世界にはたくさんの種類の植物が生育しています。
植物のからだの中で最も美しく、魅了されるのは花と言えます。
もちろん、四季のある日本でも、春・夏・秋・冬でそれぞれ違った美しさを持つ花を楽しむことができます。
名前を知らずとも、その花の香りや鮮やかな花びらには癒されます。
それが大きな花であるほど、私たちの眼は奪われると言っても過言ではありません。
ここでは、大きな花を咲かせる7種の植物をご紹介します。
シャクヤク
引用:https://hanajikan.jp
シャクヤクは「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」と言われるように、高貴な美しさを漂わせ、豪華でエレガントな花を咲かせる植物です。
ボタンとは同じ仲間の植物でよく似ていますが、ボタンは木で冬にも枝が残るのに対し、シャクヤクは草であり、冬は地上部が枯れて、地中の根や芽で冬越しする点で区別されます。
開花時期は5~6月で、草丈は60~120cm、花の大きさは直径10cm程度だとされています。
原産地は中国やシベリアなどの、ユーラシア大陸の東北部と言われています。
日本へは、平安時代以前に薬草として伝えられました。
当時は、漢方薬の材料として伝えられたと言われ、特に婦人科系の体の働きを整えるのに効果があると言われています。
シャクヤクの根は現在でも、葛根湯などの材料として扱われています。
平安時代以降は、観賞用として多数の園芸品種が作られてきました。
日本へ伝えられたものを「和シャクヤク」と呼び、一重咲きや翁咲きなど、比較的シンプルですっきりとした形の花が多いとされています。
下の写真は、和シャクヤクの1つで、ヤマシャクヤクです。
引用:https://kotobank.jp
それに対し、ヨーロッパで育成された品種は「洋シャクヤク」と呼ばれ、手まり咲きやバラ咲きなど、花びらの数が多く、香りの強いものが多いことが特徴だとされています。
下の写真は、バラ咲きの品種の1つ、ルーズベルトと呼ばれるシャクヤクです。
引用:https://engei.net
また、豪雪地帯である新潟では、広げた手のひらよりも大きな超大輪品種も作られています。
引用:http://hana-ne.com
最近では、和シャクヤクと洋シャクヤクの交配による新しい品種も育成されたり、近縁の花であるボタンとの交配種も作られているようです。
そのため、シャクヤクは花びらの枚数が5~10枚と幅広くなっています。
ヤマユリ
引用:http://www.city.kawasaki.jp
ヤマユリは、里山で自生する山野草です。
日本には10種以上のユリが自生しており、中でも園芸的に最も重要なユリの原種がヤマユリです。
ヤマユリは本州の平地から山地に分布し、木陰のある傾斜地でよく見られる球根植物です。
長時間日光の射す場所は嫌い、雑木林が生い茂り日光を遮るようだと休眠して芽吹きをやめます。
水はけと風通しの良い場所を好み、じめじめした場所を嫌います。
また、根に共生菌が育つマツやツツジなどと一緒に植わっていると良く育つと言われています。
7~8月に、強い香りのある花径20cm程度の大きな花を1~10輪ほど咲かせます。
花びらには、白地に黄色い帯状の筋が入り、えんじ色か紫褐色の細かい斑点が散らばっています。
稀に斑点の見られない「白星(しろぼし)」と呼ばれるものや、花びらの筋が紅色になった「紅筋(べにすじ)」などがあり、少量ですが生産されて市販されているそうです。
茎は斜めに伸びて、高さ120~200cmになり、その先端に花を咲かせます。
ヤマユリと同様に栽培できる野生のユリの仲間に、カノコユリやタモトユリなどがあります。
下の写真は、カノコユリです。
引用:https://uozu-kanko.jp
ヤマユリとこれらを交配して、豪華な花を咲かせる園芸品種の系統「オリエンタル・ハイブリッド」が作られています。
引用:https://sakata-tsushin.com
タイサンボク
引用:https://lovegreen.net
タイサンボクは庭木としても親しまれている木です。
モクレンやコブシなどのマグノリアと呼ばれる種類の1つです。
マグノリアの仲間はとても良い香りがする種が多いですが、一般的に「マグノリア」という名前で香水などの香りの成分として使われるマグノリアは、タイサンボクです。
マグノリアの仲間は早春から種類ごとに順々に花を咲かせますが、タイサンボクはこの仲間の開花の最後を飾ります。
6~7月にかけて、直径10~20cmにもなる大きな白い花を咲かせます。
万人受けする優しい香りを放つのが特徴です。
花の白色と、常緑で光沢のある深緑色との対比は非常に美しいのですが、花が上向きに咲き、樹高が20mに達するほど高いため、見上げないと開花に気づかないことも多々あります。
樹木の形も雄大であり、公園や寺社のシンボルツリーになっていることも多いとされています。
近年人気なのは、リトルジェムと呼ばれる品種です。
引用:https://www.engei.net
四季咲きと呼ばれる春から秋にかけて花を咲かせる品種で、成長が緩やかで背丈があまり大きくならないため、街路樹などとして積極的に栽培されています。
ホオノキ
引用:https://hiraoka-park.jp
ホオノキは、食べ物を包むほどの大きな葉をもつ樹木です。
枝先に大きな葉を車輪状に茂らせ、その葉の大きさは30~40cmほどと国内最大級です。
大きな葉は燃えにくく、芳香もあり、殺菌・抗菌作用によって食材の保存に役立つことから、食用に利用されてきました。
農山村の郷土料理によく利用され、ホオノキの葉に食材と味噌を乗せて焼くのが朴葉味噌(ほおばみそ)、包んで焼くのが朴葉包み焼き、大きな葉に餅を包み良い風味をつけた朴葉餅(ほおばもち)などがあります。
下の写真は、朴葉味噌です。
引用:https://kotobank.jp
昔から食べ物のお皿代わりに使ったり、包むことに使われる生活に親しみ深い植物です。
ホオノキの「ホオ」は、「包(ほう)」という意味であり、大きな葉で食べ物などを包むことに由来すると言われています。
5~6月に、花径15~20cm程度の大きなクリーム色をした杯形の花が上向きに咲きます。
花には強い香りがあり、花びらは8~9枚で、中央に立っているのは雌しべの集合体だとされています。
大きな美しい花は、山の新緑の中によく目立つと言われています。
ハイビスカス
引用:https://kotobank.jp
ハイビスカスは、熱帯花木の代表的な種類で、真っ先に名前が挙がります。
ハワイでは州花、マレーシアでは国花、沖縄でもシンボル的な花として一年中見られ、親しまれています。
夏が似合う南国の花ではありますが、春から秋までの長い期間にわたって花を咲かせることはあまり知られていません。
樹高は35~150cmの常緑低木に分類されています。
6~10月の長い期間に、ピンクや赤、オレンジ、黄色、白などの花径5~15cm程度の大きな花を咲かせます。
花の種類には3系統が知られており、それぞれ大きさや形が違います。
在来系と呼ばれる種類は、昔から生育しているため、オールドタイプとも呼ばれます。
花の大きさは小輪から中輪で、3つの系統の中では一番丈夫で育てやすい種類と言われています。
下の写真は、お店でもよく見かける花径5cm程度のレッドスターという種類です。
引用:https://www.engei.net
ハワイアン系は大輪の花を咲かせます。
一度に咲かせる花の数は少ないですが、種類が豊富でカラフルなものが多いです。
ハイビスカスらしい、真っ赤で大きな花を咲かせる種類もハワイアン系に含まれています。
在来系と比べると生育はゆっくりで暑さにやや弱いので真夏は開花が鈍るとされています。
下の写真は、ロス・エスティと呼ばれるハワイアン系の種類の1つです。
引用:https://ameblo.jp
コーラル系は、ハイビスカスとフウリンブッソウゲを交配させたタイプで、花はやや下向きに咲きます。
フウリンブッソウゲは、ハイビスカスの一種で、見た目が風に揺れる姿が風鈴に似ていることから命名されました。
下の写真は、フウリンブッソウゲです。
引用:https://www.engei.net
コーラル系は、花はやや小ぶりで、寒さには弱いですが、暑さには強いので、真夏でもよく花が咲いているのを見ることができます。
垂れ下がっているように花を咲かせるのが特徴です。
下の写真は、ピンクバタフライと呼ばれる種類です。
引用:https://www.engei.net
ラフレシア
引用:https://matome.naver.jp
ラフレシアは世界最大の花と名高い植物です。
東南アジアからマレー半島に分布する植物で、細かく種類を分けると数十種にものぼります。
肉厚で花径90cmにも達する巨大な花を咲かせることで知られています。
この花びらは他に類を見ない質感で、踏みつけると発泡スチロールのようにパリパリと割れるとされています。
ラフレシアは他の植物とは大きく異なっており、茎も根も葉もありません。
実はラフレシアは、ブドウ科の植物の根に寄生して、栄養の全てをその寄生したブドウ科の植物からもらって育つ寄生植物なのです。
また、大きな花を咲かせるだけではなく、その巨大な花からは強烈な悪臭を放ちます。
その臭いは、死肉のような悪臭と言われています。
このような臭いを発するのは、ラフレシアが花粉を運んでもらうために、ハエなどをおびき寄せるためだと言われています。
ラフレシアの仲間の中で最も有名な種類は「ラフレシア・アルノルディイ」です。
引用:https://japaneseclass.jp
ラフレシアを最初に見つけた、現在のシンガポールの創設者であるトーマス・ラッフルズは、当時、イギリスの植民地開拓のために東南アジアを探索していました。
そこで森林に咲き、異臭を放つ、巨大な花を発見することになります。
その花の異様な大きさや死肉のような臭いを放つことなどから、同行者たちは「人食い花」だと恐怖しましたが、勇敢であったラッフルズは直接触って見せることで安全を証明したと言われています。
ラフレシアの名前も、最初に見つけたラッフルズ一行に由来すると言われています。
大きな目立つ色の花を咲かるラフレシアですが、「幻の花」とも呼ばれています。
ラフレシアを見ようとその国に訪れた旅行者がラフレシアを見られるのは、とても稀だと言われるためです。
その理由としては、ラフレシアが寄生する植物が限られており、つぼみの期間が1年以上と長く、開花時期の予想が難しいだけでなく、開花した花を見られるのは5日間だけ、ということが挙げられます。
さらに、ラフレシアは種からブドウ科の植物に寄生するまでの過程が未だに謎に包まれているため、栽培も難しいとされています。
いつか栽培が可能になってラフレシア園が出来たら、皆さんは行ってみたいと思いますか?
行ってみたいという方は、どうか鼻が曲がらないように気を付けてください。
ショクダイオオコンニャク
長い間、世界最大の花はラフレシアだと言われてきました。
しかし、広い世界にはラフレシアよりもさらに大きな花が存在したのです。
それが、ショクダイオオコンニャクです。
引用:https://jungle-time.com
花の大きさは横幅1.5m、高さ3.5mにも達し、世界最大の花としてギネスブックに認定されたこともあります。
サトイモ科コンニャク属に分類されている塊根植物で、土の中には名前の通りコンニャクイモができます。
その土の中のコンニャクイモは、大きいもので70kgにも達すると言われています。
ショクダイオオコンニャクという名は、巨大な花の形が燭台に似ていることから名付けられたとされています。
ラフレシアと同じように、開花の際に強烈な腐臭を放つことから「死体花」、そのあまりの大きさから「お化けコンニャク」と呼ばれることもあります。
インドネシアやスマトラ島などの熱帯地方に自生しており、多くの植物が重なり合う熱帯雨林の中でも比較的ひらけた明るい場所に生育します。
数年のうち、たった2日間しか花を咲かせないことから「幻の花」と呼ばれることもありますが、現地では意外にも人里のすぐ近くに生えていることも多いそうです。
ここまで世界最大の花と紹介してきましたが、実はショクダイオオコンニャクの花は花序とその付属体のことです。
花序とは花の集合体のことであり、ショクダイオオコンニャクでは内部に小さな花が密集して咲いている状態であり、単体の花としてはそれほど大きいわけではないのです。
一方で、ラフレシアは単体の花としての大きさが90cmに達するため、世界最大の花はラフレシアである、とされることも多いです。
また、ショクダイオオコンニャクは生息数が非常に少ないため、絶滅が危惧されている希少植物でもあります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
最後の2つは、人食い花やお化けと称されるほど大きな花を咲かせる植物です。
実際に見てみたい、という方を止めはしませんが、奇跡的に開花している姿が見られたときは、どうか鼻が曲がらないようにご注意ください。
紹介した他の大きな花は良い香りを放つものが多いので、その季節に咲く花をぜひ見に行ってみてください。