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世界最強の海の生物TOP10(魚類・海獣・その他海洋生物)

現生する海洋生物の中で危険な種、生態系の頂点に君臨する種と言えば、獰猛な性格を持つサメや群を抜いた巨体を持つクジラなどが思い浮かぶのではないでしょうか。

海洋生物、特に深海に生息する生物は生態が解明されていないため、陸上生物に比べると狩りの様子も推測の域を出ない部分も多いのですが、確認されている調査結果の中から特徴的な狩りの仕方や、変わった能力や生態を持つ生物を中心に、最強の海洋生物を10位から1位までランキングで紹介していきます。

 

10位 ダツ

ダツは体長0.5m~1.3mのダツ科の魚。尖った顎の形状から、英語では“needle fish”と呼ばれています。

世界中の熱帯、温帯水域に生息しており、沖縄県ではサメより怖い魚として恐れられています。毒があるわけでも鋭い牙を持つわけでもないのですが、光るものに反応して尾鰭を素早く振りながら時速70kmにも及ぶスピードで突進してくるという性質から、鋭い顎に胸部を切り裂かれてしまうダイバーや、眼球にダツの顎が刺さって失明したダイバーなど、聞くだけでも痛々しい被害報告が後を絶ちません。また、頸動脈に刺さってしまって失血死をしたというケースもあります。

ダツに刺された場合は、血管の損傷が広がる可能性があるため無理に引き抜こうとせず医療機関で対処を行うこと、また夜釣りの際にはライトに反応して水面から飛び出してくる可能性もあるため、決して海面を照らさないよう、環境省からも注意喚起がされています。

 

9位 ミナミゾウアザラシ

雌の体長は260cm~280cm、体重400kg~900kg、雄の体長は420cm~450cm、体重3t~4tというアザラシ科最大の大きさを誇るミナミゾウアザラシは、南極海周辺に分布し、雄がハーレムを作ることでも知られる種です。

繁殖期の夏になると雄は次々に上陸をし、自分の縄張りを決めます。この縄張り内には40頭~50頭の雌が所属し、ハーレムキングである雄は、雌が自分の子供を産み育てる間、他の雄や外敵からハーレムを守らないといけないのです。

自らの子孫を残したいという欲求に動かされてハーレムを乗っ取りに来た雄が向かってきた場合は、激しく体をぶつけあいながら血みどろの戦いを繰り広げます。しかも一頭撃退したと思ったら、その隙に他の雄が侵入していたりと、縄張りを持つ雄は繁殖期の間、最後の一頭の雌が授乳を終えて海に出るまで戦い続けるのです。

このようにして強い雄の遺伝子だけを残すことで、強力な肉食動物が多い厳しい南極の生存競争を勝ち抜いてきたと考えられおり、実際にホッキョクグマやシャチ等も積極的に成獣のミナミゾウアザラシを襲うことは無いとされています。

 

8位 ヒョウアザラシ

ヒョウアザラシは体長3m~3.5m、体重380kgで南極周辺の流氷域に生息するアザラシの一種。名前の通りヒョウのような黒い斑紋と、オットセイのような細長い体と鋭い牙の並ぶ大きく開く口を持つことが特徴です。

肉食の食性を持ち、アザラシ科の生物の多くがオキアミなどの小魚を餌とするのに対し、同じアザラシの仲間であるカニクイアザラシやペンギンなどを捕食するのですが、獲物をわざと放してからまた捕まえる、捕えた対象を水面に叩きつけてなぶり殺しにして遊ぶという残虐な性質を持っています。

主な狩りのスタイルは黒っぽい体色を活かして岩に擬態し、獲物が近づいたところで一気に襲い掛かるというもの。群れを作らず単独で生活をし、同種のヒョウアザラシ同士で血を流して餌を奪い合う姿も見られます。

野生の海獣が人を襲うケースはほとんどありませんが、ヒョウアザラシは2003年に南極でシュノーケリングをしていた生物学者に襲い掛かり、海中に引きずり込んで殺したという事件を起こしているのです。

南極の食物連鎖の強者ですが天敵はシャチであり、稀にですが捕食されることが確認されています。

 

7位 イリエワニ

イリエワニは体長3m~7m、体重450kgと現生する爬虫類の中で最大の種のひとつです。入江や三角州を好んで住処にすることからこの名前がつきました。インド南東部からベトナムにかけてのアジア大陸、オーストラリア北部沿岸に生息し、海水への耐性も持つために海流に乗って分布を広げることもあります。

非常に獰猛な性格を持ち、生息数が多いオーストラリアでは被害報告が後を絶たず、2014年にも国立公園内の池に突然イリエワニが現れて2人の少年を襲い、1人は捕食されてしまい、助かった1人も両腕に重傷を負うという痛ましい事件が起こりました。

現生する生物の中で最も噛む力が強いとされるワニの中でも一番顎の力が強い種であるとされ、1平方cmあたり260kgもの負荷をかけることができるという調査結果もあり、口全体を使えばなんと小型トラック程度の重さを掛けることができると推測されています。

ティラノサウルスにも匹敵すると考えられる顎の力を持つイリエワニですが、反対に顎を開く力はとても弱く30kg程度しかないため、健康な大人であれば片手で抑えることができるそうです。

 

6位 キロネックス

キロネックスは体長25cm~60cm、触手の長さは3m程度のネッタイアンドンクラゲ科の生物で正式名称はオーストラリア・ウンバチクラゲ。キロネックスとはギリシャ語で“殺人者の手”という意味です。

バスケットボール大の傘から60本ほどの触手が伸び、その一つ一つに無数の刺胞と呼ばれる毒針を持ちます。毒の成分は神経毒や溶血毒、皮膚壊死毒であり、自らより大きな魚であっても一撃で倒して捕食することが可能です。

また人間にも有効な毒であり、刺された場合は2分~3分で死に至る危険さえあるとされ、巻き付かれた場合に生存する確率は限りなくゼロに近いと考えられています。

触手が触れただけでも赤い傷跡が残り数週間は激しい痛みが続くことから、生息地であるオーストラリアの沿岸部では被害の報告が後を絶たず、サメ以上に危険な海洋生物として認識されているのです。

昼行性で、他種のクラゲと違い海中を漂うのではなく獲物を見つけると秒速2m程のスピードで移動してくることや、全身が透明で完全に水に擬態することができるなど、危険な特性を持つキロネックスですが、唯一ウミガメには刺胞毒が効かないため捕食されることがあります。

 

5位 ダイオウホウズキイカ

引用:https://phys.org/news/2017-07-optic-lobe-giant-squid-proportionally.html

ダイオウホウズキイカは全長4.5m前後、体重500kgにも及ぶサメハダホウズキイカ科に属する巨大な無脊椎動物。南極海に分布し、水深2000m前後の深海に生息します。

引き揚げられることはあっても深海での狩りの様子が確認されたことがないダイオウホウズキイカですが、腕の吸盤には長さ2cmもの鋭い鍵爪がついており、この鍵爪を利用して狩りをしていると考えられているのです。また鍵爪の中には360℃回転するものがあることも判明しています。巨体ではありますがエネルギーの消費量はあまり高くないため、5kg程度の餌で半年以上生きることが可能です。

またダイオウホウズキイカやダイオウイカなどの巨大なイカの持つ、直径27cmとバスケットボールにも匹敵する大きさの眼球は極度の遠視であることが判明しており、これは天敵であるマッコウクジラの動きや、マッコウクジラが移動した際に押し出されて動いた深海の微生物が発する光を感知することに役立つと考えられています。

この2種の巨大なイカは北欧に伝わる海の怪物・クラーケンのモデルになったとされていますが、どちらもマッコウクジラの腸から死体が発見されており、一方的に捕食されている可能性が高い様子です。

 

4位 ホホジロザメ

ホホジロザメはネズミザメ科に属し、体長6m~8m、体重700kg~2000kg。映画“JAWS”のモデルとなったことで知られる獰猛なハンターです。

筋肉質で頑丈な巨体と肉を切り裂く3角形の鋭い歯が3000本もノコギリ状に並ぶ口を持ち、獲物を見つけると時速50kmで突進して水上にジャンプすることも見られます。高い身体能力を持ち、アザラシやイルカなどの大型の海獣を捕食します。

また血液などのアミノ酸の臭いに特に敏感に反応する鋭い嗅覚と、ロレンチーニ瓶と呼ばれる鼻先にある器官を使って生物の発する微弱な電磁波を感じることで、岩陰や砂中に潜む獲物の位置を特定することも可能です。

世界中の温帯域の海に生息し、日本近海でも北海道~九州南岸の太平洋沿岸や青森~九州の日本海に分布しており、1922年には愛媛県松山沖で、1996年には沖縄県宮古島沖でホホジロザメに食いちぎられて男性が死亡する事件が発生しました。

このような事件は全世界で多数報告されているため人食いザメというイメージが強いホホジロザメですが、実際は捕食目的で人間を襲うことはあまりありません。近年の研究ではホホジロザメが人間を襲う場合、ほとんどの場合が好奇心による味見程度の目的で、致命傷を与えることは少ないことが判明しています。

しかしながら“JAWS”の影響もあり、人間に対する脅威として乱獲され続けたことからその数を減らし、現在は絶滅危惧種に指定されています。

 

3位 シロナガスクジラ

引用:http://www.robinsonlibrary.com/science/zoology/mammals/cetacea/blue.htm

シロナガスクジラは全長25m~32m、体重200tという世界最大の哺乳類。世界中の海に生息し、日本近海でも姿を見ることができます。

餌はオキアミやプランクトン、小魚で、巨大な口で海水ごと魚を口に入れて、ブラシのような“くじらひげ”で食べ物だけをこしとってから水を吐き出します。

巨体を維持するためには1日に4t~8tもの餌を食べる必要があるシロナガスクジラですが、口を開くだけでもかなりのカロリーを消耗するため、オキアミの群れを発見しても質を見極めてから狩りをするとされているのです。

神経質で臆病な性格を持ち積極的に他の生物を攻撃することはないとされますが、子連れの母クジラがシャチなどに襲われた際には尻尾を使って蹴り上げる姿も目撃されており、この尻尾を使った一撃は10tトラックを楽に跳ね飛ばせる程の威力を持つと考えられています。

成体になると、怪我や病気で動けないなど余程の理由がない限りは外敵に狙われることもないことから他の生物と戦うことも少なく、生態も解明されていない点が多いシロナガスクジラですが、巨体ながら若い個体は水面に体を打ち付けるブリーチングもできるため、この余波だけでも相当な威力があると推察されます。

 

2位 マッコウクジラ

全長10m~20m、体重35t~50tにも及ぶマッコウクジラは、大きさでは劣るもののヒゲクジラ科で歯を持たないシロナガスクジラと違いハクジラ科に属するため獲物を捕らえるための歯を持ち、歯を持つ肉食獣のなかでは世界最大の種です。

主な餌はイカやタコで、巨体を維持するには年間で約1億トンの餌が必要とされています。1頭のマッコウクジラがこれだけの量を捕食しても漁獲量に影響が出ない理由として、主に人間が立ち入ることができない深海に生息するイカを食べていることが挙げられます。そして、その餌の中にはダイオウイカも含まれているのです。

高い潜水能力を持ち、最高で深海3000mまで潜ることができるとされるマッコウクジラは、地上の200倍もの水圧に耐えられる程硬い皮膚を持ち、暗い深海ではエコロケーションと呼ばれる技術で物の位置や大きさを調べて獲物の位置を特定します。

さらに巨体の1/3もの大きさを持つ頭部にはジャンクと呼ばれる脂肪が詰まっており、その奥にある前鼻のうを振動させることで獲物の動きを一時的に麻痺させる超音波を出している可能性も示唆されているのです。

深海で行われるため解明されていない部分が多いマッコウクジラの狩りですが、2014年にはホホジロザメに装着していたデータロガーが水深580mの位置まで急激に引きずり込まれたような記録を残して回収されており、調査対象であったホホジロザメ自体は失踪していることから、マッコウクジラに襲われたのではないかという説も浮かんでいます。

 

1位 シャチ

最強の海洋生物ランキング1位は英名でKiller Whale、学名でOrcinus orca(冥界からの魔物)こと、シャチです。

北極圏や南極圏の寒冷水域を含む世界中の海に生息しており、人間に次いで最も広い範囲に分布する生物とされ、全長7m~8m、体重は平均7.2t。巨体ながら優れた遊泳能力を持ち、時速60km以上で泳ぐことができ、魚やイカ、海獣などを捕食します。

身体能力以上に特徴的なのが海洋生物の中で突出して高い知力です。シャチは獲物によって狩りの方法を変えることでも知られており、シロナガスクジラなどタフで遊泳能力の高い獲物の幼体を狩る時には隊列を組み、先頭のグループが疲弊したら2番目の列が前に出る、2番目が疲弊したら3番目が前へ、といったように列を組みかえながら進むこともあります。

また自らより攻撃力の高いホホジロザメを捕食する際には、体を仰向けにされると一時的に意識を失うという特性をついて、一頭が全力で体当たりをして仰向けにひっくり返した後で群れで囲んで襲うという手法を取ります。

この狩りの手段も偶然仰向けになって動けないホホジロザメを見かけたシャチが、仲間にその様子を伝達したことで編み出されたと推察されているのです。

このように高い社会性とコミュニケーション能力を持つシャチですが、パックと呼ばれる群れの結束は非常に高く、パックの中で狩りが下手な個体がいると時間を割いて練習に付き合う姿も確認されています。

また、自分達のパック以外の個体であっても怪我や病気で群れからはぐれたものを見つけると、献身的に餌を運んで世話をしたり、時には数頭のシャチで守りながら狩りを手伝ってやる姿も目撃されています。

野生では人間を攻撃することがなく、むしろ好意的な反応を示すことで知られますが、2013年にはアメリカ合衆国フロリダ州にあるシーワールドで飼育されていた雄のシャチがショーの最中に飼育員をプールに引きずり込んで振り回し、溺死させるという事故が発生しました。

これについても危険性を問題視する声や処分を求める声よりも、水族館の飼育環境や群れから離されたストレスが原因なのではないかという同情の声の方が多く寄せられ、シャチの人工飼育の是非を問う社会問題にまで発展したとされます。

ホホジロザメのように単に強いだけではなく、様々な動物の最大の天敵である人間の心に入り込み、捕獲をしてはいけない対象のように感じさせることもシャチが最強の生物として海を制覇した理由のひとつであると言えるでしょう。

実際に国際規模で過激な活動をする有名動物愛護団体が一番ヒートアップするのがシャチの捕獲問題だそうで、これがネックとなってシャチを飼育する水族館があまり増えないという裏事情もある様子です。

 

まとめ

上位3位にランクインした生物はどれも生態系の最上位に君臨する種なので、健康な成体同士が争うということがほとんど無く、実際は甲乙つけ難い猛者ばかりです。

シロナガスクジラやマッコウクジラのような水族館で飼育不可能な大きさの海獣はもちろんのこと、マンボウのような大型の魚でさえ捕獲して研究をすることが困難であるそうで、実は解明されていることの方が少ない大型の海洋生物ですが、だからこそ強さなど想像する余地があって楽しいという一面もありますよね。

 

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