存在しています。
酸素を持つ衛星『レア』
レアはカッシーニが発見した衛星の一つで、土星の衛星の中ではタイタンに次いで2番目の大きさを持ちます。大半が氷でできており、核を構成する岩石は全体の1/3以下と考えられています。
また、レアには極めて希薄ですが、酸素を主成分とした大気が存在することがわかっています。
生命の可能性がある『エンケラドゥス』
エンケラドゥスは、1789年に天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見されました。
直径498kmで、土星の衛星の中では6番目の大きさです。表面は比較的新しい氷で覆われており、反射率が極めて高く、太陽系の中で最も白い星とされています。
土星探査機カッシーニにより、エンケラドゥスの南極付近の表面で活発な地質活動をしている証拠と思われるひび割れが見つかりました。さらにひび割れから噴出しているものが氷の粒子および水蒸気であり、地下に何かしらの熱源があると考えられています。
そして、2008年3月の南極域のホットスポットの観測では、その温度が摂氏マイナス93度であることと有機物が存在することも確認されており、2014年4月にはエンケラドゥスの液体の水の大規模な地下海の証拠が発見されました。
エンケラドゥスには、生命に必要とされる有機物と熱源、そして液体の水の3つの要素が全て揃っていることから、『地球外生命が生息する可能性の最も高い場所』の一つとされています。
土星探査
土星の存在は先史時代から知られており、初めての観測は1610年にガリレオ・ガリレイによって行われました。
更に、1655年にクリスティアーン・ホイヘンスが衛星タイタンを、ジョヴァンニ・カッシーニが1675年に衛星イアペトゥス、レアなどを、1789年にウィリアム・ハーシェルが遠方の衛星ミマスとエンケラドゥスをそれぞれ発見しました。
その後、20世紀後半になって無人探査機による土星探査計画がスタートしました。
パイオニア11号
土星へ最初に到達したのは1979年9月の米パイオニア11号です。惑星の雲頂から21000kmまで接近し、E環、F環およびG環を発見しています。
ボイジャー
パイオニア11号に続いて、1977年にボイジャー1号、ボイジャー2号がそれぞれ打ち上げられました。
ボイジャー1号は1980年11月に土星に到着。土星、土星の環、衛星などの高解像度画像の撮影に成功し、タイタンの厚い大気を発見しました。
ボイジャー2号は、1981年8月に土星に最接近しました。地球から見て土星の裏側で、上層大気のレーダー観測を行い、温度及び密度分布の測定などを行いました。その後、ボイジャー2号は、1号とは異なる軌道をとり、タイタンへの接近をせずに土星でのスイングバイを行って天王星と海王星に向かいそれぞれ観測に成功しています。
カッシーニ
1997年に打ち上げられた土星探査機カッシーニは、金星→金星→地球→木星の順に合計4回のスイングバイを行なって2004年6月に土星軌道に到着しました。
カッシーニには惑星探査機ホイヘンス・プローブ(2.7m、320kg)が搭載されており、タイタンでカッシーニより切り離されてタイタンに着陸し、大気の組成・風速・気温・気圧等を直接観測することに成功しました。
また、カッシーニはこれまでに514GBもの科学データを収集、土星の衛星を7つ発見、土星の環の「消失現象」を観測、エンケラドゥスの地下に大規模な海が存在することを発見、土星北極のハリケーンを観測など非常に多くの成果を残しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
『土星の環』のイメージが強く、形は知ってるけど、よくわからなかった土星ですが、無人探査機による計4度の土星探査により、意外と多くの事がわかってきています。
とは言え、未だ未解明のことも多々あり、特に「エンケラドゥスに生命がいるのか?」という謎は世界中の多くの人から注目されています。
今後も土星そしてエンケラドゥスの探査・研究から目が離せませんね^^