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世界一長いトンネルTOP15

日本は知られざる「トンネル大国」のひとつです。

山がちな国土で交通網を整備するには山を掘削してトンネルを開通させなければならないため、国土には大小様々なトンネルがあります。

このことからトンネルの掘削技術が高度に発展しており、日本の工事はもちろん世界中のトンネル工事に日本の企業が参加しています。

また交通に用いるもののほかにも上下水道など、トンネルの用途は幅広いです。

様々な目的から、古来から多くの人々がトンネルを掘ってきました。

今回は世界最長のトンネルについて紹介します。

知られざるトンネルの世界を覗いてみましょう。

 

15位:英仏海峡トンネル(約50㎞)

引用元:https://toyokeizai.net/

英仏海峡トンネルは英仏海峡に作られた、イギリスのフォークストンとフランスのカレーをつなぐトンネルです。

ユーロスターや貨物列車、車を積んで走るカートレインが運行する鉄道用トンネル2本と保守点検用のトンネル1本の、計3本のトンネルで構成されています。

鉄道用のトンネルとしては世界で3番目に長く、海底部の総距離37.9㎞は世界一長いです。

1986年に着工を開始し、1994年に開通しました。

イギリスやフランスの掘削機のほか日本の川崎重工業製の掘削機が用いられたほか、トンネルのシールド化に王子ゴム化成のゴム資材が用いられるなど完成には日本の技術が大いに携わっています。

英仏海峡は昔から海難事故が多く、事故を防ぐために海底トンネルでつなぐという考えは1802年に鉱山技師のアルベール・マチューがナポレオン1世に提案して以来26度も計画立案されましたが、開通には至りませんでした。

当時の工事の跡は今も残されています。

 

14位:ジェリフカ水路トンネル(約51㎞)

引用元:https://vodnistrazci.cz/

ジェリフカ水路トンネルは、チェコ共和国のジェリフカ川からイェスニチェ貯水池へ水を運ぶために掘削された水路です。

1967年に掘削を始め、1972年に完成しました。

ジェリフカ川がトロジャク山から流れてくることから、高低差を活かして貯水池に注ぐように作られたため技術的な工夫が難しく、計画上のルートにある障害物はすべて撤去されています。

ジェリフカ川はイェスニチェ貯水池のほか、セドリチェ貯水池、シュヴィホフ貯水池など多くの貯水池に注いでいます。

特にシュヴィホフ貯水池は首都のプラハを始め、中央ボヘミア地方に広く水を供給しています。

 

13位:青函トンネル(約53㎞)

引用元:https://toyokeizai.net/

青函トンネルは、本州の青森県東津軽郡今別町と北海道上磯郡知内町を結ぶ鉄道トンネルです。

交通機関用のトンネルとしては日本一、東アジア一の長さを誇り、全長から「ルート539」という愛称がついています。

また世界的に見ても海底部の長さは英仏海峡トンネルに次いで2位、交通機関用トンネルとしても世界で2番目に長いトンネルです。

津軽海峡はかつて海難事故が多い海域であり、1954年には日本海難史上最多の1155名もの犠牲者を出した「洞爺丸事故」が起きています。

そのため太平洋戦争後に津軽海峡を海底トンネルでつなぐ動きが起き、1964年から調査坑の掘削を開始、1971年から本格的な掘削を開始しています。

そして1988年に開通しました。

現在ではJR北海道が鉄道敷設部分を管理し、北海道新幹線を始め四季島や貨物列車などが運行しています。

開通後も最深部で水深240mもの地点で保守作業をせざるを得ないなど過酷な環境なため、たびたび鉄道のアクシデントや送電トラブルなどが起きています。

 

12位:北京地下鉄10号線(約57㎞)

引用元:http://www.2427junction.com/

中国は世界で最多となる13億もの人口を有しています。

それだけに鉄道網は整備されており、長いトンネルも掘られています。

北京地下鉄10号線は北京市に19もある地下鉄路線で、北京市の地下鉄で最長であるほか、全線地下の環状路線としては世界で最長のものです。

北京地下鉄は世界で最大の輸送量を誇るうえ、1日の平均利用者数も東京の地下鉄(934万人)に肉薄する、928万人を数えます。

北京市で地下鉄が敷設されたのは、中国でも最初となる1969年のことです。

しかし現在に至るまでに拡大されたのは、2008年の北京オリンピックがきっかけです。

それ以前は4つしか路線がなかったものが北京オリンピックの開催や、その後も道路渋滞や既存路線の混雑を解消するために急速に整備され始めました。

このうち10号線は2号線の外側を走るように建設され、2008年に巴溝駅-勁松駅間が、2013年に全通しています。

北京市では今後も地下鉄路線の延長を計画しており、2020年中には全路線の総延長が1000㎞を超える予定です。

 

11位:ゴッタルドベーストンネル(約57㎞)

引用元:https://www.swissinfo.ch/

ゴッタルドベーストンネルはスイスのゴッタルド峠にあるトンネルで、ウーリ州のエルストフェルトとティチーノ州ボディオを結んでいます。

全長約57㎞というのは、鉄道用のトンネルとしては世界で最も長いです。

アルプス山脈には以前からいくつもトンネルが開通していましたが、スイスでは既存のものよりも数百メートル深いところに新たにトンネルを掘ることでアルプス山脈を南北に貫通する「アルプトランジット計画」が立案され、いくつもの基底トンネル(ベーストンネル)が建設されています。

ゴッタルドベーストンネルはそのひとつです。

1996年に建設が開始され、17年もの歳月をかけ、2016年に完成しました。

ゴッタルド峠は以前からアルプス山脈を縦断し、ヨーロッパを南北の貫通させる重要な交通路のひとつです。

そのため交通量も多く、容量の拡大は喫緊の課題でした。

アルプトランジット計画の主要なトンネルはゴッタルドベーストンネルとレッチュベルクベーストンネルの2つです。

レッチュベルクベーストンネルは全長34.6m、陸上のトンネルとしては世界で2番目に長いトンネルです。

 

10位:エミソール・オリエンテトンネル(約62㎞)

引用元:https://regeneracion.mx/

エミソール・オリエンテトンネルは「東部排水トンネル」などとも言われる、メキシコの首都メキシコシティにある下水道トンネルです。

以前メキシコシティは下水道の整備の遅れや下水を適切に運用するノウハウの欠如によって、たびたび下水の逆流などを引き起こしていました。

そこで2008年から2014年にかけて建設されました。

ヒダルゴ州のアトノニルコ廃水処理プラントからメキシコシティに伸び、途中でエミソール・セントラルトンネルに接続します。

 

9位:広州地下鉄3号線(約65㎞)

引用元:http://www.2427junction.com/

広州地下鉄3号線は中国の広州市に11ある地下鉄路線のひとつです。

1997年に建設計画が持ち上がり、2003年に現在のルートへ修正され、順次開業、2010年に全線開通し、その後も延伸しています。

現在の総延長である約65㎞は地下鉄路線として世界延長であるほか、鉄道用のトンネルと考えても世界で最も長いです。

またこの路線の営業最高速度は中国の地下路線としては最速である120㎞にまで達します。

 

8位:ニーラム・ジェラム水力発電トンネル(約68㎞)

引用元:https://dailytimes.com.pk/

ニーラム・ジェラム水力発電トンネルは、パキスタンのムザファラバードにあるニーラム・ジェラム水力発電所の一部として建設された用水路です。

ニーラム・ジェラム水力発電所はニーラム川とジェラム川から水を引いて発電をする水力発電所で、計画当初の推定で年間550億ルピーもの利益を生むと言われていました。

1989年に設計されて2002年に着工、2005年のパキスタン地震によってより耐震性を上げるために再設計がなされ、2018年に開業しました。

建設にあたっては、ムザファラバードの住人がニーラム川の水位が下がるのではないかという懸念を表明しましたが現在はつつがなく運用されています。

また2007年、インドはニーラム川(インドではキシャンガンガ川)の上流に水力発電所を作るキシャンガンガプロジェクトに基づいて水力発電所の建設を開始し、この計画がニーラム・ジェラム水力発電所に影響を及ぼすためインドとパキスタンが法的に争いました。

結局インドが優先権を獲得し、ニーラム・ジェラム水力発電所は発電量が低下しています。

 

7位:ボルメン水路トンネル(約82㎞)

引用元:https://alchetron.com/

1960年代、スウェーデンのスカニア州は人口が急速に増加しました。

周辺の水資源はカルシウム濃度が高く飲用に適さないため、新たに水路を開き飲用水を引っ張ってくる必要がありました。

そこでボルメン湖からスカニア州に水を引くために、1975年にボルメン水路トンネルの建設が始まります。

建設は順調に行くと思われましたが、水路周辺の地質が想定よりも悪かったため、開通は1987年にまでずれ込みました。

 

6位:オレンジフィッシュトンネル(約82.8㎞)

引用元:https://alchetron.com/

南アフリカの東ケープ州は、長く深刻な水不足に悩まされていました。

そもそもこの地域は降水量が少なく、貯水用にいくつもダムを作っていたのですが、泥が堆積したことで水位が下がっていたのです。

そこでこの状況を打破するために近くを流れるオレンジ川に新しくダムを建設し、更にオレンジ川とフィッシュ川をつないでダムに水を注ぐための水路である「オレンジフィッシュトンネル」を建設するプロジェクトが計画されました。

この大規模なプロジェクトは1966年に開始され、1975年にトンネルが開通しました。

オレンジフィッシュトンネルは南半球で最も長いトンネルとなりました。

トンネルからもたらされる水は灌漑用水や家庭用水、工業用水など幅広い用途に利用されています。

更にトンネルの沿線には「オヴィストン」、「ミッドシャフト」、「ティーバス」という都市が建設され、トンネルの管理事務所などが置かれました。

 

5位:大伙房輸水工程(約85㎞)

引用元:http://en.crec4.com/

大伙房輸水工程は中国の南部から北部へ水を送る「南北水移動プロジェクト」の一環として遼寧省に建設された水路トンネルです。

遼寧省の南部は急速な発展によって水資源の不足が大きな問題となっており、経済開発地域では中国国内平均の1/4しか水が供給されていませんでした。

そこで大夥房水庫という貯水池から水を引くために、大伙房輸水工程が建設されました。

2009年に完成し、瀋陽や遼陽、大連など主要都市に水を供給しています。

 

4位:ガダラ水道橋(約94㎞)

引用元:http://www.jordantimes.com/

ガダラ水道橋は、水道橋と名前のあるように地面を掘削して作ったトンネルではなく、石を組むなどして作ったローマ水道の一部です。

かつての古代ローマの一部であったアドラハ(現在のシリア、デラ)に建設されました。

ローマ水道は非常に精巧に作られており、作られてから2000年以上経った今も、ヴィルゴ水道など一部は未だに上水道として機能しています。

ただガダラ水道橋は現在機能していません。

周囲にはガダラ水道橋を始め、3つの水路が作られていました。

19世紀、考古学者のゴットリーブ・シューマッハは当時のアドラハは地底都市であり、ガダラ水道橋はその一部であるという学説を主張しましたが、現在アドラハが地底都市であるという証拠は見つかっていません。

 

3位:パイヤンネトンネル(約120㎞)

引用元:https://www.pinterest.jp/

パイヤンネトンネルは、フィンランドにある水路トンネルです。

フィンランドで2番目に大きい湖であるバイヤンネ湖から首都のヘルシンキをはじめとするヘルシンキ都市圏に住む、100万人を超える住民に生活用水を提供しています。

1960年代、ヘルシンキ都市圏は水不足が問題となっており、都市圏の自治体が主体となって1972年にパイヤンネトンネルの建設を開始し、1982年に完成させました。

パイヤンネ地方の南端部のアシッカランセラというところから始まり、ヘルシンキ都市圏の近くにあるシルヴォラ貯水池に流れ込みます。

 

2位:デラウェア導水路(約137㎞)

引用元:https://tunnelingonline.com/

デラウェア導水路はロンダウト貯水池、キャノンズビル貯水池、ネバーシンク貯水池、ぺパクトン貯水池、ハドソン川など、ニュースの水供給システムから水を引き、ニューヨーク市東部のヨンカーズ貯水池に注ぐために建造された導水路です。

ニューヨーク市では1日に13億ガロン(490万㎥)もの水が使われていますが、このうちおよそ半数がデラウェア導水路で供給されています。

1939年に建設が開始され、1945年に完成しました。

1970年代以後、導水路には大きな亀裂が走り、1日に3600万ガロン(14万㎥)もの漏水が発生しており、周辺地域は地面から漏水が染み出てくることで洪水や湿気による環境の悪化などの問題を起きていました。

導水路を監視するニューヨーク市観光保護局はこの亀裂への対策に、亀裂をふさぐのではなく亀裂の周辺に新たな水路を作り、漏れた分が迂回して別の水路へ合流するようにする工事を計画しました。

この工事は2013年に始まり、2021年に完了予定です。

 

1位:キャッツキル導水路(約147㎞)

引用元:https://www.nydailynews.com/

キャッツキル導水路は、デラウェア導水路と並んでニューヨーク市に生活用水を供給する主要な水路トンネルです。

デラウェア導水路は全体の半数、キャッツキル導水路は40%以上を担っているため、この2つの水路でニューヨーク市の生活用水のおよそ9割を占めている計算になります。

アショカン貯水池、ケンシコ貯水池、ヒルビュー貯水池の3つの貯水池からニューヨーク市に水を注いでいます。

キャッツキル導水路の建設は1907年に始まり、1916年に完成しています。

キャッツキル導水路完成以前のニューヨークは、都市規模の急成長に伴って水不足に悩まされていました。

当時のニューヨーク市民は公共の井戸や雨水タンクに生活用水を依存していましたが、絶対的に量が足りなかったうえ、たびたび汚水や動物の死骸などによって汚染されました。

1832年にはニューヨーク市でコレラが流行して3500人が死亡、1776年と1835年には大火が発生して都市の大部分が焼失しています。

このような事態を受け、水源を確保する手段はいくつか講じられましたが、いずれも不首尾に終わっていたため、キャッツキル導水路の完成は大いに歓迎されました。

そのため完成した当時、ニューヨーク市庁舎では大々的なセレモニーが行われました。

ただ皮肉なことに、このセレモニーは当時水不足のニューヨーク市民が願ってやまない雨によって中断を余儀なくされたと言われています。

 

まとめ

今回は世界一長いトンネルについて紹介しました。

古来より人は、山や大地に穴を掘ることで水や交通、あらゆるものを通してきました。

トンネルを通して生活や交通に不向きな場所、障害のある場所を開拓して、生活領域を広げています。

距離の長大なトンネル、過酷な環境にあるトンネルは、それだけ現地の人々が強い意志を持って工事に臨んだ証とも言えるかもしれません。

今回紹介したものはいずれも、大いなる困難を超えて作られたものです。

訪れる機会があれば、当時の人々の苦労に思いを馳せてみてもいいでしょう。



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