第6話 銭湯で生首
引用元:https://cowcamo.jp
体験者:Rさん20代女性
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Rさんがまだ小学生の頃、母親に連れられて銭湯に行った時のこと。
脱衣所には真ん中にロッカーがあり、彼女は奥で着替えていた。
ふと視線を感じて振り向くと、中央のロッカーの方から三つ編みの女の子がRさんの方を覗き込んでいる。
ただし、女の子には首から下がなかった。
つまり、生首が宙に浮いているような状態で、ニッコリと笑って消えてしまったのだ。
女の子の奥の方に大きな鏡もあったのだが、そこにも女の子の姿は映っていない。
驚き慌てたRさんが女の子がいたほうに行ってみるも、そこには誰もいない。
さらにRさんは浴場も見に行ったのだが、やはりそんな女の子は見当たらなかった。
風呂場と霊の親和性
一般的に、霊は水場と鏡を好むと言われています。
その理屈でいくと、常時大量の水が張られ、大きな鏡(場所によっては三面鏡もある)の設置された大浴場は条件的にぴったりです。
健康ランドに宿泊して、丑三つ時に一人で浴場に行ってみたくなりませんか?
第7話 お盆限定のお客様
引用元:https://townwork.net
体験者:Rさん20代女性(同上)
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子供のころ生首を見たりしていたRさんも高校生になり、レジでアルバイトなどしていた時期があった。
勤務先の近くには墓地があり、お盆の時期などはそれなりにお客も多い。
盆を迎えたある日――
Rさんが入ってきたお客様に『いらっしゃいませ』と頭を下げたら、彼女の方を見ていてパートのおばちゃんに『どうしたの?』と声を掛けられた。
怪訝に思った彼女が頭を上げて周囲を見ると、そこには誰もいない。
Rさんは咄嗟に『思い違いをしたみたいです』とごまかしたものの、彼女は『見えないお客様』がレジで何かを会計し、袋詰めカウンターで嬉しそうに何かを詰めているのを何度も見かけた。
お盆の間中、Rさんは毎日『見えないお客様』に挨拶をし続け、パートさんの間で見える人扱いを受けてしまったそうだ。
無害な霊?
お盆というあの世の人がこの世に来ても良い期間を守り、さらには生前の習慣に従いきちんとレジに並んで会計をし、所定の場所で行儀良く袋詰めするくらいなので害のない霊であるように思えます。
実際、Rさんも怖くないけど不思議な話だと語っていました。
第8話 血縁者三人がそれぞれに見た女
引用元:https://www.pakutaso.com
体験者:Rさんの父・弟・叔母
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父・弟・叔母だけで遠出をすることになり、目的地が遠方であるため夜中に出発して裏道を走っていた時のことだ。
走行中に人が屋根に落ちてきたような衝撃音を弟と叔母は確かに聞いたのだが、何故か運転していた父だけが気付かない。
車を止めて屋根を確認してみたが、そこには予想していたような凹みはなかった。
結局何の音だったのかわからぬまま更に走ると、民家も何もない場所に出た。
線路とちょっとした林、電灯がぽつぽつとあるだけの道を走り続ける。
すると、父がいきなりバックをし始めた。
何事かと慌てる叔母と弟に、父は『小雨の中、電灯の下に女性が立っているから助けなきゃ』と言い出す。
その言葉に叔母と弟が振り返って見ると、そこには異様なものが見えた。
叔母には上半身だけの女、弟には下半身だけの女がみえていたのだ。
これは乗せたらマズイと直感した二人は、父を『こんな時間、こんな場所に人なんかいない。前見て運転してとにかく目的地に急ごう』と説得。
一行は何とか異様な女を乗せることなくやり過ごせた。
叔母と弟の話(女の上下)を合わせると――
・長い黒髪
・白のワンピース
・青白い肌
間違いなく同一人物と思われる。
そもそも、そこには他に誰もいないのだから、別人であるはずがない。
ちなみに、Rさんが父にどんな女性であったかと質問するも、父は雨に濡れた女性がいるとしか認識していなかった。
三者三様の『見え方』
近しい血縁者三人が、同日同時に同じものを見聞きしている。
このこと自体がレアなケースである上に、Rさん一族は聞こえ方・見え方にそれぞれ差異があるのが大変興味深く思えます。
父:衝撃音が聞こえない/雨に濡れた女性の全体像をぼんやりと把握/助けねばと車に乗せようとする
叔母:音を聞いている/女性の上半身だけを見ている/乗せたら危険と判断
弟:音を聞いている/女性の下半身だけを見ている/乗せたら危険と判断
こうして整理してみると、父だけが女性を普通に『困っている人間の女性』と認識していたことが伺えます。
時に霊感の強すぎる人は、幽霊と生身の人間の区別がつかないという話を聞いたことがありますが、Rさんによると『お父さんは普段まったく霊感なんてない人』だといいます。
何かの弾みで強烈に波長が合ってしまったのでしょうか…。
第9話 未来を見たお母さん
引用:https://www.amazon.co.jp
体験者:大学時代の友人Gの母親
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Gの母親は出産を控えて参院に入院していた。
その時、彼女は3~4歳のちゃんちゃんこを着た男の子が病室に入ってくるのを数回見かけた。
入院している他の患者の子供かもしれないのだが、そんな小さな子供が保護者もなく一人で歩きまわっていることに少しの違和感を覚えたが、特に確認することもなく彼女は一人息子のGを無事出産して退院。
数年後――
彼女はじき4歳になろうかという息子にちゃんちゃんこを着せてハッとした。
それはまさに産院で病室に入ってきたあの子供だったのだ。
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デジャヴとか予知夢というのはありますが、完全に起きた状態で数回に渡り目撃。
しかも、すぐ先の未来ではなく3~4年後の未来を見るというのはレアケースではないでしょうか。
第10話 不思議な宴会場
引用元:https://www.takinoyu.com
体験者:大学時代の友人G(上の話で生まれた一人息子)当時20代後半
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Gは教員試験を受けるために、8月の札幌に行った。
北海道とはいえ夏の盛り、昼にスーツ姿で受験したGはジットリと汗ばんでいた。
帰りの飛行機まで時間もあったため、Gは宿泊したホテルに戻り『空き部屋があったら着替えさせて欲しい』と頼んだ。
時刻は午後4時くらいだっただろうか。
『宴会場が空いているから使ってくれ』と言われ、Gは従業員に案内され宴会場に向かった。
従業員は縦長の宴会場の手前にだけ電気をつけてくれた。
宴会場だから窓はなく、反対側は薄暗くて見えなかったが、昼間だから怖くはない。
そこで着替えようとしたGだが、その前に汗を拭きたくなりタオルを濡らそうと、宴会場からトイレに行こうとした。
すると廊下から中年女性の話声がする。
カチャカチャと食器が触れ合う音もする。
Gは『ああ、宴会の準備をしてるうんだな』と思い、まさかその中に着替えながら出ていくわけにもいかぬと、声が止むのを待って廊下に出た。
廊下はシンと静まり返っていた。
Gは急いでトイレに行ってタオルを濡らし、また宴会場に戻った。
Gが汗を拭き私服に着替えている間、また女性の喋る声や笑い声、食器の触れ合う音がした。
だが不思議なことに、着替えを終えたGが宴会場から出ると、やはり廊下はシンと静まり返っているのだ。
Gはそのままホテルのロビーに戻り、空港に向かった。
しかし、よくよく考えたらいろいろと可笑しなことがあるとGは気付いた。
①従業員は『使っていない宴会場』と言った。
それなのに、午後4時に宴会の準備をするのは早すぎて不自然。
②その階で誰にも会っていない。
宴会の支度などしていれば、普通は人が行き来しているはず。
③宿泊客とはいえ、宴会の準備をする部屋を普通は使わせない。
これらのことから、Gは『あれは多分生きている人じゃなかったんだろうな』と結論を出している。
ポルターガイスト?
物理的に何もないところで音がしたり光が出たりモノが動いたりする現象を、一般的にポルターガイスト現象と呼びます。
Gが経験したことは、誰もいない何もないところから音がしたと考えるならば、ポルターガイスト現象と言えるでしょう。
もちろん、実際に人がいて宴会の準備を早くからしていた可能性もなくはありません。
たとえば、いくつかある宴会場の使用シフトを把握していなかった間抜けな従業員が、すぐにでも使う宴会場に誤ってGを案内してしまったとか――。
しかし、どう理屈をこねても説明のつかないことがあります。
宴会場から出た途端、廊下がシンと静まり返り誰とも会わない。
これは明らかに不自然です。
さっきまで笑いさざめいていたものが、Gの出入りによってスイッチが切れたように止まる。
しかも、食器の触れ合う音すらも止まるというのですから、異常としか言えません。
おそらく、音だけでなく人の気配そのものがなくなっていたのではないでしょうか。
そのホテルのが立地を調べたら、霊道の上に建っていたりしないか気になります。