臭い食べ物と聞いて何を思い浮かべますか?
身近なものだと納豆、ニンニク、世界一臭いと言われればドリアンなどが思い浮かぶのではないでしょうか?
しかし世界には私たちの想像を絶する臭い食べ物があるのです。
そこで今回は世界一臭い食べ物をランキング形式で紹介します。
臭いの基準としては、発酵学者である小泉武夫が「アラバスター」という機器を用いて臭さを計測した際の計測値である「アラバスター単位(Au)」を使用します。
履いた靴下が120Au、野球部が一日練習したあとのストッキングが420Auとなっていますので参考にしてください。
第8位 カース・マルツゥ(1160Au)
引用元:https://gourmet-note.jp/
カース・マルツゥは、イタリア・サルデーニャ地方で作られるチーズで、カース・モッデ、カース・クンディードゥ、またイタリア語でフォルマッジョ・マルチョとも呼ばれます。
カース・マルツゥというのはサルデーニャ語で「腐ったチーズ」という意味の言葉で、なんとチーズの中に生きたうじ虫(ハエの幼虫)が入っているのです。
元々ペコリーノ・サルドというチーズなのですが、熟成過程で意図的にチーズバエに卵を産み付けさせ、うじ虫をチーズの内部で繁殖させます。
うじ虫がチーズを食べるとき、消化酵素を分泌して有機物を分解する、体外消化という過程を経ます。
その過程でペコリーノ・サルドは通常よりも早く熟成が進み、脂肪が分解され、3か月も放置するとカース・マルツゥが完成するのです。
ペコリーノ・サルドは羊の乳から作る酸味の強いチーズなのですが、カース・マルツゥは急速に発酵が進んだ結果もはや刺激と呼んでいいほどその酸味が強くなり、うじ虫の体液のほのかな苦みと共に独特の風味を構成します。
脂肪の分解が進んだカース・マルツゥは食感が非常に柔らかくなり、サルデーニャ語で「涙」を意味するラグリナという液体もわずかに見られます。
サルデーニャの人たちはこのカース・マルツゥをパンと強いワインと共に味わいます。
うじ虫は身体に何かが触れると高く飛び跳ねる性質があるため、カース・マルツゥを切る際には目を保護するためにゴーグルを付けることが推奨されているそうです。
しかしイタリア国内でもうじ虫を食べることについては抵抗があるようで、食品安全の観点からカース・マルツゥの製造が禁止されています。
もし食べたいと思った場合はサルデーニャ島まで行き、非正規のマーケットで購入する必要があります。
余談ですがうじ虫の入ったチーズはカース・マルツゥ以外にもマルチェットやサルテレッロなどイタリアの各地で見られます。
第7位 ハカール(1230Au)
引用元:https://tocana.jp/
ハカールはアイスランドでバイキングの時代から伝統的に作られる発酵食品です。
生のままでは身が有毒なニシオンデンザメ(グリーンランドザメ)を食べるために考えられたもので、アイスランドのソーラブロートと呼ばれる祝宴で食べられるソーラマトゥルという料理には欠かせません。
伝統的な製法だと、まずニシオンデンザメの身を浅い穴に埋め、上から重石を乗せて6~12週間放置し、水分を抜いて発酵させます。
その後取り出した身をひも状に切って吊るし、4、5ヶ月乾燥させて作ります。
ニシオンデンザメは浸透圧調整に尿素を用いているため、ハカールは2位で紹介したホンオフェのように強烈なアンモニア臭を放ち、「洗剤のような匂い」と表現されることがあります。
アメリカの料理家アンソニー・ボーディンはこのハカールを「1つの最悪な、最もうんざりする、ひどい味の食べ物だ」と評し、スコットランドの料理家ゴードン・ラムゼイは食べてその場で吐き出しました。
アイスランドではハカールをサイコロ状に切り、ブレニヴィンという蒸留酒と共に食べるそうです。
アンモニア臭は強烈ですがその味はほのかに甘く、なかなかおいしいと言われています。
第6位 焼きたてのくさや(1267Au)
引用元:https://oshima-navi.com/
日本で一番臭い食べ物であるくさやは第6位にランクインしました。
くさやとは伊豆諸島で作られる魚の干物の一種です。
伊豆諸島の方言で魚全般を「よ」と言い、「臭い」+「よ(魚)」で「くさよ」と呼ばれていたものが転じて「くさや」と呼ばれるようになったと言われています。
クサヤモロやトビウオなどの魚を開き、「くさや液」と呼ばれる独特の漬け汁に8~20時間ほど漬けた後、1日~2日ほど天日で乾燥させて作ります。
伊豆諸島では魚を保存するために塩水に漬けて干すことで干物を作っていました。
しかし当時の伊豆諸島では塩は貴重品であり、一度魚を漬けるのに利用した塩水は、塩を継ぎ足しつつ再度利用されました。
その過程で魚から微生物や細菌が発生し、塩水を発酵させることで独自の「くさや液」、「しょっちょる(塩汁)」などと呼ばれる茶褐色の漬け汁ができあがりました。
くさや液には乳酸菌の一種であるクサヤ菌や有機酸、エステルなどが含まれ、漬け込まれた魚に独特の匂いを付けます。
またくさや液は栄養価も高く、くさやに豊富なビタミンなどを提供するほか伊豆諸島では怪我や病気をした際にはくさや液を薬として使うこともあったそうです。
外国には熟成過程でワインやブランデー、塩水などを吹き付ける「ウォッシュチーズ」という似たような発酵食品が存在します。
第5位 ドリアン( - Au)
ドリアンは、東南アジア・マレー半島原産の果物で、「果物の王様」とも呼ばれている有名なフルーツです。
上質なクリームのような果実は本当に美味しいそうで、一度ハマると毎日でも食べたくなってしまうほどの中毒性を持つと言われています。
世界一臭い果物としても有名で、果実は甘い香りとともに、「腐った玉ねぎの臭い」「ガスの臭い」「トイレの臭い」とも言われる強烈な匂いを放ちます。
強烈な臭いの元は、ドリアンに含まれる数十種類の成分が成熟する過程で発生する硫化化合物です。
その臭さは、飛行機や電車、公共の施設やホテルなどへの持込が禁止されているほどです。
とは言え、新鮮なドリアンは臭くはありません。
しかし、カットしたドリアンを放置すると時間が経つにつれ臭いがキツくなり、一晩冷蔵庫に入れて置こうものなら翌朝には大変なことになってしまいます。
また、ドリアンは、そのの強烈な臭さを物語る逸話がたくさんあり
ドリアンを食べた客を乗せたタクシーの運転手が運転中に気絶してしまい、客が「殺人未遂」で逮捕された。とか、
東南アジアの会社にはドリアンを食べた翌日は出社禁止のルールがある。とか、
日本では「ドリアンを食べて換気扇を回していたら、近隣住民がガス漏れと勘違いして消防車を呼んだ。
なんてエピソードもありました笑
残念ながらドリアンのアラバスター値(Au)は不明だったためネット内で調査したところ、ドリアンはくさやより臭いという意見が多かったので5位としました。
もしかすると更に上位にランクインする実力があるかもしれません。
ドリアンを食べるときには十分に注意してくださいね。
第4位 キビヤック(1370Au)
キビヤックは世界で4番目に臭い食べ物であると同時に視覚的に非常にショッキングな食べ物です。
グリーンランドやアラスカなど、北極圏の先住民族に伝わる伝統的な漬物の一種で、現地で「アパリアス」と呼ばれるウミスズメ類の海鳥をアザラシの腹部に詰めて地中に放置し、発酵させて作ります。
熟成期間は2か月から数年、1頭のアザラシに詰める海鳥の数は数十羽から数百羽と言われています。
海鳥をアザラシの腹部に詰めるという行程もさることながら、その食べ方も非常にショッキングです。
キビヤックを食べる際はアザラシの腹部から取り出した海鳥の羽をむしり、総排泄腔(鳥類や両生類などに見られる、直腸や排尿口、生殖口を兼ねた腔部)に口を付け、発酵が進んで液状化した内臓を啜るように食べます。
海鳥の肉もそのまま食べ、脳みそも頭蓋骨を割って食べます。
このように作り方も食べ方もかなりショッキングなキビヤックですが、北極圏の先住民はこのキビヤックをクリスマスや誕生日などのおめでたい席で食します。
というのもキビヤックは厳しい冬の時期に備えた貴重な保存食であると共に、野菜でビタミンを摂ることのできない先住民にとっては発酵させて生成されたビタミンを生食することで補給できる貴重なビタミン源でもあるのです。
キビヤックは厳しい自然環境で暮らす先住民の生活の知恵なのです。
ちなみに肝心の味に関してですが、実際にキビヤックを食べた探検家植村直己は「匂いに慣れれば濃厚な鶏肉のようだ」とキビヤックの味を表現し、好物として気に入っていると言われています。
第3位 エピキュアーチーズ(1870Au)
引用元:https://triipgo.com/
エピキュアーチーズは世界で3番目に臭い食べ物であり、同時に世界で1番臭いチーズです。
ニュージーランド最大の乳業会社であるフォンテラ社が作っており、ニュージーランド国内では「Epicure Gold Cheese」という名前で流通しています。
同社のウェブサイトではこのチーズの特徴を「extra sharp flavor(かなり強い香り)」と表現しています。
普通のチーズでは種類にもよりますが長くても1年程度が一般的な熟成期間を、エピキュアーチーズはなんと3年も設けています。
そのため乳酸菌発酵が進行し、世界で3番目に臭いとまで言われる匂いを得たのかもしれません。
しかし現在のニュージーランドで1870Auもの強烈な匂いを発するエピキュアーチーズを入手するのは困難です。
匂いを測定した当時のエピキュアーチーズは缶詰入りの古いタイプのもので、現在はニーズに合わせた臭くないものが流通しているというのです。
ただし長期熟成のチーズらしい濃厚な風味やコクは依然ニュージーランド国民に愛されているようです。
第2位 ホンオフェ(6230Au)
引用元:https://ko-hey3809.com/
ホンオフェ(洪魚膾)は韓国のなかでも西南部、全羅南道の港町である木浦地域に伝わる伝統的な料理で、冠婚葬祭に欠かすことのできない高級料理です。
ガンギエイ(ホンオ)の切り身(フェ)を壺の中に収め、おがくずや堆肥の発する熱を利用して4日ほど発酵させて作ります。
発酵させることでエイの骨や身が柔らかくなり、美味しくなると伝えられています。
しかしガンギエイは体内の浸透圧調整のために尿素を体内に蓄えており、ホンオフェを作る過程で熱が加えられることでこの尿素が加水分解されてアンモニアが発生し、強烈なアンモニア臭を放つようになるのです。
ホンオフェ自体は韓国国内の他の地域でも食べることができるのですが、特に本場である木浦地域はアンモニア臭が強烈で「口に含んだ瞬間、刺激臭で涙が止まらなくなる」、「長く口に含むとアンモニアで口内がただれる」、「口に含んだ状態で深呼吸をすると失神する」とまで言われます。
そのため直接ホンオフェを食べず、豚肉やキムチ、サニーレタスで包んで食べる「サマプ(三合)」という食べ方が一般的です。
しかし木浦地域では熟成させたホンオフェをマッコリと一緒に味わうコンタク(洪濁)という食べ方や、あるいは単にそのままホンオフェを食べるのが通であるとされています。
第1位 シュールストレミング(8070Au)
引用元:https://maro.us/
世界で一番臭い食べ物は、スウェーデンで作られる塩漬けにしたニシンの缶詰であるシュールストレミングです。
その臭さは8070Au、靴下の120倍という想像もできないものです。
シュールストレミングはスウェーデン語の「スール(酸っぱい)」と「ストレンミング(バルト海のニシン)」を組み合わせてできた語であり、中世ヨーロッパにまで遡ることができる伝統的な料理です。
当時のスウェーデンではニシンは豊富に獲ることができましたが、保存に必要な塩は貴重品でした。
塩の精製には日光か火を焚くための薪が必要でしたが当時のスウェーデンではどちらも充分に確保することが困難だったのです。
そのためニシンを薄い塩水で漬ける保存方法が確立し、現在まで続く保存食であるシュールストレミングが完成しました。
固形の塩を使った方法と違い、シュールストレミングでは腐敗を防ぐことはできても発酵を止めることはできません。
普通保存食である缶詰は詰められる際に減菌処理を施されるのですが、シュールストレミングを缶に詰めるときは減菌処理が施されることはなく、缶の中で発酵を続けます。
常温で保存した場合、発酵が進んでガスで缶が膨らみ、開けた際に刺激臭や腐った卵などの悪臭を放つ物質を帯びた液体を噴出します。
現代でもシュールストレミングはスウェーデン国民に愛されていますが、悪臭を放つ液体が付着すると臭いが取れないため水中で缶詰を開ける、缶を傾けて「ガスだまり」を作るなど、開け方に様々な工夫が見られます。
またシュールストレミングは非常に塩気の強い味をしており、スウェーデンではパンやジャガイモなどと一緒に食べることが多いようです。
日本でシュールストレミングを食べる場合はインターネットでの通信販売に頼ることとなりますが、多くの航空会社ではシュールストレミングの運搬を禁止しており、船便を余儀なくされています。
番外編 身近な臭い食べ物・にんにくの対処法
ここまでは世界で一番臭い食べ物を紹介してきました。
しかしくさや以外はどれも日本国内ではほとんど流通しておらず、実際に食べる機会はほとんどありません。
私たちの身近で臭い食べ物といえば、やはりにんにくがまず挙げられます。
にんにくはおいしく、滋養強壮にもいいとされていますが匂いが強烈で、人前に出る立場だと休日などにしかなかなか積極的には食べられません。
反面、にんにくはイタリアンや中華料理などでよく使用されているため油断してつい食べてしまうこともあるのではないでしょうか。
そこでここでは身近な臭い食べ物にんにくの対処法についてご紹介します。
まずにんにくの匂い成分は「アリシン」というもので、にんにくに含まれる硫黄化合物の一種「アリイン」が調理などで細胞が傷つけられたときに分泌される酵素「アリイナーゼ」と結びついて生まれます。
このアリシンが体内に取り込まれ、肺で気化すると口臭となり、汗と共に排出されることで体臭になるのです。
つまりこのアリシンの吸収を抑えたり、匂いのしない状態にすれば気になる匂いを抑えることが可能です。
にんにくの吸収を抑えるには牛乳や豆乳、チーズなどたんぱく質を含む食品を食事中に摂るのが効果的です。
特に牛乳は食事前や食事後に摂っても効果があります。
アリシンの匂いをなくすにはカテキンを含む緑茶や青汁、タンニンやポリフェノールを含むコーヒーを食事中に飲んだり、カテキンやポリフェノールを含む皮付きのリンゴ、ウーロン茶、チョコレートなどを食後に摂るのが効果的です。
また水分を積極的に摂取し、運動をするなど汗をかいて代謝を早め、アリシンの排出を進めることも消臭に効果的です。
まとめ
今回は世界で一番臭い食べ物をランキング形式で、そして身近な臭い食べ物であるにんにくの匂いの対策法を紹介しました。
日本食はくさやしかランクインしませんでしたが、日本には納豆を始め、匂いの気になる食べ物はたくさんあります。
しかし世界には日ごろ匂いの強い食べ物に慣れた私たちでも想像を絶するような臭い食べ物が存在しているのです。
これらはなかなか日本では食べられないので、もし興味を持たれたら現地に行って直接食べてみることをおすすめします。