戦前の日本では、有名な零戦をはじめとして、世界レベルの戦闘機がたくさん開発されていました。
太平洋戦争ではこれらの戦闘機も多くの活躍をみせましたが、日本の敗戦によって国内の軍需産業は崩壊し、軍隊自体もなくなってしまいます。
戦後、1954年7月1日に航空自衛隊が発足し、戦前は陸軍と海軍の航空隊だった日本の航空戦力は独立した軍種として再誕しました。
空自でこれまでに使われてきた歴代の戦闘機の多くは、アメリカ軍が使用していた機体を導入したものでしたが、わずかに国産のものや共同開発の機体もありました。
ここでは、戦後、日本の空を守ってきた航空自衛隊の歴代戦闘機をランキングでみていきたいと思います。
第7位 F-86 セイバー
引用:forum.warthunder.com
F-86はアメリカのノースアメリカン社が開発したジェット戦闘機で、セイバー(サーベル)の愛称をもっています。
F-86は、太平洋戦争中の1945年5月から開発が始められた機体で、戦後に独立軍種となったアメリカ空軍で使用され、朝鮮戦争では実戦に投入され、日本をはじめフランス、イタリアといった友好国にも多数供与され世界各国の軍隊で使われました。
発足したばかりの航空自衛隊は、アメリカから供与された航空機を使用しており、T-34メンターやT-6テキサン、T-33Aシューティングスターといった練習機ばかりでした。
F-86セイバーは、航空自衛隊初となる本格的な主力戦闘機で、F-86Fが435機、全天候型戦闘機のF-86Dが122機配備されています。
F-86は、全長11.4m、全幅11.3m、最高速度は1105㎞/h、航続距離2425㎞、乗員1名となっています。
自衛隊では「旭日」という愛称がつけられていましたが、部隊などでは「ハチロク」とも呼ばれ親しまれていました。
F-86は、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の初代機体として採用され、有名な1964年の東京オリンピックで空に五輪のマークを描いたのもF-86でした。
引用:www.sankei.com
F-86は、後継のF-104Jの配備がはじまると第一線を退いて、ロケット弾や爆弾を使っての対艦攻撃など補助的な任務につくようになりました。
F-1戦闘機の配備が行われるようになるとそれもなくなり、1982年3月15日の引退セレモニーとともに全機が退役しています。
第6位 F-104J
引用:ja.wikipedia.org
F-104 スターファイターは、アメリカのロッキード社が開発した超音速ジェット戦闘機です。
全長16.69m、全幅4.1m、航続距離3500㎞、最高速度マッハ2、乗員1名となっています。
余分なものを削ぎ落とした小型の細長い機体に、強力なターボジェットエンジンを搭載して、高い速力・上昇能力を発揮する戦闘機です。
その姿はまるで、戦闘機というより世界最速記録に挑戦するために作られた実験機のようで、ロケット・ブースターを搭載したNF-104は宇宙飛行士の訓練にも使用されていました。
主翼には、当時の主流だった後退翼やデルタ翼ではなく、直線翼を採用していて、この翼は前面がナイフのように鋭くなっていたため、アメリカ軍では整備員が保護具をつけて作業を行いました。
翼を使って、リンゴや野菜を切るといったパフォーマンスも行われたらしく、写真が残されています。
F-104は無駄な部分をなくした機体設計が災いし、レーダーや燃料タンクを搭載する十分なスペースが確保できずに使いづらさばかりが目立ち、アメリカ軍では早々に退役させられてしまいます。
代わりに外国への輸出攻勢に活路を見出し、カナダや西ドイツといったNATO加盟国で多く採用されました。
航空自衛隊でも、F-104のG型をベースとするF-104J 210機とその複座型であるF-104DJ 20機の計230機を導入しています。
F-104Jは、20年あまりにわたって、空自の主力戦闘機の座にありました。
F-104Jは、三菱重工業によるライセンス生産で、1963年から部隊配備が開始され、日本の空を守る要撃任務につきました。
F-104Jはサイドワインダー空対空ミサイルを搭載することが可能ですが、自衛隊では敵地への先制攻撃を行うことがないため、爆撃能力は備わっていません。
最初の頃は機銃を装備していませんでしたが、後に改修によって全機に取り付けています。
正式な愛称は「栄光」でしたが、部隊では、その形状から「三菱鉛筆」と呼ばれたり、「マルヨン」と呼ばれたりしていたそうです。
F-104Jは、F-15Jが導入されたことによってその役目を終え、1986年までに全機が退役しています。
第5位 F-1
引用:ja.wikipedia.org
F-1戦闘機は、戦後日本が初めて国産開発を行った戦闘機で、1977年から部隊配備されました。
F-1は、戦闘機という名を冠していますが、空自では支援戦闘機と呼ばれる機種で、主な任務を対艦攻撃とする戦闘爆撃機(攻撃機)であり、純粋な制空戦闘機ではありませんでした。
支援戦闘機とは、対地・対艦攻撃を行って友軍機を支援する戦闘機という意味で、専守防衛の自衛隊では無闇に「攻撃」という言葉を使うことができないため、この名称が用いられています。
F-1は、三菱重工業が開発した超音速飛行が可能な高等練習機であるT-2をもとにして開発されたもので、これはアメリカ軍から導入したF-104J戦闘機のパイロット訓練を行うためのものでしたが、当初からこの練習機を土台にして新しい支援戦闘機へと改造するという秘められた計画がありました。
T-2の開発は1967年からスタートし、1971年7月20日の試作1号機の初飛行は、初めて日本の飛行機が音速を突破した記念すべき日になりました。
その後、1975年にF-1となるT-2の特別仕様機が初飛行を行い、1977年から量産が開始され、青森県の三沢基地から配備がスタートしました。
F-1の性能
引用:http://nighthawk.o.oo7.jp/
F-1戦闘機は、全長17.85m、全幅7.88m、重量6.5t、最大速度マッハ1.6、航続距離2600㎞で、複座機のT-2に対して乗員は1名となっています。
細い機体と小さな主翼が特徴的で、線が細くていかにも非力そうですが、実際に対空戦闘の能力はあまり高くはありませんでした。
空自のF-15Jやアメリカ軍のF-16といった本格的な制空戦闘機との訓練は、F-15J 2機にF-1 4機、F-16 2機にF-1 3機というようにハンデをつけて行われており、アメリカ軍からはF-16 2機に対してF-1 6機にしてほしいと要望を受けたこともありました。
エンジンは、イギリスのロールスロイス社とフランスのチュルボメカ社が共同開発したものをライセンス生産したものを使っていましたが、エンジンの出力も弱くて旋回性が低く、F-1が格闘戦を苦手とする原因にもなっていました。
その代わり、この機体形状だと空対艦ミサイルASM-1を左右に1発ずつ計2発も搭載して、敵のレーダーに探知されにくい低空を安定して飛行することが可能になります。
ASM-1はF-1とともに開発されたもので、F-1は戦闘機という名をもっていますが、初めから対艦攻撃を任務とする機体として作られたことがわかります。
F-1は77機が生産され、1980年代から90年代にかけての航空自衛隊の主力機の1つとして活躍し、現在は後継機であるF-2がその役割を引き継いでいます。
戦闘機として能力的にはまだまだ不十分な面もあったF-1ですが、やはり戦後初の国産戦闘機として、日本の航空技術の発展に与えた影響は大きかったといえるでしょう。
第4位 F-4EJファントムⅡ
引用:ja.wikipedia.org
F-4EJファントムⅡは、F-104Jに続いて導入された第3世代の双発複座戦闘機です。
F-4は、マグダネル社が開発し、アメリカ海軍・空軍でも主力戦闘機として使用され、多くの国で採用された戦闘機です。
大型の機体に大馬力エンジンを搭載して高速を発揮し、高性能の火器管制能力と本格的なウェポン・システムを備えています。
こうしたレーダー等の操作のために専用の操縦者を必要とするため複座機になっており、後方席は前方視界がほとんどなく、前席のパイロットにレーダーや各種計器の情報から自機の位置や周囲の状況を伝えます。
航空自衛隊では、1968年に採用が決定し、1971年から調達が開始されました。
日本で使われた機体は航空自衛隊版となるF-4EJで、調達された140機のうちのほとんどが三菱重工業によってライセンス生産されたものです。
F-4EJの性能
引用:ameblo.jp
F-4EJは、全長11.77m、全幅19.20m、最大速度マッハ2.2、航続距離2900㎞、乗員2名となっています。
最大8発の空対空ミサイルを装備することができ、空対空戦闘はミサイルのみで十分というミサイル万能論が唱えられたベトナム戦争で戦闘機の近接戦闘が多発したことから、固定武装として20㎜機関砲を搭載しています。
1990年代から、機体寿命の延命のためアビオニクス(電子機器)のアップデートを主とした近代化改修が、140機のうち90機に対して行われました。
火器管制レーダーは、低空飛行の敵に対しても強いAPG-66Jパルスドップラー・レーダーに換装され、セントラルコンピュータにJ/AYK-1が搭載されてASM-1および2空対艦ミサイルの運用が可能となり、そのほかにも慣性航法装置(INS)、敵味方識別装置(IFF)、レーダー警戒装置(RWR)、UHF無線機などが更新されました。
搭載兵器も、AIM-7F/Mスパロー空対空ミサイルやAAM-3(90式空対空誘導弾)、GCS-1誘導爆弾などの運用が可能になりました。
これによってF-4EJの能力は飛躍的に向上し、現在まで現役を貫くことを可能にしました。
一時期、F-2の代わりとしてF-4EJ改が支援戦闘機として配備されていたこともあります。
配備から約50年にわたって日本の空を守り続けてきたF-4EJですが、近代化改修による延命措置も行われたものの、さすがに旧式化が進んでおり、F-35の導入にともない2020年末までに全機退役する予定になっています。
第3位 F-2
引用:www.jiji.com
F-2戦闘機は、F-1支援戦闘機の後継として、日本の三菱重工業とアメリカのジェネラルダイナミックス社(現在のロッキード・マーチン社)が共同開発した単発の支援戦闘機(戦闘爆撃機・攻撃機)です。
読み方は、「エフツー」「エフに」の両方で呼ばれることがあります。
F-2は、第4世代ジェット戦闘機F-16をベースに、主翼と尾翼の拡大、主翼への炭素繊維強化複合材の使用、エンジンの換装など、大型の対艦ミサイル(ASM)4発を搭載できるように大幅な改良が施されました。
量産型の戦闘機としては世界初となるアクティブフェイズドアレイレーダーを搭載したことや、国産技術によるデジタル式ファライ・バイ・ワイヤ(FBW:航空機の操縦・飛行制御システム)を使用していることも特筆すべきポイントです。
F-21は、もとになったF-16とは完全に別の機体といえるものになっており、対空能力と世界トップクラスの対艦攻撃能力を兼ね備えた世界屈指のマルチロール機です。
F-2の開発は、1990年からスタートし、1995年には航空自衛隊への採用が決まり、2000年から部隊への本格的な配備が始まりました。
自衛隊では、2005年から支援戦闘機の呼称が用いられなくなったため、F-2も単に戦闘機と呼ばれるようになりました。
F-2の性能
引用:http://www.iza.ne.jp/
F-2戦闘機は、全長15.52m、全幅11.13m、最大速度マッハ2.0、航続距離4000㎞、対艦攻撃における戦闘行動半径450海里(833㎞)となっています。
F-2には、単座型のF-2Aと、複座型のF-2Bの2種類が存在します。
対艦攻撃の際には増槽を左右に1つずつ計2個搭載することで、行動距離をさらに拡大することができます。
F-2は、対艦攻撃用に80式空対艦誘導弾(ASM-1:アクティブ・レーダー誘導方式)および93式空対艦誘導弾(ASM-2:画像赤外線誘導方式)の2種類のミサイルを搭載でき、対空戦闘用には、短射程用としてAIM-9L(サイドワインダー)および国産の90式空対空誘導弾(AAM-3)、中射程としてAIM-7F/M(スパロー)または撃ちっ放し能力を備えた99式空対空誘導弾(AAM-4)を4発ずつ計8発搭載することができます。
F-2は、対艦攻撃を行う際には、ASMを4発、翼端にAAM-3を搭載するのが標準的となっています。
このほか、2004年以降に生産された機体は誘導爆弾JDAMの運用能力をもっていて、固定武装として20㎜機関砲を装備しています。
機種レドームには、実用機として世界初となるアクティブフェイズドアレイレーダーのJ/APG-1または改良型のJ/APG-2を搭載しています。
F-2の迷彩塗装は、得意の対艦攻撃にあわせて濃いブルーの洋上迷彩が施されています。
F-2は、敵のレーダーに探知されないよう海上を低空で飛行して目標に接近するため、この迷彩だと上空からも視認されにくくなるというメリットがあります。
F-2は、自衛隊内や航空機ファンの間では「平成の零戦」や「バイパーゼロ」とも呼ばれ、その高い対艦攻撃能力から「対艦番長」といわれることもあります。
F-2は、開発に時間がかかったことや少数生産であることから、価格は120億円と高めですが、世界最高ともいわれる対艦能力に加え、F-15やF-16と互角に戦える格闘能力という高い空戦能力も併せ持った世界でも稀有な戦闘機です。
F-2は、98機が生産され、青森県の三沢基地や福岡県の築城基地などに配備されており、東日本大震災の時には、宮城県松島基地のF-2 18機が津波により水没しています。
第2位 F-15J イーグル
引用:ja.wikipedia.org
F-15戦闘機は、アメリカのマグダネル・ダグラス社(現在のボーイング社)が開発した制空戦闘機で、イーグル(イヌワシ)の愛称をもっています。
航空自衛隊では、F-104J、F-4EJに変わる次世代の主力戦闘機として1977年12月に採用を決め、1978年から調達がスタートしました。
空自で導入されたのは単座型のF-15Cを日本向け仕様にしたF-15Jと、複座型のF-15Dを日本仕様にしたF-15DJの2種類で、それぞれ、165機と48機の計213機が取得されました。
部隊配備は1981年12月からで、最初は完成品の輸入が行われていましたが、すぐに三菱重工業による国内でのライセンス生産が始まりました。
1985年からJ-MSIP(日本版多段階能力向上計画)による能力向上のための改修が行われ、2000年代からはレーダーの更新や新兵装の導入など近代化改修が行われてきました。
F-15Jの性能
引用:motor-fan.jp
F-15Jは全長19.4m、全幅13.1m、最大速度マッハ2.5、航続距離4600㎞となっています。
エンジンは、プラット&ホイットニー社製のF100-PW-100をライセンス生産したF100-PW(IHI)-220Eを2基搭載しています。
主翼は先端を欠いたクリップトデルタと呼ばれる形状で、機体の高い位置に取り付けられ、翼面加重を低く抑えて高い運動性能を発揮できるよう大きな主翼をもっています。
近代化改修によって、撃ちっ放しも可能なレーダー誘導ミサイルの99式空対空誘導弾(AAM-4)や04式空対空誘導弾(AAM-5)を運用可能となり、そのほかにも、火器管制レーダーをAN/APG-63(V)1に換装し、敵からの電子妨害を防いだり逆に敵の誘導ミサイルを妨害したりできる統合電子戦装置(IEWS)や、コクピットへのヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)の搭載などが行われています。
これらの改修によって、F-15Jは現在も世界トップクラスの能力をもつ戦闘機の座にあり続けており、導入から30年以上が経過した現在も多数の機体が現役で配備されています。
F-35の採用がはじまった現在でも、依然空自の主力戦闘機と呼べる機体です。
第1位 F-35ライトニング
引用:www.gizmodo.jp
F-35ライトニングⅡは、ロッキード・マーチン社が開発したアメリカ軍の最新鋭ステルス戦闘機で、航空自衛隊が初めて導入したステルス戦闘機です。
F-35は第5世代戦闘機といわれる、高いステルス性をもつ最新のグループに属する戦闘機で、制空戦闘の他にも対地攻撃など幅広い任務をこなすことのできる多用途戦闘機(マルチロール・ファイター)です。
F-35の愛称であるライトニングは、かつてアメリカ陸軍で使用されていた戦闘機「P-38ライトニング」から受け継がれているもので、そのためライトニングⅡと呼ばれています。
P-38は、第二次大戦時に活躍した戦闘機で、日本海軍の山本五十六長官の乗機を撃墜したことでも有名です。
そんな、かつての仇敵の名をもつF-35は、これからのは航空自衛隊を支える次世代の主力戦闘機になる予定です。
アメリカ軍にはもう一つ、ステルス戦闘機F-22ラプターが存在していて、第5世代戦闘機と呼ばれるのはこの2機種だけです。
F-35はF-22と比べて、速力や格闘性能といった純粋な空戦能力には劣りますが、対地攻撃能力や電子兵装の面において優れています。
F-35は、1980年代からアメリカとイギリスが共同ではじめた次世代戦闘機開発がもとになっていて、その後、イタリアやオランダ、オーストラリア、カナダ、トルコなど多くの国が共同開発のパートナーに加わっています。
F-35は本家のアメリカ空軍・海軍・海兵隊をはじめとして、日本以外にも、イスラエルや韓国でも採用され、イギリスやイタリア、オーストラリアでも導入される予定です。
すべての国で採用されれば、採用国は最終的に20か国近くになります。
F-35の性能① 飛行性能
引用:www.lockheedmartin.com
F-35は、1つの基本設計をもとに、CTOL(通常離着陸)型、STOVL(短距離・垂直着陸)型、艦上機型を並行して開発するという前例のない革新的な計画のもとに生まれた戦闘機です。
しかし、その要求水準の高さから開発は困難を極め、完成が遅れたという経緯があります。
F-35には、通常型のF-35A(空軍用)、STOVL型のF-35B(海軍用)、艦上機型のF-35C(海兵隊用)の3種類が存在し、自衛隊ではそのうち、航空自衛隊がF-35Aを導入し、海上自衛隊では垂直離着陸のできるF-35Bの導入を決定しています。
F-35は、全長15.7m、A・B型の全幅は10.67m、重量はA型が13.3t、B型が14.7tとなっています。
F-35はF-22に搭載されているプラット&ホイットニーF119の発展型であるF135ターボファンエンジンを搭載していて、アフターバーナーを使って最大速度マッハ1.6まで加速することができます。
さらにそこからアフターバーナーを使わずに150マイル(約241㎞)まで超音速飛行ができるため、その間アフターバーナーを短時間使用することによって超音速巡行を行うこともできます。
F-35の性能② ステルス性能
引用:f35jsf.wiki.fc2.com
F-35の最大の特徴である機体のステルス性能を向上させるために、電波を熱へと変換するレーダー波吸収素材(RAM)の機体表面への使用や、レーダー反射波を抑えて敵のレーダーに探知されにくくするよう兵装を機内のウェポン・ベイに収納するといった工夫が盛り込まれています。
これによって、F-35のRCS(レーダー反射断面積)は、正面からみて0.00143㎡ほどとなっています。
これはF-22の7~9倍となる数値ですが、F-35のほうが機体が小型であるため目視では発見されにくくなっています。
F-35の性能③ 電子兵装
引用:f35jsf.wiki.fc2.com
F-35は機種レドームに探知距離約167㎞のAN/APG-81アクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーを搭載しているほか、EOTS(Erectro-Optical Targeting System:電子式光学照準システム) やEO-DAS( Erectro-Optical Distributed Aperture System:電子式光学画像配信システム)を装備しており、高い空戦能力と対地攻撃能力をもっています。
機体の6か所に搭載されたセンサーを使い、電波を発していない敵機に関しても、赤外線を使って探知することが可能です。
さらに、取得した情報を僚機や早期警戒機などと共有できるデータリンク機能も有しています。
F-35はこうした優れた電子兵装を駆使することで、ロッキード・マーチンがステルス戦闘機のキャッチコピーとしている「ファーストルック・ファーストショット・ファーストキル」を実現できる機体とされています。
F-35の性能④ 兵装
引用:aviation-space-business.blogspot.com
F-35は胴体中央下部にウェポン・ベイを備えており、武装はすべてこのなかの兵装ステーションにおさめられ、機体のステルス性を損なわないようになっています。
空対空ミサイル、空対艦ミサイルのほか、固定武装として25㎜機関砲も装備しています。
航空自衛隊では、ノルウェーのコングスベルグ社とアメリカのレイセオン社が開発する空対地ミサイルJSM(統合打撃ミサイル)の導入を検討中で、F-35にも将来的にはJSMが搭載されるものとみられます。
JSMは、射程300㎞と高いステルス性能をもった巡航ミサイルで、敵の射程外からの攻撃を可能にするスタンドオフ・ウェポンと呼ばれる兵器の1つです。
F-35は、通常機内のみにおさめている兵装を、ステルス性と引き換えに機外にも搭載し、攻撃能力をアップさせることができます。
この状態のF-35はビースト・モードと呼ばれ、味方が完全に制空権を握っているような状況で敵陣地への攻撃を行うといった場合など、武装を強化してより高い対地攻撃能力を発揮させたいときに用いられます。
F-35の自衛隊での運用
引用:www.youtube.com
次期戦闘機の選定を行っていた自衛隊では、F/A-18E/Fスーパーホーネットやユーロファイター・タイフーン、そしてF-35が候補に上がっており、その中から2011年12月にF-35ライトニングを導入することが決定しました。
2017年12月に、青森県三沢基地に「臨時F-35A飛行隊」が編成され、2018年1月16日に最初のF-35Aが配備されました。
2018年にはアメリカから5機、国内組み立ての4機の計9機が導入され、臨時飛行隊は第302飛行隊へと改編されました。
国内組み立ては、三菱重工小牧南工場で作業が行われ、完成後にロッキード・マーチンによる最終組み立てと検査(FACO:Final Assembly Check Out )が行われます。
2019年4月9日には三沢基地所属のF-35が訓練中に墜落する事故が起きていますが、この時事故を起こした機体は日本で初めて組み立てられたF-35です。
この事故は、夜間の戦闘訓練中にパイロットが平衡感覚を失ってしまう空間識失調(バーティゴ)という状態に陥ったことが原因とされています。
2020年中には茨城県百里基地の第301飛行隊にもF-35が配備されるとともに、三沢基地に移駐される予定です。
F-35飛行隊が三沢基地の所属になったのは、ここにしかF-35を2個飛行隊分収容できるシェルターがないからだとされています。
一方、海上自衛隊では、2018年12月に現在ヘリコプター搭載護衛艦として使用されているDDH「いずも」に甲板上の耐熱コーティングといった改修を施して母化し、STOVL機であるF-35Bの運用を可能にすることが決定されました。
引用:news.yahoo.co.jp
いずもがF-35Bを本格的に運用するのは2020年以降になる見込みで、改修によって「いずも」が運用できるようになるF-35Bの機数は数十機ほどで、空母としての能力は限定的なものになるとみられます。
しかし、これによって海上自衛隊は護衛艦上での固定翼機の運用ノウハウを身に着けることをできると期待されています。
自衛隊ではF-35を147機取得することを決めており、そのうちの42機が海上自衛隊のF-35Bとされています。
まとめ
現代の戦いにおいて、航空優勢は非常に重要なものになっていて、空で敗北すれば、陸や海での戦いも非常に厳しいものになります。
そのため、日本の空を守る航空自衛隊は「槍の穂先」といわれ、航空優勢を確保するため常に質の高い航空機の取得を目指してきました。
次世代の主力戦闘機となるF-35も数少ない最新鋭の第5世代ステルス戦闘機であり、これから大きな活躍をみせてくれることでしょう。
さらに、共同開発ですが、航空自衛隊独自の戦闘機であるF-2が世界的にも高い性能をもっていることも見逃せません。
これまで空自で運用されてきた機体は、どれもその時代の世界トップクラスの戦闘機と呼べるものばかりです。
現在のところ、そのほとんどは外国製の機体ばかりですが、いつか、国産の戦闘機がこのランキングの上位を飾るようになり、日本の航空機開発技術が世界のトップクラスに返り咲く日が来てくれることを願います。