生物の宝庫アフリカには、強靭な生物たちが数多く存在しています。
今回は、その生物たちの強さを紹介していきますが……最強の定義は難しいものです。
単体では強いという言葉を、何でもありの野生に適応させるのは難しいような気がします。
単体で最強の存在は、最も大きな雄のアフリカゾウと呼べるかもしれません。
ですが、群れ成すアフリカゾウを襲い、アフリカゾウを仕留めるライオンの群れもいます。
群れを成すのも、動物たちの本能由来の力であるため、それを無しにその動物の強さと評価することには個人的に疑問を覚えます。
猛獣だらけのアフリカにおいて、強烈な淘汰圧をはねのける能力を、アフリカに現存する種は有しているわけです。
つまり、それぞれの種に最強と呼べる理由や能力が存在しているとも言えます。
今回の「最強」については、我々、人間の視点において、対応することが困難である、という価値観に重きを置いています。
第12位 ヒョウ
http://animaltube.online/
体長100~150センチメートルの体重30~90キログラム。
最も広範囲に生息する大型の猫科の猛獣、それがヒョウです。
単独生活を行い木登りは得意で、走れば60km/hで走れるなど、器用さを持つ狩猟者であり、人間も襲います。
小型の牛科動物から、鋭いトゲの生えたヤマアラシ、樹上を走り回るサル、
そして、ニシキヘビ、ワニ、ジャイアントエランドなどの巨大な獲物さえも仕留める力があります。
単独での狩猟能力だと思えば、かなり優れている能力です。
体重で10倍はある獲物でさえも、ヒョウは狩ることが出来ると言われています。
単独生活という狩りには不適なライフスタイルでも、その高い狩猟能力は、広い地域に生息している根拠になりそうです。
数十人を殺したヒョウも存在していることから、彼らの縄張りと人間の居住地が重なれば、容赦なく人間を補食しにかかるようです。
ライオンに比べれば小型ですが、それでも個体によれば90キロを超える、身体能力の高い猛獣には代わりはありません。
接近すれば、殺される危険は常に存在しているのです。
第11位 ツェツェバエ
https://en.m.wiktionary.org/
吸血性のハエです。
体長は5~10mmほどになります。
この小さな生物は、危険な病気を媒介しています。
アフリカトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)の病原体、トリパノソーマを、ツェツェバエは媒介しているのです。
アフリカ睡眠病の初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛や関節痛などの比較的軽い症状です。
しかし、この感染は、進行性のものであり、中枢神経にトリパノソーマが到達すると重症化してしまいます。
人格の変異に錯乱、発作的なけいれん、歩行困難など、数々の症状が現れて来るのです。
もしも、アフリカ睡眠病を治療せずに放置すると、やがては昏睡に陥り、数カ月から数年で死に至ることになります。
その眠るような死の様子から、アフリカ睡眠病と名付けられたのです。
現時点では、アフリカ睡眠病に対する完璧なワクチンは開発されていません。
そして、マラリア同様に免疫を獲得することもなく、何度もトリパノソーマに感染するリスクが存在しています。
トリパノソーマは人間にも動物にも感染し、どちらも致命的な症状をもたらすのです。
確実にツェツェバエによるアフリカ睡眠病を予防する方法はありません。
可能な限り、ツェツェバエとの接触を防ぐことが肝要となります。
防虫スプレー、長袖の服などで肌の露出を控える、ツェツェバエが潜伏しているブッシュには近寄らない……などの予防法が存在します。
さて、人間にも動物にも重病を招くツェツェバエですが……。
生物の進化とは不思議なもので、ツェツェバエに刺されにくい動物がいるのです。
あの有名なアフリカの動物、シマウマです。
アフリカに生息している他のウマ科動物と比べたとき、シマウマはアフリカ睡眠病にかかりにくいのです。
シマウマの生息地域とツエツエバエの生息地域は重なっているのですが……。
ツエツエバエの体内からは、シマウマ由来の血液はほとんど見つからないことが報告されています。
さらに、実験により、この吸血バエが、均一な色の面に対しては着地するのですが、縞模様の面は避けることが明らかになっているのです。
つまり、シマウマの奇抜な白黒の縞模様は、ツェツェバエとアフリカ睡眠病への対抗策である可能性が示唆されています。
第10位 デスストーカー(オブトサソリ)
https://ja.m.wikipedia.org/
その体長8.5〜11㎝、北アフリカの砂漠などに生息する、たいへん危険なサソリです。
その毒は強く、老人や子供、そしてサソリ毒にアレルギーを持っている場合は大変に危険です。
このオブトサソリに刺されると、始めに強烈な激痛が襲って来ることになります。
次いで、神経麻痺、言語障害、呼吸困難といった症状があらわれていき、最悪の場合では窒息死してしまうのです。
子どもの場合は発熱や痙攣、呼吸困難が起きやすく、さらに危険性が増えてしまいます。
実際に、オブトサソリに刺されて死亡したケースも存在しているのです。
毎年、世界ではたくさんの人々が、サソリによる被害に遭っています。
そのうちの約75%が、このデスストーカーことオブトサソリによる被害なのだ考えられています。
他のサソリに比べて、圧倒的に人間への害を成すことがあるサソリなのです。
第9位 キリン
https://commons.m.wikimedia.org/
角先端までの高さは、オスで4.7~ 5.3メートル。
メスで3.9~4.5メートルほどです。
その体重はオスが800~1,930キログラム、メスは550 ~1,180キログラム。
そのサイズからして、危険性をはらんでいます。
キリンはライオンなどに襲われると、その長い脚で蹴り殺してしまうことがあるのです。
そして、それだけではなく長く巨大な首をぶつけて、人間を打ち殺した事例もあります。
2018年、南アフリカで、映画を撮影中のカメラマンがキリンの首による打撲を受けて死亡しました。
その巨大な首が持つ威力は、人間の体など簡単に打ち壊してしまう破壊力があります。
同じく2018年には、南アフリカの保護区内で暮らしていた研究者の妻と3才の子供がキリンに襲われて重体となりました。
子連れのキリンも、子連れでないキリンも人間を襲うことがあります。
不用意に近づくべき動物ではないかもしれませんね。
……基本的に草食のキリンですが、小鳥を食べることもあります。
たんぱく質を本能的に欲することがあるようで、小動物をむしゃむしゃと食べてしまうことがあるのです。
どんな動物も意外性を秘めていることがあるため、注意を怠ることは危険な行為と言えます。
第8位 アフリカスイギュウ
https://ja.m.wikipedia.org/
アフリカスイギュウは、体長200~340センチメートルほどの野生の牛です。
肩高100~170センチメートルで、その体重300~900キログラムと個体差も大きいですが、巨大な動物であることには変わりません。
スピードもあり、60km/h近くのスピードで走ります。
草原などで暮らしていますし、もちろん草食動物です。
100頭以上の群れを形成して生活しますが、群れの規模は大小様々で、1,000~2,000頭にもなる大規模な群れを形成していることもあります。
老齢個体は群れから離れ単独で生活することもあるようです。
そして、こういった個体は神経質であり、警戒心が強く、人間に対して襲いかかってくる傾向が強まります。
単独行動している獣は、草食、肉食であろうとも、自分を守る、あるいは獲物を捕獲することに情熱的です。
単独行動している獣には、群れを成している動物たちとは、また別の注意が必要となります。
アフリカスイギュウはその巨体と大きな角が危険であり、追いかけられれば、致命傷を負うことは十分にありえるわけです。
年間で200人近くの犠牲者を出しているとされています。
現地の方からは「おいしい肉」とも認識されていますので、積極的な狩りの対象ともなっているわけです。
やはり牛肉は、おいしいもののようですね。
そして、狩りの機会の多さは襲撃による死者数を増加させることにも貢献しています。
第7位 パフアダー
https://commons.m.wikimedia.org/
平均全長約1m、最大全長190cmの毒蛇です。
体形は非常に太くて短く、体色は褐色で、背面にはV字状の黒い斑紋が並んでいます。
アフリカ大陸の広範囲に生息し、アフリカ大陸における蛇被害のうち、最多の被害者を出すのがパフアダーと言われているのです。
その毒は出血毒および細胞毒です。
パフアダーに噛まれると、大量の毒が体内に注がれることになります。
この毒は、出血毒と細胞毒から構成されています。
パフアダーの出血毒は血管内皮細胞にアポトーシスを起こしてしまうのです。
血管を構成する細胞が、とても小さく細切れに断片化されてしまいます。
血管を構成する細胞そのものにある、自己破壊のシステムを強制的に起動させられているわけです。
そうなれば、当然ですがその血管は著しく損傷されてしまい、その治療・再生は極めて難しくなるわけです。
大小あらゆる血管が手当たり次第に壊されて、体内に出血が始まり、細胞も壊され、細胞単位で死滅していくことになるという厄介な毒です。
破壊された血管により、酸素を始め栄養素や白血球などの免疫細胞が送り込まれなくなった部位は壊死していきます。
パフアダーの毒は、噛まれた手足の切断など、たとえ生き残っても重篤な後遺症を残す可能性がある種類の毒なのです。
高度に進化した、細胞障害性の毒を、パフアダーの毒牙は宿しています。
……ちなみに、卵胎生という変わった繁殖方法をする蛇でもあります。
パフアダーのメスは体内で卵を孵化させて、幼蛇を「出産」しているのです。
一度に20~40匹もの幼蛇を出産します。
最多で156匹もの幼蛇を産んだ記録もあり、親は幼蛇があるていど育つまで、共に行動をする習性を持っているのです。
この多産なところと子育てする習性も、パフアダーの生息域の広さを決定付けているのかもしれません。
パフアダーの狩りは待ち伏せ型です。
そして、尻尾を振り、舌を動かすことで獲物の興味を引くルアーリングというテクニックも使い、狩りを実行しています。
子育てに多産、ルアーリングと、有能な生物であるわけです。
幅広い生息範囲を獲得しているのも、納得することが出来ます。
第6位 ブラックマンバ
https://upload.wikimedia.org/
毒蛇の中では、最大の種であるキングコブラに次いで2番目に大きい毒蛇です。
体長はおおよそ2~3mほどですが、大きな個体では4mを超えることもあります。
ブラックと名付けられた理由は、その口内が黒いことに由来しています。
その毒は、数ある毒蛇たちのなかでも、最も速く作用する毒の一つとされているのです。
致死性が極めて高く、ブラックマンバに噛まれた場合は、即座に抗毒素を投与する必要があります。
治療が遅れると毒が中枢神経系にまわり呼吸器官が麻痺、死に至ることになるのです。
……もしも、このブラックマンバに噛まれれば?
体内に多量の神経毒と心臓毒が打ち込まれることになるのです。
10分以内に痺れや感覚異常、めまいなどの症状が現れることになります。
次いで、深刻な呼吸困難な意識障害をもたらし、7〜15時間後には死亡してしまうのです。
巨体ながら細身であり、体重は1.5kgほどしかありません。
そして、その牙も小さく6.5㎜しかないのですが、頭部が大きく、有している毒の量も多いのです。
しかも、こちらが抵抗すれば、繰り返し攻撃して幾度となく毒牙を打ち込んで来ます。
致死量約15mgと言われる猛毒を、ブラックマンバはひと咬みで100~120mgほど打ち込んでくるのですが、それが複数回に及ぶわけです。
抗毒血清が開発される以前は、このヘビに噛まれると、およそ20分で死に至ったケースもあるようです。
治療する薬を早い時期に打てれば助かりますが、それが遅れれば、ほぼ確実に噛まれた人は死亡します。
……しかし、カメラマンや蛇に腕を噛ませる愛好家(!?)などには、ブラックマンバに噛まれて無治療で生き残ったケースもあるのです。
彼らは、無抵抗であったことが幸いしたのかもしれません。
カメラマンは血管を切り裂かれたのか、大量に出血し、そのおかげで毒が体外に出たのではないかという説もあります。
愛好家の方は謎も多いですが、ブラックマンバも毎回、確実に毒を使うとは言えないようです。
とはいえ、命を賭けてまで、確かめる必要はありません。
ブラックマンバを見つけても、近づかないようにしましょう。
第5位 ナイルワニ
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/
全長400~550センチメートルにもなる大型のワニです。
寿命も長く、60~100年は生きることが出来るようです。
爬虫類なので、生きている間はその体は成長を続けます。
老齢な個体であるほど、巨大なのです。
さて、ナイルワニは、人にとっても貴重な水辺に生息しています。
そのため遭遇する確率も高く、年間200人ほどの死者を出しているわけです。
その食性はもちろん肉食ですが、腐肉や死体も迷わず食べる貪欲さも特徴です。
ワニの免疫はとても強靭であり、HIVウイルスさえも殺すことが出来ます。
縄張り争いでお互いの足を噛み千切り、バイ菌だらけの泥水のなかにいても、ワニは重篤な感染症にほとんどかかりません。
その驚異的な免疫力のため、過酷な環境でも生存することが可能なのです。
水辺では圧倒的な強さを発揮します。
ブルンジ川の伝説、ギュスターブは300人を超える人間を捕食した個体として語り継がれています。
射殺が複数回試みられたようですが、ギュスターブは拳銃や機関銃を受けても死ぬことはなかったのです。
今のところナイルワニの最大の個体は、記録上では700センチとされていますが、もしもギュスターブが捕獲されて、正確なサイズを計測される日があれば、その記録を大きく塗り替えるのかもしれません。
第4位 ライオン
言わずと知れた百獣の王、それがライオンです。
オスは体重は250キログラムを超えることもあります。
ネコ科ではトラに次いで、2番目に大きな種として知られています。
巨大な牙が生えた力強い顎を持っているライオンは、アフリカ全土で年間およそ200人ほどの人命を奪っているのではないかとも考えられているのです。
巨体でありながらも時速60km/hのトップスピードで走ることも出来ます。
人間が襲撃された場合、武器を持っていなければどうすることも出来ません。
狩りにはメスが主体となって参加し、ゾウやカバなどの大型の獲物を襲う時にはオスも参加することになります。
およそほとんどの動物を獲物としていますが、群れにより標的とする獲物が異なっているようです。
ライオンは首を狙って攻撃してきます。
その牙というよりも強力な顎の力と体重を浴びせることで、首を絞めて窒息死させるという攻撃を行います。
野生のライオンは年を取る、病気で体力を奪われていたりすると、群れから追放され単独行動を強いられることがあるのですが……。
そうなった個体は、人間を通常よりも高い確率で襲うことがあるようです。
人間のほうが、多くの野性動物よりも簡単に補食することが出来るからです。
慣れ親しみ、幾度と遭遇したツアーガイドであろうとも、ライオンはそれまでのようにツアーガイドを見過ごしてくれるとは限りません。
体調や空腹の次第では、これまでの対策にライオンは怯むことなく、ある日突然に人を襲うことがあります。
他の獲物を襲えるほど元気で若いから、人間を襲わないだけなのです。
ライオンに接近することは、常に危険がある行為です。
基本的に怠惰な動物であるライオンが目を覚まして歩いている場合、いつ人間に襲いかかってこないとも限りません。
そして、ライオンは寝たフリをして獲物を油断させることもあります。
ライオンは狂暴な肉食動物であり、人間に敬意を払うことはありえません。
威嚇などすることもなく、狩猟対象か力を誇示して排除する相手として、いきなり襲いかかってくるだけです。
不必要な殺戮も厭わないことがあります。
食べもしないハイエナを殺すこともあるのです。
ライオンは非常に危険な肉食動物であり、やはり百獣の王ではあります。
その顎の前に、我々の首の骨は簡単に破裂してしまいます。
ライオンは常に人間を殺す可能性を持っている存在であることを、絶対に忘れるべきではないのです。
単体での強さに群れ成す性質、ゾウ、キリン、カバ、サイ、スイギュウ……ライオンに殺せなかった動物は存在していません。
第3位 アフリカゾウ
言わずと知れた陸上最大の動物、それがアフリカゾウです。
その巨体ゆえに、襲われると大変に危険な動物となります。
体長は6から7.5メートル、最大体重では10トンにも達するという圧倒的なサイズを持っている動物です。
その牙も長大であり、乾いて固まっている地面を簡単に掘り返すほどの威力を持っています。
身体能力のスペックだけでも、陸上生物最大にして最強である動物ですが、さらには賢くて、最大40km/hで走ることも出来るのです。
感覚も優れており、犬の2倍の嗅覚受容体の遺伝子を持っています。
つまり、アフリカゾウは犬よりもはるかに鼻がいいのです。
さて、この嗅覚と高い知性を用いて、アフリカゾウは自分達を襲う部族の人間と、そうでない部族の人間を嗅ぎ分けています。
自分達の驚異となる部族には、彼らは近づかないのです。
非常に高度な能力を持つ動物であり、それゆえにかつては人との共存も成り立ってきたわけですが、近年は破綻しています。
象牙目的の密猟で個体数が激減している土地もありますが、広大な保護地区のなかでは個体数が8年間で倍になっていたりするわけです。
もちろん、個体数が減少している地区もあり、保護すべき動物だという国際認識は存在しています。
象は手厚い保護を受けることで、守られているのが現状です。
そして、その結果、地域住民に対する象の被害は常に拡大し続けています。
アフリカゾウは学んだのです、人間は自分達を襲わない安全な動物であるのだと。
アフリカゾウが多く生息するタンザニア、そのセレンゲティ県では、アフリカゾウに襲撃される農家が増加の一途です。
賢いアフリカゾウは、現在のタンザニア人が自分達を攻撃しないことを学びました。
今ではタンザニア人の畑を自分達の餌場として襲う毎日です。
個体数の増減に関わらず、また自然環境の変化にも関係なく、アフリカゾウの農地襲撃は増加傾向にあります。
かつては農民たちにはゾウを追い払うため弓矢を用いて来ましたが、現在の法律では弓を持っていると逮捕されるわけです。
ゾウの群れが農地に入れば、心血を注いだ農地を壊滅させられることになります。
あるいは弓を使い警察に逮捕されて刑務所送りになるわけです。
どちらかの破滅を選ぶことになります。
アフリカゾウ保護に莫大な資金を提供するドナー国や環境NGOの存在が、アフリカの農業的発展と生活を阻害してもいます。
それらの莫大な資金の前に、アフリカの農民たちの文化も主張も消し飛ばされているわけです。
法律や政治が金を帯びたエゴになびくのは、人類共通の習性なのです。
タンザニアの国土は日本の2倍、人口は半分なのですが、年間のアフリカゾウによる人身被害は40~50人が死亡、30~40人が負傷です。
日本のクマの人身被害は、年間で0~4人が死亡、50~110人が負傷となっています。
タンザニアのアフリカゾウ被害は、日本より人口密度の少ない場所でありながら、被害の出方はクマよりもはるかに激しいものです。
襲撃された時の死亡率が、クマよりもけた違いに高いのも特徴です。
クマよりも何十倍も危険な動物、それがアフリカゾウなのです。
今後もヒトの農地への侵入がありえる以上、保護地区においての、アフリカゾウによる殺人の数は増加して行く可能性があります。
第2位 マラリア原虫
https://ja.m.wikipedia.org/
マラリアは最も有名な熱帯病であり、死ぬこともある危険な病気です。
2014年、WHO(世界保健機関)はこんなレポートを出しています。
マラリアの感染リスクは、世界で32億人にも及ぶーーー人類の驚異の一つ、それがマラリア原虫です。
2015年には、アフリカだけでも40万人近くの死者を出しています。
マラリア原虫は赤血球よりも小さな真核生物で、肝臓と赤血球に寄生します。
最小にして最強の殺戮者と呼べるかもしれません。
マラリア原虫を媒介するのは、メスのハマダラカです。
アフリカ大陸のサハラ砂漠以南に出掛ける際は、蚊への対策を怠ってはいけません。
マラリアで命を落とす被害者の多くは、体力や免疫の低い子供や妊婦です。
最も重篤なマラリア、熱帯熱マラリア原虫の免疫を人体が獲得することはないのです。
熱帯熱マラリア原虫に寄生された赤血球は、人体の免疫を抑制するタンパク質をその表面に生産します。
そのタンパク質のせいで、熱帯熱マラリア原虫に対する免疫を人体は獲得することが出来ないのです。
他にも熱帯熱マラリア原虫は、自身が宿る赤血球が体外に排出されないようにもします。
人の免疫機能を騙す、高度な進化を果たした寄生生物なのです。
長らく現地に滞在する、あるいはその地域に住み続ければ、マラリアの危険から逃れることは難しくもなります。
しかし、蚊の忌避剤やマラリアの治療薬はあります。
適切な医療さえ受けることが出来れば、マラリア原虫を恐れすぎることはないのですが、用心するに越したことはありません。
第1位 カバ
http://do-butsu.com/
カバによる死亡事故は、アフリカの大型動物の中で最多、1年あたり2900人近くがカバに襲撃されて死亡しています。
ゆったりとした動きに見えて、やさしげな雰囲気がある動物ですが、非常に強い縄張り意識を有しているのです。
川などの水辺をその縄張りとして、そのテリトリーを侵犯する者には容赦なく攻撃して来ます。
とくに子持ちのメスは非常に警戒心が強く、攻撃的になります。
子連れのメスは巨大なオスより危険な動物になるわけです。
カバは肉食動物ではありませんが、その気性の荒さと巨体と重量、そして巨大な牙が大変に危険な武器となります。
ワニさえ噛み潰し、踏み潰す威力があるのです。
体長は3.5メートル、体重はおよそ1400kg、走れば最高時速は32km/hを越えます。
人類史上最速のスプリンター、ウサイン・ボルト氏のトップスピードでも37.6km/hです。
しかし、それはあくまでもスプリントに向く平坦な陸上レーンでの記録になります。
未整備の道であれば、全盛期のウサイン・ボルト氏でも、カバから逃げ切るのは幸運に頼ることになるでしょう。
小さなボートでカバの巣に迷い入れば、カバはボートごとひっくり返そうとします。
そして、水に落ちた人を巨大な口で噛みつきに来るのです。
噛む力は1トンを超え、30センチ近い杭のような牙を体を打ち込まれることになります。
頭部はもちろん、胴体、そして太ももを噛み潰されれば、人間は致命傷を負うことになるのです。
太ももには大きな動脈が走っているため、カバの牙はそれを深く傷つける可能性があります。
アフリカにご旅行の際には、子連れのカバには絶対に近寄らないことをおすすめします。
野生動物は犬や猫と異なり、人間に威嚇をしてくれるとは限りません。
カバもまた唐突に襲いかかって来ることがあるのです。
有効な対策は近づかない、それだけになります。
しかし、カバが水中に身を潜めた状態でいれば、専門家でも気づかずにカバのテリトリーに侵入してしまうこともあるわけです。
対応することが困難であり、気づかずに接近してしまうことがあります。
そして、その獰猛さと水陸両用の能力、何より最多の死者数を計上した実績。
カバこそが人間にとって、アフリカで最も危険視しなければならない生物として、1位に選びました。
……そんなカバですが、意外にも遺伝子上でカバに最も近い種類の動物はクジラだったりします。
両者の共通の祖先が具体的にはどんな生物だったのかは、予測することが難しいようです。
クジラの祖先の化石は5,300万年前まで遡れますが、カバの祖先は1,000万年前までしか遡れません。
両者の隔たりは、時間的にあまりにも広く、両者をつなぐ共通の祖先は、少なくとも5,300万年以上前にいることになります。
カバの水棲適応の度合いから考えると、1,000万年以上前のカバの祖先はより陸棲であったことが考えられているのです。
カバとクジラ、両者の共通祖先は、水棲動物からかけ離れた存在である可能性が浮かびます。
それを化石から探り当てることは、かなり難しい作業なのです。
※死者数では圧倒的にマラリア原虫ですが、カバよりも対策することが可能な点で、2位という評価にいたしました。
カバと異なり、媒介する蚊の存在が必要なこともマイナスの評価にしました。
他の種が滅びても、カバへの影響はないからです。
まとめ
今回のランキングに登場した生物たちは、どれもがアフリカ最強の生物と言える能力を持っています。
巨体ゆえの個体の強さ、器用さや身体能力、群れと戦術を形成する知恵、治療困難な毒や寄生虫による病気に、種の存続を担う繁殖能力……。
人間や環境による淘汰圧をはねのけて、生息数を維持するサソリなどは、もっと評価が高くてもよいかもしれません。
遺伝子を残すという、生命の普遍的な価値観においては、他の絶滅寸前の生物たちよりも昆虫類を優秀と評価する見方も有りなのだと思います。
また補食される動物たちにも、ツェツェバエを回避するシマウマや、蛇毒に抵抗を持つマングース類など、特殊な進化をした者たちがいるわけです。
アフリカの豊かな自然は、生命が持つ進化の可能性を十二分に表現してくれています。
魅力的な自然にあふれる土地ですが……人間も容赦なく自然の摂理に晒されることになりますので、ご旅行の際は十分にお気をつけ下さい。