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現実に水没した都市と水没しそうな都市10選

地球温暖化による海面上昇や異常気象などが多発する昨今では、都市の水没が深刻な環境問題として取り上げられることがあります。

如何に高度に発展した文明でも、水中で生きることができない以上水没してしまえばおしまいです。

過去にもどうしようもない事情で水没してしまった都市が遺跡という形で残されている場合があります。

その姿は美しく、歴史的な価値があると同時に、私たちに悲劇的な未来の姿を見せているようにも感じられます。

今回は現実に水没してしまった都市と、水没しそうな都市をそれぞれ紹介していきます。

 

アレクサンドリア


引用元:https://ameblo.jp/ratoru888/

エジプトの都市アレクサンドリアの歴史は、紀元前332年にマケドニアのアレクサンドロス大王が都市を建設したことにまでさかのぼります。

アレクサンドロス大王の死後もオリエントの中心都市として繁栄し、「世界の結び目」と呼ばれました。

世界の七不思議に数えられる「ファロス島の大灯台」や学術の研究所「ムセイオン」、世界のあらゆる図書を集めた「アレクサンドリア大図書館」など文化と学術の中心地だったほか、商業も栄えます。

アレクサンドリアは現在でもエジプト屈指の工業都市として存在感を示しています。

そんなアレクサンドリアですが8世紀ごろまでに地震や海面上昇が相次ぐことで都市の一部が水没してしまっています。

水没した部分には1世紀のプトレマイオス朝エジプト最後の女王クレオパトラの宮殿など古代都市が建築されており、1992年以後発掘が進むまで海の底に眠っていました。

アレクサンドリアはエジプト北部、ナイル川の構成するデルタ(三角州)に位置しており海抜が低かったがために古代都市が水没してしまったのだろうと推測できます。

エジプト北部ではアレクサンドリアのほかにもエジプトと地中海のつなぎ目として互いの宗教が融合してできた「セラピス神」の聖地であったカノープスや、ナイルデルタの島に建てられ、エジプト新王国の貿易港として語り継がれた伝説の都市ヘラクレイオンと言った古代都市が水没しています。

 

バイア・エ・ラティーナ


引用元:http://www.worldtrip-for-diving.com/

イタリアのカンパニア州にあるコムーネ、バイア・エ・ラティーナの沖合にはローマ時代の都市が水没した遺跡(バイア海底遺跡)があります。

およそ200平方キロメートルほどもあるこの遺跡は、かつて居住地だったところに恐らく地盤沈下の兆候を感じ取った人々が引き払ったものだと考えられています。

現在でも溶岩による地盤沈下と隆起によって神殿の跡地が浮上と水没を繰り返しています。

邸宅や浴場、港などの施設がきれいなまま残されたこの海底遺跡は1956年にイタリア空軍のパイロットがバイア上空を飛行中に発見したもので、現在はバイア海底考古学公園と言う名前で多くの観光客を集めています。

 

与那国島海底地形


引用元:https://machiukezoo.biz/

1986年、八重山諸島を構成する島のひとつ与那国島南部の海底で、地元のダイバーである新嵩喜八郎さんは巨大な一枚岩を発見しました。

一枚岩は東西におよそ250メートル、南北におよそ150メートル、高さ25メートルにもおよぶもので階段やメインテラス、通路など、人の手によるものに見える加工が施されています。

この一枚岩を「与那国島海底地形」と呼びます。

1992年からは琉球大学理学部教授だった木村政明を中心に調査が行われ、同教授によって古代文明の遺跡ではないかという説が提唱されました。

もし仮に与那国島海底地形が本当に人工物の場合、作られた年代は2000から3000年前ということになります。

ナンマトル遺跡に代表される太平洋地域の巨石文化が与那国島にまで及んでたことの証拠となります。

しかし現在ではこの海底地形は自然によって作られたものだという意見が主流です。

根拠としてはまず階段や石垣のような人工物と思われる構造物はすべて自然の作用によって形成可能であると証明されているためです。

岩には直線方向に割れる性質があるほか直線状にひびの入った岩はひびの部分が脆くなって他の場所よりも浸食が早くなり、結果として人の手による加工のように平面的な断面となって割れてしまう「節理」という性質があります。

八重山海底地形の構造物はこの「節理」によって皆説明可能なものとなっているのです。

他にも八重山海底地形は作られた当時からわずかに傾いていること、更に当時の構造物が海底に没するほどの地殻変動が確認されていないこと、仮に人工物だったとしてもそれを作る人手が当時の八重山諸島にあるとは考え辛いことなど、様々な論拠が挙げられています。

一方で人工物だと主張する人々はこの論拠に有効な反論ができていません。

現段階では自然による産物だとする説が有効ですが「カイジ文字」という古代文字の刻まれた跡など、古代文明の遺跡ではないかと思われるものも発見されてはいます。

ちなみに人の手による加工跡が見られないことから八重山海底地形は現在遺跡だとは認められていません。

 

ポート・ロイヤル


引用元:https://travelzaurus.com/

ポート・ロイヤルは17世紀のジャマイカにあった港町です。

ジャマイカはカリブ海貿易を行うのに理想的な位置にあったためイギリスとスペインが帰属を巡って争っていたのですが、
当時のイギリス総督が「バッカニア」と呼ばれる海賊たちにポート・ロイヤルへの定住を提案しスペイン船への私掠免許を与えました。

イギリス総督の目論見は当たり、バッカニアはスペインから奪った資産をイギリス料であるポート・ロイヤルで消費させることに成功します。

ポート・ロイヤルはバッカニアとバッカニア目当てのパブや売春宿、カジノなどが並び、バッカニアのほかにも売春婦や犯罪者が大挙して押し寄せます。

一時は首都のロンドンよりも通貨の流通量が多かったと言われていますが治安は最悪で「ここは世界で最も堕落した人々からなっている」、「新世界のソドム」と呼ばれる有り様でした。

しかし1962年6月7日に起きた地震によってポート・ロイヤルは街の3分の2が海底に没してしまいます。

ポート・ロイヤルを拠点としたバッカニアには「黒髭」と呼ばれたエドワード・ティーチやロッシュ・ブラジリアーノなどの有名な海賊が名を連ねています。

他にもポート・ロイヤルは2004年に放映された映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』の舞台としても知られています。

 

オンタリオ州の「失われた村」


引用元:https://4travel.jp/

大西洋から五大湖のひとつスペリオル湖までを繋ぐ運河である「セントローレンス海路」はそれ以前の小さな運河を置き換え、水力発電を推進することを目的にアメリカとカナダが出資して1959年に開通させました。

この運河を建設するに辺り、カナダ・オントリオ州に水力発電所を作るためにセントローレンス湖という人工湖を建設する必要がありました。

その建設予定地には10の村があり、住民を退避させたうえでそれらを1958年7月1日に水没させました。

この10の村は総称して「失われた村(The Lost Villages)」と言われ、湖の水位が低いときにはかつての残骸を見ることができます。

またこの「失われた村」の中には米英戦争中の1813年に行われた有名な戦闘である「クライスラー農園の戦い」の史跡がありました。

この史跡の保存をきっかけに、オンタリオ州のモスリバーグという場所に1860年代のオンタリオ州の事物や生活様式を再現した野外博物館「アッパー・カナダ・ヴィレッジ」が1961年に開園しています。

 

ツバル


引用元:https://4travel.jp/

ツバルは南太平洋に位置する島国で、イギリス連邦の加盟国のひとつです。

9つの有人島によって構成され、国土面積は世界で2番目に小さく、人口も独立国の中では2番目に少ないマイクロステートです。

ツバルの国土は珊瑚礁で作られているため平均海抜はわずか2メートルと低く、元々海面上昇には脆弱でした。

それに加えて地球温暖化による海面上昇と珊瑚礁の劣化、飛行場などの島の開発によって首都のフナフティのみならず国土全土が水没の危機に瀕しています。

太平洋やインド洋の島国には他にもキリバスやモルディブと言った、ツバルと同様に水没が危ぶまれている国があります。

またアメリカの自治領であるサイパンや、同じくアメリカの属州であるパラオも海面上昇による水没の危険性があります。

 

ヴェネツィア


引用元:https://boatfish.exblog.jp/

ヴェネツィアはイタリア北東部にある都市で、中世にはヴェネツィア共和国の首都として栄えました。

もとはヴェネツィア湾にできた「ラグーナ」という干潟の上に土台を作って築かれた都市で、「カナル・グランデ」をはじめ都市の縦横に運河が走っていることから「水の都」、「アドリア海の女王」、「アドリア海の真珠」と呼ばれます。

ヴェネツィアでは「シロッコ」と呼ばれる、アドリア海の東南から吹く風があります。

これが大潮や低気圧といった他の要因と重なることで「アックア・マルタ」と呼ばれる異常な潮位の上昇を引き起こし、ヴェネツィアの街中まで浸水してしまうことがあります。

特にヴェネツィアで最も海抜の低いサンマルク広場などはこの「アックア・マルタ」が発生することで水没してしまいます。

この「アックア・マルタ」は地盤沈下や地球温暖化の影響などで年々水位を増しており、いずれヴェネツィア全土を水没させてしまうと考えられています。

そのためヴェネツィアとアドリア海の間に防潮堤を設ける「モーゼ計画」が立案されていますが、ラグーンへの影響やヴェネツィア市民の反対によって、未だに建造は進んでいません。

 

川原湯温泉街


引用元:https://blog.goo.ne.jp/musashi452/

川原湯温泉街は群馬県吾妻郡長野原町にある温泉街です。

1193年に、鎌倉幕府の初代将軍源頼朝が発見したと言われています。

温泉街として宿泊客を集めていましたが、1967年に八ッ場ダムの建設事業が決定するにあたって群馬県の策定した『生活再建案』での水没世帯201世帯に該当してしまいました。

八ッ場ダムは長野原町で反対運動に遭ったほか度重なる総事業費の増額と工期の延長に加え、2009年に行われた衆議院議員総選挙で第一党となった民主党(当時)がマニフェストとして「川辺川ダム、八ッ場ダムの開発中止」を掲げていたこともあり、更に延期し、現在では2020年完成の予定となっています。

川原湯温泉街は八ッ場ダムの建設に伴って源泉が水没してしまうこともあり、政府の提案した代替地で新たに源泉を掘り当て営業を再開しています。

しかし旧源泉と泉質が異なっているため元の川原湯温泉のように観光地として盛り上がるかは疑問視されています。

水没世帯201世帯のほとんどは生活再建案に不安を示して別の場所へ転出し、代替地へ移転したのはわずか30世帯ほどだそうです。

 

キバリーナ


引用元:https://dailynewsagency.com/

アメリカ合衆国アラスカ州の村キバリーナは、北極海に沿った砂浜の端にある人口400人ほどの村です。

村の周りを氷が覆うことで波による浸食を免れてきたのですが、地球温暖化によって年々氷の覆う時期が短くなり砂浜が波に浸食されるようになっていきました。

2025年までに村は冠水してしまうと見られており、岩を積んだ防波堤を築いたり180キロ南にあるシシュマレフ村への移住を計画するなど対応が急がれています。

キバリーナ村は気候変動を引き起こす原因となる温室効果ガスを大量に排出し村の生活を脅かしたとして、国際石油資本の最大手のひとつであるエクセン・モービル社を提訴しています。

 

東京

日本の首都東京は水没の危険性が非常に大きい都市だと言われています。

徳川幕府は江戸の町を開発するために現在の日比谷に当たる場所にあった入り江を埋め立て、土地を作りました。

東京湾は浅瀬が多く、土砂を持ち込むことも容易だったため開府後から現代に至るまで幾度となく埋め立てられ、東京は拡大しています。

1910年には梅雨前線と2つの台風が重なった「明治43年の大水害」が発生し、当時の東京府だけで150万人が被災、死者も関東地方全域で769人を数えています。

更に1917年には台風と満潮が重なったことで「大正6年の高潮災害(大津波)」と呼ばれる大規模の高潮が発生し、佃、月島、築地、品川、深川地区が浸水し563人の死者を出しました。

1947年には「カスリーン台風」が房総半島へ接近したことで利根川と荒川の堤防が決壊して大洪水を引き起こし、関東地方を中心に死者が1000人を超えました。

また現代では工場の稼働により地下水を過剰に汲み上げたために地盤沈下が発生し、一層海抜が下がっています。

そのためより水害のリスクが高まっていると言われています。

2018年8月22日には荒川の流域にある江戸川区、墨田区、江東区、足立区、葛飾区の5つの区が荒川と江戸川が氾濫した際の洪水浸水想定区域図(ハザードマップ)を公開しました。

もし荒川と江戸川が巨大台風などによって氾濫した場合、5区総計260万人のうち250万人が浸水被害を受け、最も浸水するところでなんと5メートル、長いところでは最大2週間も浸水が続くという試算が出ています。

東京は非常に水害のリスクが高い都市であり、1947年以後目立った水害が発生していないのは単に幸運だったために過ぎません。

日本では東京の他にも横浜や名古屋が水害のリスクが高いと言われており、特に名古屋では2013年9月4日に豪雨が発生した際に名古屋駅などの主要駅が冠水してしまう被害が発生しています。

 

まとめ

この記事では現実に水没した都市と水没しそうな都市をそれぞれ紹介しました。

海沿いというのは交通の要衝にもなったため昔から大きな都市が発展してきました。

しかしその発展も地震や高潮などによる水位の上昇による水没と背中合わせです。

今回紹介してきた都市にも、繁栄のツケを払わされるような形で水没してしまったところがありました。

また現代の技術発展も、同様に水没のリスクを高めてしまう場合があります。

今後は現実の事例と照らし合わせながら、より危険の少ない方向で開発や発展をし続けていく必要があるのかもしれません。



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