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クローン人間は実在するのか?禁止理由・特徴まとめ

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「クローン」は1903年にアメリカの植物生理学者であるハーバート・ジョン・ウェッバーが名付けた生物学用語で、同一の起源を持ち、均一な遺伝情報を持つコピーや、コピーを作り出す技術を指す言葉です。

現在では高度なバイオテクノロジーなどに使われることの多い「クローン」ですが、本来はチューリップの球根やジャガイモの塊茎などの無性生殖によって自然に行われることも多いです。

動物ではつまり体細胞や組織から生物を成長させた例はいまだに確認されていませんが、細胞核を未受精卵に移植する方法や、1998年に日本の生物学者である若山照彦らが開発した、核を除いた卵細胞に体細胞を注入する「ホノルル法」によって現在のクローン技術の基礎が確立されました。

この「ホノルル法」によって現代では多くの動物のクローンが開発されています。

動物のクローン技術が進歩することで臓器の複製や幹細胞の移植による再生医療の可能性が開ける一方で、「クローン人間」と呼ばれる存在がまことしやかに語られるようになりました。

 

クローン人間はなぜ禁止されるのか?


クローン人間は現代の技術をもってすれば、作成自体は不可能ではありません。

ヒトの卵子から核を取り除き、クローンを作りたい人間の体細胞の核を移植してそれを子宮に着床させ、育てればいいのです。

しかしクローン羊「ドリー」の誕生が話題となった1997年の5月には世界保健機関(WHO)がクローン技術の人間への応用を禁止する「クローン技術に関する決議」を採択。

同年6月に行われたデンバーサミットではフランスのシラク大統領の提案によって、クローン技術の人間への応用の禁止を国内法に盛り込む措置や国際的な協力を進める内容を宣言に盛り込みました。

この宣言を受けて2000年11月には日本でクローン人間の作製を禁止する「クローン技術規正法」が成立、翌2001年6月に施行されています。

クローン人間を巡る議論としては、遺伝情報の提供者と同一の遺伝的性質を持つ人間が生まれるために、生まれてくる人間の形質(容姿や身体能力など)をある程度予測することができ、意図的に特定の遺伝的性質を持つ人間を作ることができることから、次の5つの倫理的な問題が指摘されています。

 

人間の育種につながる

特定の遺伝的性質を持つ人間を作ることができるということは、人間を意図的に交配して、優れた形質を持つ人間だけを選出してクローンで数を増やす育種につながる恐れがあります。

育種は植物の世界では広く行われてきたことですが、人間に当てはめてしまうと優生学的な発想となってしまいます。

ナチス・ドイツではヒトラーが著書で「文化創造者」としたアーリア人を増やすために「レーベンスボルン(生命の泉)」という収容所を設置していました。

レーベンスボルンでは人種的に優れていると考えられてたナチ親衛隊(SS)隊員が収容された未婚女性と子どもを作っていたほか、「より純粋なアーリア人」であるとされたノルウェー人の母親とドイツ人の父親の間に生まれた子どもを収容していたりもしました。

ほかにもナチス・ドイツでは金髪碧眼の男女を強制的に結婚させるなど「ドイツ民族の品種改良」を進めています。

クローン技術を用いて人間を作ることは、ナチス・ドイツのように恣意的に「優れている」とされる形質を持つ人間を作り出してしまう可能性が否定できなくなってしまいます。

 

人間を手段、道具として見てしまう可能性がある

また特定の目標を達成するために特定の表現形質を持つ人間を作り出すことは、人間を手段や道具のように見てしまう可能性を持っています。

例えば強いサッカーチームを作るために、優れたサッカー選手の遺伝子を使ってクローン人間を作るとします。

この目的を持って生み出されたクローン人間に、普通の人間なら持っていてしかるべき「進路選択の自由」は与えられないでしょう。

仮にクローン人間が成長過程で他の夢を持ったとしても、サッカー選手になるために作りだされた以上、サッカー選手になるしかありません。

クローン技術で作られた生物は、自然な交配で生まれた生物と同様に自我意識を持つと言われているため、将来を決められた奴隷のような扱いをすれば重篤な人権侵害となってしまいます。

 

生命に対する一般的な認識から逸脱してしまう

人間は生殖細胞の減数分裂による遺伝子の組み換え、男女の巡り合わせ、そして精子と卵子の組み合わせという、3つの天文学的な偶然の末に誕生しています。

その超人為性のために個人はその存在そのものに価値があり、生まれながらに尊厳と自由が与えられています。

この事実は一般的な認識に照らせば「神のみが生命を作ることができる」ということになるのですが、クローン人間は人間が人間を人為的に作り出す行いであり、一般的な認識から逸脱してしまいます。

またこの世に生を受ける者は両親の愛の営みを契機に超人為性によって選別され、不安と期待が混ざった時期と出産という大きな困難を超えて誕生します。

不安と期待を超えた先にある大きな感動と超自然的なものへの感謝と敬虔な気持ち、そして生命の誕生に携わった互いへの愛を持つことによって両親は子どもに対して愛を抱くことができるのですが、クローン人間にはこの過程が存在しません。

クローン技術は子どもを産むことができない母親が子どもを持つためにも使われると想定されますが、通常の過程を経ないことで子どもや母親が正しく互いを愛することができるのか、そしてそうでないなら代わりにどのような感情が生まれるのかはまったく分かりません。

クローン技術によって生み出された子どもは愛を実感できずに、大いなる孤独を味わうことになるかもしれません。

 

クローン人間によって社会問題が生まれる可能性がある

クローン人間は誕生する過程を除けば、男女の関係によって生まれた人間となんら差はなく、遺伝子を提供した人間からも独立した自我を有します。

そのためクローン人間も当然ひとりの人間として平等に接しなければいけませんが、現実にはクローン人間でなくとも民族差別や人種差別などが横行しています。

もしクローン人間が世に送り出された場合も、クローン人間であるために生まれる差別やイジメが社会問題となるかもしれません。

またクローン人間を作る技術が一般に広まった場合、宗教組織やテロ組織などが忠実な兵士を用意するために技術を悪用する可能性や、知らず知らずのうちに遺伝子提供者となることもあります。

これらの社会問題はクローン人間やクローン人間を作る技術に問題があるわけではなく、それを運用していく社会に起因しています。

しかしクローン人間がこのような社会問題で槍玉に挙げられる脆弱性を備えた存在であることは確かです。

 

生まれてくる子どもに短命のリスクがある

1997年に誕生して大きな話題となったクローン羊「ドリー」は進行性の肺疾患を患い、2003年に安楽死を遂げました。

羊の平均寿命は15年程度であることから、ドリーは安楽死とは言え平均の半分ほどしか生きることができなかったことになります。

ドリーは通常の羊よりも染色体末端にある「テロメア」という部位が短く、老化が通常の羊よりも早く進行したのではないかと考えられています。

テロメアと老化のメカニズムはまだ判明していませんが、ドリーは高齢の羊によく見られる関節炎を2001年ごろから患っていたと言われており、テロメアが老化に関わっている可能性を示唆しています。

人間のクローンであっても体細胞核を扱う以上テロメアが短くなることは避けられず、ドリーのように短命になってしまう可能性はあります。

 

クローン人間の特徴とは?


クローン人間によく見られる誤解として、「ある日自分(遺伝子提供者)と同じ年齢、姿形をした人間が表れる」というものがあります。

先に述べたようにクローン人間は遺伝子提供者の体細胞の核を移植された受精卵を子宮へ着床させて生み出します。

そのため遺伝子提供者がどれほど幼いとしても同一年齢になることはありません。

クローン人間は例えるなら年齢の離れた一卵性双生児のようなものであり、遺伝子情報は同一ですが、逆に言えば共通点はそこにしかありません。

外見はよく似るかもしれませんが、育つ環境が変われば性格や性質、嗜好などは似ても似つかないものになるでしょう。

そのうえ受精卵の段階では性別も分化していないため、遺伝子提供者と性別が別のものとなる可能性すらあります。

また近年ではセキュリティの解除に指紋や血管パターンなどを用いた生体認証が増えました。

クローン人間は遺伝子提供者と同一の遺伝子を有していることから、遺伝子提供者の生体認証を突破することができるかもしれないと考えるかもしれません。

ですが指紋や血管パターンは後天的な影響によって決まるため、たとえクローン人間であっても遺伝子提供者の生体認証を突破できる可能性はまったく血縁のない人間が突破する可能性と変わりません。

当然、クローン人間が遺伝子提供者の記憶を引き継ぐようなことも考えられません。

しかし世界には臓器移植を受けた患者がドナーの記憶を受け継いだり、食べ物や性格などがドナーのそれと似通ったものになった事例もあります。

このことから「細胞が記憶を持つ」可能性も示唆されており、もしこれが正しければクローン人間が遺伝子提供者と共通の記憶を持つことも充分に考えられます。

ただもしクローン人間と突然出会ったとしても、即座に看破することは難しいと言えるでしょう。

 

クローン人間は実在するのか?


さて、倫理上の問題などからクローン人間の製作はタブー視されることが多いですが、実際にまったくクローン人間を作る試みがなかったわけではありません。

アメリカ・シカゴ州の物理学者リチャード・シード博士は1995年12月に子宝に恵まれない夫婦が子孫を残せるよう、自分の体細胞を使ったクローン人間を作り出す計画を発表しました。

計画の内容はシード博士が自分の細胞とドナーとなる女性の卵子を結合させて胚を作り、妻のグローリアが受胎するというものです。

しかしシード博士の計画は資金や技術の不足と、世界のクローン人間への規制の動きによって頓挫しました。

他にもイタリアのセベリノ・アンティノスという医師が2002年4月に3人の女性がクローン技術で作った受精卵を着床し、2003年1月に出産予定だと発表しました。

アンティノリは治療中の女性から無断で卵子を採取した容疑でイタリア当局から指名手配されており、盗み出した卵子を使ってクローン技術を研究していた可能性があります。

ですが2002年の発表後の続報はなく、本当にクローン人間が生まれたかは不明です。

また世界にはクローン人間やクローン人間の実在に関する都市伝説が存在しています。

表向きクローン人間は実在していないことになっていますが、「火のない所に煙は立たぬ」という以上、もしかしたら世界のどこかにクローン人間が存在している可能性は否定できないでしょう。

 

デイヴィッド・ロックフェラーは「クローン牧場」から臓器移植を受けていた

チェース・マンハッタン・コーポレーションのCEOであり、アメリカ合衆国の名門ロックフェラー家の第3代当主を務めた銀行家、実業家のデイヴィッド・ロックフェラーは、2017年3月に101歳でこの世を去りました。

アメリカの平均寿命は2018年時点で男性で76歳となっており、デイヴィッドは大往生とも言っていいほど長生きをしたと言えます。

またロックフェラー家と言えばあの野口英世を輩出したことでも有名な、医学や生物学に強いロックフェラー大学を設立したことでも有名です。

そのためデイヴィッドには生涯で6回もの心臓移植を受けていたという説があります。

1976年に自動車事故に遭ったとき初めて心臓移植を受けたと言われており、99歳となる2014年に6回目の心臓移植を受け、7回目の心臓移植に失敗して死亡したというのです。

普通心臓移植では赤血球の型(いわゆる血液型)と、HLA(ヒト白血球抗原)の両方が適合する必要があり、特にHLAは肉親であっても適合率が25%ほどと移植への高いハードルとなっています。

そんな心臓移植を7回も受けることができるというのは幸運の域を超えているようです。

デイヴィッドが7回も心臓移植をすることができたのは、極秘裏に自分のクローンを培養する「クローン牧場」を作っていたためだという説があります。

自分のクローンから移植用の心臓を用意すれば、確かに間違いなく適合するでしょう。

予算面もロックフェラー家であれば問題はありません。

 

自分がクローン人間であると告白したラッパーがいる

カナダ出身の人気ラッパー「KID BUU(キッド・ブー)」は、2018年9月8日に公開されたYouTube上の番組「VLAD TV」で自分がカナダのクローンエイド社で開発された第2世代のクローン人間で、研究所から逃げ出してきたと告白しました。

KID BUUは自分が0112568とナンバリングされたクローン人間で、母親はプエルトリコ人、父親はシチリア人で精子ドナーであると発言しています。

クローンエイド社は眉間のチップに記憶や感情を集積し、それを取り除くことでクローンエイド社にいた記憶を消去することができるそうです。

クローンエイド社とはフランス発祥の新宗教「ラエリアン・ムーブメント」が創設したクローン研究所で、2002年には日本人のクローンを作ったと言われています。

このKID BUUの告白は荒唐無稽なものですが、以前Wikileaks創設者のジュリアス・アサンジも「カナダのラエリアンがクローン人間を作った」という発言をしており、奇妙な一致を見せています。

KID BUUは友人であるラッパーのTripple Reddも第3世代のクローン人間であると発言しており、その真偽は不明です。

 

中国ではクローン人間の作製計画が進行している

クローン人間の作製をタブー視する背景には、倫理的な問題のほかに宗教的な問題があり、先進国ではその払拭はなかなか難しいと思われます。

しかし共産主義国である中国では政治が宗教を抑えるうえ、人間を物質的な存在だと考えるためにクローンへの忌避感が希薄だと考えられており、それ故にクローン人間の作製計画が進行しているという都市伝説があります。

実際に2018年1月24日には中国科学院の研究チームがカニクイザルのクローンを誕生させたと発表しています。

同じ霊長類であるサルのクローンを作ったことが、クローン人間作製への忌避感のなさの表れということです。

他にも中国では2017年9月には遺伝子を組み替えた犬を誕生させ、2018年11月にはHIVウィルスへの耐性を持つように受精卵の遺伝子情報を書きかえた双子を誕生させたという話もあります。

非共産圏では倫理や宗教観が邪魔してできないようなことも、有用であれば実行できてしまうのが共産主義国の中国の強みではあります。

いずれクローン人間の存在が中国の表舞台に出る日も来るのかもしれません。

 

まとめ

今回はクローン人間についてなぜ禁止されているのか、もしクローン人間がいたらどんな特徴をしているのか、そしてクローン人間にまつわる都市伝説を紹介しました。

私たちは普段クローンというものについて真剣に考える機会が与えられていないため、そもそも存在について無知であったり、誤解を抱いているかもしれません。

しかし遺伝子組み換え食品が食品衛生上の問題となったように、クローン技術は近い将来私たちの生活に深く関わってくる可能性のあるものです。

そのときに無知から不利益を生まないよう、今のうちにクローンに関する知識を身につけ、真剣に自分の意見を持つようにしたほうがいいかもしれません。

倫理的な問題も山積していますが、クローン技術が人類にとって有益なものであることは間違いないのですから。



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