日本で暮らしていると分からなくなることがありますが、日本の国土面積は世界的に見ても小さくはありません。
世界244か国・地域の中で日本は62番目に大きな国であり、ドイツやノルウェー、ポーランドよりも国土面積が広いのです。
世界で一番大きな国は、世界地図を見れば明らかですがロシアで、世界の陸地の実に11.5%を占めています。
しかし逆に世界で1番小さな国はご存知ですか?
1番小さな国は知っていても、2番目、3番目はどうでしょうか。
今回は世界最小の10の国と、領土を持たない国、公には認められていない自称国家についてご紹介します。
第10位 セーシェル(455㎢)
セーシェルはアフリカ大陸から1300km離れたインド洋に浮かぶ島国で、115の島々によって構成されています。
「インド洋の真珠」とうたわれるほどの美しい景色を持つことから観光業が盛んに行われ、イギリス王室のウィリアム王子夫妻やハリウッドスターのブラッド・ピッドなど世界中の名だたるセレブがリゾートに訪れます。
またセーシェルで2番目に大きな島であるプララン島にある「ヴァレ・ド・メ自然保護区」は固有種も多く、ユネスコの自然遺産にも選ばれるなど、セーシェルは景観の美しさのほか学術的な価値も見出されています。
旧宗主国であったフランスやイギリス、さらにマダガスカルやインドなどの文化が混ざり合った、「クレオール文化」と呼ばれる独自の文化が育まれ、文化学的に関心を抱かれる国でもあります。
第9位 モルディブ(300㎢)
モルディブはインド洋に浮かぶ島国で、インドやスリランカの南西に位置しています。
約1200の島から構成される島国で、風光明媚な景色からリゾート地として日本でも非常に有名です。
毎年世界中からモルディブの人口を超える数の観光客が訪れ、モルディブでは就業人口のおよそ14%が観光業に従事しています。
モルディブでは1200以上の島がそれぞれ「空港の島」などと言うように特定の目的に特化しており、「リゾートの島」は85から100ほど存在しています。
またモルディブも珊瑚礁で構成された島国であるため海抜が低く、地球温暖化や珊瑚礁の死滅による国土の沈没が危惧されています。
第8位 セントクリストファー・ネイビス(261㎢)
セントクリストファー・ネイビスはカリブ海にある西インド諸島の一部、小アンティル諸島内のリーワード諸島にある島国です。
セントクリストファー島(セントキッツ島)とネイビス島という二つの島から構成されています。
セントクリストファー島は島を発見したクリストファー・コロンブスが、自身の名前の由来である聖クリストフォルスから名付けました。
セントクリストファー・ネイビスはセントキッツ・ネイビスとも表記し、そのいずれも正式名称として定められています。
南北アメリカの中で最小の国であり、独立も最も遅い国でもあります。
かつては砂糖の生産を中心とした農業国でしたが、現在では電気機械の組み立てが主要産業として確立されています。
またクリストファー・ネイビスは国内の不動産を購入することで様々な条件を課されることなく市民権を取得できるという一風変わった国でもあります。
この国は所得税や相続税のないタックスヘイブンであるほか、この国のパスポートで世界124か国にビザなしで渡航可能なため一定の需要はあるようです。
第7位 マーシャル諸島(181㎢)
マーシャル諸島は太平洋南西部に浮かぶ小さな島国です。
1225以上の島と環礁から成り立っており、特に首都マジュロのあるマジュロ環礁は57の島が100キロにわたってまるで首飾りのように環状に繋がっていることから「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」と呼ばれています。
主な輸出品はコプラ(ココナツの胚乳を乾燥させたもの)や魚介類ですが、便宜置籍船(租税回避などを目的に便宜上船籍を別の国に置いた船)の誘致を進めるタックスヘイブンのひとつであり、利益を上げています。
マーシャル諸島の公用語はマーシャル語と英語です。
しかし第一次世界大戦後から太平洋戦争でアメリカに占領されるまでの25年間にわたり日本の委任統治領であったため高齢者を中心に日本語を理解することができる人がいたり、現地の言葉のなかに日本語の語彙が使われていたりします。
第6位 リヒテンシュタイン(160㎢)
リヒテンシュタインはスイスとオーストリアの間に位置する国です。
1719年に現在のリヒテンシュタイン領に当たる土地をリヒテンシュタイン家が買収し、当時の神聖ローマ皇帝がリヒテンシュタイン家領と定めたことで建国されました。
建国以来リヒテンシュタイン家の当主が国家元首を務めてきた立憲君主制国家ですが、元首の権限が他の立憲君主制国家よりも大きいため、「ヨーロッパ最後の絶対君主制」と呼ばれることがあります。
リヒテンシュタインは世界で6番目に小さな国ですが非常に豊かで、国民は直線税を納める必要がなく、国内GDPはEU加盟国の中でも上位に位置しています。
これは国家元首を務めるリヒテンシュタイン家が個人資産としては世界一となる莫大な資産家であり、私費を国家運営に使っていること、さらにタックスヘイブンとなって多額の法人税を受け取っているためです。
またリヒテンシュタインは長く政治的に安定しない土地へ国を構えていたため、幾度となく戦争に巻き込まれました。
特にナチスがドイツの政権を握った際には、リヒテンシュタイン国内でもナチズムが台頭して政権与党を奪う勢いを見せました。
しかし時のリヒテンシュタイン家当主が大権を行使し、選挙を無期限延期することで政治勢力を維持し、中立を堅持することができました。
現在では非武装の永世中立国として、防衛は隣国のスイスへ完全に依存しています。
第5位 サンマリノ(61㎢)
サンマリノはイタリア半島の中北部にあり、四方をイタリアに囲まれた国です。
正式名称はイタリア語で「Serenissima Repubblica di San Marino(セレニッスィマ・レプッブリカ・ディ・サンマリーノ)」と言い、普段は略称の「San Marino(サンマリーノ)」と呼ばれています。
「Serenissima」とは「最も清らかな」という意味で、正式名称を訳すと「最も清らかなサンマリノ共和国」ということになります。
国土の中央に標高749mのティターノ山という岩山があり、首都のサンマリノ市はティターノ山の頂上にあります。
サンマリノ市と一部都市、そしてティターノ山はユネスコの文化遺産に選ばれています。
この国は世界最古の共和国であり、13世紀には既に共和制の都市国家が築かれていました。
サンマリノの主な産業は観光業ですが、法人税が安く、特に消費税を課していないことからショッピングやサンマリノへの企業進出が非常に盛んに行われています。
第4位 ツバル(26㎢)
引用元:https://ameblo.jp/satomis-piyo/entry-12353625804.html
ツバルは太平洋南西部にある島国で、人口が世界で2番目に少ない国です。
フナフティ、ナヌメア、ナヌマンガ、ニウタオ、ヌイ、ニウラキタ、ヌクフェタウ、ヌクラエラエ、ヴァイップという9つの島(環礁)から国土が形成されています。
独立当時ニウラキタ島は無人島で、「8つの島の人たちで団結して国を作る」という意味を込め現地語の「tu(立ち上がる)」+「valu(8つ)」からツバルという国名をつけました。
産業らしい産業は特になく、切手やコインの発行、ナウルへ出稼ぎへ行った労働者の送金などが主な財源となる貧しいですが、国一面が珊瑚礁のとても美しい国です。
しかし国土全てが珊瑚礁のため海抜が最高でも4.5mと非常に低く、地球温暖化による海面上昇や珊瑚の劣化により国土が沈んでしまう危機を迎えています。
他にも近代建築や飛行場などのインフラ整備のために珊瑚礁を削ったことで地盤沈下の可能性が出てきているほか、観光客が訪れたことで不法投棄が増えるなど、環境問題に翻弄されています。
第3位 ナウル(21㎢)
ナウルは太平洋の南西部に浮かぶ島国で、国土面積も小さければ人口も世界で4番目に少ないです。
20世紀以前のナウルは、他の太平洋の島々と同じように漁業と農業を中心に生活を営んでいたのですが、20世紀に列強が進出して以来その生活は一変しました。
ナウルのあるナウル島は珊瑚礁に海鳥であるアホウドリの糞が堆積してできた島なのですが、アホウドリの糞が珊瑚礁と共に長い間に変化を起こし、リン鉱石と呼ばれる鉱山資源に変化していたのです。
リン鉱石は化学肥料を作るために欠かせない鉱石ですが、非常に安価なため利益を生むために一か所の鉱床から集中的に採掘します。
そのためナウルでは20世紀の半ばにかけて集中的にリン鉱石を採掘され、非常に大きな利益を生みました。
ナウルには税金もなく、医療や教育の無償提供、全国民へのベーシックインカムなど手厚い社会福祉を国民に提供していました。
しかし1989年からリン鉱石の産出量が減少を始め、ナウルの国家財政が傾き始めます。
リン鉱石に依存したモノカルチャー経済から脱却するために国際金融業への参入を目指し規制緩和を行いましたが、マネーロンダリングの温床になるという指摘を受け、頓挫しています。
現在では経済が崩壊し、国営銀行も破綻、失業率は90%を超えており、海外からの支援に頼らざるを得ない状況が続いています。
第2位 モナコ公国(2㎢)
モナコ公国は南フランスの地中海沿岸地域コート・ダジュールの、イタリア国境にほど近い場所にある都市国家です。
日本ではF1世界選手権のレースである「モナコ・グランプリ」の開催国として有名なのではないでしょうか。
グリマルディ家が代々「大公」という国家元首を世襲する立憲君主制を採用しており、外交関係を結ぶにはフランスの許可が必要な時期があったり、フランスが領土防衛の義務を負うなど、隣接するフランスとの関係が非常に密接です。
モナコ公国は山がちですが地中海に面した非常に美しい国であり、世界有数のタックスヘイブン(租税回避地)でもあるため、世界中の富裕層が国籍を置いています。
そのためモナコ公国の人口はおよそ3万人ほどなのですが、そのうち全体の7割以上がフランス国籍などの外国籍を持つ住民であると言われています。
第1位 バチカン市国(0.44㎢)
世界最小の国は、イタリア・ローマ市内にあるバチカン市国です。
ローマ教皇庁によって統治され、カトリック教会と東方典礼カトリック教会の総本山となっています。
国全体が世界遺産となっており、国土の3分の1を庭園が占めています。
4世紀に聖ピエトロ大聖堂が建てられたことがきっかけとなって建国され、1929年、ムッソリーニ政権下のイタリアとの間で「ラテラノ条約」を交わしたことで正式に独立しました。
バチカン市国の人口は2016年4月時点で809人であり、そのほとんどが枢機卿や修道女と言ったカトリックの修道者です。
番外編 マルタ騎士団
引用元:http://travelsun.jp/malta/?p=507
私たちは学校教育で国家の構成要素を「領土・国民・主権」であると学習します。
そのいずれも欠いた土地は国家とは呼びません。
しかし世界には領土を持たないにも関わらず国家と同等の「主権実体」として国際連合の総会に出席する団体があります。
それがマルタ騎士団です。
マルタ騎士団は12世紀に発生した騎士団で、かつてマルタ島やロドス島に領土を持っていましたが1798年のナポレオンの侵攻によって失ってしまいます。
しかし騎士団自体は存続し、1822年に開かれたベロナ会議によって正式に国家として認められています。
現在マルタ騎士団はイタリア・ローマ市内のマルタ宮殿に事務局を置き、治外法権が認められています。
また医療活動を中心に事前活動を行うほか世界の94か国と外交関係を結んでいます。
ちなみに事務局を置くマルタ宮殿(0.012㎢)を騎士団の領土と考えた場合、マルタ騎士団はバチカン市国を抜いて世界最小の国となります。
番外編 ミクロネーション(シーランド公国等)
引用元:https://www.huffingtonpost.jp/
世界には各国の政府や国際連合が国だと認めていないにも関わらず、独自に国旗などを制定し、国家を自称する団体も存在します。
彼らはミクロネーション、あるいは自称国家と呼ばれています。
例えばイギリス南東部サフォーク州の10㎞沖合に浮かぶフォート・ラフスという海上要塞では、1967年にバディ・ロイ・ベーツという男とその家族が住み付き「シーランド公国」を建国しました。
シーランド公国はイギリスの領海の外にあり、またどの国も領有権を主張していなかったことからイギリス司法で裁くことはできず、国家としては認められていませんが事実上の治外法権を獲得しています。
もし、シーランド公国が国家として認められれば、その面積はなんと僅か0.00055㎢。人口4人と世界最小の国になることは間違いありません。
また、ロシアの泡沫政党であるロシア連邦君主主義党の代表アントン・バーコフは、南太平洋の島国であるクック諸島から環礁を購入し、その環礁を領土としてかつて存在した「ロシア帝国」の復活を宣言しました。
バーコフはロマノフ朝の子孫を自称する男を皇帝として擁立し、自身は宰相として「ロシア帝国(現在は改称してロマノフ帝国)」を運営しています。
ミクロネーションは私たちから見れば馬鹿げた理由で建国されたものも多いですが、当人たちは極めて本気か、自覚してふざけている場合が多いです。
もちろん私たちでも工夫をすればミクロネーションの建国は可能なので国家元首になりたい方は検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では世界最小の国TOP10と、番外編として領土を持たない「主権実体」であるマルタ騎士団、そしてミクロネーション(自称国家)を紹介しました。
最小の国は確かに非常に小さいですが、いずれも日本に負けない強い特色を持ち、独自の国家運営をしています。
もし海外旅行をするならば、最小の国も候補に入れてみるのはどうでしょう。
きっとそこでしか味わえない、貴重な体験ができるはずです。