蜘蛛は私たちの生活にとって非常に身近な存在です。
都会であっても部屋にはハエトリグモやアダンソンハエトリなどの「家グモ」がほぼ必ずと言っていいほど生息しています。
少し田舎に行けば、家屋にはアシダカグモ、外にはジョロウグモなど大型の蜘蛛も簡単に見つけられるでしょう。
外見は不気味に思われるかもしれませんが、蜘蛛の多くは私たちに害を為さず、それどころかゴキブリなどの害虫を食べてくれる益虫ですらあるのです。
しかし世界には、私たちにすら牙を剥く危険な蜘蛛が確かに存在しています。
今回は世界最強の蜘蛛をランキング形式で紹介していきましょう。
10位:Cheiracanthium
引用元:https://spideridentifications.com/
Cheiracanthiumは日本語では「コマチグモ属」と言われ、いくつかの種類に分かれ、アフリカからヨーロッパ、インド、北アメリカなど広い範囲に生息しています。
アメリカに住む種は英語で「Yellow sac spider(黄色い嚢を持つ蜘蛛)」と言われるように、体色は淡い黄色をしています。
毒性は細胞に作用するもので、咬まれた場所の発赤や痛み、腫れ、水膨れ、最悪の場合は壊死や呼吸困難、ショック症状を引き起こすことがあります。
日本には「カバキコマチグモ」と言われる種が生息しており、日本におけるクモ刺咬症例の大半を占めています。
本来はそこまで攻撃的な蜘蛛ではありませんが、産卵期のメスは攻撃性が高くなっており、不意に巣を壊してしまうことで咬まれてしまうのです。
またCheiracanthiumには、ガソリンなど揮発性の物質の香りに引き寄せられるものがいます。
アメリカではMAZDA6の車内にCheiracanthiumが入り込み、エンジンのキャニスターに巣を作ることで燃料漏れなどのリスクが上昇し、火災を起こす可能性が指摘されました。
そのためマツダは2010年から2012年に製造されたMAZDA6の自主回収を行っています。
9位:クサチタナグモ
引用元:https://www.livescience.com/
クサチタナグモはヨーロッパ、中央アジア、北アメリカなどの広い範囲に生息する蜘蛛です。
特にアメリカでは大型の蜘蛛が少ないため、家の中にまでクサチタナグモが住むことがあります。
体長は7~14㎜ほどと小型のクモで、ジョウゴ状の巣を作って獲物を待ち伏せします。
かつてクサチタナグモは、アメリカに生息する3大危険毒蜘蛛のひとつとして考えられていました。
理由は主に2点です。
ひとつは攻撃性です。
クサチタナグモは英語で「アグレッシブハウススパイダー(攻撃的な家グモ)」と呼ばれるほど、攻撃性の高い蜘蛛であると言われています。
また毒性も非常に強く、咬まれた箇所の壊死を引き起こすと言われていました。
しかし近年の研究では、クサチタナグモの危険性は従来ほどではないと言われています。
まず「アグレッシブハウススパイダー」とは、クサチタナグモの学名「Eratigena agrestis」のagrestisがaggressiveと似ていたことに由来するものであり、そこまで高い攻撃性を有していないことが明らかになっています。
更に毒性も壊死を引き起こすほどではないと言われています。
元々クサチタナグモはヨーロッパなどでは被害報告がほとんどなく、激しい症状のすべてがアメリカで報告されたものでした。
そこで検証した結果、クサチタナグモの毒は壊死を引き起こすほどのものではないことが判明しています。
ただ毒性が弱いわけではなく、咬まれれば数時間は赤みや腫れ、痙攣などの症状に襲われます。
8位:Poecilotheria
引用元:https://pulpbits.net/
タランチュラは非常に大型のクモですが、毒性は大して強くありません。
毛や牙に毒がありますが、せいぜいかゆみが出る程度です。
しかしタランチュラの中でもPoecilotheria属と言われるものは、特に強い毒性を有しています。
Poecilotheria属のタランチュラの毒性は強い激痛をもたらし、場合によってはショック症状によって全身に痙攣を引き起こします。
Poecilotheria属はインドやスリランカなどに生息し、「Ornamental Tarantula(装飾されたタランチュラ)」と呼ばれるほど美しい外見をしていることがあります。
そのためペットとして流通していますが、飼育には注意が必要です。
7位:カティポ
引用元:https://www.stuff.co.nz/
ニュージーランドには2600種類ほどの蜘蛛が生息しています。
しかし毒があるのは、わずか3種です。
その中で最も毒性が強いのがカティポです。
カティポは8ミリほどの蜘蛛で、体色は黒く、丸い外見をしています。
ニュージーランドの固有種であり、ニュージーランドの中でも海岸地帯、砂丘にのみ生息しています。
「カティポ」という名前はマオリ語で「夜に刺すもの」という意味で、マオリ族はこの蜘蛛に夜に咬まれると信じていました。
カティポの毒性は強く、咬まれると吐き気や胸の痛み、頭痛、高血圧、ひどくなると呼吸不全などを引き起こし、死に至るおそれもあります。
19世紀にはマオリの少女がカティポによって死亡した記録があるほか2010年にはカティポに咬まれた男性が心炎の症状に襲われ、2週間以上も入院しています。
ただニュージーランドでもカティポに咬まれるケースはめったにありません。
カティポは元々非常に臆病な性格をしており、人間を見ると逃げてしまいます。
そのうえカティポは絶滅危惧種であり、個体数が非常に少ないためそもそも見ることが困難です。
6位:Missulena
引用元:https://australianmuseum.net.au/l
Missulena属は1種がチリに生息する以外は、すべてがオーストラリアに生息する蜘蛛です。
体長は1㎝から3㎝ほどで、オスは種によって赤みがかっていたり、青みがかっていたりします。
Missulena属は俗に「ネズミグモ(Mouse Spider)」と呼ばれることがあります。
これはMissulena属がネズミのように深く穴を掘って地中に生息するからだとも、ネズミを食べるからだとも言われていますが、いずれもこの蜘蛛の生態ではあり得ません。
Missulena属は強力な神経毒を有しており、動悸や嘔吐などの症状を引き起こすほか、ひどいと脳症などを引き起こし死に至るケースがあります。
しかしこの蜘蛛は攻撃性が低く、めったに咬みついてくることがないうえ、咬みついても毒を注がないこともあります。
そのため毒の強さの割に、危険性は高くありません。
5位:Sicarius hahni
引用元:https://www.flickr.com/
Sicarius hahniは南アメリカの砂漠地帯などに生息するクモです。
通常、蜘蛛には8つの目がありますが、Sicarius hahniには6つしか目がありません。
そのため「Six-eyed Sand Spider(6つ目の砂漠グモ)」と言われます。
Sicariusとはラテン語で「殺人者」という意味の言葉で、言葉通り、砂漠に潜んで獲物を待ち、毒で仕留めるハンターです。
この蜘蛛は15年以上生きる(大型のタランチュラでも寿命は20~30年ほど)うえ、水や食べ物がなくても長期間生きることができます。
Sicarius hahniの仲間はいずれも有毒ですが、特に東アフリカに生息するものは強い毒性を有しています。
この毒は強い溶血作用と壊死を引き起こす作用があり、咬まれると場合によっては内臓を損傷させ、多量の出血と壊死を起こし、致命傷になることもあります。
4位:クロゴケグモ
引用元:https://gairaisyu.tokyo/
クロゴケグモは南北アメリカ大陸に主に生息している蜘蛛です。
近年ではアメリカからの外来種として、日本でも生息が確認されています。
体色は黒く、メスの腹部は丸く膨らんで、砂時計のような赤いマークがあることから見分けるのは容易です。
この蜘蛛は交尾が終わったあとにメスがオスを食べることがよく知られています。
交尾後にメスしか残らないために漢字では「黒後家蜘蛛」、英語でも「Black widow(黒い未亡人)」と言われます。
アメリカではクモ刺咬症例の半分がこの蜘蛛によるもので、1950年から1959年の間で、63人もの死者を記録しています。
クロゴケグモは毒の強さだけで言えば、毒蛇として名高いガラガラヘビのおよそ15倍も強い毒を有しており、筋肉痛や吐き気、呼吸困難、更に「ゴケグモ刺咬症」といわれる強い不快感を伴う症状を引き起こすこともあります。
ただクロゴケグモは気性も荒くなく、よほど追い詰めない限りは咬みつくことはありません。
また咬む際も毒液を注入することはなく、仮に注入するにしても致死量よりは少ないです。
3位:ドクイトグモ
引用元:https://gairaisyu.tokyo/
ドクイトグモは、北アメリカで最も危険な毒蜘蛛と言われています。
アメリカの西部と南部に生息し、体色は茶色で、背中にバイオリンのような模様があることから「バイオリンスパイダー」、「ブラウンバイオリンスパイダー」などとも呼ばれます。
もっともバイオリンのような模様は他の蜘蛛にも見られるため、本当にドクイトグモであると区別するには目を見なくてはなりません。
普通の蜘蛛であれば8つあるはずの目が、ドクイトグモには6つしかないためです。
ドクイトグモの毒性は非常に強く、かつ厄介です。
たんぱく質を分解することで血管を破壊して潰瘍を引き起こし、発熱や痙攣、壊死、吐き気などを引き起こし、最悪の場合死に至ります。
死亡事例自体はまれですが、傷跡は数か月も残ります。
アメリカでは危険性を危惧してドクイトグモの駆除がたびたび行われていますが、ドクイトグモは水や食べ物がなくても10か月ほど生存可能であり、環境変化にも強いため、駆除はうまく行っていないようです。
2位:シドニージョウゴグモ
引用元:https://matome.naver.jp/
ジョウゴグモ科と言われる種類の蜘蛛は、揃って毒性を有していますが、特に毒が強いのがシドニージョウゴグモです。
シドニージョウゴグモは世界で最も強い毒性を有する蜘蛛のひとつです。
名前の通りオーストラリアの中でもシドニー周辺の地域に生息し、湿った涼しいところにジョウゴ状の巣を作ります。
シドニージョウゴグモの毒は非常に強い神経毒で、咬まれてからわずか数分で痙攣や動悸、嘔吐、ひどい場合には脳の腫れなどの症状が起き、最短で15分で死に至ったケースもあります。
1920年以後、何人もの人がシドニーで死亡しました。
ただ現在は血清が開発されており、迅速に病院に行けば死ぬ危険はありません。
不可解なことに、シドニージョウゴグモの毒は人間など霊長類などには強い効果を示しますが、本来シドニージョウゴグモの獲物である昆虫などには一切効果を示しません。
なぜシドニージョウゴグモがこのような毒を持つに至ったかは不明ですが、一説には獲物を狩るためでなく、自衛のために身につけたと言われています。
1位:クロドクシボグモ
引用元:https://www.livescience.com/
クロドクシボグモは世界で最も強い毒を持つ蜘蛛として、ギネス記録に載っている蜘蛛です。
和名ではハラクロシボグモとも言います。
ブラジルやウルグアイなど、中南米のジャングルに生息しています。
夜行性で、夜にジャングルをさまよい、獲物に咬みついて仕留めることから英語では「ブラジリアン・ワンダリング・スパイダー」とも言われています。
ほかにもクロドクシボグモにはバナナに潜む習慣があり、時折気づかれないまま輸出されてしまうこともあるそうです。
そのためクロドクシボグモは「バナナスパイダー」とも呼ばれます。
クロドクシボグモの毒は非常に強く、1匹の毒の保有量でなんと80人も殺すことが可能です。
症状としては唾液の分泌や動悸、麻痺、窒息などがあげられ、咬まれるとわずか25分ごろで死に至ることもあります。
ただ血清も開発されており、迅速に病院に運ぶことができれば死ぬ危険は少ないです。
またクロドクシボグモの毒には、男性器を数時間も勃起させる症状があり、治っても勃起不全に陥ることがあります。
現在ではクロドクシボグモの毒に含まれた成分を用いて、勃起不全の治療薬の開発が進められています。
番外編:世界最大の蜘蛛「ルブロンオオツチグモ」
引用元:https://matome.naver.jp/
世界最強の蜘蛛にも様々な基準があります。
その中でも、世界最大の蜘蛛、「バードイーター(鳥を食う)」とまで言われたものはまさに世界最強にふさわしいでしょう。
それが「ゴライアスバードイーター」こと、ルブロンオオツチグモです。
ルブロンオオツチグモは南アメリカのジャングルに生息しており、体長は10㎝、足を広げたサイズは20㎝にもなります。
大きなものだとなんと足を広げたサイズが30㎝、体重170gにまで達します。
これは子犬と同じくらいのサイズです。
ルブロンオオツチグモは攻撃的な性格をしており、腹部に生えた「刺激毛」と言われるものを用いて威嚇をしたり、刺激毛を飛ばすほか、咬みついてきます。
毒性こそ弱いですが、身体が大きい分顎も大きく、咬まれると小型犬に咬まれる程度の怪我をします。
ちなみに「バードイーター」と言われますが、これはあまりにも大型であるために鳥も食べてしまうのではないかと考えられたためについた異名で、実際には鳥は食べません。
まとめ
今回は世界最強の蜘蛛をランキング形式で紹介しました。
たかが蜘蛛だと思うかもしれませんが、処置が遅れると死亡するリスクもある危険なものも世界には生息しています。
日本にもカバキコマチグモやセアカゴケグモなどの毒蜘蛛が生息しています。
気をつけていればそう咬まれるものでもありませんが、咬まれたときは慌てずに病院に向かいましょう。