日本最高峰の山である富士山(3776m)が「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」という名称で世界自然遺産へ登録されたように、古来より山岳はただ地理的に大きな要因であるだけでなく、文化や信仰に大きな影響を与えてきました。
世界一標高の高い山は、登山家や科学者の興味の対象であるだけでなく、地元の人々にとっても大きな存在に違いありません。
今回はそんな世界一標高の高い山を紹介していきます。
なお山の高さを表す指標には色々とありますが、今回のランキングは「プロミネンス」というものを使用します。
プロミネンスとは
プロミネンスとは「ある山Aの頂上を囲む等高線の中で、その山Aよりも高い地点を含まない最も低い等高線からの比高」を表すものです。
簡単に言い換えると「ある山Aの頂上より高い場所へ行くために最低でも下らなければならない高さ」を指します。
山脈にある山は他の山との比較になってしまうため、プロミネンスが低くなってしまうことがあります。
その点を考慮してご覧ください。
10位 エルブルス山(4741m)
引用元:https://www.russia-ex.com/
エルブルス山はロシア連邦を構成するカバルダ・バルカル共和国の南部、黒海からカスピ海にかけて位置するコーカサス山脈にある山です。
この山はアジアとヨーロッパの境界線である大コーカサス山脈のすぐ北に位置しているため、ロシアで最も高い山であると同時に、ヨーロッパで最も高い山ということになります。
頂上は東峰と西峰の2地点存在し、より低い東峰には1829年7月10日にロシア軍の組織した科学調査隊のガイドを務めたカラチャイ人のキラル・ハシロフが登頂しています。
一方で20mほど高い西峰には1874年にF.クロフォード・グローヴ率いるイギリスの探検隊が到達しました。
1942年には当時のソビエト連邦へ侵攻していたドイツの山岳部隊が作戦行動から外れてエルブルス山を登り始め、山中でソ連軍と交戦しながらも登頂を果たし、山頂にドイツ国旗を立てたこともあります。
ドイツのヒトラー総統はこの独断行動に激怒し、後に当時の山岳部隊が属していたA軍集団の司令官が解任される一因となっています。
また山岳部隊の立てたドイツ国旗もソ連軍によって撤去されました。
エルブルス山の周辺は氷河や高山植物などに彩られた美しい景観が広がっており、登山客やスキーヤーのほかにも最寄りのアザウ駅から多くの観光客が訪れます。
9位 プンチャック・ジャヤ(4884m)
引用元:https://world-web-magazine.com/
プンチャック・ジャヤはニューギニア島西部、インドネシア・パプア州にあるマオケ山脈の西部、スディルマン山脈に位置する山です。
ニューギニア島だけでなく、オーストラリア・ニューギニア大陸、ひいてはオセアニアの最高峰となっています。
プンチャックがインドネシア語で「山、峰」、ジャヤが「勝利、偉大な」と言う意味の言葉です。
ほかにも単に「ジャヤ」や、オランダ統治時代はこの山の氷河を初めて目撃したオランダの探検家ヤン・カルステンツォーンにちなんで「カルステンツ山」、「カルステンツ・ピラミッド」とも呼ばれたこともあります。
現在でも登山家の間では「カルステンツ山」、「カルステンツ・ピラミッド」という呼称が一般的です。
ヤン・カルステンツォーンは赤道直下に位置するニューギニア島で雪(氷河)を見たと発言したことから、発見当時は笑いものにされたと言われています。
また1960年代にインドネシアがパプア州を加えたときには、この山をインドネシアの初代大統領スカルノから「ジャヤ・スカルノ」と改称したことがありますが後に元に戻されています。
プンチャック・ジャヤは七大陸最高峰に入る山の中で最も登頂の難しい山のひとつだと言われています。
インドネシア政府は1995年からプンチャック・ジャヤへの入山を許可制としており、一般人は山を訪れることすらできなくなっています。
余談ですがインドネシアは大小およそ15000の島で構成された島国であり、あまり高い山というイメージはないかもしれません。
しかしインドネシアにはプロミネンス上位100位にプンチャック・ジャヤも含めて11もの山がランクインしています。
知られざる山岳国家でもあるのです。
8位 ヴィンソン・マシフ(4892m)
引用元:https://world-web-magazine.com/
ヴィンソン・マシフと言えば「世界の果てまでイッテQ!」というテレビ番組の企画でタレントのイモトアヤコさんが2017年末から2018年初頭にかけて登頂に挑んだ、南極大陸最高峰です。
南極大陸西部にあるエルズワース山脈のセンチナルレンジに位置しています。
1958年にアメリカ海軍の航空機によって発見され、1966年にアメリカ国立科学財団とアメリカアルパイン協会の後押しを受けて組織された探検隊が登頂に出発しています。
探検隊のスポンサーはアメリカアルパイン協会とナショナルジオグラフィックが務め、南極現地ではアメリカ海軍とアメリカ国立科学財団の南極プログラムが探検隊を支援し、探検隊は同年12月20日までに全員がヴィンソン・マシフの登頂を果たしました。
2001年にはNOVAというテレビ番組の企画でそれまでヴィンソン・マシフ登頂の基本ルートであった西側からではなく、東側から初めて登頂することに成功、更にGPSを使って正確な標高を測定しています。
ヴィンソン・マシフは七大陸最高峰のひとつであり、最も登頂者の少ない山で知られています。
そもそも南極大陸は気候が過酷で非常に行きにくいうえ、登頂するにもガイドなどを雇う必要があるためひとり当たり30000ドルほども必要だと言われています。
日本でも登山ツアーなどは一応組まれていますが、個人での登頂はできないと考えたほうがいいでしょう。
7位 オリサバ山(4922m)
引用元:http://www.atlastrek.co.jp/
オリサバ山はメキシコ南部、ベラクルス州とプエブラ州の間にある成層火山(あるひとつの火口から吹きあがった溶岩などが堆積してできた火山)です。
火山としてはアフリカのキリマンジャロに次いで2番目に高い山です。
トランスメキシコ火山帯に位置し、19世紀に最後の火山活動が確認された休火山となっています。
現地では「ピコ・デ・オリサバ」と呼ばれることがあるため、日本語でも「ピコ・デ・オリサバ山」と表記することがありますが、「ピコ・デ」はスペイン語で「~山」という意味(例えば富士山はスペイン語で「Pico de Fuji」と書く)のため、厳密には「ピコ・デ・オリサバ山」という表現は重言となります。
また現地のナワトル語ではシトラルテペトル(「星の山」)とも呼ばれるほか北アメリカ大陸ではマッキンレー(デナリ)、ローガンに次いで3番目に標高の高い山であり、「ビッグオー」という愛称もあります。
オリサバ山に隣接するシエラ・ネグラ山(標高4460m)の山頂には、北アメリカで最も高い標高に位置する道路が横断しています。
オリサバ山は現地のアステカ族やトトナック族にとっては非常に重要な存在であり、古代オルメカ神話においてオリサバ山は火山を作った鷲の魂がいるとされていました。
神が怒って火山を噴火させたりしないよう、当時の人々は定期的にオリサバ山の山頂で祈りを捧げていたと言われています。
6位 ローガン山(5250m)
引用元:https://www.thestar.com/
カナダのユーコン準州にそびえるローガン山はカナダ最高峰であり、デナリに次いで北アメリカで2番目に高い山です。
標高に直すと5959mですが、これは1992年時点でのものです。
ローガン山は現在も造山活動によって少しずつ高くなっており、2008年の測定では5966mとなっていたことが明らかになりました。
山麓の大きさは世界一だと言われていますが、そのすべてが氷河で覆われています。
南面に位置する氷河がセワード氷河、北面のものがローガン氷河という名前で、氷河の面積としては北極圏・南極圏に次いで3番目となることからローガン山は北極圏、南極圏、ヒマラヤに次ぐ「第4の極地」と呼ばれることもあります。
カナダの地質学者であり、カナダ地質調査部を設立したウィリアム・エドモンド・ローガン卿の名前から名付けられたこの山は、1925年にカナダ、イギリス、アメリカの探検家によって組織され、アルバート・H・マッカーシーを隊長とする国際登山隊によって初めて登頂されました。
ローガン山はカナダ最高峰として多くの登山家が目標とする山ですが、ローガン山周辺一帯の平均気温は夏場でも0℃、年間では-27℃という非常に寒冷なもので、登山には非常に厳しい環境です。
1991年には南極圏を除いて最低の気温となる-77.5℃を記録しました。
5位 クリストバル・コロン山(5509m)
クリストバル・コロン山はシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタ山地に位置するコロンビア最高峰です。
山の名前はコロンビアの国名同様にアメリカ大陸に最初に到達した探検家クリストファー・コロンブス(クリストバル・コロン)に由来します。
山頂には氷河が見え、気温も一気に氷点下へ落ちますが、この山はカリブ海からわずか50㎞ほどしか離れていません。
カリブ海近辺は気温30℃を超える熱帯地帯なのにわずか50㎞進むだけで氷河が見えるという、非常に珍しい風景を見ることができます。
クリストバル・コロン山の標高は5700mと、世界の高山の中ではさほど高いほうではありません。
にも関わらずプロミネンスで言えば世界で5番目に位置し、クリストバル・コロン山より上の山はすべて七大陸最高峰に数えられる、標高も高い山の数々です。
これはプロミネンスを決めるうえで基準となる最低鞍部がクリストバル・コロン山の場合海抜191mと非常に低いために起きる現象となっています。
なおクリストバル・コロン山の南西には、クリストバル・コロン山と山頂の標高がほぼ同じであるシモン・ボリバル山が存在しており、シモン・ボリバル山のほうが標高が高い可能性もあると言われています。
もしシモン・ボリバル山の標高がクリストバル・コロン山より高いと明らかになった場合、コロンビア最高峰の座だけでなくプロミネンス第5位の座も同時にシモン・ボリバル山に明け渡すこととなります。
4位 キリマンジャロ(5885m)
引用元:https://www.hankyu-travel.com/
タンザニア北東部に位置するキリマンジャロはアフリカ大陸の最高峰にして、山脈に属さない独立峰の中で世界で一番高い山です。
私たちに身近なところで言えば、キリマンジャロの麓で栽培されるコーヒーの品種「キリマンジャロ」や、『老人と海』、『武器よさらば』などで知られるアーネスト・ヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』などが有名でしょう。
キリマンジャロにはシラ峰、キボ峰、マウエンジ峰という3つの峰が存在し、キボ峰が最高峰となっています。
キボ峰にあるキリマンジャロの最高地点は1961年のタンザニア独立を記念してスワヒリ語で「自由」を意味する「ウフル」と名付けられました。
キリマンジャロという名前はスワヒリ語で「山」を表す「キリマ」とチャガ語で「白さ」を表す「ンジャロ」を合わせ、全体で「白く輝く山」を意味していると言われていますが、実は正確な由来は明らかになっていません。
シラ峰、キボ峰、マウエンジ峰についても語源は諸説存在しています。
一方マサイ族はキリマンジャロを「ンガイエ・ンガイ(神の家)」と呼んでいます。
キリマンジャロがヨーロッパ人に発見されたのは1848年のことです。
ヨハネス・レブマンというドイツ人宣教師が現地で「頂上が銀で覆われた山」の話を聞き、内陸部を探索したところ発見しました。
ですが当時は熱帯であるアフリカに雪が存在するとは思えないという判断から、キリマンジャロの存在は否定されました。
その後1861年、ドイツ人将校であるカール・クラウス・フォン・デア・デッケンとイギリス人地質学者のリチャード・ソーントンが2500m地点まで、翌1862年にはカール・クラウス・フォン・デア・デッケンと化学者のオットー・ケルステンが4280m地点まで到達しています。
そして1889年、ドイツ人地質学者のハンス・メイヤーがオーストリア人登山家のルートヴィク・パースチェラと共についにキボ峰の頂上へ到達しました。
現在ではキリマンジャロ一帯はキリマンジャロ国立公園に指定され、世界遺産にも登録されています。
3位 デナリ(6144m)
引用元:https://www.cnn.co.jp/
北アメリカ大陸最高峰のデナリについては、あまり名前に馴染みがないかもしれません。
私たちには英語由来の「マッキンリー」という名前のほうが通りがいいでしょう。
デナリはアメリカ・アラスカ州のアラスカ山脈西部に位置する山です。
七大陸最高峰の中でも非常に北極圏に近いため気温が低く、風も強いため登頂の難度が高いことで知られています。
冬季には-59.4℃を記録したことがあるほか、1969年以前には-73.3℃(-100℉)を記録したことがあるとも言われています。
1913年に司祭のハドソン・スタックら4名が人類で初めてデナリの登頂を果たすと、1947年にはバーバラ・ウォシュバーンが女性で初めて登頂を果たし、1951年には後にデナリ登頂の基本ルートとなるウェストバットレスルートを通ってブラッドフォード・ウォシュバーン隊が登頂しています。
1970年には植村直己が初の単独登頂を果たし、史上初の五大陸最高峰登頂を達成しますが、1984年に冬季のデナリ単独初登頂を達成した下山途中に遭難し、行方不明になってしまいました。
デナリという名称は北アメリカの先住民族であるデナッイア族のデナッイア語で「大きな山」、更にデナリの近隣に住むコユコン族のコユコン語で「高きもの」、「偉大なるもの」を表す語に由来しており、公式にはコユコン語によるものが語源とされています。
一方で1897年に当時のウィリアム・マッキンリー大統領にちなんでマッキンリーという名称も与えられており、長くデナリとマッキンリーという名称が同時に使われていました。
アラスカの人々は「デナリ」を好み、アラスカ州も正式名称を「デナリ」に統一するよう連邦政府へ求める一方で、観光客は国立公園の名称として「デナリ」を、山の名前としては「マッキンリー」を使う場合が一般的でした。
2015年、当時のバラク・オバマ大統領はついに長年の併存状態から「デナリ」に名称を統一、当時のジュウェル米内務長官は「この場所への畏怖の気持ちを抱きながら、アラスカ先住民の伝統にのっとり、アラスカの人々の強い応援を受けて、この山の名称を正式に『デナリ』に変更する」という声明を発表しています。
しかしドナルド・トランプ現大統領は2017年10月に名称を「マッキンリー」に戻す案に触れるなど、その名称を巡る問題は未だに完全な解決には至っていないようです。
2位 アコンカグア(6962m)
引用元:https://adventure-guides.co.jp/
アコンカグアはアルゼンチン・メンドサ州の、チリとの国境部に位置するアンデス山脈にある山です。
南アメリカ最高峰であり、アジア以外の大陸の中の最高峰でもあります。
名前の由来としてはアイマラ語の「アコン(雪)」と「カグア(山)」から来ているとも、「石の見張り番」を意味する「アッコン・カフアック」から来ているとも言われています。
七大陸最高峰の中でも比較的登頂の難易度が低い山であると言われ、1953年には早稲田大学遠征隊が日本で初めてアコンカグアの登頂を果たし、1970年には植村直己が登頂を果たし、下山時に登頂した処女峰に「明治峰」という名前がつけられました。
毎年3500名もの登山客が訪れると言われ、ベースキャンプも非常に充実しています。
登山客のうちの15%ほどがポーランド・トラバースルートという、高度な技術を必要としないルートを進むそうですが、このルートは簡単な代わりに天候に左右されやすくビエント・ブランコ(白い嵐)というアンデス特有の悪天候に見舞われて登頂できなくなる場合も多いと言われています。
そのためポーランド・トラバースルートでの登頂成功率はおよそ30%ほどだそうです。
1位 エベレスト(8848m)
引用元:https://www.redbull.com/
2016年に映画化を果たした夢枕漠原作の小説『エヴェレスト 神々の山麓』の舞台としても知られるエベレストはヒマラヤ山脈のネパールと中国の国境線上に位置する、標高・プロミネンス共に世界一を誇る山です。
標高はプロミネンスと同じく8848mというのが一般的ですが、これは1954年にインド測量局が周辺12か所で測定したものの平均値を採用したもので、実際の標高は地殻変動によって年々変化していると言われています。
海底から隆起して発生した山であり、海底からの高さを考えるとその標高は10000mを超えると考えられています。
「エベレスト」という名称はこのインド測量局の局長を務めたジョージ・エベレストに由来しますが、実はジョージ本人はエベレストに行ったことはありません。
別の名称として「チョモランマ」や「サガルマータ」と呼ばれることもあります。
チョモランマはチベット語で「大地の女神」、「大地の母神」という意味で、チベットでよく使われる呼び名であり、サガルマータはサンスクリット語で「大空の頭」、「世界の頂上」という意味で、ネパールでよく使われています。
中国語では「珠穆朗瑪峰(チュムランマフェン)」や「聖母峰(シェンムーフェン)」と呼ばれています。
エベレストが初めて登頂されたのは1953年のことです。
ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーとネパールのシェルパ(高地に順応し、ヒマラヤ山脈などでポーターを務める少数民族)であるテンジン・ノルゲイによって登頂されました。
エドモンドとテンジンの登頂はイギリスのTimes誌が独占報道し、大きなスクープとなりました。
1965年から1969年までは外国人の登山が禁止されましたが、1970年には植村直己と松浦輝夫が日本人で初めてエベレストを登頂し、1975年には田部井淳子が女性で初めての登頂に成功しています。
近年はアメリカやヨーロッパ、東南アジアに加え、インドや中国からの登山客が訪れることで登山客数が大幅に増加しており、今後も増え続けることが予想されています。
また登山自体は確かに危険なのですが、現在は18ものコースが開拓されているうえ、装備の進化や専門知識の発展、天気予報などの水準の改善などの要因がかさなったことで2000年以後は死亡事故の割合はおよそ60人に1人程度になっています。
番外編:地球の中心から見て最も高い山―チンボラソ
引用元:https://gigazine.net/
山の高さを決める基準には色々なものがあります。
例えば一般に標高として知られるものは平均海面からの高さを表すもので、世界で一番高い山はエベレストとなります。
一方で地球の中心部分からの距離をその山の高さとすることもあります。
つまり地球の半径と標高を足したものをその山の高さとするのです。
そして地球は真球ではなく楕円形をしているため、地点によって地球の中心までの距離は一定ではありません。
赤道(緯度0度)を頂点に、高緯度地域ほど地球の中心までの距離が短くなっていきます。
この基準で世界一高い山となる、つまり地球の中心から見て最も高い山が赤道地域にあるエクアドルの最高峰チンボラソです。
チンボラソの標高自体は6268mと、エベレストよりおよそ2600mほど低いです。
ただし赤道地域(南緯1度)にあるチンボラソとヒマラヤ山脈(北緯27度)とでは地球の中心までの距離におよそ4000mもの差があります。
そのため差し引いた分だけチンボラソのほうが高くなるのです。
この基準で高い山はそれだけ宇宙、星空に近い山だということになります。
そう考えるとロマンチックに思えるような気もします。
ちなみにチンボラソという山の名前は現地のケチュア語で「青い山」から来ているそうです。
裾野からの高さが最も高い山―マウナ・ケア
引用元:http://yamanekotravel.info/
アメリカ合衆国ハワイ州にあるマウナ・ケアといえばハワイでも代表的な観光名所のひとつです。
その標高は4205mと富士山よりも高く、標高3905m地点にはアメリカで最も高い地点に位置する淡水湖であるワイアウ湖があります。
山頂付近は気温が安定しており、空気も澄んでいるため天体観測に非常に向いており、美しい星空を見ることができます。
また日本の国立天文台の「すばる望遠鏡」を始め世界11か国によって13基もの望遠鏡が設置された、天文学における世界屈指の研究拠点でもあります。
実はそんなマウナ・ケアは裾野からの高さが世界で最も高い山として、世界で一番高い山のひとつに数えられています。
マウナ・ケアは海面から出ている部分、つまり標高こそ4205mですがその裾野は太平洋の海底まで伸びています。
この裾野を合わせると高さが10230mとなり、ゆうにエベレストなど超えてしまうのです。
またマウナ・ケアに隣接するマウナ・ロアも同じく海底に裾野のある山で、標高が4169mとマウナ・ケアよりも低いため裾野からの高さが世界で最も高い山の座をマウナ・ケアに譲り渡しています。
しかしマウナ・ロアはマウナ・ケアよりも大きく、その重量はマウナ・ケアの10倍もあると言われる巨大な山です。
その重量ゆえにマウナ・ロアは海底面をなんと8000mも沈みこませていると言われており、沈み込んだ分も合わせると今度はマウナ・ロアが世界で一番高い山の座を奪ってしまいます。
マウナ・ケアとマウナ・ロアは共に「世界で一番高い山」と言うことができるのです。
番外編 世界で一番低い山―日和山(3m)
引用元:https://www.sankei.com/
世界で一番高い山というのも、例えば地表からの標高であったり、今回紹介したようなプロミネンスであったり、あるいは海底からの高さであったりと、高さの基準が変わることでランキングが多少変化します。
ですが逆に世界で一番低い山となると今度は山というものの定義から各国で微妙に変化する場合があるので、余計に難しくなってしまいます。
ただし実はギネスブックに載っている「世界で一番低い山」は、なんと日本にあるのです。
それが宮城県仙台市宮城野区にある日和山です。
その標高はわずか3mほどしかありません。
かつては6mほどあったと言うのですが、2011年3月11日に発生した東日本大震災で発生した津波によって山頂が削られ、その後国土地理院が再度行った調査によって、それまで日本一低いと考えられていた大阪府の天保山よりも低いことが明らかになったため、晴れて日本一低い山となりました。
ただし日和山や天保山は人の手によって作られた山であり、自然の山では徳島県にある弁天山が日本一低い山となるようです。
まとめ
今回はプロミネンスで見る、世界で最も高い山を紹介しました。
ただ高いというだけでなく、世界各地の特色がそれぞれの山にあることが分かったのではないでしょうか。
いずれも登山がそもそも不可能であったり、高額の資金や専門の機材、技術が必要であったりと訪れるのは容易ではありませんが、写真を見るだけで心躍るものがあります。
登山家ジョージ・マロリーの名言に「(どうして山を登るのか聞かれ)そこに山があるからだ」というものがありますが、確かにその理由の一端が理解できるような気がしてきます。
まずは地元の山からでも調べてみると、自分の知らなかった世界が見えてくるかもしれませんね。