金星は、太陽系で太陽に近い方から2番目の惑星であり、地球に非常に似た惑星であることから「地球の姉妹惑星」と表現されることもあります。
今回はそんな金星の実際の環境や解明されていない謎の現象などをご紹介していきます。
金星までの距離
金星は太陽に2番目に近い惑星です。太陽からの距離は約1億820万km、地球からは1億5000万km(約4000万㎞ - 約2億6000万㎞)離れています。
金星と地球の最接近時の距離は約4000万kmです。この時金星は、地球から最も近い惑星であり、地球から打ち上げた探査機は約半年程度で金星まで到着することができます。
ちなみに、火星と地球の最接近時の距離は7,528万kmです。
金星の大きさ
金星は地球に非常に似た惑星であり、大きさもほとんど同じです。正確には直径が12,104kmで、地球(12,742km)と比べて僅かに小さいだけです。
その他の数値も地球と比べると
表面積は、金星が4.6億 km2、地球が5.1億 km2
質量は、金星が4.869 ×10 24kg、5.972 ×10 24kg
重力は、金星が8.87m/s2と、地球が9.807m/s2
金星と地球の大きさがほとんど同じというのがよくわかりますね。
金星の大気
金星の大気には、主成分となる二酸化炭素(約96.5%)と窒素(約3.5%)で構成されています。他にも二酸化硫黄、水蒸気、一酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどがわずかに存在します。
大気圧が非常に高く、その数値は地表で約90気圧です。これは地球の水深900mに相当する高さです。
金星は、二酸化炭素でできた分厚い雲によって覆われており、常に硫酸の雨を降らせています。しかし、地表の温度が非常に高い為、硫酸の雨は地表に届くことはありません。
金星最大の謎スーパーローテーション
金星大気の上層部では時速350kmにもなる強風が吹いています。この風速は自転速度の60倍以上の速さであり、この風は自転速度を超えて吹く風という意味でスーパーローテーションと呼ばれています。
通常、他の惑星において風速が自転速度を上回る事がないことから、この現象は未だに解明には至っておらず、金星最大の謎の一つとされています。
金星の温度
金星は膨大な量の二酸化炭素による温室効果により、地表温度は平均464℃、最大500℃にもなる灼熱の惑星です。
金星は水星と比べて太陽から約2倍離れており、更に金星の分厚い雲が太陽光の80%を宇宙空間に反射しています。にもかかわらず、この気温は金星よりも太陽に近い水星(平均169℃)よりも高くなっています。
また、金星は熱による対流と大気の大気の熱慣性のため、昼でも夜でも地表の温度はそれほど変わりません。
太古の金星の大気
ここまで見ると、金星と地球の大気は全く別物であり、とても地球と似ている惑星とは思えません。
しかし、研究によると太古の金星と地球は同じような大気で構成されていたという説があるそうです。
・太古の金星と地球はどちらも現在の金星に似た濃厚な二酸化炭素の大気だった
・惑星の形成段階が終わりに近づき大気が冷却されると、地球では海が形成されたため、そこに二酸化炭素が溶け込んだ。二酸化炭素はさらに炭酸塩として岩石に組み込まれ、地球大気中から二酸化炭素が取り除かれた。
・金星では海が形成されなかったか、形成されたとしてもその後に蒸発し消滅した。そのため大気中の二酸化炭素が取り除かれず、現在のような大気になった。
もし地球の地殻に炭酸塩や炭素化合物として取り込まれた二酸化炭素をすべて大気に戻したとすると、地球の大気は約70気圧になり、金星に非常に似た大気になるそうです。
金星の一年と一日
金星の自転周期(一日)は243日で、公転周期(一年)は224日です。つまり、一年よりも一日の方が長いという、私たちの常識とは全く異なるものです。
また、金星は他の多くの惑星と逆方向に自転しています。地球などの他の惑星は太陽は東から昇り、西に沈みますが、金星では、太陽は西から昇って東に沈みます。
金星の自転がなぜ逆回転をしているのかは未だ謎であり解明されていませんが、一説には大きな星との衝突によるものとされています。
なお、天王星も太陽が西から昇って東に沈みます。
金星の地形(表面)
金星表面にはイシュタル大陸、ラクシュミー高原、アフロディーテ大陸という3つの大きな高地が存在します。高地は金星表面の約13%程度で、その他、金星表面の約60%が中程度の高度を持つ平原で、約27%が最も低い低地です。
また、ラクシュミー高原にある金星最高峰のマクスウェル山は標高11kmです。
→太陽系で一番高い山は火星のオリンポス山です。
金星の衛星
金星には衛星はありません。しかし、かつてはネイトという天体が金星の衛星であると考えられていました。
ネイトは1672年にジョヴァンニ・カッシーニによって最初に観測された天体です。17世紀から19世紀にかけて何度か観測の報告がされたものの、実際は金星の近くに存在したおうし座M星、オリオン座χ1星などの恒星を見誤ったものと考えられ、現在は金星にこのような衛星は存在しないとされています。
また、金星に衛星はありませんが、唯一の準衛星である2002VE68が2002年に発見されています。
金星の謎の発光現象
金星の夜の部分(太陽の光が当たっていない部分)で謎の発光現象がたびたび観測されています。
この発光現象はアシェン光と呼ばれ、1643年にイタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリによって初めて観測されました。その後度々観測の報告があるものの、常時観測されるわけではなく現在も原因は解明されておらず謎のままです。
仮説として、太陽の紫外線が大気圏上部の二酸化炭素を一酸化炭素と酸素に分離し、この酸素が緑色に発光しているのではないかという説が有力です。
金星のテラフォーミング計画
金星は地球から最も近い惑星の一つであり、金星は大きさや質量が地球に近く、その結果重力もほぼ同じ (0.904g) などの類似点から、金星への移住計画やテラフォーミング計画(惑星を地球のように改造すること)が1960年代頃から数人の科学者によって議論されていました。
しかし、金星の表面温度が極めて高いこと。大気圧が地球の90倍に達すること。水がほとんど存在しないことから移住は不可能とされています。
テラフォーミング計画についても、膨大なエネルギーが必要であり、数千年から数万年という時間が必要とされるため実際には不可能と言えます。
金星の観測
金星は非常に明るい輝きを放ち、古来よりウェヌス(ヴィーナス)、美の女神イシュタル、アフロディーテなどの名前で呼ばれていました。
金星は時期により、日の出前に東の空に昇る金星「明けの明星」と、日没後に西の空に沈む金星「宵の明星」を観測することができます。
金星が最も明るく輝く時期には、オーストラリアでは金星の光で砂漠に自分の影が見えたり、日本でも白い紙の上に手をかざすと影ができるほどの明るさを放つそうです。
金星の太陽面通過
地球から観測される金星の太陽面通過は、金星が太陽面を黒い円形のシルエットとして通過していくように見える天文現象です。記録に残る初観測は1639年まで遡り、直近では2012年6月5日に観測されています。
非常に稀な天体現象で、次回は2117年に観測できるそうです。
金星探査の歴史
金星は地球から最も近い惑星の一つであることから、1960年代以降、アメリカ、ソ連、欧州宇宙機関、日本などによって何度も観測衛星が打ち上げられています。
初めて金星接近を成功させたのはアメリカの1962年のマリナー2号です。マリナー2号での観測により、金星が超高温の過酷な環境であることが判明しました。
その後、1970年にソ連のベネーラ7号が初めて金星への軟着陸に成功。その後ベネーラシリーズは8度の軟着陸に成功し、気候の測定や岩石の成分分析が行われました。
また、アメリカは1989年にレーダーを搭載した探査機マゼランを打ち上げ、金星を周回し、レーダーにより金星表面の98%をカバーする地図の作成に成功しました。
2000年以降では欧州宇宙機関のビーナス・エクスプレス、JAXA(日本)の探査機あかつき(運用中)により金星探査が行われています。更にロシアでは2025年に金星探査機ベネラ-Dを打ち上げ予定です。
金星の雪
金星の雪は、金星の地表の中でも標高の高い場所において、電波によるレーダーの反射波の強い場所が見られることを表現したものです。反射波の弱い場所は黒く、反射波が強い場所は白く描画されます。
無人探査機マゼランのレーダー観測で、反射波が強い場所ほど白く描画されるように設定すると、まるで金星の標高の高い場所には雪が積もっているように見えました。
しかし、金星の気温は低い所でも400℃を下回ることはなく、「雪」と言っても、地球上の同じく標高の高い場所などで見られる雪のように、水によってできているわけではありません。
鉛の硫化物やビスマスの硫化物が、金星の標高2600m以上の場所では、雪として降っている可能性があるそうですが、現時点でこの現象が起こる正確な理由は判明しておりません。
【最新】金星に生命体の可能性!
金星人と言えば、空飛ぶ円盤で有名なジョージ・アダムスキーが、1952年11月20日、アメリカカリフォルニアのモハーヴェ砂漠で出会ったと主張したことから、かつては様々なFS作品に登場していました。
現在では金星の非常に過酷な環境であるために、金星に生命体はいないという考えが一般的です。
しかし、この度発表された最新の研究によると金星の雲の中に微生物が存在している可能性があるそうです。
Astrobiologyに掲載された最新の研究報告によると、かつて地球のように水が存在していた際に生まれた一部の微生物が、雲の中に逃れているかもしれないというのです。
論文の主筆者である米ウィスコンシン大学のサンジェイ・リマイェ氏は、あくまで仮説と断りながら、金星の雲の上層部には生命存在の可能性を示唆するサインがあるとしています。
実際に、金星の雲の48~52キロの層は、0~60度、0.4~2気圧で、硫黄・酸性エアロゾル・二酸化炭素など生命に優しい化合物で構成されており、生命が生存可能な範囲であることが分かっています。
地球にも過酷な環境下で生存している微生物は存在しており、似たような微生物が金星の雲の中に存在するかもしれないということです。
実際に金星の雲の中を探索するのは非常に困難です。しかし、不可能ではありません。
NASAが計画中の無人グライダー計画「金星大気機動プラットフォーム(Venus Atmospheric Maneuverable Platform/VAMP)」を使えば、金星大気の中で飛行し、データやサンプルの収集を行えるそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
金星は地球からとても近い惑星だからこそ昔から多くの天文学者によって観測されており、非常に多くのことが判明してきています。
しかし、多くの情報があるからこそ謎も多く、人々の興味を引き付けるんだと思います。
これからも更なる新発見が見つかるといいですね^^