第11話 墓場に手を振る赤子
引用元:http://21152.blog2.fc2.com
体験者 大学時代の友人GとG母
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Gがまだ赤ん坊の頃、G母は幼い息子をベビーカーに乗せたり抱っこしたりて近所を散歩していた。
だが、その帰り道赤ん坊のGは決まって奇妙な行動をする。
何故か誰もいない墓に向かってニコニコと笑いながら手を振るのだ。
怪訝に思ったG母がいくら目を凝らしても、そこには石の墓があるばかりで、赤ん坊が喜んで手を振るようなものは何もない。
怖くなったG母は、霊園脇の道を散歩コースから外した。
第12話 首筋に傷跡
引用元:http://blog.livedoor.jp
体験者:Cさん20代女性
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体験記事を書くからと、久々に連絡を取った北国在住の友人から聞いた話。
曰く付きの怪談話を読んだその夜、Cさんは部屋の中で物凄い気配を感じた。
そのまま無視して就寝したところ、翌朝Cさんの首には自分で引っ掻いて出来たような傷ではなく、切り傷が二つ出来ていた。
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寝ていてできる疵など、せいぜい引っ掻き傷かちょっとした痣だと思うのですが、切り傷二つは尋常ではありません。
個人的な経験としては、朝起きたら胸の真ん中に大きな痣が出来ていて驚いたことがありますが、ゴリラになった夢でも見てドラミングしていたのだと思うことにしています。
第13話 奇妙な山道
引用元:https://www.kurumaerabi.com
体験者:Sさん20代女性
場所:八甲田山銅像付近
Sさんには、以前一度だけ通ったものの、なんとなく気持ちが悪くて普段は絶対に通らないようにしている山の中の一本道があった。
しかし、ある日の昼さがり、Sさんは仕事に遅れそうになったため、近道である山道を仕方なく通ることにした。
その日は天気が悪く、霧まで出てきて視界不良。
もはやどこを走っているのかもわからない状態で、それでもSさんは仕事に向かうために急いで車を走らせ続けた。
その間、体感時間にして10~20分たらず。
霧が晴れた時、Sさんはすぐに可笑しなことに気付いた。
昼間だったはずなのに、周囲がすっかり薄暗くなっている。
いくら山の天気が不安定とは言え、10~20分でこんなにも周囲の状況が変わるものだろうか?
結局この日Sさんは仕事をすっぽかしていて、酷く叱責されたという。
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更に数年後――
Sさんは同じ山道を友人と通ることになった。
今回は一人ではなく、友人が他の仲間も一緒だし大丈夫だろうとタカをくくっていたのだが…いつのまにか先導していた友人の車が見えなくなっている。
同じような景色のところをグルグル回っているような感覚に捕らわれる内に、だんだんあたりが暗くなり始める。
半ばパニックになりながら、スピードを上げて走るSさん。
すると、ふっとアクセルが軽くなり、スピードがグンとあがった。
Sさんは目的地手前で先導していた友人の車に、あわや衝突しかけた。
一連の出来事は、信じがたいことに全て5分に満たぬ時間の中で起きていた。
先導していた友人曰く、『Sの車が見えなくなっていたのに、急に出てきた』とのことだった。
山の怪異
山と海に囲まれた日本では、有名な都市伝説においても『ヤマノケ』を始めとし山での怪異が数多く語られています。
Sさんのケースを現実的に考えれば、基本的に右を見ても左を見ても似たり寄ったりの風景が続く不慣れな山道で、方向感覚と時間感覚を失ったSさんがパニックから迷子になっただけかもしれません。
しかし、それにしては不自然な点がいくつかあります。
①それほど不慣れでも、一本道でどうやって迷子になるのか?
②10~20分の体感で数時間が経過していたなど、うたた寝でもしない限り通常ありえない。(Sさんは起きて運転していた)
③一本道で5分と経たぬ間に、友人もSさんも互いの車を完全に見失う。
これらにどうにも説明がつきません。
個人的な経験では、黄昏時にロードバイクで走っていたら、近所なのに同じ所に3回ほど出て家に帰れず、軽くパニックになったことがあります。
それは単に激しく方向音痴だからかと思われますが、時々『良く似た違う世界』に来てしまったのでは?と思うような、異常な迷い方をすることが誰しもあることでしょう。
八甲田山の歴史
1894年、日本陸軍は対ロシアを想定した冬季訓練を青森県の八甲田山で行いました。
この雪中行軍は、青森歩兵第5連隊210名と弘前歩兵第31連隊37名が、1月20日から2月1日までそれぞれ異なる経路を競い合うようにして進む形で実施されましたが、その結果――第5連隊は歴史に残る遭難事故を引き起こします。
準備・情報・冬の八甲田山への認識。
全てが不足していた上に、現地ガイドの言葉を『田舎の民間人のたわごと』と軽く見た第5連隊は、無謀なな行軍を続けた挙句遭難。
発狂者・凍死者が相次ぎ、死亡者30名、行方不明者10数名。
生還した者も凍傷により手足を失う者が大半という、悲惨な結末だけが残りました。
更に気の毒なのは、強制的に雪山ガイドを仰せつかった現地の方々です。
遭難しなかった31連隊の案内をした7人も、無理難題を押し付けられ重度の凍傷を負い後遺症の残る体となり、内一人は廃人同様の状態で16年の入院生活を経て亡くなりました。
国からの傷病兵手当をもらえる軍人と違い、彼らが与えられたのは一人2円の案内賃のみです。
こうした歴史的背景を考えると、上官の無謀・軍人の横暴を恨み辛んで死んでいった人たちが新たな犠牲者を手招きしても可笑しくない場所ではあります。
Sさんの経験と遭難との付合
八甲田山の遭難事件とSさんの経験を照らし合わせると、いくつか付合する点があるように思われます。
霧で視界不良→吹雪によるホワイトアウト
同じところを回る→遭難の典型
友人が見えなくなる→前後の仲間も見えない吹雪
パニック→発狂者多数
不意に現れ衝突寸前→不意に現れるクレバスなどの危険
些かこじつけじみてもいますが、山道が八甲田山の中と聞いた瞬間浮かんだことをまとめてみました。
第14話 トンネル前にいたお婆さん
引用元:http://www.echigo-tsumari.jp
体験者:自転車仲間数人
場所:座間周辺の峠のトンネル
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地元のロードバイク仲間の体験談。
趣味のロードバイク仲間が集まり、クラブライドで座間周辺(ヤビツとか津久井)当たりの峠を走っていた時のこと。
とある山の中のトンネルを通ろうとしたら、トンネルの入り口で小柄なお婆さんが一人箒で道を掃いている。
周りは山で何もなく、当然老婆の家が道脇にあるというわけでもない。
何故自宅前でも私道でもないトンネルの前を、老婆が一人で掃除しているのだろう…
違和感を覚えつつも、先頭を走っていたアテンド役はそのままトンネルを抜けた。
しばらく走り、適当なコンビニで水分やオヤツを補給しながら、自然話題はトンネルの入り口で見かけた奇妙な老婆のことに。
しかし、ここで奇妙なことが起きた。
数人で隊列を組んで走っていたというのに、メンバーの内老婆を見た者と見ていない者がほぼ半々。
それも前半分が見て後ろ半分が見ていないとかではない。
先頭のメンバーが見ているのに、車間距離1メートル弱で後続していたメンバーが見ていないといった具合なのだ。
結局老婆が何者なのかはわからぬままだが、見えた者・見えなかった者それぞれが不思議な気分になったそうだ。
山とトンネル
山とトンネル、これまた怪異の起きる定番シチュエーションです。
実際トンネルという場所は薄暗く交通事故が起きやすく、プロの自転車乗りですらトラックとの接触事故で命を落としています。
また、昔は工事中の落盤事故などで工夫の死亡事故も多くありました。
そうした曰くと、風水的な条件からもトンネルは霊道と考えられているのです。
第15話 洒落にならない悪戯
引用元:https://www.trekstore.jp
体験者:ロードバイク仲間
『弱虫ペダル』で愛好者の増えたロードバイクですが、それに伴い事故や悪質な悪戯といった残念な行為も増えているのが現状です。
そんな中でも、極めてお手軽でありながら、最悪人死を出すのがブレーキへの悪戯。
昼食などのために停車駐輪しておいた誰かのバイクを無作為に選び、ブレーキシュー(タイヤを左右からギュッと挟む摩擦でブレーキをかける装置)を緩めるだけ。
ロードバイクは繊細であると同時に非常にシンプルな作りをしているため、ほんの少し知識があれば工具なしでブレーキを緩めたりホイールを外したりできてしまいます。
それをよりにもよって峠で行う危険人物がいるというのです。
生身の身体を晒して50キロ以上で峠を下るバイクのブレーキが効かない。
良くて大怪我、運が悪ければ死亡、最悪酷い後遺症を負いかねません。
何より怖い?生きてる人間
特定の怨恨ある相手を狙っての行為ではなく、『何となく目についた自転車』というのが恐ろしい話です。
『何となく、誰でもいいから(ただし、自分より弱そうな奴限定)人を殺してみたかった』に通じる通り魔的犯行と言えるでしょう。
どこの誰のものともわからないバイクに死亡事故を誘発するような悪戯をし、結果を見届けるでもなく消える。
翌朝の新聞に峠での死亡事故が出るのを楽しみに、普段通りに帰宅して飯を食い風呂に入り就寝する犯人を想像するとゾッとします。
典型的なサイコパスではないでしょうか。
駐輪後自転車に乗る際には、ブレーキ・ホイールなどを確認することをお勧めします。