日本では琵琶湖、霞ヶ浦、諏訪湖などの湖が景勝地として知られています。
湖は昔から生活や文化、信仰などの中心として存在しており、その国や民族を語るうえでは決して欠かせません。
今回は世界最大の湖を紹介します。
ちなみに日本最大の湖である琵琶湖の面積は670㎢です。
10位 グレートスレーヴ湖(約27000㎢)
引用元:http://vivaearth.hatenablog.com/
グレートスレーヴ湖は、カナダのノースウエスト準州にあり、カナダ国内ではグレートベア湖に次いで2番目に大きな湖で、最大水深が北アメリカで1番深い湖です。
湖の名称は周辺にいたネイティブアメリカンの部族名である「Slavey」に由来しています。
1771年に探検され、1930年代には周辺で金が発見されたことで発展し、近くにのちにノースウエスト準州の州都となるイエローナイフが建設されました。
グレートスレーヴ湖は面積が四国のおよそ1.5倍もありますが、冬季には湖面が全面凍結するうえ、その氷の厚さが1.5m以上になることから、冬季には凍結した路面を通る「アイスロード」が開通します。
アイスロードはトレーラーでも通行ができ、物資搬入路としての役割を果たします。
グレートスレーヴ湖と、同じくカナダにあるグレートベア湖、アサバスカ湖はかつて「マッコーネル湖」というひとつの巨大な湖だったと考えられています。
9位 マラウイ湖(約29500㎢)
引用元:https://worldheritagesite.xyz/
マラウイ湖はアフリカ大陸東南部、アフリカ東部を縦断する大地溝帯(グレート・リフト・バレー)の南端にある湖で、モザンビーク、タンザニア、マラウイの国境となっています。
マラウイでは「光、炎」を意味するマラウイ湖と呼ばれ、マラウイという国の名前の由来にもなりました。
一方でモザンビークやタンザニアでは「湖」を意味するニアサ湖と呼ばれており、マラウイは昔「イギリス保護領ニアサランド」、「ローデシア・ニアサランド連邦」という名前だった歴史があります。
マラウイ湖の呼称問題はしばしば3か国の間で領有権を絡めた論争となることがあります。
マラウイ湖の南端部は国立公園に指定されており、1984年には淡水湖で初めて世界遺産へと登録されています。
マラウイ湖国立公園は「湖のガラパゴス諸島」と呼ばれるほど多くの固有種と多彩な進化が確認され、特に「シクリッド」と呼ばれる淡水魚は800種以上も確認されています。
ただマラウイ湖は美しいだけではありません。
マラウイ湖には「住血吸虫(ビルハルツ)」が生息しており、湖で泳いだり、湖の水でシャワーを浴びたりすると体内に侵入して発熱やじんましん、下痢などの症状を引き起こし、最悪の場合「住血吸虫症」という慢性疾患へ進行する恐れがあります。
またマラウイ湖周辺ではマラリアもまん延しており、渡航の際は抗マラリア剤を処方してもらったほうがよいでしょう。
8位 グレートベア湖(約31000㎢)
引用元:https://japaneseclass.jp/
グレートベア湖は北アメリカ大陸の北西部、カナダのノースウエスト準州にある湖です。
全体がカナダ国内にある湖の中では最大のもので、北アメリカ大陸全体でも3番目に大きな湖となっています。
周辺ではハイイログマやアメリカグマといった、希少な生物が生息しています。
7位 バイカル湖(約31500㎢)
引用元:https://trippiece.com/
バイカル湖はロシア連邦南東部、シベリア管区内のブリヤート共和国とイルクーツク州、チタ州に挟まれた三日月型をしたアジア最大の淡水湖です。
モンゴル語で「自然の湖」という意味の名前をしている通り北西はバイカル山脈、北東にはバルグジン山脈が位置し、他にも周囲を山々が囲むこの湖は世界で最も水面の透明度が高く「バイカルの真珠」とも呼ばれます。
冬季には湖面が凍結し、青色の光しか通さなくなることから凍った湖面がエメラルドグリーンに輝く大変美しい光景を見ることができます。
更にバイカル湖は元々海溝の一部だったと言われており、最大水深はおよそ1620mと世界で最も深い湖となっているほか貯水量も世界で最も多く、世界の淡水の20%がバイカル湖にあると言われています。
バイカル湖の隔絶された環境には、世界で唯一の淡水に住むアザラシである「バイカルアザラシ」を始めとする固有種や独特の生態系が維持されており、環境の保護を目的に5つもの国立公園・自然保護区が設定されています。
そのためバイカル湖は「ロシアのガラパゴス」とも呼ばれています。
6位 タンガニーカ湖(約32600㎢)
引用元:http://www5a.biglobe.ne.jp/
タンガニーカ湖はアフリカ大陸東部、タンザニアとコンゴ民主共和国の国境地帯に位置する湖で、北端はブルンジ、南端はザンビアに及んでいます。
アフリカで2番目に大きな湖で、バイカル湖に次いで世界で2番目に深い湖でもあります。
バイカル湖同様に他の水域から隔絶された古い湖であることが知られており、この湖に住む魚の80%、貝類の90%が固有種です。
漁業が盛んで、生態系を脅かすほどの乱獲や地球温暖化に伴う水温の上昇による漁獲の減少が問題となったことから、現在では沿岸国によって「タンガニーカ湖の持続的管理に関する条約」が結ばれ、2008年にタンガニーカ湖保護局が発足しました。
5位 ミシガン湖(約57800㎢)
引用元:http://www.musachicago.com/
ミシガン湖は北アメリカ大陸の五大湖のひとつで、全体がアメリカ国内にある唯一の湖です。
湖の名前の由来はチペワインディアン語で「大きな湖」というものです。
沿岸はインディアナ州、イリノイ州、ウィスコンシン州、ミシガン州に囲まれており、南部には工業地帯が広がっています。
沿岸都市の中ではイリノイ州のシカゴが有名です。
湖岸にはスリーピングベアー国立公園やインディアナ国立公園など多くの国立公園や州立公園があります。
同じ五大湖のひとつであるヒューロン湖とはマキノー海峡によって繋がっており水面高も同一のため、地政学的には両者を1つの湖としてみなすこともでき、その場合は合計の面積が約117400㎢となり世界第2位へ躍り出ます。
4位 ヒューロン湖(約59600㎢)
引用元:https://platabi.com/
ヒューロン湖は北アメリカ大陸の五大湖のひとつで、スペリオル湖に次いで2番目に大きな湖です。
ミシガン州とオンタリオ州の州境に存在し、東端はカナダに位置しています。
湖には淡水に浮かぶものの中では最大の島であるマニトゥーリン島が存在しています。
沿岸都市の中では歌手マドンナの出身地として知られるベイシティ、サギナウ、ミッドランドの3つを総称したトライシティが代表的です。
この湖にあるファトム・ファイブ国立海洋公園には21隻もの船舶が沈んでおり、その姿を確認することができます。
3位 ビクトリア湖(約68870㎢)
引用元:http://www.salongo.jp/
ケニア、ウガンダ、タンザニアの3か国に囲まれたアフリカ最大の湖ビクトリア湖は、ナイル川の源流のひとつです。
九州の2倍ほどの面積の湖には、ウガンダ領セセ諸島やタンザニア領ウケレウェ諸島など、3000もの島々が浮かんでいます。
現地の人はこの湖を「ウケレウェ湖」と呼びますが、ナイル川の源流を探検し、1858年にこの湖へ到達したイギリスの探検家ジョン・ハニング・スピークが当時の女王の名を取ってビクトリア湖と命名しました。
ビクトリア湖は大地溝帯(グレート・リフト・バレー)に囲まれており、大地溝帯の形成される原因となった地表の隆起に挟まれる形で陥没した土地に湖ができたと考えられています。
このように歴史ある湖であるため生態系も特殊で、400種もの固有種が生息しており「ダーウィンの箱庭」とも呼ばれていましたが、植民地時代の1954年に食用としてナイルパーチが放流されたことで生態系が破壊されてしまい、多くの環境問題を引き起こしました。
1994年からは沿岸3か国によるビクトリア湖環境管理プロジェクトが発足し、環境悪化を食い止めようとしています。
2位 スペリオル湖(約82100㎢)
引用元:https://wp.bohan.co/
スペリオル湖は五大湖最大の湖で、その面積は北海道(約83450㎢)とほぼ同じです。
そして淡水湖としては世界最大の面積を有しています。
五大湖は5つ合わせて「北米の地中海」と称されます。
しかしスペリオル湖の貯水量は淡水湖としてはスペリオル湖よりも面積の小さなバイカル湖、タンガニーカ湖に次ぐ世界第3位に過ぎません。
これはバイカル湖やタンガニーカ湖が地殻の断層運動によってできた「構造湖」で、非常に水深が深くなっていることが原因です。
現にバイカル湖の最大水深がおよそ1620mである一方、スペリオル湖のそれはは406m程度となっています。
17世紀前半にヨーロッパ人が探検し、フランス人の探検家がが五大湖の中で最も標高の高い位置にあることから「Lac Superieur(上流の湖)」と名付けたことでスペリオル湖と呼ばれるようになりました。
周辺には「アイアン・レンジ」と呼ばれる鉄鉱脈が存在し、ダルースやアッシュランドのような港湾都市や鉱業都市が点在しています。
1位 カスピ海(約374000㎢)
引用元:http://parstoday.com/
カスピ海は中央アジアとヨーロッパの境界付近にある世界最大の湖で、その面積は日本の国土面積(約370000㎢)よりもわずかに小さい程度です。
ロシア、アゼルバイジャン、イラン、トルクメニスタン、カザフスタンの5か国に囲まれており、ペルシア語やトルコ語では「ハザール海」、カスピ海に面するイランの地名から「マーザンダラーン海」、中国語では「裏海」と呼ばれます。
カスピ海という名称はカスピ海の南西沿岸地域に存在したカス族、カスピ族に由来しており、カスピ海の南西沿岸地域にほど近いイランのガズヴィーンという都市と語源を同一としています。
カスピ海はかつては地中海や黒海と同じ「テチス海」というひとつの海だったと考えられており、海水ほどではありませんが現在も塩水を湛える塩水湖です。
そのためイワシやニシンのほか、卵がキャビアの原料となるチョウザメ類などの漁獲量が多くロシアの内水面漁業の4分の1を占めています。
1991年のソビエト連邦崩壊以後20年もの間、カスピ海を湖と捉えるか海と捉えるかで沿岸諸国の間で協議が続いていました。
海とした場合には国際海洋法が適応され、排他的経済水域や領海が設定されますが、湖とした場合には国際条約が存在せず各国の協議の上、湖の分割線を定めることになります。
ソ連が健在のころはカスピ海の沿岸にはソ連とイランしかなく、両国の間で1921年に結ばれた友好協定と1940年に結ばれた通商・海洋協定によって領海の設定と、それ以外の水域の平等な利用が保証されていました。
ソ連崩壊後は沿岸国が5か国に増え、領海内に豊富な資源を持つアゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタンがカスピ海を海として考え、明確な領海を定めることで資源を占有しようと考えます。
一方領海に資源のないロシアやイランはカスピ海を湖として考え、明確な領海を定めずに資源を共同開発しようと考えました。
ですがこの議論は各国のカスピ海沿岸の石油油田をロシアやイラン系企業が担当するという事態によって根底が揺らぎ、2018年にはカスピ海を事実上「海」として定める内容の協定が結ばれました。
この協定では長年カスピ海を湖として考え、ソ連と資源を折半してきたイランがロシアとの関係維持を目的に大幅に譲歩した形となっており、イラン国内では指導者であるロウハ二師への不満が高まっていると言われています。
ちなみに日本でカスピ海と言えば「カスピ海ヨーグルト」という、粘りの強いヨーグルトが有名です。
「カスピ海ヨーグルト」研究会によると、カスピ海ヨーグルトとは黒海とカスピ海に挟まれたジョージアに伝わる「マツォーニ」というヨーグルトから採取され、培養された「クレモリス菌FC株」を種菌として作ったヨーグルトのことを指すとのことです。
番外編 アラル海(約13900㎢)
引用元:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/
カザフスタンとウズベキスタンにまたがって存在する塩湖であるアラル海は、かつて面積が約66000㎢、東北地方とほぼ同じ大きさの、世界で4番目に大きな湖でした。
帝政ロシア時代やソ連時代初期には漁業やキャビアや缶詰などの加工が盛んに行われていました。
しかし1940年代には「自然改造計画」と銘打ち、綿花と水稲栽培のための灌漑を目的にアラル海へ流入するアムダリヤ川の中流にカラクーム運河を建設したことでアラル海は縮小を始め、1989年には大アラル海と小アラル海に分かれます。
水が減ることでアラル海の塩分濃度も上昇し、2000年には漁業が不可能となり、2005年には大アラル海が3つに分裂します。
小アラル海は消滅の危機を迎えましたが、カザフスタン政府が2005年に建設したコカラル堤防によって水位が回復に転じ、2012年にはシルダリヤ川の河口デルタと共にラムサール条約に登録されました。
ソ連の政策によるアラル海の縮小とその周辺の環境の変化は「20世紀最大の環境破壊」と言われました。
アラル海があるカザフスタンのクズロルダ州クリムベク・クシェルバエフ知事は「アラル海の危機は、自然に対する人間の無責任さの実例だ。綿花や米を栽培する必要があったしても、環境と人々の健康に回復不能な損害を与えていいことにはならない」とコメントしています。
まとめ
今回は世界最大の湖を紹介しました。
世界には日本の各地よりも大きな湖が存在し、沿岸地域の生活の中心となっています。
独自の生態系や日本では見ることのできない美しい景観を楽しむことができるため、海外旅行へ行くときの参考にもなるかと思います。
ぜひ実際に行って、圧倒されてみてください。