地球から最も近い惑星である「火星」。
火星は様々な映画・本などの創作物の中でも「火星探査、火星移住、火星人」など度々登場することがある私達にはとても身近な惑星の一つです。
過去半世紀にわたってアメリカ、ロシア、日本など世界中の国々が火星に多数の無人探査機を送っており、現在では、火星に関する様々な事がわかってきています。
しかし、人類がその地に足を踏み入れるには至っておらず、未だ火星には多くの謎が存在していることもまた事実です。
今回は広い宇宙の中でもとても身近な惑星である火星の謎とあなたの知らない火星の真実をご紹介しましょう。
火星の基本情報
先ずは最初に火星の基本的な情報です。
質量:6.4191×1023kg(地球の1/10程度)
表面積:1.44×108km2(地球の1/4程度)
重力:3.71m/s2(地球の約40%)
1日の長さ:24時間39分35.244秒
1年の長さ:686.98日
火星は地球の半分くらいの大きさで、質量や重力も地球より小さいんです。
地球よりも少し太陽から遠い所を公転しているので1年の長さは地球の2倍ですが、自転速度は地球とほぼ同じなので1日の長さは39分しか違いがありません。
火星までの距離は?
火星は太陽系の太陽に近い方から4番目の惑星で、地球の1つ外側を公転している惑星です。
地球と火星の距離は最も近づいた時で平均約8000万km(約4光分)です。しかし、火星の公転軌道は楕円形のため最接近時の距離は約5600万km~約1億kmと変化します。
ちなみに2003年8月27日に火星は過去60,000年で最も近く、55,758,006 kmまで地球に接近しました。
火星の大気とメタンの謎
火星は重力が地球と比べて弱い為、大気は希薄で火星表面の大気圧は約750pa(地球の0.1%以下)しかありません。大気の成分は二酸化炭素95%、窒素3%、アルゴン1.6%ですが、少しづつ宇宙に流出されつづけており、長い目で見ると大気の成分は変化する可能性があります。
元々大昔の火星は地球と同じように大気が存在していたそうですが、なんと激しい太陽風によって吹き飛ばされてしまった可能性があるようです。
また、2003年に火星の大気中にメタンが存在することが発見されました。火山性ガスであるメタンの存在は、火星にガスの発生源である火山活動や彗星の衝突、あるいはメタン菌のような微生物の形で生命が存在するなどの可能性が考えられていますが現時点で発生源は確認されておりません。
火星には季節がある
火星は地球と同じように太陽に対して自転軸を傾けたまま公転しているため季節が存在します。
平均気温は-55℃で、夏の最高気温は27℃、冬の最低気温は-133℃にもなります。
冬には極地方で夜が数ヶ月間続き、大気全体の25%もが凝固して厚さ数メートルに達する二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層をつくります。極地方の冬が終わるとドライアイスは昇華して、極地方には400km/hに達する強風が発生します。これらの季節活動によって大量の塵や水蒸気が運ばれ、地球と似た霜や大規模な巻雲が生じます。
火星の表面
火星の地形は南北で大きく2通りに分かれています。北半球は溶岩流によって平らにならされた平原が広がっており、南半球は太古の隕石衝突による窪地やクレーターが存在するため凸凹な地形をしています。
基本的に地球から明るく見える火星は赤い酸化鉄を多く含む塵と砂に覆われた北半球です。
南半球には、太陽系最大の山であり標高27,000メートルもあるオリンポス山(エベレスト山脈は標高8848 m)や、全長4,000km、深さ7kmに達する太陽系最大の峡谷であるマリネリス峡谷、さらに火星最大のクレーターであるヘラス盆地(直径2300km)などが存在しており、地球からは暗く影になって見えます。
火星の水の謎
2005年に欧州宇宙機関 (ESA) のマーズ・エクスプレス探査機が火星の北極域で巨大な氷の湖を発見しました。この氷の湖は直径35km、深さ約2kmで、霜が凝結してクレーターの底に広がったものであることがわかっています。星の大気は希薄で、火星表面のほとんどの地域では液体の水はすぐに蒸発してしまうため、火星に存在する水のほとんどは氷としてしか存在することができません。
しかし、これまでの探査によって古代の火星には多くの水が液体で存在していたことが分かっています。
40億年前の火星には深さ1600m以上の海があり、その表面のかなりの部分を覆っていたことが、2015年3月の科学誌『Science』に報告された研究結果で明らかになっています。
「火星の水は一体どこに行ってしまったのか?」この疑問に終止符を打つかもしれないオックスフォード大の研究結果が2017年12月に発表されました。
その論文によると水の多くが火星の岩石の中に閉じ込められている可能性があるというのです。
今までは、強力な太陽風で宇宙空間に吹き飛ばされ、一部が地下の氷に取り込まれたと結論づけられていましたが、この説では消失した水の全量を説明することが不可能でした。
残りの水の行方を解明するために詳細な検証を行った結果、「火星の玄武岩が地球のものと比べて25%多くの水を保持できることが分かり、火星の表面の水を火星内部に取り込んだことが明らかになった」としています。
玄武岩の中に取り込まれた水を戻すこともできるのかと思いましたが、オックスフォード大のジョン・ウェイドによると「水は鉱物内で物理的に結合している」そうで、水に戻すには融解させるしかないようです。
2018年7月の発表によると、イタリアの研究チームなどが火星の南極付近を観測した結果、分厚い氷の層の下に、幅20kmにわたって液体の水が存在する可能性が高いことが判明したという事です。
火星に水の存在が確認されれば、生命体が存在する可能性が非常に高くなり、将来の火星探査にも影響するということです。
火星の衛星
火星には「フォボス」と「ダイモス」という2つの衛星があります。
2つの衛星は、いずれも重力に捕捉された小惑星だと考えられており、1877年にアメリカの天文学者アサフ・ホールによって発見され、ギリシア神話に登場する軍神アレースの息子、ポボスとデイモスにちなんで名づけられました。
火星から見る衛星フォボスとダイモスの運動は、地球の衛星である月の運動とは全く違い、フォボスは西から上って東へ沈み、11時間後に再び上ります。また、ダイモスの公転周期は約30時間で東から上りますが、公転が火星の自転から遅れるために西に沈むまでには2.7日もかかります。そして平均5.4日後に再び上ります。
フォボスの火星からの距離は約6000kmと、太陽系の中で最も惑星の近くを周回する衛星であり、将来的には火星の潮汐力によって破壊されてしまうと考えられています。また、火星にある多くのクレーターは、過去にフォボスのような小さな衛星が複数あったことを示しています。
火星探査の歴史
火星探査には、1960年代以降、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本等によって数多くの探査機が打ち上げられています。
しかし、火星を目指した探査機のうち、約2/3がミッション完了前に、またはミッション開始直後に原因不明の失敗を起こしたり、突如交信が途絶えたりしており、研究者の中には冗談半分に「地球-火星間のバミューダトライアングル」「火星の呪い」などと言う人もいるそうです。
それでも成功しているミッションも多く、火星に着陸し初めて本格的な探査に成功したバイキング1号を始め、NASAの無人探査機グローバル・サーベイヤーは峡谷や土石流の写真を撮影し、液体の水が流れる水源が火星に存在する可能性があることを発見しました。
また、2003年にNASAが打ち上げたスピリット (MER-A)、オポチュニティ (MER-B) という2機の無人火星探査車(ローバー)は、当初90日間の探査ミッションを計画していましたが、オポチュニティは2018年1月24日時点で火星到着から実に14年もの歳月が経過しているにもかかわらず、今もなお探査を続けており、非常に多くの調査データを地球へ送り続けています。スピリットも2010年3月に通信が途絶するまで6年間にわたり探査を実施していました。
有人火星探査について
ロケット工学の第一人者であるヴェルナー・フォン・ブラウンをはじめ、これまで多くの人々が有人探査を進めるべきと考えており、実際にアメリカ、ロシア、ESAは2025年~2030年頃を目標に有人火星探査を計画しています。
しかし、現時点では技術的・経済的に課題も多く、特に「期間が最低でも1年強から3年弱という長期ミッション」になることと、それに伴い「輸送物資の量が膨大」であることが挙げられます。
その為、火星の大気からロケット燃料の無人製造工場を先行して送り込み、有人宇宙船は片道分の燃料で火星に向かい、探査後は無人工場で燃料を補給して帰還するというプラン「マーズ・ダイレクト」なども提案されています。
火星への移住計画について
火星への移住計画は、実際に移住可能かどうかは別としてデタラメな憶測からまじめな研究まで世界中で何度も議論されてきました。
火星は地球から最も簡単に向かうことが出来る惑星であり、化学燃料ロケットでは数ヶ月を要する火星への旅も、比推力可変型プラズマ推進機(VASIMR)や原子力ロケットなどが実現すれば、2週間程度まで短縮することが出来るため、現実的な時間で到達することが可能です。
さらに火星は1日の長さが地球に非常に近かったり、大気があったりと、地球との類似点がとても多いことも移住が議論される要因の一つになっています。
ともあれ、実際に移住するためには非常に多くの問題があるため現時点で実現可能と言える状況ではありません。
生命の謎
火星人の始まり
火星に生命がいる、もしくは過去にいたかどうかは現時点でも謎に包まれています。
そもそもなぜ火星に生命がいるということが世間に広まったのでしょうか?
火星は17世紀頃から観測されるようになり、19世紀中盤までには地球との多くの類似点が発見されていた事から、火星の表面の赤い所は陸地で、黒い所は水であるという推測が一般的になりました。
1854年、ケンブリッジ大学のウィリアム・ハーシェルは、火星には海と陸があり、生命が存在するという仮説を立て脚光を集めました。また、1895年にアメリカの天文学者パーシヴァル・ローウェルは著書『火星(Mars)』を、その後『火星と運河(Mars and its Canals)』を出版しました。それを元に、イギリスの作家ハーバート・ジョージ・ウェルズは、1897年に小説『宇宙戦争(The War of the Worlds)』を執筆し、惑星の乾燥から避難してきた火星人が地球を侵略する様子を描きました。
それら様々な創作物を通して火星に何らかの生命が存在するということは、長い年月をかけ世界の人々に自然に受け入れられていったようです。
火星からの隕石
アメリカ航空宇宙局(NASA)は少なくとも57個の火星隕石のカタログを所持しており、その中の少なくとも3個に火星の生命の痕跡が認められ、火星に生命がいるという推測が大きくなりました。
1911年6月28日にエジプトのアレキサンドリアに落下したナクラ隕石は、大きさや形が地球のナノバクテリアの化石と一致する水変性の跡を見つけたと発表しています。
火星のメタン
2003年に火星の大気からメタンが発見されました。火星は1年当たり270トンのメタンを生産していると見積もられていますが、供給源になりそうな活動中の火山、熱水噴出孔、ホットスポット等は見られず、メタン菌のような微生物による供給の可能性が考えられ、もしそうだとすると、水が液体で存在できるほどの高い温度がある地中深くに生息している可能性が高いとされています。
火星の文明とピラミッドの謎
上:バイキングが撮影したピラミッドと思われる建造物 下:エジプトのピラミッド
1976年にNASAの火星探査機バイキング1号が撮影した写真にはエジプトの三大ピラミッドのように等間隔で並ぶピラミッドが映っていました。1999年にはマーズ・グローバル・サーベイヤーが高さ50メートル、底辺も一辺が50メートル均一という火星のピラミッド群とされる写真を撮影しています。
また、ピラミッドの他にも人工物と思われる人面岩やモノリス(人工的に配置された石)などが確認されています。オカルト的ではありますが、これらはすでに滅んでしまった火星人の古代文明が作ったものではないかという説もあるそうです。
火星のピラミッド群
火星の人面岩
まとめ
いかがでしたか?
火星にはまだまだ多くの謎が残っているようです。
とはいえ他の多くの惑星に比べてかなり身近な距離にある火星は、そう遠くない未来に人類が到達できる日が来るかもしれません。また、将来的には「火星に引っ越しする?」なんて考える日がやってくるのかもしれませんね^^