日本には市区町村のほか、大学ひとつひとつにも図書館があり、気軽に情報へアクセスすることができます。
しかし学生の身分から卒業し、社会人になってしまうとよほど読書好きでない限りは、習慣的に図書館へ通う機会は失われてしまうことでしょう。
そのうえ現代ではインターネットが当たり前となり、検索するだけで情報を得ることが可能となっています。
ですがンターネットが普及した世の中でも、情報の媒体としての本の価値はまったく色あせることはありません。
それは数多くの本を収めた図書館であっても変わることはありません。
近年ではインターネットの技術などを取り入れて利便性が向上したこともあり、図書館の価値が再確認されることもあるでしょう。
今回は蔵書数から見る、世界最大の図書館について紹介していきます。
10位 スペイン国立図書館(約800万冊)
引用元:https://4travel.jp/
スペイン国立図書館はバルセロナのパセオ・デ・レコレトスにある国立図書館です。
1892年のクリストファー・コロンブスの新大陸到達400年を記念して、1896年に一般公開されました。
もとは1712年に当時のスペイン・ブルボン朝のフェリペ1世が宮殿公共図書館として開設したもので、1836年に所有を変更して国立図書館となります。
1966年にはレオナルド・ダ・ヴィンチの直筆のノートが発見されたことで話題となりました。
見つかったノートは184葉と157葉の2冊で、『マドリード手稿』と呼ばれています。
他にもミゲル・デ・セルバンテスの『ドン・キホーテ』第2版など歴史的な資料を数多く収蔵しており、2015年にはデジタル化したこれらの資料を保存するために、国営のRed.es社と合同で500万ユーロを出資しました。
9位 韓国国立中央図書館(約870万冊)
引用元:http://archive.wiredvision.co.jp/
韓国国立中央図書館はソウル市瑞草区盤浦洞にある国立図書館です。
図書館の沿革によれば1945年10月15日を始まりとしていますが、それ以前の朝鮮総督府時代の蔵書も継承する形で収蔵しています。
開設された当時はソウル市の中区小公洞にありましたが1974年に南山へ、1988年に現在の瑞草へ移転しました。
通常の書籍のほか古文書や北朝鮮で発行された文献なども収蔵しており、初期の金属活版技術で印刷された『十七史纂古今通要』が国宝に、15世紀の朝鮮語や朝鮮仏教の貴重な資料となる『釈譜詳節』や朝鮮の医学書である『東医宝鑑』、1885年締結の朝露通商条約や朝英通商条約の外交文書などが文化財に指定されています。
韓国国立図書館が特徴的なのはIT大国らしく、古文書などをデジタルで公開するだけでなく電子媒体で出版される書籍やメディア、紙媒体が別に存在するものの電子版であってもライブラリに収め、附属する「デジタル図書館」で公開していることです。
館内のパソコンを使い、電子書籍を自由に閲覧することができます。
韓国国立図書館では今後漫画、雑誌、論文(論文のデータベースは国会で実施する)を除く蔵書を全て電子化する予定で、目標は2020年中の達成としています。
8位 ルーマニア国立図書館(約890万冊)
引用元:http://oh39somuch.jugem.jp/
ルーマニアにはルーマニア国立図書館とルーマニア・アカデミー図書館、そしてブカレスト大学図書館という3つの大規模な図書館があります。
しかしルーマニア・アカデミー図書館は学術図書館としての性格が強く、ブカレスト大学図書館は共産党本部と近かったために1989年に発生した革命の影響を受けて一度焼失してしまっています。
そのためルーマニア国立図書館がルーマニアの中でも最大の収蔵数を誇ります。
ルーマニア国立図書館はルーマニア国内の全ての刊行物の収蔵を目的に1859年に創立され、1955年に現在の名称に変わります。
そして1986年には新館の建築が始まったのですが1989年の革命を受けて建設が中断され、2011年にようやく完成しました。
ルーマニアの共産党政権と革命はルーマニアの図書館事情にも大きな影を落としています。
共産党政権時代には全国で図書館が5つしか建設されないなど貧弱だったほか印刷物の価格が急騰したために図書館へのニーズが増加した一方1970年代にはルーマニアで唯一の図書館学校であるブカレスト大学図書館学部が廃止され、専門の職員が大きく数を減らしました。
加えて共産党時代のイデオロギーに忠実なトップダウン形式からの経営スタイルの脱却が求められるなど、共産党政権の負の遺産はルーマニア国立図書館にとって大きなものとなっています。
革命後は欧米諸国から専門家を派遣してもらうなど、図書館員養成のための継続的な教育が行われました。
7位 国立国会図書館(約970万冊)
引用元:http://www.ndl.go.jp/
日本の国立国会図書館は東京都千代田区永田町にある東京本館、京都府相良郡精華町にある関西館、および国会議事堂内にある国会分館と、28の支部図書館によって構成される、日本で唯一の国立図書館です。
日本国内で出版された全ての出版物を収蔵する法定納本図書館で、国会法第130条および国立国会図書館法第1条を根拠に設立されています。
国立国会図書館法に基づいた納本制度で本を集めており、2015年にはりすの書房という出版社が『亞書』という実態のない書籍を納本することで600万円もの代償金を受け取っていた事件が発覚し、返金を求める事件も発生しています。
国立国会図書館の始まりは明治23年(1890年)に開設された旧憲法下の帝国議会に属する衆議院と貴族院の図書館と、明治5年(1872年)に設立された帝国書籍館にあります。
太平洋戦争の終戦後、国会法と国会図書館法を制定すると共に「図書館運営委員会」を設置して図書館の設置を審議し、同時に昭和22年にアメリカから招いた図書館使節の助言を参考に現在の国立国会図書館法を制定(同法の制定に伴い国会図書館法は廃止)し、現在の国立国会図書館を開館することとなりました。
現在の東京本館庁舎は1961年に完成し、資料の増加に伴って増築して1986年に再び開館、1993年に全館が完成しました。
6位 フランス国立図書館(約1300万冊)
引用元:https://paris.navi.com/
フランス国立図書館はパリにある図書館で、旧館であるリシュリュー館、現在中心となる新館のフランソワ・ミッテラン館、アルセナル図書館、オペラ座図書館、ジャン・ヴィラール記念館、ブシ-=サン=ジョルジュ技術センター、ジョエル=ル=トゥール技術センターの7つの施設によって構成されています。
1480年にルイ11世が創設した王室図書館に起源を持ち、シャルル8世、ルイ12世の時代に蔵書を拡大、ルイ14世の時代にはインドや中国の書籍も収蔵しました。
フランス革命によって図書館が王立から国立へ変わり、図書館になかった多くの書物が焼かれる中で写本や図書の収蔵に努めたほか、東洋学者のシルヴェストル・ド・サシらの努力で9000点もの資料が収蔵されます。
第一次世界大戦後には不況から独立採算制となりますが、当時の他の図書館と協力することでなんとか乗り越え、1977年に再び国有化。
1980年、当時のフランソワ・ミッテラン大統領のパリ改造計画(グラン・プロジェ)によって新館が建造され、現在の姿に落ち着きます。
フランス国立図書館は自身の蔵書に加え、300万点以上のデジタル資料を自由に閲覧できる電子図書館「ガリカ」を運営しており、パソコンはもちろんスマートフォンでもiPhoneやAndroidのアプリを通して閲覧することが可能となっています。
5位 大英図書館(約1330万冊)
引用元:https://www.cafeglobe.com/
大英図書館は1753年に設立された大英博物館図書部をルーツとし、1972年に大英図書館法に基づいて国内にある国立図書館を合併する形で1973年に創設されました。
ロンドンのセント・パンクラスに本館を、ウエスト・ヨークシャーに分館を設け、蔵書こそ世界5位の水準ですが雑誌や新聞、パンフレット、地図などあらゆる資料を含めた網羅的なコレクションは世界最大級であり、数で言えば大英図書館に勝るのはアメリカのアメリカ議会図書館のみです。
イギリス人でなくても住所を英語で示すことのできるものがあればリーダー・パス(図書館会員証)を作ることができ、館内で自由に本を読むことができるため、観光名所としても名高い場所となっています。
また大英図書館は2013年にマイクロソフト社と提携して、100万点以上の資料を写真共有サービス「Flickr」に公開しています。
公開された資料はみなパブリックドメインとなっており、自由に保存・使用が可能です。
大英図書館はデジタル化への取り組みを積極的に行っており、将来的には足を運ばなくても知識を共有できるようにする予定です。
4位 ロシア国立図書館(約1780万冊)
引用元:https://tavitt.jp/
ロシアには「ロシア国立図書館」という名前の施設がモスクワとサンクトペテルブルクにありますが両者は全く別の施設であり、今回ランクインしているのはモスクワにある「ロシア国立図書館」です。
1862年に創立したときには「モスクワ公立博物館とルミャンツェフ博物館の付属の図書館」、あるいは単に「ルミャンツェフ図書館」と呼ばれていましたが、1924年にロシア革命の指導者であるウラジーミル・レーニンが亡くなった後は「ソヴィエト社会主義共和国連邦国立ヴェ・イ・レーニン図書館」、「レーニン図書館」と呼ばれていました。
そしてソビエト連邦崩壊後の1992年には現在のロシア国立図書館に改称しましたが、現在もソビエト連邦時代の名残からこの図書館は「レーニンカ」という愛称で呼ばれることがあります。
この図書館の書棚は並べれば全長275㎞以上(東京と滋賀県大津市まで)にもなり、資料は世界247の言語のものを揃えています。
パスポートさえあれば旅行者でも図書館カードを作って資料を閲覧でき、館内ツアーにも参加できます。
この図書館はモスクワでも歴史のある建物で、中でもパシュコフ・ドームという建物はモスクワの中で最も古い建物のひとつです。
3位 ドイツ国立図書館(約2700万冊)
引用元:http://languages.leipzig.travel/jp/
ドイツは他のヨーロッパの国家と違い、諸邦の併立する時代が長く、ドイツ帝国の成立まで統一国家としての歴史を有していませんでした。
そのためベルリンのプロイセン王立図書館(現在のベルリン州立図書館)やミュンヘンのヴィッテルスバッハ宮廷図書館(現在のバイエルン州立図書館)など歴史ある図書館は数多く存在しましたが、「ドイツ」全体で出版される書籍を納める図書館は存在していませんでした。
ドイツでの納本図書館は1912年にライプツィヒで創立されたドイツェ・ビュッヘライが最初となりました。
第二次世界大戦終戦後、ドイツェ・ビュッヘライが東ドイツ領となったため、西ドイツでは1946年にフランクフルト・アム・マイン市にドイツェ・ビブリオテークを創設します。
1970年にはドイツェ・ビブリオテークの付属として、ベルリンにドイツ音楽図書館を作りました。
そして1990年に東西ドイツが併合した際、ドイツェ・ビュッヘライとドイツェ・ビブリオテーク、ドイツ音楽図書館を統合して現在のドイツ国立図書館となりました。
現在ではライプツィヒ館(ドイツェ・ビュッヘライ)で旧東ドイツ地区、ベルリン、ノルトライン=ヴェストファーレン州、オーストリア、スイスの、フランクフルト館(ドイツェ・ビブリオテーク)でノルトライン=ヴェストファーレン州以外の旧西ドイツ地区の納本を担当するほかそれぞれで専門分野を分けて競合しないようにしています。
2位 中国国家図書館(約2800万冊)
引用元:https://yuchina.weebly.com/
中国国家図書館は北京市海淀区に南館と北館を、西城区に古籍館を置く、中国で唯一の国立図書館です。
1909年に当時の清王朝で作られた「京師図書館」をルーツとしており、1911年に清王朝が倒れた後は中華民国が管理をします。
京師図書館は移転を繰り返し、1928年には「国立北平図書館」へ改称します。
日中戦争時には重慶へ移転し、戦争終結後の1945年には再び北京へ移転、このとき蔵書の一部は後に台湾の国立台湾図書館へ送られます。
1950年には「国立北京図書館」、1951年には「北京図書館」へ改称し、1987年には海淀区に現在の北館と南館を建設し、それまで使っていた建物を古籍館としました。
そして1998年に現在の「国家図書館」(「中国国家図書館」は対外向けの呼称)へと改称します。
現在では国家図書館の略称として「国図(グオトゥー)」、または昔の名残で北京図書館の略称である「北図(ベイトゥー)」とも呼ばれるこの図書館は1995年からデジタル化が推進され、利用カードさえあれば電子閲覧室や中国国家デジタル図書館からデジタル化された資料を閲覧することができます。
1位 アメリカ議会図書館(約3100万冊)
引用元:https://4travel.jp/
アメリカ議会図書館はワシントンD.C.にある世界最大の蔵書数を誇る図書館です。
蔵書数だけでなく職員数や予算額などでも世界最大規模を誇っています。
日本の国立国会図書館のモデルとなった図書館でもあります。
1800年4月24日に合衆国議会の決議によってフィラデルフィアに成立し、首都をワシントンD.C.に移転したときに共に移転しています。
1814年、米英戦争の最中に起きたワシントン焼き打ちによって当初の蔵書はほとんど失われましたが、翌1815年にはトマス・ジェファーソンの個人図書館を購入して蔵書を増やし、1851年には再び焼失しましたが徐々にその蔵書数を増やしていきました。
アメリカ議会図書館の蔵書数がめざましく増加したのは1899年から1939年までのおよそ40年もの間館長を務めたハーバート・パトナムの代であり、1930年代には収蔵空間の確保のために「アダムス・ビル」を建造し、アメリカ最大、そして世界最大の図書館となりました。
現在では「アメリカン・メモリー」と呼ばれる、膨大な資料のデジタル化が進められており、他の図書館では真似できない膨大な量の資料が既にデジタル化されています。
更に英語以外の資料の積極的な翻訳も進めており、もし全ての外国語資料の翻訳に成功したならばその情報量は計り知れないものとなるでしょう。
番外編 アレクサンドリア図書館(約70万冊)
紀元前300年ごろに当時のエジプトを支配していたプトレマイオス朝のファラオプトレマイオス1世は、アレクサンドリアという年にアレクサンドリア図書館を建造しました。
アレクサンドリア図書館は世界中の文献を収集することを目的とした、古代世界最大の図書館で、多くの学者や詩人が在籍した研究施設「ムセイオン」に付属する形で作られました。
ゼノドトスやエラトステネス、アリスタルコスと言った著名な言語学者、文献学者を館長とし、アレクサンドリア図書館は積極的な収蔵を展開します。
その収蔵姿勢はアレクサンドリアに入港した船の積み荷にある書物を一旦全て没収し、収蔵する価値があると定めたものに対しては写本を大急ぎで作り、原本を返したと言われる「船舶版」の収蔵や、他の図書館から借りた蔵書を違約金を支払ってでも自分のものとしたことから、時に強引であったことが窺い知れます。
蔵書数は10万から70万冊ほどと呼ばれ、ヘレニズム文化における学術研究に大きな貢献をするだけではなく、聖書のギリシャ語への翻訳や古代ギリシャの文学作品の校訂など後の文化史的にも大きな影響を残しました。
しかしアレクサンドリア図書館はプトレマイオス朝末期のユリウス・カエサルの侵攻(紀元前48年から紀元前47年)によって焼け落ち、その後ローマ帝国によって再建されましたが、ローマ帝国の内戦や4世紀末以後のキリスト教徒による攻撃によって完全に破壊されてしまいました。
そしてアレクサンドリア図書館焼失から1500年経った2001年、エジプトはユネスコと協力し、アレクサンドリアに新アレクサンドリア図書館を建造しました。
引用元:http://www.abundantia-jp.com/
新アレクサンドリア図書館は蔵書40万冊からスタートし、将来的には800万冊を収蔵する予定だとしています。
斜めに切り取った円柱が地面に埋まり、辛うじて頂点のみが地上に見えるという個性的な外観をしており、蔵書の大半は地底部分に収蔵される予定とのことです。
図書館だけでなく博物館や、何とプールまで併設するなど、新アレクサンドリア図書館は文化センターとしての役割も果たしています。
まとめ
今回は書籍の収蔵数が世界最大の図書館について紹介しました。
大規模な図書館であればあるほど歴史も長く、そして歴史に甘えることなく資料のデジタル化など、利用者が快適に利用できるようなシステム作りを進めています。
インターネットが普及した今、図書館の有する膨大な情報にも端末ひとつで手軽にアクセスができるようになっています。
自分の興味がある分野でも、あるいはそうでなくとも、インターネットの検索機能ではなく図書館から情報を探してみれば、思わぬ出会いや新しい興奮を見つけることができるかもしれませんね。