このビデオを見たら、ダビングして誰かに渡さないと呪われる――
貞子でおなじみ呪いのビデオ、あれはもちろんフィクションです。
しかし、この世には本当に『呪われた』映画というものが存在するのです。
出演者をはじめとする関係者の相次ぐ不幸、撮影中に頻発する事故その他……。
今回はそうした曰くつきの『呪われた映画』9選をお届けします。
1 バットマン『ダークナイト・ライジング』(2012年)
引用元:https://www.cinemacafe.net/
アメリカン・コミックスDCの『スーパーマン』と並ぶ名作『バットマン』を原作とする実写映画
バットマン映画7作品目となる『ダークナイト・ライジング』には、銃乱射事件に主演俳優の自殺という大きなハプニングがありました。
そしてその双方にガッツリ絡んでいるのが、DC至上最高のヴィラン(悪役)『ジョーカー』です。
オーロラ乱射事件
2012年7月20日0時38分、コロラド州オーロラにあるショッピングモール内の映画館において、本作のプレミアム上映会を行っていた際に事件は勃発しました。
当時24歳の青年であったジェームス・ホームズは、まずは普通に館内に入り着席。
皆が映画に夢中になっている中、こっそりと後部の非常口からいったん退出。
ガスマスク・防弾ベスト・ヘルメット・拳銃二丁・ライフル一丁・ショットガン一丁・戦闘用手袋で完全武装。
開けたままにした扉から館内に戻り催涙ガス二本を投げつけ館内をパニックに陥れ、作品内の銃撃シーンにあわせて10〜20発を乱射、実に70人もの死傷者が出しました。
そして大変興味深いことに、ジェームス・ホームズは自らを『俺はジョーカーだ』と名乗っていたそうです。
ヒース・レジャーの死
引用元:https://www.cinematoday.jp/
ヒース・レジャー 享年28歳
死因 急性薬物中毒による事故死(自殺)と公表される
***
こちらのイケメン俳優ヒース・レジャーは、甘いルックスと確かな演技力で26歳にしてアカデミー主演男優賞にノミネートされた、極めて将来有望な俳優でした。
『こんな爽やかなイケメンにジョーカーが務まるか!』というファンの声にも負けず、彼はスクリーンの中で素晴らしいジョーカーを演じきりました。
そう、あまりに『素晴らし過ぎた』のです。
彼は常軌を逸したサイコパスを演じるために、徹底的に己を追い込み役作りに励みました。
『サイコパスには話し相手がいない』と知れば、6週間もホテルに引きこもり外部との接触を断ち孤独に演技の練習に打ち込み。
『ジョーカーは自分でメイクをしているはず!』と思えば実際に役のメイクを手ずから行い。
結果、目つき・喋り方・姿勢・歩き方・笑い方…全てにおいて彼は完全にジョーカーになりました。
まるでジョーカーがヒース・レジャーに憑依したかのようなその姿は空恐ろしくすらあります。
しかし、普通の人間がサイコパスを理解し演じ切るには想像以上の困難があったのでしょう。
心身ともに疲れ果てたヒースは不眠症から睡眠薬の助けなしには眠れない身体になり、最後には薬の併用摂取がもたらす薬物中毒で早過ぎる死を迎えました。
彼の遺族は『ジョーカーの役作りと彼の死は無関係』『彼は鬱など患っていなかった』と言っていますが、本人亡き今真相は誰にもわかりません。
ちなみに、ヒース以前にジョーカーを演じたジャック・ニコルソンは『この役を演じる時は気を確かに』とヒースに忠告していたそうです。
『ジョーカー』とは?
引用元:https://twitter.com/
DCというか、アメコミの中でも最高峰のヴィラン(悪役)の一人がジョーカーです。
一応位置づけはバットマンのライバルなのですが、実際にはそんなわかりやすい存在ではないというか……ちょっと説明の難しいキャラクターなのです。
あえて一言で言うならば、サイコパス。
完全なる社会不適合者で独自の哲学に基づいて世界を変えようとしている犯罪者。
そしてその狂った哲学はこの世界の醜い部分を鋭く抉り、時にバットマンよりも正論を吐いたりするから性質が悪いのです。
『善人ぶったところで、一皮剥けば人間誰もが欲の塊』
その真実をあらゆる反社会的な手段で証明するのが彼のライフワークといったところでしょうか。
こうした狂気のキャラクターを、至ってまっとうな人間が演じるのはリスキーなことなのかもしれません。
特に憑依型と呼ばれる役を自らに『降ろす』タイプの役者には。
2 ザ・クロウ 1994年
引用元:https://theriver.jp/
ジェームズ・オバーによるコミック『ザ・クロウ』を原作とする実写映画
『ダークナイト・ライジング』に続き、こちらも原作はアメコミです。
***
物語の舞台は荒廃した近未来都市デトロイト。
ハロウィン前日の10月30日は『悪魔の夜』と呼ばれ、無法者たちが悪事の限りを尽くしていた。
ある年の『悪魔の夜』、結婚式を翌日に控えたエリックとシェリーは四人の無法者に手によって暴行の果てに惨殺される。
その一年後、エリックは死の国の死者であるカラスの神秘の力を得て、不死身の復讐所として冥界から甦り復讐が始まった。
***
と、ストーリーはアメコミらしくツッコミどころ満載なのですが、それはここでは脇に置き。
この作品、撮影開始から事故連発、最終的には主役のエリックを演じたブランドン・リーが事故死しているのです。
頻発する事故
・撮影初日、スタッフの一人が身体の90%に火傷を負って病院に搬送される。
・建設作業員が自分の手にスクリュードライバーを貫通させる。
・車の衝突で保管室破損。
・台風によりセットの大半が破損。
ひとつひとつは『まぁなくもないかなぁ……特にドライバー貫通とかわりとあるある?』という気がしなくもありませんが、これらの不運が一つの映画の撮影中に起きたとなると、やはり尋常ではありません。
スタントマンでもないスタッフが身体の90%を火傷する状況とは一体なんなのか……。
ブランドン・リーの事故死
https://twitter.com
ブランドン・リー 享年28歳
死因 撮影中の発砲事故
本作で主役のエリックを演じていたブランドン・リーは、28歳の若さにして撮影中の事故でこの世を去りました。
作中でエリックが銃で撃たれるシーンがあり、もちろんここでは実弾の装填されていない空のカートリッジを付けた銃が用いられました。
しかし、銃弾が入っていないはずの拳銃からは実弾が発射され、ブランドンは腹部を撃ち抜かれて帰らぬ人となったのです。
何故このような悲劇が起きてしまったのか?
事前に実弾が映るシーンを撮影した後、銃弾を抜き忘れていた。
実弾を装填した(発射されないよう処置済み)同じ銃がもう一丁あり、間違って使ってしまった。
カートリッジは空にしていたが、実弾撮影に使った際の処置が甘くバレルに銃弾が残っていた。
誰かの陰謀。
などなど諸説囁かれているものの、真相は明らかにされていません。
親子二代で撮影死
引用元:http://amass.jp/
ブランドン・リーの父親は、かの有名なアクションスター ブルース・リーです。
親子そろって俳優の道に進み、そして二人共撮影中に亡くなっています。
ブルース・リー 享年32歳
死因 脳浮腫
ブランドンのような事故死でこそありませんが、親子二代で若くして撮影中に亡くなるケースはそう多くはないでしょう。
未完の遺作(ブルース・リーの死後五年、ユン・ピョウがリー役になって完成)『死亡遊戯』内において、彼は皮肉にも『撮影中の事故を装い顔面を撃たれて死ぬ』役を演じていました。
まさか自分の息子が本当に撮影中の事故で腹部を撃たれて死ぬなどとは、偉大なるアクション・スターも想像すらしなかったことでしょう。
3 ポゼッション 2012年
引用元:http://momo-rex.com/
あの生理的不快感を容赦なく突きつけてくれる『スペル』のサムライミが関わっている映画です。(残念ながら彼は監督や総指揮ではありません)
物語のあらすじは至ってシンプル。
***
ある日ふと立ち寄ったガレージセールで、クライドは次女エミリーの欲しがったアンティークの木箱を買い与える。
しかし、この箱を開けて以来エミリーに異変が起きた。
箱に異常な執着を示し、時に凶暴な振る舞いを見せ、まるで何かに取憑かれたかのように人が変わってしまったエミリー。
エスカレートする娘の奇行に危機感を覚えたクライドが調べたところ、エミリーが開けた箱はユダヤ民族に伝わる悪霊を封じ込めた『絶対に開けてはいけない』呪いの箱だったのだ。
***
呪いのアイテムをそれと知らずに手にしてしまい、何も知らぬままにいじくり回すうちに悪魔に取憑かれて異常な行動を取る少女。
物語自体は王道のホラーとでも言うべきものですが、この映画『実話』をベースにしているという触れ込みで上映されました。
実在する呪いの箱
ケビン・マニスはポーランド人大虐殺を生き延びた女性ハベラの遺品整理で、古ぼけた木製の収納箱を手に入れました。
ケビン曰く、元の持ち主ハベラはその箱を降霊術の会で使い『デイビューク』と呼ばれるユダヤ民話の中に伝えられる悪魔と交信したことがあり、『デイビューク』を箱に封じたそうです。
この話が真実か否かを確かめる術はありませんが、ケビンはこの箱を手に入れて以来、不気味な現象に見舞われ耐えきれなくなりました。
そこで彼は箱を手放すべく大手オークションサイトに『呪いの箱』を出展したのです。
日本人ならばどこかの寺社でお焚き上げを頼むところですが、欧米人はオークションに出すようです。
些か映画から逸脱しますが、うっかり呪いのアイテムを手にしてしまった際の対応にも民族性の違いが出て面白いですね。
この『呪いの箱』は2004年7月25日にロサンゼルス・タイムズ紙に、『大手オークションサイトに、所有者に厄災をもたらす呪いのアイテムが出品されていた』と掲載され一躍有名になりました。
出展された『呪いの箱』は、後のオーナー達にも平等に健康被害や不気味な現象をもたらし転々とし、今では誰が持ち主なのかわからないそうです。
引用元:https://kyouinoheya.amebaownd.com/
実際のデイビュークの箱はどうやらワインキャビネットであったようです。
気になる箱の中身は、二つの髪の束・御影石・乾燥した薔薇の蕾・ゴブレット・小麦・燭台・悪魔ディビューク
映画そのものに祟りは存在したか?
幸いなことに死傷者を出すことなく撮影・公開にこぎつけることができました。
ただし、撮影中は電球が壊れる・いきなり冷たい強風が吹きつける・不気味な振動・原因不明の保管庫全焼などおきました。
この火事で映画で使用された箱も焼かれたそうです。
調査の結果、火事は保管庫の外で起きたものではなく、電気的なものでもないということが判明しています。
ちなみに、映画製作者が俳優たちに『本物の箱を使うことに興味があるか?』と尋ねたところ、俳優陣はこぞって『NO』と答えたそうです。
一人くらい好奇心に駆られたり本物志向から『Yes』と言いそうなものですが、直感的に『何かヤバイ』ものがあったのかもしれません。
4 黒い太陽七三一ー戦慄!石井七三一細菌部隊の全貌 1988年
引用元:http://www.geocities.co.jp/
関東軍石井731部隊の日中戦争・太平洋戦争時における残忍極まりない人体実験の描写をテーマとする映画です。
わざと凍傷にさせた人間の腕をお湯で一気に温めるとどうなるか?
全裸の男性を減圧室に放り込むとどうなるか?
こうした被験者のその後や命を顧みない実験描写はひたすら凄惨を極めます。
そして恐ろしいことに、これらの実験は森村誠一のルポ『悪魔の飽食』に描かれている実話がベースです。
本物の遺体
こうした実験シーンの中で、一際生々しいと言われているのが少年を生体解剖するシーン。
なんとこのシーンに使われた遺体、本物だと言われています。
映画監督が『手頃な事故か不治の病で死んだ少年はいないか』と探していたところ運良く入手できたそうです。
動物虐待
本物の鼠の中に本物の生きた猫を放り込み、食い殺させる。
生きた鼠に火を付けリアル鼠花火状態で走り回らせる。
このような動物虐待を、低予算でインパクトのある映像を撮るために行っていました。
こうした行為によって祟りが起きたという話は聞きませんが、正直この映画に関しては『呪われた映画』というよりも『呪われるべき映画』と言うべきかもしれません。
5 イレイザー・ヘッド 1977年
引用元:http://momo-rex.com/
『エレファント・マン』『ツインピークス』で有名なデビッド・リンチが、若き日に制作費の工面と戦いながら五年を費やして制作した名作カルト映画がこの『イレイザー・ヘッド』です。
ストーリーはリンチ作品らしく暗喩と心象風景、時に本人すら『特に意味はない』と言い放つイメージによって綴られるため、極めて難解です。
***
舞台はフィラデルフィアの工業地帯。
主人公は特徴的な髪型の印刷工ヘンリー。
ある日ヘンリーは恋人メアリーの家に招待され、彼女の母親から娘が出産したことを告げられる。
生まれて来た我が子は異様に小さく酷い奇形であったが、何故かヘンリーは驚く様子もない。
赤ん坊は絶えず甲高い声で泣き続け、メアリーは家を出て行ってしまう。
赤ん坊と取り残されたヘンリーは次第に精神を病み、悪夢と悪夢的な幻覚の世界を漂い始める。
やがて限界を迎えたヘンリーは赤ん坊をハサミで殺害し、自身も天国への憧れを抱く。
***
夢も希望も安っぽい愛も一切ない、ひたすらシビアでアンニュイな気分になる素晴らしく悪趣味極まりない映画です。
『呪われた』というより見ていると『呪われそうな』当作品には、上映当時よりある噂が付き纏っていました。
謎の赤ちゃん
引用元:http://hukadume7272.hatenablog.com/
異常なものだらけの作中でも一際おぞましさが際立っていた奇形の赤ん坊スパイク。(役名はないが、制作陣はスパイクと呼んでいたのでそれに習う)
まだ映像技術が現代とは比べ物にならないほど低かった当時、スパイクの動きは奇妙にリアルで『まるで本当に生きているようだ』と言われ、そこからさまざまな憶測が飛び交いました。
兎の屍骸、牛の胎児、山羊か羊の胎児、猫の屍骸、これらをベースとして加工したのではないか?
こうした質問をぶつけられても、リンチ自身は否定も肯定もせずにいかなる質問に対しても沈黙を貫いています。
リンチにとってスパイクの制作方法はトップシークレットだったようで、制作中に編集前のフィルムを見る際には映写技師に目隠しをさせたそうです。
また、共に映画を作るクルーメンバーにすらその秘密は一切明かさず、『それに関して口外しないこと』を契約書に書いてメンバーにサインまでさせました。
一般的に『エイリアン』のように精巧に作り込まれた創作物があれば、詳細を記録した映像などが残っているものですが、スパイクに関しては何一つ残っていません。
明るみに出せないような何かがあるのか?謎を仕掛けるのが大好きな偉大なる悪趣味クリエイター・リンチの手による作られた都市伝説なのか?
何を信じるかはあなた次第です。
6 フリークス 1932年
知る人ぞ知る最高のカルト映画であり、ある意味においてはドキュメント映画でもあるのが『フリークス』。
フリークスとは英語で奇形を意味する単語であり、当作品は題名の示す通り奇形の人々を主役とした物語です。
***
とあるサーカス団の一員である小人のハンスは同じ小人の曲芸師フリーダと婚約しつつ、一方では美貌の軽業師クレオパトラ(健常女性)にも惹かれている、そんな状態。
クレオパトラは奇形の団員たちを見下していたものの、ハンスが実は資産家の生まれと知るやいなや色目を使う。
スレていないハンスはクレオパトラに目が眩みスピード結婚を決意。
婚約者を奪われた上にクレオパトラの本心を知っているフリーダは悲嘆にくれる。
一方クレオパトラはまともにハンスと結婚生活を送る気などサラサラなく、結婚式の後(入籍したら)ハンスを毒殺する計画を本命の男と進めていた。
思う所は多々あるものの、ささやかな宴を開きハンスとクレオパトラの結婚を祝福する仲間たち。
この席でクレオパトラは回ってきた杯を跳ねのけ、ハンスと一座の見世物仲間たちに向かって『アンタら化物と私は違うんだから!』と酷い侮辱の言葉を吐く。
その後、仲間たちはクレオパトラが侮辱だけならまだしもハンス殺害計画まで立てていたことを知り激怒した。
彼らは逃げるクレオパトラを追い詰め恐ろしい罰を下す。
引用元:https://eiga.com/
***
悪いコトをしたらそれなりの罰を受ける。
相手が悪いとそれなり以上に痛い目見ることもある。
いつでも取り返しがつくと思っていたら大間違い、運が悪いと人生終了。
人を見下すって、実は結構リスキーだから肝に銘じとけ。
そういった教訓が含まれた、ちょっとダークでホラーな勧善懲悪・因果応報の物語。
しかしこの映画、ある理由からイギリスでは三十年以上も封印された上、監督であるトッド・ブラウニングの業界生命を一夜で終わらせた『呪われた』映画なのです。
全員本物
その理由はズバリこれ。
サーカス一座の見世物メンバーをしている役者が、全員本物の奇形――フリークスなのです。
当時はまだ人権保護や社会福祉といった面で社会が成熟していなかったため、世界中どこへ行ってもサーカスでは見世物小屋(サイド・ショー)が盛んに行われていました。
自身サーカス一座に身を寄せ見世物小屋で働いていたブラウニングは、共に過ごしたサーカス芸人への深い愛情と敬意を込めて『フリークス』を撮ったのですが、世間からは当時まったく理解されずに彼のキャリアを終わらせる結果となってしまいます。
奇形をスクリーンに出す=差別的!とヒステリックに批判する人々によって不当に評価され30年も封印されていたのですから、『呪われた映画』を名乗る資格は十分にあるでしょう。
ちなみに、映画に出ている奇形芸人たちの多くは当時のトップスターであり、世の中の大半の人間よりも高収入でした。
彼らは決して無理矢理映画に出されて見世物にされていたのではなく、自らのパフォーマンスに自信と誇りを持つプロのエンターティナーです。
引用元:https://www.subculture.at
こちらの上半身だけの紳士は映画に出演していた俳優の一人、ジョニー・エック氏。
写真を見ればお分かりかと思いますが、実に堂々とした『成功者』オーラに満ち溢れた紳士っぷりです。
実際、彼は数ヵ国語を流暢に操り、吹奏楽にピアノに指揮にと音楽的才能に恵まれ、晩年には故郷で画家として評価され79歳という(当時としては)長寿を全うしました。
趣味が高じての写真家でもあり、手先の器用さから人形劇パペットのモデラーもしていたというから驚きです。
こんなにも才能に溢れた俳優を『奇形をスクリーンに出すなんて不謹慎だ』という独善的な理由で作品ごと封印し、出番を検閲で大幅にカットして彼を酷く落胆させたという意味でも『呪われて』います。
7 オズの魔法使い 1939年
引用元:https://www.pinterest.jp/
『オズの魔法使い』は誰もが知っている夢溢れる児童文学です。
そこには狂気・暴力・性的倒錯・悪趣味な恐怖といった教育上悪そうなものは何もなく、終始お子様と一緒に安心して鑑賞できる優良ファミリー映画と言えるでしょう。
余りに有名なので物語の説明は割愛しますが、この明るく和やかな映画の裏側には数多くの事故・事件が潜んでいました。
有害過ぎる雪
ケシ畑で雪が降るシーンで使われていた雪の成分が、何とアスベスト100%。
身体に悪すぎます。
西の魔女 大火傷
西の魔女が消えるシーンで予定より早く煙が上がり、マントに引火。
魔女役のマーガレット・ハミルトンは手と顔に重度の火傷を負い、女優の命ともいうべき顔に傷痕を残しました。
案山子とブリキの悲劇
案山子の質感を出すために使われた特殊メイクの素材がゴム製であったため、案山子役のレイ・ボルジャーの顔には一年間ゴムの痕が残りました。
ブリキの衣裳にはアルミニウムの粉塵が使用されていたため、最初のブリキ役バディ・イブセンは粉塵が肺に溜まってアレルギーを起こし降板。
長期入院を余儀なくされました。
ゴムだとかアルミニウムの粉塵だとか、どう考えても人体に有害としか思えません。
アスベストの雪といい、かなり無茶をしている感があります。
最高にハイな歌
ドロシー役の美少女ジュディ・ガーランドは実年齢17歳でありながら10歳の少女を演じるために、一日一食でカロリー制限を受ける過酷なダイエットを強いられました。
13歳からダイエット用の薬として使用していたアンフェタミン(覚醒剤)でハイになりながら朗らかに歌っていたそうです。
向精神薬の使用で気分の躁鬱もあり、最終的には薬物の過剰摂取で死去したと言われています。
ちなみに、エム叔母さん役のクララ・ブランディックも同様の原因で死亡しました。
8 時計仕掛けのオレンジ 1971年(日本公開1972年)
引用元:https://renote.jp/
スタンリー・キューブリック作
アンソニー・バージェス原作
『イレイザー・ヘッド』とは別の意味で難解で見ていて陰鬱な気分になる映画です。
***
舞台は近未来のロンドン。
主人公はヴェートーヴェンをこよなく愛す15歳の少年アレックス。
彼をリーダーとする四人組の不良グループは夜毎ドラッグをキメながら無軌道な暴力行為を楽しんでいた。
しかし、好き勝手をしていたアレックスは仲間割れから裏切られ、強盗に入った金持の家で彼だけが逮捕される。
懲役14年を言い渡されたアレックスは模範囚を装っていたため、ある条件と引き換えに刑期が短縮される取引を持ち掛けられた。
その条件とは、洗脳実験を受けること。
大好きなベートーヴェンの第九を聞かされながら、アレックスは暴力や性行為に生理的拒絶反応を起こすように造り換えられていった。
実検は成功し、彼は暴力に対して無防備(自衛すらできない)状態で出所した。
その結果、彼はかつて自分が暴力で捻じ伏せてきた弱者たちから凄惨な報復を受る。
追い詰められたアレックスは自殺を試みるも失敗、一度死にかけたことで洗脳が解けたことに自他共に気づく。
政府は非人間的な実験を非難されたため、今度は『実検から回復した者』として彼にメディアへの出演を求めた。
***
暴力・性的倒錯・風刺が毒々しい色彩と表現で描かれている当作品は、その刺激的な内容のために模倣犯を生み出し、暴力を誘発する問題作として英国において上映禁止となりました。
州知事暗殺未遂事件
1972年5月15日、米国人男性アーサー・ブレマーはアラバマ州知事ジョージ・ウォレス暗殺未遂事件を起こしました。
ブレマーは自身の日記に『時計仕掛けのオレンジを見て、ずっとウォレスを殺すことを考えていた』と記述しているそうです。
模倣犯とは少し違いますが、彼の言葉が真実ならば著しく映画の影響を受けたことになります。
脅迫からの上映中止
余りに暴力の主張が強い(しかも絶妙にスタイリッシュ)当作品は、1970年代にイギリスで強盗・殺人などの模倣犯を生み出したため、マスコミは上映中止を訴えていました。
そんな中、キューブリック監督とその家族は『映画の中でアレックスと仲間たちがしたのと同じように、ロンドン郊外にある監督の家へ押し入る』という脅迫を受けます。
キューブリックは家族を守るため、配給元のワーナー・ブラザーズにかけあいイギリス国内での上映を止めさせました。
9 征服者 1955年
引用元:https://www.elle.com/
主演 ジョン・ウェイン
ション・ウェインと言えば西部劇。
しかし、『征服者』の舞台は開拓時代のアメリカではなく、モンゴルです。
そして、ジョンの役所はカウ・ボーイでも保安官でも流れ者のガンマンでもなく、チンギス・ハン。
どう見てもアジア系の顔じゃないのに、チンギス・ハン。
映画の評判は芳しくなく、興行成績は最悪。
しかし、真に最悪だったのはこの後です。
犠牲者最多!91名
撮影に関わった出演者・スタッフの内、推定91名が癌で苦しんだり亡くなったりしています。
ちょっと普通では考えられない数字ではないでしょうか。
その理由はロケ地にあると言う説が今のところ濃厚で、撮影に使われたユタ州の砂漠は1951年から3年連続で80回以上も原爆実験が行われていた場所でした。
そのため、関わった人々は撮影中に過度の放射能を浴び内部被爆していたのではないかと言われています。
主役のジョン・ウェインをはじめ、監督やヒロイン役の女優も癌で亡くなりました。
『呪いの映画』というよりありえない不注意からの『事故映画』かもしれません。
番外 お岩さん関連
引用元:https://ranpo.co/
呪い・祟りと言うならば、絶対に外せないのがお岩さん。
我が国の誇るベスト呪い作品、それこそが『東海道四谷怪談』なのです。
ただし、お岩さんに関しては『映画』に限定したことではないので番外とさせていただきます。
お岩さんを呼び捨てにすると祟られる。
関係者一同で於岩稲荷に詣でないと祟られる。
舞台・ドラマ・映画・講談・その他、何をするにもお岩さんに関わるならばお参りは必須、それが業界での暗黙のルールと言っても過言ではありません。
お参りを怠ったばかりに事故にあった、病気になった、不審死を遂げた…そんな話が一つや二つではないので本物認定しても良いかと思われます。
ちなみに於岩稲荷のお向かいには於岩寺もあって紛らわしいのですが、詣でるのは神社の方です。
まとめ
『呪われた映画』あなたはいくつ見たことがありますか?
今回はあえて『ポルターガイスト』『エクソシスト』『オーメン』といった超メジャーな作品は外し、一般にあまり知られていないものを集めてみました。
他にも紹介しきれなかった素晴らしく呪われた作品がたくさんあるので、是非コンプリートを目指してください!