世界には様々な神話や伝説が存在しています。
そしてその中には、多くの神々や天使たちが登場し、邪悪な怪物や悪魔と戦いを繰り広げます。
今回はそのような神々や天使の中から、特に最強と呼べる存在を紹介しましょう。
10位 アルテミス
引用:The Culture Concept Circle
ギリシャ神話に登場する月の女神アルテミスは、狩猟の女神でもあり、また異母姉妹のアテナとともに処女神としても知られています。
太陽神アポロンとは双子の兄弟であり、また出産の守護神でもあったと言われています。
アルテミスは最高神ゼウスと女神レトとの間に生まれましたが、その出産も大変なものでした。
ゼウスの愛人として子を身ごもったレトは、正妻である最高位の女神ヘラによって迫害を受けることとなります。
太陽が一度でも照らしたことのある場所での出産を禁じられ、また怪物や巨人達にも追われた身重のレトは、やっとオルテュギアー島でアルテミスを出産し、生まれたばかりのアルテミスに守られながら、デーロス島でアポロンを出産しました。
そのことからアルテミスは主産と妊婦の守り神になったとも言われています。
さて、そのような不幸な生い立ちを経験したアルテミスですが、成長後はゼウスに仕え、またゼウスの寵愛を受けることにもなります。
アフロディーテやアテナと同様に、非常に美しい女神として知られるアルテミスですが、キレた時の冷酷さはハンパではありません。
特に有名なのはニオベーの子供たちに起こった悲劇でしょう。
14人の子供を産んだテーバイの王妃ニオベーは、たった二人の子しか出産しなかった女神レトを公衆の面前で嘲笑しました。
それを天から見ていたレトは激怒し、子供たちに泣きつきます。
普通なら神の怒りに触れたニオベーが無残な最期を迎えるところですが、アルテミスとアポロンのとった行動はさらに冷酷なものでした。
アルテミスは天から正確無比な矢で次々とニオベーの7人の息子達を射抜き殺害します。
続いて恐れおののく7人の娘たちも瞬く間に殺してしまったのです。
絶望に打ちひしがれたニオベーの体は硬直し、やがて石となってもまだ涙を流し続けたと言われています。
また狩りの名手アクタイオンに起こった悲劇も有名です。
ある日アクタイオンは50匹の猟犬を連れて狩りを行っていましたが、休憩しようと偶然入った洞窟でアルテミスと従者たちが入浴しているのを目撃してしまいます。
裸を見られたアルテミスは激怒し、瞬く間にアクタイオンを鹿の姿に変えてしまいます。
それだけではなく彼の猟犬にアクタイオンを襲おうようけしかけたのです。
結局鹿となったアクタイオンは自らの猟犬にずたずたに引き裂かれ無残な最期を遂げることになるのですが、どう考えてもアクタイオンに非はなく、なんとも気の毒な話です。
それ以外にもゼウスの寵愛を受けた従者のカリストを熊に変えてしまったり、兄にけしかけられた結果ではありますが、恋人寸前の関係だったポセイドンの息子オリオンを得意の矢で射殺したりもしています。
いつの時代でも冷静にキレる女性は恐ろしいということでしょうか。
9位 カーリー
引用:Hinduwebsite.com
カーリーはヒンドゥー教の女神で、三大神シヴァの妻とされています。
ただ女神とはいってもその外見は完全に悪魔そのもので、青黒い肌に四本の腕、そして額には第三の目が輝き、さらに首からは髑髏や生首の首飾りをぶら下げ、切り取った手や足を束ねて腰飾りとしています。
腕にも武器とチャクラ、そして血の滴る生首を持っており、主に舌を長く出した状態で描かれています。
完全にヤバイ感じの外見ですが、そもそもカーリーはその誕生から、戦うことを宿命づけられていたのです。
アスラ神族を打ち倒すために神々によって生み出されたのが女神ドゥルガーです。
そしてそのドゥルガーがシュムバ、ニシュムバというアスラ親族と対峙した際、あまりの怒りに顔を黒く硬直させ、その憤怒に震えたドゥルガーの額からカーリーは生まれてきたのです。
生まれてきたカーリーは、怒りの雄叫びを上げたかと思うと、瞬く間にシュムバとニシュムバの首を切り落とし、更に周囲のアスラたちを皆殺しにしてしまいました。
更にラクタヴィージャとの戦いの際には、ラクタヴィージャは自らの血から分身を生み出す能力を持っているため、カーリーとの戦いで流れた血により大地はラクタヴィージャの分身で埋め尽くされてしまいました。
そこでカーリーは、ラクタヴィージャの分身を殺す度に口を開けその血を飲み干し、そしてすべての血を飲み干されたラクタヴィージャはついに絶命したのです。
全てのアスラ神族を殺し尽くし、その血の味と勝利に酔いしれたカーリーは踊りを踊り始めます。
カーリーが踊ると、そのあまりの激しさに大地は大きく揺れ、そしてひび割れ始めたため、焦った夫のシヴァが大地に横たわりカーリーの下敷きになることにより、何とか衝撃を和らげようとします。
しばらくシヴァの上で踊り続け、やっと夫を踏みつけて踊っていることに気が付いたカーリーは正気に戻り、思わずペロリと舌を出したのです。
いわゆるツンデレなのでしょうかね。
8位 タルタロス
引用:Μαίανδρος
奈落の神タルタロスは、この世界の始まりに、混沌そのものであるカオスから生まれたとされるギリシャ神話の原初神です。
ちなみにその時一緒に生まれたのが大地の神ガイアと、愛と性の神エロスです。
タルタロスはハデスが支配する冥界の更にはるか下で渦巻いており、そこに取り込まれるといかなる存在でも抜け出ることができないことから、時として地獄と混同されます。
ただ概念としては近いものがあるものの、あくまで一人の神として扱われています。
濃い霧が立ち込め、澱んだ空気に覆われている、神々ですら忌み嫌い、時には恐れすら感じるほどの空間と言われています。
ちなみにタルタロスはどれほど深い場所に存在しているかというと、大地から真珠を落としたとして、九昼夜落ち続け十日目にやっとたどり着くという程の途方も無い距離です。
一般的な地獄との最も大きい違いは、亡者の魂が行き着く場所ではなく、神に逆らった者や、あるいは許しがたい罪を起こし神の怒りに触れた者のみが閉じ込められてしまうということです。
入り口はポセイドンが作ったとされる青銅の門と塀に覆われ、中からは決して開けることができないようになっています。
タルタロスに幽閉されているとされているのは、まずゼウスと戦い敗れた巨人族であるティターン神族で、そこにはゼウスの実の父であるクロノスも含まれています。
それ以外にも女神レトを凌辱しようとしてアルテミスに射殺された巨人ティテュオスもここに幽閉されており、二匹のハゲタカに永遠に肝臓を喰らわれ続けるという責め苦を受けています。
神や巨人以外にも、人間の身でタルタロスにいる者もいます。
有名なのはタンタロスで、自分の息子を殺して料理し、神々にふるまったために怒りを買ってタルタロスに落とされました。
タンタロスは沼の上の果樹に吊るされ、沼の水を飲もうと口を近づけるとさっと水は引いてしまい、果物を食べようと枝に手を伸ばすとその枝も風に飛ばされてしまいます。
目の前に飲むものも食べるものもあるのに決して手に入らず、永遠に飢えと渇きに苦しみ続けるという責め苦を負っています。
ちなみにタルタロスには、姉弟であるガイアとの間にテュポーンという子供がいます。
この世界の端から端まで届くほど巨大な体を持ったテュポーンはゼウスと戦い、一度はゼウスを打ち負かすほどの強さを持っていました。
無限に広がる奈落という存在そのものの神タルタロス、世界の始まりから存在し続けており、まさに最恐の神といえるでしょう。
7位 トール
引用:YouTube
トールは北欧神話に登場する雷神で、その強さは主神オーディンをも凌ぎ、神話内では最強の神の扱いを受けています。
日本語ではトールと表記しますが、実際の発音はソーに近いものだったと言われており、アベンジャーズの人気シリーズ『マイティ・ソー』はこのトールを主人公とした物語です。
トールは主神オーディンと大地の神ヨルズとの間に生まれた子で、燃えるような赤い髪と赤いひげを蓄えた大男です。
ただ性格は非常に短気で粗暴であり、というのも最強の巨人フングニルとの戦いの際に頭に砥石がめり込んでしまい、それ以降のこのような性格になったと言われています。
前述のフングニルをはじめ、主に神々と巨人たちの戦いを描いた北欧神話において、最も多くの巨人を倒した神であり、その強さは神々の国アースガルズの全ての神の力を集めてもかなわなかったと言われています。
その強さの源となっているのが、トールの持つ最強の武器ミョルニルです。
別名トールハンマーとも呼ばれるハンマーで、その名は「粉砕するもの」を表しており、どんな巨人でも一撃で粉砕されました。
また投擲武器としても有効で、放たれたミョルニルは絶対に的を外すことはなく、そして確実にその手に戻ってくるという優れた武器でした。
ただこの武器にも欠点があり、一つは重すぎて普通の神では持ち上げることすらままならなかったこと、もう一つは柄が短すぎて単純にとっても持ちにくかったことです。
そのためトールは常にその力を倍にする効力がある力の帯を身に着け、滑り止め?のために鉄の手套をはめる必要がありました。
最強の武器とともに多くの巨人を打ち負かしたトールですが、迎えた最終戦争ラグナロクにおいては、大蛇ヨルムンガンドと対峙します。
ミョルニルによる一撃でヨルムンガンドに致命傷を与えますが、死の間際に吐かれた毒によって、トールも9歩下がったのちに絶命したと伝えられています。
戦闘の神だけではなく、農耕の神としての性格も持っていたトールは、多くの人から信仰され愛され続けてきました。
北欧がキリスト教化された後もその愛着は変わることはなく、木曜日を表す英語のThursdayは、このトールの名前から来ています。
6位 シヴァ
引用:sivanamakosa-pinakini.com
シヴァはヒンドゥー教の三大神の一人で、破壊と再生を司る神です。
ヒンドゥー教においては、創造神ブラフマーが世界を作り、維持神ヴィシュヌがその世界を維持し、そして破壊神シヴァが世界に破滅をもたらし、そして新たな世界を創造すると信じられています。
一般的にシヴァは青い肌に長い髪、首には毒蛇を巻き付け、そしてその腰に虎の皮だけをまとった修行僧の姿で描かれ、きらびやかな装飾を身に着けた他の神々とは明らかに一線を画しています。
シヴァは今ある世界が終末に近づいている時に現れ、再生のためにその世界を破壊し尽くし、完全な無の状態に戻してしまうと言われています。
また世界を破壊する際に現れたシヴァは、真っ黒に燃え上がる恐ろしい姿で現れるとも言われています。
シヴァはヒマラヤの山上に住み、非常に踊りが好きな神様とも知られていますが、その強大すぎる力のために本気で踊り続けると宇宙をも破壊してしまうそうです。
シヴァには多くの妻がいますが、正妻とされているのがパールヴァティで、非常な愛妻家(恐妻家?)の神としても知られています。
そもそもそのパールヴァティはシヴァの前妻であるサティーが復活したものなのです。
ダクシャ神の娘サティーは父の反対を押し切ってシヴァと結婚しますが、ダクシャ神はシヴァを非常に嫌っており、夫と父の不仲に悩んだサティーはついには火にその身を投げて死んでしまいます。
嘆き悲しんだシヴァはダクシャ神の首をはね、サティーの亡骸を抱きながら世界を破壊して回ったため、世界は荒れ果て、闇に包まれてしまいます。
困り果てたヴィシュヌ神はサティーのことを忘れさせるよう、その亡骸を切り刻んで世界中にばらまいてしまったのです。
ようやく我に返ったシヴァは、自分がしたことを反省し長い瞑想に入ります。
その間にサティーの亡骸が落ちた場所からは女神が現れ聖地になり、そしてサティー自身もヒマラヤの娘として生まれ変わり、再びシヴァと出会い結ばれることになるのでした。
シヴァのぶっ飛んだ性格と愛妻ぶりが如実に表れた逸話に、息子ガネーシャの物語があります。
ある日パールヴァティがお風呂に入っていると、大量の垢が出たために気まぐれにそれで人形を作ってみたところ、非常に気に入ったために人形に魂を込めガネーシャと名付け息子にすることにしました。
その時点ですでにぶっ飛んでいるのですが・・・パールヴァティはガネーシャにお風呂に入っている間誰も入ってこないよう見張り番を言いつけます。
ガネーシャがまじめにお風呂を見張っているところに夫のシヴァが帰ってきます。
シヴァのことを父であり、ましてや偉大な神であることも知らないガネーシャは、シヴァの入室を拒もうとするのですが、逆鱗に触れたガネーシャはその首をはねられ、更にその首を遠くへ放り投げられてしまいます。
お風呂から上がったパールヴァティはガネーシャの死体を見て嘆き悲しみ、シヴァを責めます。
焦ったシヴァはすぐに首を探しに行くのですがなかなか見つからず、結局近くにいた像の首を切り落としてガネーシャにくっつけてしまったのでした。
このようななんとも憎めない破壊神シヴァは中国に伝わる際に、世界を破壊する際に黒く輝くことから「大黒天」という名で伝わります。
現在日本にも伝わる七福神の大黒天は、もともとはこのシヴァ神が由来であるとする説もあるのです。
5位 ミカエル
引用:Church Militant
キリスト教・ユダヤ教・イスラム教においてもっとも偉大な天使として崇められているのが大天使ミカエルです。
ラファエル・ガブリエルとともに三大天使とも呼ばれ、神の御前に立つことを許された存在とも伝えられています。
宗教や宗派によっては、四大天使・七大天使とするものもありますが、いずれにしてもミカエルはその頂点に君臨しています。
その名の由来は「神に似たるもの」から来ていると言われ、最も神に近い存在とされています。
ミカエルの天界における階級は、天使の中でも最高位の熾天使ですが、「大天使」という肩書に着目して、下から二番目の地位である大天使(アークエンジェル)であるという説もあります。
おそらくはミカエルの偉大さを強調するためにつけられた肩書から生じたものと思われますが、神に最も近い存在であり、そしてその名が表す意味からも、やはり最高位の熾天使がミカエルにはふさわしいと感じます。
日本の会社だったら係長と取締役くらいの違いがあります。
さて、絵画や彫刻の中のミカエルは、甲冑を身にまとい、右手に剣を持った姿で描かれることが多く、時にはその足で悪魔や堕天使を踏みつけています。
そのことからも、ミカエルは神に敵対するものに対して容赦のない攻撃を加える、天使軍の総帥として崇められていることがわかります。
『新約聖書』にはサタンの化身である龍を撃退するミカエルの姿が描かれています。
また同じく熾天使でありミカエルを超える地位にあったルシファーが、神に対して反旗を翻した際にも、軍団を率いてそれを撃退し、かつての盟友で双子の兄弟でもあるルシファーを地上へと追放しました。
戦いの天使として描かれることの多いミカエルですが、多くの絵画ではその左手には秤を持って描かれており、これはミカエルが死者の魂を冥界に導く役割も担っていることから来ています。
死者の魂が天国へ行くか地獄へ落ちるかの判断をするため、その手に持った秤で魂の公正さを測ると言われているのです。
大天使ミカエルは現在でも多くの人から崇拝されており、特に欧米圏では子供にその名をつける人も多くいます。
英語圏ではマイケル、フランス語圏ではミシェル、またロシア語圏ではミハイルという名はこのミカエルから来たものです。
4位 オーディン
引用:rts.ch
オーディンは北欧神話の主神であり、戦争と死、そして魔術と詩を司る神です。
また北欧神話においては世界を作り出した創造神でもあり、最初の人類を作り出した神でもあります。
ボルという名の男神と女巨人のベストラとの間に生まれ、子供には最強の雷神トールなどがいます。
主に長いひげを生やした隻眼の老人の姿で描かれることが多く、グングニルという槍を持ち、つばの広い帽子をかぶっています。
ただ、戦場においては黄金の鎧と兜をまとい、スレイプニルと呼ばれる八本足の馬にまたがり、天空や大地を自在に駆け巡ることができました。
更にグングニルの槍はあらゆる鎧を貫き、どの様な敵に対しても的を外すことはありませんでした。
オーディンは知識と情報を非常に重視する神でもあり、オーディンの両肩にはフギン(思考)とムニン(記憶)と呼ばれるワタリガラスが止まっており、この二羽が世界中を飛び回り各地の情報を集めてくるのです。
また大変な酒好きでもあり、自分の食事は全てペットの狼に与え、本人は葡萄酒だけを飲んでいるそうです。
オーディンの知識への探求心は度を越したものがあり、すべての知恵が手に入ると言われる知恵の水を得るために、自らの片目を引き換えにしてしまったり、ルーン文字の秘密を得るために自らの体をグングニルで貫き、九日もの間首を吊ったまま耐えたりもしました。
このような努力の甲斐あってか、オーディンは全ての知恵を手に入れ、またルーン文字もマスターし、まさに賢者のような神でもあったのです。
またオーディンは戦争の神であることから、あらゆる戦局を操ることもできました。
誰を勝利者にするかを自由に決めることができ、また場合によってはわざと戦争が起こるよう仕向けることさえありました。
このような戦争で死んだ魂はエインヘリャルと呼ばれ、全てオーディンが住む天界の宮殿ヴァルハラに集められました。
エインヘリャルは宮殿で昼の間は常に実際に殺しあう修練を積み、夜になると生き返り酒盛りを始めます。
そして翌日はまた同じことを繰り返すのです。
なぜこのようなことをしているのかというと、北欧神話の世界そのものが、ラグナロクと呼ばれる最終戦争によってすべてが滅びるという予言に支配された世界であり、その最終戦争の際に、オーディンとともに戦う兵士たちをここで鍛えているのです。
しかしラグナロクが発生するとその予言は現実のものとなり、オーディン自身も巨大な狼の怪物で、太陽すらも飲み込んでしまうというフェンリルによって咬み殺されてしまうのです。
3位 ゼウス
引用:In The Field Stories
ギリシャ神話の最高神であり、全宇宙を支配する全知全能の神ゼウス。
全宇宙を一撃で破壊するほどの威力のある雷を操り、人類と神々双方を守護する偉大な神です。
しかし、その生い立ちはまさに戦うことを宿命づけられたものでした。
ティターン神族の長クロノスと大地の女神レアとの間に生まれたゼウスですが、クロノス自身が父ウラノスを打ち倒して政権を握ったように、彼もいずれ自らの子に政権を奪われることを恐れていました。
そのためクロノスは生まれた子を次々と飲み込んでしまったのです。
最後に生まれたゼウスだけは、レアの機転により産着に包んだ石を飲み込ませたために飲み込まれることなく秘かに育てられました。
成長したゼウスはクロノスに気づかれないように嘔吐剤を服用させ、兄弟たちを吐き出させることに成功します。
そしてポセイドンやハデスなどの兄弟たちと共に、クロノス率いるティターン神族との全宇宙の支配権をめぐる大戦争、ティタノマキアが始まるのです。
全宇宙を揺るがし、カオスすらも焼き払う雷霆を用いて戦うゼウスの前に、クロノスらティターン神族は打ち倒され、そしてタルタロスに幽閉されることになります。
それに怒ったのがティターン神族の母親でもある地母神ガイアです。
ガイアは山脈や大陸を引き裂くほどの怪力の巨人族ギガンテスと共に再びゼウスらに戦いを挑みます。
ギガントマキアと呼ばれるこの戦争は、ゼウスの息子でもあり半神半人の英雄ヘラクレスの活躍もあり、ゼウス軍の圧勝に終わります。
ガイアはあきらめず、今度は奈落の神タルタロスと交わり最終兵器テュポーンを生み出し、ゼウスとの決戦に挑んだのです。
この世界全てを覆いつくすほど巨大なテュポーンにゼウス以外の神々は恐れをなして逃げ出してしまいますが、ゼウスはただ一人で立ち向います。
全宇宙を焼き尽くすほどの壮絶な一騎打ちの末にさすがのゼウスも一度は敗れ、両手両足の健を切られ幽閉されるという絶体絶命の危機に陥りますが、ヘルメスとパンの助けもあり救出され、再びテュポーンと対峙し今度は見事にテュポーンを打ち倒したのでした。
全世界の平定に成功したゼウスら神々はくじ引きを行い、その結果ゼウスは天界を、ポセイドンは海の世界を、ハデスは冥界をそれぞれ治めることに決まります。
その後のゼウスはというと、これまでの勇ましい姿はどこへやら、ひたすら愛人づくりに邁進することになります。
ちなみにゼウスには三度の結婚歴があります。
一人目の妻は知恵の女神メティスで、ガイアの予言によりメティスとの間にできた男の子はゼウスを超えるとされたために、それを恐れたゼウスは妊娠中のメティスを飲み込んでしまいます。
その結果ゼウスの頭部から女神アテナが生まれ、そしてゼウスはメティスの知恵を自らのものにしたのでした。
二人目の妻は掟の女神テミスで、運命の女神モイライ等、三人の女神を産みますが、これによりゼウスは運命をも超越する力を手にすることになります。
三人目の妻は永遠の正妻ともなる最高位の女神ヘラですが、これもすったもんだの不倫の末の結婚でした。
その後はヘラの目を盗んでは不倫を繰り返し、結果的には半神半人の英雄や、強力な神を生み出すことにもなるのです。
代表的なものにはアルクメネとの間に生まれたヘラクレス、ダナエとの間に生まれたペルセウスが有名です。
英雄色を好むといったところなのかもしれませんが、実はこれ、後の人々が自らの祖先の「箔付け」にゼウスを利用した結果なのです。
各地の人々が、自らの祖先は実は最高神ゼウスと血のつながった存在である、と主張するために色々な浮気エピソードを後付けで追加していった結果、最高最強の神はいつしか最強の絶倫男へと変わっていってしまったのでした。
いずれにしても、ゼウスがあまりに偉大であるがゆえのことでしょう。
2位 セクメト
引用:papirosperdidos.com
セクメトはエジプトの神話に登場する女神で、血のような真っ赤なドレスを身にまとい、ライオンの頭を持ち、頭に昼間の太陽を現した赤い円盤を乗せています。
吐く息は毒を持ち、人々に疫病を蔓延させるとも伝えられています。
このセクメトは神ではありますが、そもそもが人類を殺戮するためだけに作られたと言ってもいい、最強の殺戮ターミネーターなのです。
年を取り衰えた太陽神ラーは、以前ほど自分を敬わない人類に対して、次第に憎しみを覚えるようになってきていました。
そしてある日怒りのピークに達したラーは、自らの右目をえぐり取り、そこから殺戮の女神セクメトを生み出したのです。
人を殺すために生み出された女神セクメトは、その使命通り鋭い爪と牙、また病をもたらす息によって次々と街を襲い、人々を殺して回ります。
神であるセクメトに対して人間の武器などは通用せず、人々は何もできずに殺されていきます。
殺戮は来る日も来る日も続き、大地は真っ赤に染まり、人類はあっという間に絶滅の危機に立たされたのでした。
セクメトの殺戮を見かねた他の神々は、ラーにいい加減やめるよう進言します。
ラー自身もさすがにやりすぎだと感じていたために、セクメトを呼びつけそろそろ止めるよう命じます。
しかし人を殺し、その血を浴びることに快感を覚えてしまっていたセクメトは聞き入れません。
そして再び人間狩りに出かけて行ったセクメトを見て、さすがにラーも焦ります。
戦闘に特化した女神セクメトは、神々が束になってかかっても勝てないほど強かったので、力ずくでは止められません。
そうして神々が必死に考えた結果、アルコール攻めにしようということになったのでした。
生き残ったわずかな人々と神々が協力して、血のように真っ赤なビールを大量に作りました。
血が大好きなセクメトの気を引こうと、わざわざ真っ赤なビールを作ったのです。
この作戦は大成功し、血の色のビールを気に入ったセクメトは大量にこのビールを飲み続け、ついには酔っぱらって眠ってしまったのです。
眠っている間にラーはセクメトの破壊プログラムを書き換え、これ以降は穏やかな家庭を守る女神となったのでした。
まるで最近何かと問題になっている、AIの暴走を描いたかのような神話の一説でした。
もし誰かが人を殺すためのAIを作り出してしまったとしたら、実際にこのような惨劇が待っているのかもしれませんね。
1位 ヘラ
引用:fatosdesconhecidos.com.br
最高神ゼウスの正妻で結婚と母性を司る神々の女王ヘラ、今回はこの世界一美しく冷酷な女神を栄えあるナンバーワンとさせていただきました。
彼女のすごいところは、まず何といってもその情報収集能力で、夫であるゼウスの浮気をありとあらゆる方法で突き止めます。
更には、その浮気相手に対する冷酷な仕打ちは恐ろしく、なんといっても基本的に“自らの手を汚さない”ところも徹底しています。
ヘラはクロノスとレアの娘で、ゼウスにとっては姉に当たります。
実社会ではどうだったかはわかりませんが、ギリシャ神話の中ではこの様な兄弟姉妹婚は数多く存在しています。
ゼウスがヘラを見初めた時、ゼウスには掟の女神テミスと結婚していました。
執拗に迫るゼウスですが、ヘラは決して心を開きません。
ヘラは体の関係だけの都合のいい女になるのが嫌だったものと思われますが、ヘラがゼウスに対して体の関係を持つにあたって提示した条件は、結婚することでした。
当時のギリシャは完全な一夫一妻制で、たとえ神であっても重婚は許されることではありません。
つまり、ヘラはゼウスに対して離婚を要求したのです。
ゼウスは要求をのみ、テミスと離婚しヘラと改めて結婚することになりますが、今でいう略奪婚のような感じだったのでしょうか。
しかし懲りないゼウスは結婚後も浮名を流し続け、そのたびにヘラの壮絶な怒りが爆発し続けるのです。
ヘラの被害者となってしまった人を何人か紹介しましょう。
リビアの女性ラミアは、ゼウスに見初められ逢瀬を重ねます。
そして何人かの子供を持つことになりますが、ついにヘラの知るところとなりその子供を全て殺されてしまいます。
一説には、ヘラが自ら殺したのではなく、何らかの神通力を用いてラミア自身が子供を殺すよう仕向けたとされているのですから、なんとも恐ろしい限りです。
子を失ったラミアの悲しみはすさまじく、容姿は獣のように変り果て、心までも獣となってしまい、子供をさらっては貪り食う怪物となってしまうのです。
怒りはそれだけでは収まらず、ラミアが子を失った悲しみを一時たりとも忘れないよう、眠りすらも奪ってしまったのです。
テーバイの王女セメレーもゼウスと恋仲になり子を身ごもります。
ヘラはセメレーの乳母に化けてセメレーに近づき、こう諭します。
「あなたの恋人はいったい何者なんだい?もしかしたら恐ろしい怪物かもしれない。彼に本当の姿を見せるよう言いなさい」と。
セメレーはゼウスに本当の姿を見せるよう懇願しますが、ゼウスにとってはそれはできない相談でした。
神であるゼウスの本来の姿を生身の人間が見れば、たちまちその雷光に身を焼かれ死んでしまうのです。
しかし執拗に懇願するセメレーについに折れたゼウスは、本来の神としての姿を現します。
そしてそのとたんに憐れなセメレーは、ゼウスの持つまばゆい雷光に身を焼かれ、絶命してしまうのでした。
アルテミスの従者カリストは、純潔を誓った身でありながらゼウスと関係を持ち、その子を身ごもってしまいます。
それを知ったアルテミスはカリストを追放し、カリストはアルカスと名付けられた男の子を出産します。
ゼウスの子を産んだカリストをヘラは許さず、美しかったカリストの姿を見にくい熊に変えてしまったのです。
カリストは熊の姿のまま森で十数年の時を過ごし、ある時立派な狩人の青年と出会います。
その青年がアルカスだと気づいたカリストは喜び近づきますが、アルカスは格好の獲物と思い、矢を構えます。
その姿を見ていたゼウスはさすがに憐れみ、アルカスも熊の姿に変えて二人をおおぐま座・こぐま座の星座にして天に昇らせたのでした。
さて、どう見ても夫婦仲がいいようには見えない子の二人の神ですが、なぜこの両者はお互いに愛想をつかして離婚しないのでしょうか。
実はヘラは春になると聖なるカナートスの泉で沐浴し、そうすることによって全ての負の感情を洗い流し、処女性を取り戻し天界で最も美しい女性となるのです。
その間はさすがのゼウスも一心不乱にヘラと愛し合うのだそうです。
まとめ
世界のいろいろな神話から、最強の神や天使を紹介しました。
ここで紹介したもの以外にも、世界には様々な神話が存在しており、そこには魅力あふれる神々が躍動しています。
遠い昔の人々が自然に対する感謝や畏怖の念を神話に込め、そして異文化が出会うことによって各神話の神々も協力し合ったり対立したりしてきたのでしょう。