皆さんは、寒さには強いですか?
全然平気、という人もいれば、寒い日は外へも出たくない、という人もいるでしょう。
ただ、私たちは寒かったら暖房器具を用いて快適な温度で日々を過ごすことができます。
しかし、世界には暖房器具もない過酷な寒さの中で、たくましく生き続けている生物がいます。
そんな極寒地方に住むのが地上最強生物と言われる「ホッキョクグマ」です。
ここでは、苛烈な寒さの中で闘い続けるホッキョクグマについてご紹介します。
ホッキョクグマの生態
まずはその姿を見ていただきましょう。
これが「ホッキョクグマ」です。
引用:http://sekaino-bukimi.com
ホッキョクグマは、クマ科クマ属に分類される食肉類です。
学名は「Ursus maritimus」で、英語では「Polar Bear」と呼ばれます。
他のクマに比べて全身が真っ白いことから、「シロクマ」と呼ばれることもあります。
ホッキョクグマの体長は2.1~3.4m、体重は400~680kgにもなり、陸で生活する肉食動物で最大と言われています。
ホッキョクグマは毛色だけでなく、体つきも他のクマとは異なります。
他のクマと比べると、体は長く、肩幅も狭くて、遠くから見ても首が長いです。
また、頭部は小さくて鼻面は長く、耳は短くて丸くなっています。
ホッキョクグマの主な獲物は、アゴヒゲアザラシなどのアザラシ類です。
参考として、アゴヒゲアザラシの画像を以下に載せます。
引用:https://www.mboso-etoko.jp
ホッキョクグマは基本的に単独行動をしています。
氷の下を泳いでいるアザラシは呼吸をするための氷の穴に、時折顔を出します。
ホッキョクグマは優れた嗅覚でアザラシの臭いを嗅ぎ取り、穴の前で待機し、アザラシが呼吸のために上がってくると、前足を穴に突っ込んでアザラシを引きずり出すのです。
そして、アザラシの頭を噛み砕いて殺すのです。
氷の上で休んでいるアザラシを襲うこともあり、その時は気づかれないように忍び寄り、一気に息の根を止めるのです。
アザラシの他にも鳥の卵、クジラやジャコウウシの死骸を食べることがあります。
時には体の大きなセイウチを襲うこともあります。
大人は捕食するのが大変なので、子供のセイウチを狙うことが多いですが、親に守られているので、親の鋭い牙の一撃により、致命傷を負って最悪死に至ることもあります。
また、ホッキョクグマは氷の下で行き場を失ってしまったシロイルカが、氷の穴に上がってくる瞬間を襲うこともあります。
シロイルカの背中に、時折見られる傷跡はホッキョクグマに襲われたものだと言われています。
ホッキョクグマの分布
ホッキョクグマは北アメリカ北部やユーラシア大陸北部に生息しています。
その中でもヒグマよりも更に北の、北極圏や流氷圏に生息し、グリーンランド南端やアイスランド南部、カナダのハドソン湾、ジェームス湾、ニューファンドランド島辺りまで生息しています。
引用:http://www.tomorrow-is-lived.net
ホッキョクグマは季節によってその生活が大きく変わります。
6月頃になると北極の氷が溶け始め、広くなった海へアザラシが逃げることが多くなり、アザラシの子供も警戒心が強くなるのです。
そこでホッキョクグマは、氷が溶け始めると数百キロを何時間もかけて泳いで陸地を目指します。
そして、5ヶ月ほど陸地で過ごします。
陸地にはもちろんアザラシはいませんので、食べ物は不足してしまいます。
ホッキョクグマは新陳代謝を低く抑えて、なるべく体力を温存するようにして、この時期を生き延びるのです。
また、エサ不足の夏はコケなどの植物などを食べて乗り切ります。
やがて11月になると完全に氷が海を覆い、アザラシ狩りを始めることができるのです。
ホッキョクグマの天敵
肉食動物最強とも言われることがあるホッキョクグマにも天敵は存在します。
子供の頃はキツネやワシ、タカなどが天敵となります。
大人のホッキョクグマの天敵になるのは、体毛や肉を目当てに狩りをする人間と、ホッキョクグマの数倍の重さにまで成長するシャチです。
氷や陸の上では、人間以外に敵なしのホッキョクグマでも、海中を自由に泳ぎ回り、組織的に狩りをし、強い顎の力を持つシャチには敵いません。
参考として、ホッキョクグマの天敵、シャチの画像を載せます。
引用:http://yorimichi.airdo.jp
それでも、シャチがホッキョクグマを襲うことはほとんどありません。
しかし、近年のように北極の氷が溶けだし、氷の面積が減少してしまうと、移動の際にホッキョクグマが海を泳ぐ距離が長くなり、それに伴ってシャチに襲われてしまう可能性も高くなると考えられています。
ホッキョクグマの秘密
実は、ホッキョクグマにはあまり知られていない秘密があります。
その秘密をいくつかご紹介しましょう。
1.足の裏の毛と皮下脂肪の秘密
ホッキョクグマの足には、5本の指があります。
その足の裏には、毛がびっしりと生えています。
引用:https://zoozoodiary.com
これは、寒冷地での体温の低下を防ぐためだと考えられています。
また、皮膚の下には分厚い脂肪を蓄えています。
脂肪は、断熱性が高い組織であるため、分厚い脂肪を身につけることで、体の中の熱を外に逃がさないようにしていると考えられています。
2.体毛の秘密
その体色から「シロクマ」と呼ばれることもあるホッキョクグマですが、実は、その毛は白くないのです。
私たち人間の目から、白く見えているだけに過ぎないのです。
ホッキョクグマの毛には、氷や雪の世界で自分の身を隠す保護色の役割と、過酷な寒さに耐えるための保温効果があります。
それには、毛の構造に秘密があるのです。
ホッキョクグマの体毛は、実は透明です。
それゆえに、太陽の光を浴びると皮膚にまで光を届けることができます。
体毛1本1本がストロー状になっていて、降り注いだ光が乱反射することによって、体色が白く見えているのです。
このストロー状の毛の内部に空気が入ることで、断熱性を高く保っているとされています。
また、気づきにくいのですが、実はホッキョクグマの皮膚は黒色です。
透明な毛によって皮膚に届いた太陽光の熱を吸収して、体温を保つことに役立っていると考えられています。
動物園にいるホッキョクグマは、体毛が黄色っぽい個体や緑がかっている個体がいます。
引用:https://tablerythm.exblog.jp
それは、毛の空洞の中に汚れや藻類が入り込んでしまうことで毛が変色しているのです。
これらの現象は、動物園や水族館のみで見られる光景です。
3.身体能力の秘密
ホッキョクグマは、実は泳ぐのが得意です。
引用:http://japontimes.livedoor.biz
空洞のある体毛は浮力を生み出し、足の一部は水かきになっていて、時速10kmほどで泳ぐことができます。
1日に65kmも泳ぐことができるという説もあります。
また、他のクマと異なる細く長い首は、泳ぐときに呼吸をするために進化したと考えられています。
さらに、水中では2分ほど息を止めることができるのです。
4.ホッキョクグマは共食いをする!?
ショッキングな事実ですが、ホッキョクグマは子グマを食べてしまうことがあります。
ホッキョクグマの共食い行動は、北極地方の先住民の間では古くから知られていることでした。
主食であるアザラシが海に出てしまい、捕獲するのが難しくなる夏の終わりから秋にかけて、子グマが捕食対象になることが多いとされています。
特に、オスのホッキョクグマは子グマを食べることにそれほど抵抗を示しません。
子グマは母グマと行動を共にしていますが、オスはメスの体の2倍ほどの大きさがあり、攻撃的な個体も多く、子グマが襲われてしまっても太刀打ちできません。
母グマは、子グマの次に、オスのホッキョクグマの標的になることを恐れて退散してしまうのです。
ホッキョクグマに迫る絶滅の危機
ホッキョクグマは、絶滅危惧種に指定されています。
今生きているホッキョクグマの個体数は、およそ2万6000頭だと言われています。
この個体数の減少の原因が、地球温暖化です。
地球温暖化の影響で、多くのホッキョクグマが命を落としています。
地球温暖化により、北極の氷が溶けだす時期が早まっているために、ホッキョクグマの最高の獲物であるアザラシを狩ることができる時期が短くなっていて、栄養不足に苦しむホッキョクグマが年々増えています。
引用:https://feely.jp
氷の溶け始めが1週間早まるだけで、ホッキョクグマの体重が10kgも軽くなるという調査結果も出ているのです。
さらに、現在のペースで地球温暖化が進んでしまうと、ホッキョクグマの生存に適した氷の面積は、21世紀の中頃までに急激にシィ王室氏、減少してしまう可能性が示唆されています。
その頃までに、ホッキョクグマの個体数は現在の3分の1も減少すると予測している科学者もいます。
また、温暖化の影響はホッキョクグマの子供にも及んでいます。
引用:j.people.com
ホッキョクグマの赤ちゃんの体重はわずか700gです。
その赤ちゃんが大きく育つ秘訣は、脂肪と栄養がたっぷり含まれた母乳です。
しかし、現在北極の氷の減少により、母グマが十分な獲物を獲ることができず、母乳が不足して子グマが育たないという事態が起きてしまっているのです。
気温の上昇により、雪でなく雨が降るようになり、雪洞の巣穴を溶かして破壊してしまうことも、子グマを危険にさらす大問題になっています。
ホッキョクグマの親戚 ヒグマ
ホッキョクグマは、分類学的にはヒグマに極めて近しいと考えられています。
そのため、お互いに交配することができ、野生下でもヒグマとホッキョクグマの間にできた子供のクマがいることが確認されているのです。
ヒグマは、ホッキョクグマと同じクマ科クマ属に分類される肉食類です。
引用:https://ja.wikipedia.org
ヒグマの体長は2.4mほど、体重は400~500kgで、最大680kgに達する個体も記録されています。
体色は褐色や黄褐色、灰色や黒色が強いものまで、一様に白く見えるホッキョクグマとは異なり、体色にバリエーションがあります。
体つきもホッキョクグマとは異なっており、ヒグマは腰よりも肩の方が高く、肩は大きく盛り上がっていて、頭部は大きく、鼻面は長くなっています。
実は、ヒグマは日本でも見ることができます。
日本に生息するクマは、ツキノワグマとヒグマ(エゾヒグマ)です。
ツキノワグマは本州と四国に広く分布していますが、ヒグマは北海道にしか生息していません。
ヒグマは食糧の豊富な森に、ホッキョクグマは氷に覆われ、食糧になかなかありつけない北極に棲んでいます。
従って、ヒグマの食性も、ホッキョクグマとは大きく異なっています。
意外なことに、ヒグマは昆虫を食べる割合がかなり高くなっています。
ヒグマはアリやハチなどが大好物で、積極的にそれらの巣を探しに行きます。
このような昆虫は巣を作り、集団で生活していることが多いため、一度のチャンスで多くのエサを手に入れられるわけです。
あの巨体で小さなアリを何百匹食べても腹は満たされそうにもないですが、アリなどを狙う理由は味が好みだからという説が強いと言われています。
さらに意外なことに、ヒグマは生きている哺乳類や鳥類を狙うことは少ないです。
ホッキョクグマは先程紹介したように、生きているアザラシを好んで狙います。
それと比べてヒグマは、どちらかと言うと死肉を食べる場合が多く、腐敗が進んだ肉でも食べてしまいます。
ヒグマは強大な捕食者のイメージが強いので、この事実にガッカリした人も多いでしょうか。
足が速く力もあるヒグマが、狩りが下手であるとは思えないですが、雑食性である理由はおそらく、長い生活の中で安定してエサにありつけるように進化した結果だと考えられています。
ただし、これは通常のヒグマの食事の習性です。
近年エゾシカの急増に伴って、生きているエゾシカを狙うヒグマが増え始めたのです。
一度新鮮な肉の味を覚えてしまったヒグマは、それ以降積極的に狩りを行うようになるのです。
しかもこれは、獲物がエゾシカである場合だけに限りません。
一度人間の味を覚えてしまったヒグマは大変危険なのです。
ホッキョクグマがいる動物園
最強の肉食動物と名高いホッキョクグマですが、見た目がなんともキュートで動きもユニークであることから、動物園や水族館の人気者でもあります。
ここでは、ホッキョクグマに会える動物園を2つ、厳選して紹介します。
1.旭川市旭山動物園
引用:https://www.jalan.net
北海道旭川市にある動物園です。
実は旭山動物園は、日本で初めてホッキョクグマの繁殖に成功した動物園なのです。
旭山動物園の魅力は、自由自在に泳ぐ姿が見られる巨大なプールと、堀を利用した柵のない放飼場です。
この開放的な「ほっきょくぐま館」のつくりのおかげで、プールでエサを食べる様子が観察できる「もぐもぐタイム」は、豪快な水中ダイブが見られるために、長蛇の列ができることもあります。
引用:https://news.walkerplus.com
シャッターチャンスを狙って、ホッキョクグマの猛々しい一面をぜひ見に行ってみてください。
2.愛媛県立とべ動物園
引用:http://tadaoh.net
愛媛県伊予郡にある動物園です。
この動物園の魅力は、何と言っても、とべ動物園のアイドルホッキョクグマ「ピース」です。
引用:https://www.tobezoo.com
ピースは、1999年にとべ動物園で誕生したメスのホッキョクグマです。
実はピースは人工哺育で育ったホッキョクグマです。
ピースが誕生するまでに、日本国内でのホッキョクグマの出生は122頭報告されていましたが、半年以上育ったのはわずか16頭、さらに人工哺育の成功例は全くありませんでした。
ピースは、日本国内で誕生したホッキョクグマの中でも人工哺育に成功した極めて珍しい例なのです。
哺育担当者を1名、専任で決定し、飼育員の方々の努力と愛情によって、大人になったピースは、今日もたくさんの人を笑顔にしています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
ホッキョクグマに関して、1つでも「へぇー」と思っていただけることがあったなら嬉しい限りです。
ホッキョクグマを過去の生き物にしないように、私たち1人1人が地球温暖化について考えていかないといけません。
まずは彼らの魅力を感じるために、ぜひご紹介した動物園に足を運んでみてください!