科学技術が進歩し、世界の多くが観測されるようになりました。
ですが宇宙と人間の身体、そして深海には今なお神秘が眠る可能性があると言われています。
実際に新種のバクテリアなどが発見されるなど、深海には私たちのまだ遭遇していない生物がいるのです。
今回はそんな未知の眠るかもしれない、世界一深い海を紹介します。
10位 日本海溝(8020m)
日本海溝は日本列島の東側の太平洋上に存在する海溝です。
襟裳岬沖から房総半島沖にかけて南北に伸びており、北端では大きく東に曲がって千島海溝に、南端では東に曲がって伊豆・小笠原海溝へとそれぞれつながっています。
日本海溝は東日本が位置する北アメリカプレートと、太平洋プレートのちょうど境目に位置しています。
太平洋プレートは西側へと移動し、北アメリカプレートの下へ潜り込むことで日本海溝が形成されています。
プレート移動の中心地となっていることから、東日本大震災、三陸沖地震など数多くの地震の震源地となっています。
2019年2月には政府の地震調査委員会によって日本海溝の調査が行われ、長期評価が報告されました。
長期評価によると今後30年以内に日本海溝を震源とする地震が90%の確率で発生するとのことで、今後も警戒が必要です。
ただ東日本大震災のようなマグニチュード9を記録する大震災ではなく、マグニチュード7程度の地震となる見込みです。
9位 ペルー・チリ海溝(8065m)
引用元:https://scdn.line-apps.com/
ペルー・チリ海溝はペルーとチリの沖合160㎞にある海溝です。
別名を「アタカマ海溝」とも言い、全長5900㎞、北部は中央アメリカプレートに接しています。
ナスカプレートの東側が南アメリカプレートに潜り込むことで形成され、しばしばチリ地震の震源となっています。
2018年9月には、イギリスのニューカッスル大学の研究チームがペルー・チリ海溝の最深部で新種のクサウオを3種発見しています。
発見された新種は鱗がなく、ゼラチン質でできた透明の身体をしており、高圧に対応した構造をしているため地表にあげると身体が溶けてしまうそうです。
8位 プエルトリコ海溝(8605m)
プエルトリコ海溝はカリブ海東部、米国連邦自治領(コモンウェルス)のプエルトリコのすぐ北に位置する海溝です。
カリブプレートと北アメリカプレートの間に位置しており、カリブプレートは東に、北アメリカプレートは西に移動しています。
大西洋にはプエルトリコ海溝とサウスサンドウィッチ海溝の2つしか海溝が存在せず、プエルトリコ海溝は大西洋で最も深い海溝となります。
北アメリカプレートはカリブプレートで南東部に沈み込んでおり、地震の震源となります。
カリブ海には南東部に活火山帯がありますが、この海溝の存在によってカリブ海全域が地震と津波のリスクに見舞われています。
過去には1918年にプエルトリコ海溝を震源とするマグニチュード7.5のものが発生しているほか、幾度となく地震は発生しており直近では2014年に起きています。
ただし沈み込んだプレートが元に戻る際の大きな地震は200年以上も確認されておらず、津波を伴う大震災の危機は懸念されています。
プエルトリコ海溝では2012年の調査でおそらく新種だと思われるナマコと甲殻類が確認されていますが、捕獲されていないため、種としての登録ができないでいる状態となっています。
7位 ヤップ海溝(8946m)
引用元:http://english.gov.cn/
ヤップ海溝は西太平洋、フィリピン海南部に北北東から南南西にかけて伸びる海溝です。
西カロリン海溝とも呼ばれ、ヌグ-ル環礁、およびヤップ島の東部にあることからヤップ海溝と言います。
太平洋プレートがフィリピン海プレートの下へ潜り込むことでできた海溝で、環太平洋造山帯の一部となっています。
2000年代後半から中国が深海生物と遺伝子の研究を目的に有人潜航艇「蛟竜号」で定期的に潜水作業を行い、サンプルの収集を行っています。
6位 千島・カムチャツカ海溝(9550m)
引用元:https://www.goesfoundation.com/
千島・カムチャツカ海溝はカムチャツカ半島南部から北海道南東部に伸びる海溝で、太平洋プレートが北アメリカプレートに沈み込むことでできています。
過去には2006年11月15日の2006年千島列島地震や2013年5月24日のオホーツク海深発地震などの震源となっています。
震源域はいくつもあり、周期的にいずれかの震源でマグニチュード7から8規模の地震が発生しています。
もし複数の震源域で同時に地震が起きた場合にはマグニチュード9に達する可能性もあると予測されています。
ニューカッスル大学の研究チームの調査によって、千島・カムチャツカ海溝の最深部に生息する生物の胃からプラスチックが発見されています。
千島・カムチャツカ海溝の最深部にはプラスチックが堆積し、海洋汚染を引き起こしているのです。
同様の海洋汚染は太平洋全土で見られ、深刻な環境問題となっています。
5位 伊豆・小笠原海溝(9780m)
引用元:https://www.hankyu-travel.com/
伊豆・小笠原海溝は房総半島沖から南東に伸びる海溝です。
マリアナ海溝と合わせてIBM海溝(Izu-Bonin-Mariana Trench)と呼ばれることもあります。
フィリピン海プレートに太平洋プレートが沈み込むことででき、マリアナ海溝との境界に「母島海山」と言われるやや浅い部分があります。
1605年に起きた慶長地震の震源のひとつとされており、南海トラフと共に将来の大地震の可能性が指摘されています。
4位 ケルマデック海溝(10047m)
ケルマデック海溝はニュージーランド北東にあるケルマデック諸島の東部沖にある海溝です。
トンガと言う島国の東部沖にはトンガ・ケルマデック海溝が南に伸びていますが、南緯26度線を境に北部がトンガ海溝、南部がケルマデック海溝と呼ばれています。
太平洋プレートがインド・オーストラリアプレートに沈み込むことで形成され、過去には2011年7月にマグニチュード7.7の地震が発生しています。
2012年2月にはケルマデック海溝の水深7000mほどの地点で、体長が34㎝にまで達する端脚類(ヨコエビの仲間)の仲間が発見されました。
端脚類は普通体長が2から3センチほどですが、2012年に発見されたものは突然変異か新種かは明らかになっていません。
3位 フィリピン海溝(10540m)
フィリピン海溝はフィリピン諸島東部沖、フィリピン海の西端にある海溝です。
ミンダナオ海溝とも呼ばれます。
ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境目にあり、フィリピン海プレートがユーラシアプレートへ沈み込むことで形成されています。
平均水深6000m以上と全体的に非常に深い海溝で、最深部のほかにもレイテ島東部のケープジョンソン海淵(10497m)やミンダナオ島東部のエムデン海淵(10400m)など水深10000mを超える海淵がいくつも存在しています。
1927年にドイツの巡洋艦エムデンが音響測深でフィリピン海溝が深海であることを示したことからエムデン海溝とも呼ばれますが、現在はフィリピン海溝が正式の名称と定められ、エムデンの名前は海淵に残されるのみとなっています。
2012年にはマグニチュード7.6のサマール地震を引き起こすなど、多くの地震の震源にもなっています。
2位 トンガ海溝(10800m)
トンガ海溝は南太平洋のトンガという島国の東部沖に伸びる海溝で、南部でケルマデック海溝につながっています。
インド・オーストラリアプレートと太平洋プレートの境目にあり、深発地震の原因となることもあります。
最深部であるホライゾン海淵は南半球で最も深いもので、地球全体で見ても2番目に深い地点です。
1970年、アポロ13号が事故によって地球へ帰還した際、搭載していた原子力電池をトンガ海溝へ遺棄しました。
電池には3.8㎏ものプルトニウムが内蔵されており放射能汚染が懸念されましたが、幸い海洋および大気のモニタリングの結果、放射能汚染は発生していないようです。
しかし放射能によって突然変異的な巨大生物や奇妙な生物がトンガ海溝で見つかったと言う都市伝説もささやかれています。
1位 マリアナ海溝(10924m)
引用元:https://www.gizmodo.jp/
マリアナ海溝は北西太平洋のマリアナ諸島の東沖に位置する海溝です。
最深部であるチャレンジャー海淵の最新の深度は10924mと世界一深く、最深部での水圧は108.6MPa(1㎠に1086㎏の重さがかかる)にも及びます。
マリアナ海溝の測深の歴史は1875年に行われたチャレンジャー号に始まり、1925年の満州号、1951年のチャレンジャー8世号、1960年のトリエステ号など枚挙に暇がありません。
1957年にはソビエト連邦海軍艦艇ヴィチャージが深度11034mの計測に成功し、測定海淵を「ヴィチャージ海淵」と名付けました。
しかし以後の調査で同様の測定結果が出なかったことから現在は公式の深度としては認められていません。
世界一深い海だけにマリアナ海溝では独自の生態系が発展しており、2012年には新種のクラゲが、2014年には新種のゴーストフィッシュ(マリアナスネイルフィッシュ)が発見されました。
特に2012年の発見は『ターミネーター』などで知られる映画監督ジェームズ・キャメロンが1人乗りの潜航艇「ディープシーチャレンジャー」で単独潜航を試みた際に発見されたことで話題となりました。
ジェームズ・キャメロンはディープシーチャレンジャーで10898m地点へと到達しています。
単独での最深部到達は世界初の偉業であり、後にジェームズ・キャメロンはドキュメンタリー映画『ジェームズ・キャメロン 深海への挑戦』を製作しました。
ただ世界一深いマリアナ海溝でも生物の体内からPCB(ポリ塩化ビフェニル)が確認されるなど、深刻な海洋汚染が進行しています。
まとめ
今回は世界一深い海を紹介しました。
深海では未だに新種の生物が発見されるなど、人の手のなかなか届かない領域のひとつです。
いずれは科学技術を一変させるような大きな発見があるかもしれないと考えると、とてもロマンチックではないでしょうか。
また海溝はプレートとプレートの境目に形成されるため、神秘が残る一方地震という私たちの脅威と隣り合わせにあります。
特に日本は深い海溝に囲まれており、地震大国としても知られています。
手の届かないロマンと、目に見えない脅威の存在が深い海からは感じ取ることができるようです。