最速の生物はなにか?……それは生物を愛する者ならば、誰しもが興味をくすぐられるテーマです。
今回は、地球にいる生物たちの中から、人間、昆虫、鳥、海洋性生物などの、色々な最速の種たちをピックアップいたしました。
しかし、生物のスピードを計測することは、とても困難なものです。とくに野性動物である場合は、人間の都合を聞いてくれるわけもありません。
どれだけ科学者たちが必死に集めても、計測の難しさから精度も不確かなデータも数多くあるのが現状です。
それでも、よりリアルな速度に現代の機器は迫っています……真実に近い数字は、我々の好奇心に応えてくれるものばかりとは限りません……。
では。生物界の、現在の最速たちをご紹介いたします。
1.昆虫界最速の『ランナー』、ハンミョウ 80km/h
https://www.honda.co.jp/
うつくしい見た目と、長い脚を持つハンミョウは、最高時速80キロメートルの速さで走ることが出来るとも言われています。
ハンミョウは、一秒間に13歩ほど走ることが可能であり、その回転数と長い脚が合わさることで、これほどの高速を出せるようです。
和名での別名は『ミチオシエ』とも呼ばれていました。
これはハンミョウが捕らえようとする、あるいは接近してきた人間に対しての反応から名付けられています。
ハンミョウは草むらなどに逃げ込むことなく、道などの開けた場所に走って逃げたり、飛んで逃げたりする習性があるのです。
そして、人間から距離を取ったハンミョウは、こちらを確認するように頭を向けて来ます。
その様子から、まるで人間に対して「こっちだよ」と、道を教えているように見えたことから、『ミチオシエ』の別名がつけられたのです。
もちろん道を教えているわけなどなく、反射的な行動の結果に過ぎないのでしょうが、どこか愛らしい名前ですよね。
昆虫の脳はあまり多くの情報を処理することが出来ないため、あまり高速で動くと敵や自分の位置が分からなくなっているという論文もあります。
ハンミョウの脳も、そんな状態に陥っているのかもしれません。
さて、ハンミョウの数は、ほかの多くの生物たちと同じように減少しています。
肉食性であり、幼虫の頃は土に掘った穴のなかで獲物を待ち伏せして狩りを行うハンミョウにとって、昆虫が少なく、そして舗装された地面ばかりの現代社会は住みにくいようなのです。
幼虫の頃は、素早い動きなど取ることは全くなく、蟻地獄のように穴に入ったまま動かずに獲物を狩る、完全な待ち伏せ型のハンターです。
幼虫と成虫で、完全に別の生物になる……昆虫らしい特性ではあります。
2.地上最速のランナー、チーター 115km/h
http://www5c.biglobe.ne.jp/
小さな頭にしなやかにしなる柔軟な背骨、方向転換の舵取りに用いられる大きな尻尾に、引っ込むことのないスパイクとして機能する爪を持つ、走るために特化した猫科のハンター。
時速115キロメートルで走ったこともあるとされる、最速の動物、それこそがチーターです。
これはストップウォッチを用いて、700メートルを走り抜けた時間を計測しての結果です。単純に平均速度として、115キロメートルをマークしたとされています。
この記録が正確ならば、チーターは時速115キロメートルよりも速いトップスピードを持っていることが想像することが出来るわけです。
チーターのトップスピードは、時速120キロメートルを超えるのではないか、という予測もあります。
ちなみに、GPS搭載の首輪においては、チーターのトップスピードは、狩猟中の時速93キロメートルが今のところ最高値です。
獲物のスピードに依存した速さであるため、これ以上の速度を出さないで済んでいます。
まだチーターの全速力がどれほどのスピードになるのかは、現代社会が求める精度では確認されていないのです。
現代では、野性動物の過度な調教も禁じられているため、訓練を施すことも国際的な避難に晒される可能性もあります。
大昔は狩猟に使うために飼い慣らされて来たこともある種ですが、今後はそういう行いをすることは難しいかもしれません。
……しかし、たとえ時速93キロメートルであっても地上を最も速く走る動物の座は揺るぎません。
地上最速の生物は、間違いなくこのチーターなのです。
3.最速の馬クォーターホース 92.6km/h
2005年、アメリカの競馬にて、ゴール直前に時速92.6キロメートルが計測されました。
競馬史上では最速の瞬間時速であり、サラブレッドが持つ時速88.5キロメートルを超えています。
クォーターホースは短距離レースに使われる馬ですが、まさかレース馬の代表格であるサラブレッドの記録を超えるとは驚きですね。
しかも、ヒトを一人乗せての記録であることを思えば、その速度の記録は、より向上するかもしれません。
ですが、馬の脚は簡単に骨折するものです。騎手を乗せずに必要以上に速度を上げさせる訓練をしても、騎手が乗る競馬の成績には筋肉の性質上、まず反映されることはありません。
ケガの確率が増えるだけですので、騎手無しでどれだけ速く走れるかを追求してくれることは無さそうです。
しかし、馬の潜在的なスピードは、まだあるのではないかと十分に期待させてくれる数字ではありますね。このスピードが出た瞬間、あと50キログラム以上軽ければ、どこまで速度が出ていたのか……。
いつか精密な記録の上で、瞬間最高速度でチーターを超える馬さえも現れるかもしれません。
その馬をチーターに追いかけさせてみたいものですが、馬ほど大きな動物をチーターは獲物として認識することは無いでしょうね……。
4.最速の犬イングリッシュ・グレイハウンド 70km/h
https://qpet.jp/dog/
時速70キロメートルで走ることが出来る、犬レースで用いられる品種たち、それがイングリッシュ・グレイハウンドです。
速く走るために改良されたグレイハウンドたちは、レース用の擬似餌を追いかけて本能と習性を爆発させます。
エネルギーを燃焼し、ロケットのように走るグレイハウンドはあきらかに愛玩用の犬とは別次元の動物に見えます。
ドッグレースの犬たちはケガがなければ週に一回出走しますが、念入りに獣医たちの検査にパスする必要があるわけです。
ヒトや馬のレースと同じようにドーピングの検査も行われます。
レースにおいて発生したケガには、個別の事案に対しての検討と研究が行われています。
レース用のグレイハウンドにとって、足根骨の骨折は安楽死対象です。
肉球の上あたりの骨で、血行が確保されにくい小さな骨の集まりであり、難治性の骨折になるわけです。
引退後は里親探しの組織がグレイハウンドと新たな飼い主をマッチングしています。
動物を用いた興業は、世界的には廃れていく傾向であり、ドッグレースもその例外には漏れることはありません。
かつてはイギリスで7000万人を動員した人気娯楽も、2017年には200万人未満に減少したのです。
アメリカでは43の州で禁止され、マカオで行われていたドッグレースも2018年に終了しました。
動物愛護団体の政治力は強まっているため、動物を使う仕事は21世紀には滅びるかもしれませんね。
野性動物とは異なり、再生可能な資源である犬を、ペットという名の愛玩用の家畜として消費している行為も、いつか動物愛護団体は禁じてしまうかもしれません。
5.世界最速の蛇、ブラックマンバ 20km/h
https://jungle-time.com/
世界屈指の危険な毒蛇であるブラックマンバですが、爬虫類の中では最速クラスのランナーでもあります。
ブラックマンバは時速20キロメートルで走ることも出来る蛇です。
基本的にはヒトのいない僻地にいて、それほど攻撃的でもないブラックマンバですが、追い詰めすぎると最も危険な蛇に変貌することになります。
ブラックマンバは一咬みで致死量の十数倍の毒を送り込みますが、何度も激しく噛みついて来ることもあるのです。
そして、逃げようとしたあなたのことを、時速20キロで追いかけながら飛び付いて来ます。
アフリカの広野で時速20キロメートルを超える速さで走るのは困難なことです。
ブラックマンバには近づかないようにするのが懸命です。
6.最速の草食獣、プロングホーン 98km/h
https://ja.m.wikipedia.org/
地上の草食動物では最高のスピード、時速98キロメートルで走ることが可能な生物、それが北米に住む、プロングホーンです。
かつては北米にもチーターが生息していました。
プロングホーンは、そのチーターから逃げるために速く走るための進化を果たしたのではないかという説もあります。
強烈な外敵の存在が、プロングホーンに淘汰圧となって働き、スピードを速めるという進化が促されたのかもしれない、という理論です。
必要以上のスピードを獲得することは、動物には不必要なころですから、ライバルたちの存在が、能力を研ぐような進化をもたらすこともあるのではと考えられています。
しかし、最速のハンターと最速の草食獣の命がけのレースが、かつて行われていたのかと思うとワクワクしますね。
7.最速の人間、ウサイン・ボルト 44.6km/h
https://twitter.com/
言わずと知れた人類史上最速の男、それがウサイン・ボルト氏です。
100メートル走と200メートル走での世界記録保持者であり、100メートル走の記録では9.58秒、200メートルの記録は19.19という驚異的なレコードを残していて、どちらも世界記録になります。
直線コースの150メートル走でも14.35秒のタイムを出しており、これも世界記録です。
そのトップスピードは時速44.6キロメートルにも達しています。
ウサイン・ボルトの身長は196センチもあり、180センチ台が多かった100メートル走の世界ではあきらかに巨体でした。
この体の大きさは、スタート時の加速において不利に働くと考えられていました。
しかし、同郷ジャマイカの先輩にあたり、190センチの身長ながら、世界最速のスタートダッシュを行うとされるアサファ・パウエルのフォームを参考にスタートダッシュを改良し、巨体の弱点の克服の一つとしたようです。
ウサイン・ボルトが最高速度に達したときの歩幅は2メートル75センチであり、ゴールラインを越える瞬間の一歩は2メートル99センチ5ミリになります。
100メートル競争における世界最大の歩幅とされていて、長身を活かしたストライド走法を用いることで、ウサイン・ボルトは人類史上最速のスプリンターとなったのです。
生来の身体能力だけでなく、技術を取り入れることが出来る、それが人類の運動という行為に対しての強化策と言えます。
8.最速の魚、バショウカジキ 110~8km/h?
最高時速110キロメートルとも伝えられる、水中では最速の種ともされています。
ですが、近年、科学者らの手により、精確な装置を使った計測によれば、バショウカジキは平均で時速2キロメートルほどで泳ぎ、最高時速では、時速8キロメートルを計測しています。
……時速110キロメートルで泳ぐというハナシの出所としては、バショウカジキが釣れた時に引っ張られていく釣糸の速度から推定されたものでした。
バショウカジキ自身の速さや、船のスピードや、海流の速さ、そして波による船の上下などなどのスピードが合算されてのことだったのではないかとされています。
個人的には、時速110キロメートが出てくれているとワクワクするのですが、最高でも時速30キロメートルぐらいなんじゃないかと考える海洋生物学者もいます。
瞬間的にはシロナガスクジラやクロマグロが最高時速18キロメートルをマークしていますが、それがどれだけの長さ持続したのか、浮力や水流の結果ではないのかは分別が難しそうです。
そもそも、水中の抵抗は空気抵抗の800倍、抵抗は速度の2乗でかかってくるため、高速で泳ぐことは不可能と言えます。
海は広くて大きいわけです。
外洋になれば、砂漠よりも生命に乏しい空間が広がってもいる、地獄のような低栄養環境なのだと評価することも可能となります。
こんな場所では効率的に生きていくしかありません。
エネルギーの消耗を最小限にしなければ、生物は疲れはてて死んでしまうことになるのです……。
砂漠で年から年中、全力疾走している人物がいたとしたら、その人物が懸命な行いをしていると言えるとは思えません。
海洋生物たちも同じことです。
時速8キロメートルで泳ぐことで、狩りが成せるなら、それ以上に速く泳ぐ必要はなく、それ以上に速く泳いだほどにエネルギーのロスにしかつながらず、自殺行為となります。
水中を進む時のエネルギー効率で言えば、肺呼吸を行う生物では、時速3.5~7.2キロメートルあたりぐらいが最も効率的なスピードであるようです。
エラ呼吸で水中から酸素を吸い込める魚類では、さらにゆっくりとした泳ぎの方が効率が良いのか、あるいは慌てていないためなのか、補食性のサメであるイタチザメでさえも2キロほどのスピードです。
ヒトがゆっくりと歩いているようなスピードですね。
9.哺乳類最速のスイマー、シャチ 82~5km/h?
https://areablue.jp/
最高速度、時速82キロメートルで泳ぐとされていますが……今後の研究次第では、数字は変動するかもしれません。
おそらくは大きく下方修正されることになるのでしょう。
ほとんどの海洋生物は通常では、水中では時速8キロメートル以下でしか泳がないのですから。
精密な観測のもとで、シャチは平均で時速5キロメートルで泳いでいるという報告があります。
生態系の頂点にある彼らが、あまり慌てる必要もないことを考えれば、それほど極端に速く泳ぐ必要はないわけです。
……とはいえ種の平均的な速度においては、人類をはるかに凌駕して速く泳げることは確かなのは事実です。
シャチは一日に100キロメートルほど移動したという報告もあります。これはヒトには不可能な距離ですから。
サメやクジラ、アザラシやイルカなどを補食することが可能なことから、それらよりも速く動く可能性はあるのかもしれません。
しかし、多くの海洋生物は時速8キロメートル以下でしか泳いでいないため、補食するために必要な速度はそれと同程度になるはずです。
もしかすると水面下の狩りは、あまりスピードに依存していない行動なのかもしれませんね。
知能や仲間との連携、そしてスタミナ、決定的な攻撃力。スピードよりも、それらが大きな価値を持っている可能性はあります。
人間も自分達よりはるかに速く走る動物たちを捕まえて来たのですから。
シャチの瞬間的な跳躍力などは、浮力と水中の荷重から解放されたときの動きのようですね。
ビート板が水上に飛び出すような力学です。
泳ぐ技術により、そういったパワフルな動作も可能です……。
高度な脳を持つシャチたちの泳ぎ方のテクニック。
それらが経験による学習なのか、本能由来の行動なのか、解明される日が楽しみですね。
近づくと噛まれるかもしれませんから、なかなか研究の進化はゆっくりになるかもしれません。
水中の研究は、地上の動物に対して行うよりも、ずっと困難なものなのです。
10.人類最速のスイマー、マイケル・フェルプス 9.6km/h
https://instagrammernews.com/
世界選手権で26個の金メダル、オリンピックでの通算金メダル数23個という、モンスター選手です。一日に12000キロカロリーの食事を行っていたそうです。
彼の現役時代の圧倒的な強さは、記憶に残っている方も多いと思います。
マイケル・フェルプスは時速9.6キロメートルで泳ぐことが可能な選手です。
……この数字は、実はとんでもない可能性を秘めているものとなります。
じつはマイケル・フェルプスは人類だけでなく、あらゆる生物の中でも最も速く泳ぐことが可能な人物であるのかもしれません……。
上記の生物たちに比べても、マイケル・フェルプスの200メートルを泳ぎ切る時速9.6キロメートルはかなり速いです。
数百メートルを泳ぐ能力では、もしかしたらマイケル・フェルプスこそが水中最速の生物なのかもしれないですね。
魚よりも速いなんて、まさに『水の怪物』というところです……人類って、意外とスゴいってことが証明されてしまいました。
11.最も速く『飛ぶ』魚、トビウオ 70km/h
https://ja.m.wikipedia.org/
海上高くに飛び上がっているときは、最高時速70キロメートルで飛ぶことが出来る魚、それがトビウオです。
海上スレスレを飛んでいるときは、時速35キロメートルほどと言われていますが、それでも海洋生物たちの中では飛び抜けて高速の移動能力になります。
トビウオは巨大な胸ヒレを翼のように広げて飛びますが、腹ヒレも大きな種では、それも広げて四枚の翼で飛ぶこともあります。
このヒレを使って羽ばたくのではありません。
ヒレを翼を広げて滑空して飛んでいるわけです。つまりはグライダーのように風を翼に受けることで、飛んでいます。
最大の種でも30~40センチほどしかありませんが、その飛行能力は極めて高く、100メートルぐらいは簡単に飛び、大型のトビウオでは600メートルほど飛ぶことも出来るようです。
45秒間飛ぶ映像も日本国内で撮影されています。これは現在のところ、映像として残されているものでは、最長の記録とされています。
ただし、45秒間のあいだ、完全に飛んでいたのではありません。空中にいるトビウオは長く下に垂れ下がった尾びれで、海面を叩き、飛ぶための勢いを補充することが可能です。
トビウオは空中での方向転換や、任意の場所で水中に降りることも出来ます。
高度な飛行能力を獲得した生物と言える、唯一の魚類なのではないでしょうか。
……もしかすると、水中に生きるあらゆる生物のなかで、最も短時間で数百メートルの距離を移動することが可能な生物になるのかもしれません。まあ、泳いではいませんが。
泳ぐよりも、飛ぶ方がはるかに楽なのです。
12.水平飛行速度最速ハリオアマツバメ 170km/h~100km/h?
ギネスブックに掲載された、世界で最も速い鳥のひとつです。
落下に依存しない水平飛行の速さでは、時速にして170キロメートルをマークしました。
全長21センチ、翼長50センチほどの、それほど大きくもない鳥が、これだけのスピードで飛べるなんて驚きです。
しかし、精密な観測が進めば、その座も脅かされるのかもしれません……。
とはいえ、最速クラスの鳥であることは間違いないのです。
現実的な水平飛行速度は、時速100キロメートル前後が鳥類のトップスピードなのではないかと見る研究者もいます。
一定の速さを超えれば、競合する相手もいません。
スポーツのように速さを競っているわけでもありませんから、十分なスピードがあれば、それ以上を出す必要は鳥類にはないわけです。
もしかすると、本気を出して飛ぶことがあれば、もっと速く飛べるのかもしれませんが……鳥に命令することも出来ませんから、鳥の全力のスピードを観測することは難しいかもしれませんね。
13.昆虫界最速の『飛翔能力』、ウマアブのオス 145km/h
https://i.pinimg.com/
ウマアブの一種である、Hybomitra hinei wrightiのオスは最高時速145キロメートルでの飛翔能力を示しました。
このウマアブのオスは、落下するメスを追いかけながら交尾に及ぶという不思議な生態を持っています。
その特殊な性淘汰の圧力の結果なのか、彼らは恐るべき最高速度を発揮するように進化してしまったようです。
しかし、昆虫類はとても小さくもあるため、その速さを精確に測定することは難しいとされています。
もっと速く飛べるのか、あるいは精密に測れば、これよりも遅くなる可能性もあるわけです。
どれぐらいの時間を飛び続けることが出来るのかも、評価すれば、また違った印象になってくると思います。
長距離を飛ぶために羽の形状まで変えたりするイナゴの移動能力とか、精確なスピードを測ることが出来たら、面白いのですが……個体識別とか出来ません、イナゴの群れは膨大な数で構成されすぎています。
しかし、ウマアブの雄の短距離、瞬間的なスピードとはいえ、145km/hという観測結果は圧倒的な速さです。
昆虫たちの脅威的な能力の一つとして、ウマアブのオスたちの速さも認知されるべきかもしれませんね。
14.真なる最速の生物?メキシコオヒキコウモリ 160.2km/h
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/
2016年に、Gary F. McCrackenらにより行われた実験の結果に興味深い記録があります。
GPSを用いた実験では、アメリカはテキサス州の洞窟から飛び立った7匹の個体のうち、その全てが最高速度で時速98.0キロメートル以上を計測しました。
そして、最速の個体については時速100マイル、つまり時速160.2キロメートルを上回るスピードで飛んでいたことが確認されたのです。
もしかするとメキシコオヒキコウモリは、鳥類を上回り、地球上で最速の生物と認定されるかもしれません。
信頼度の高い精密な観測下では、鳥類でさえも時速100キロメートル程度の水平飛行速度しか出せてはいないのが現状です。
コウモリの翼には、まだ隠された驚異的な能力が存在しているのかもしれません。
コウモリの翼の力学的な計算は、より高度に進化していると考えられている鳥にも匹敵する数字を弾き出すこともあるのです。
実際のところ、コウモリは飛行時間と飛行距離、そしてトップスピードの点で、鳥類に負けていない数字を出しているわけです。
標高の高い山も飛び越えられるため、コウモリの飛行能力は、やはり生物界屈指……もしかすると、現代に生きている生物の中でも、頂点の速さを持っているのかもしれません。
まとめ
最速という言葉が持つ魔力は大きく、人々の興味と期待を最速候補の生物たちは受け止めて来ました。
科学者たちも、その魔力には逆らえず、どこか現実離れした数字を予想したりもしました。
100年前の昆虫学者は、時速1000キロメートルを超える蝶がいるのではないかとさえ考えていたわけです。100キロではなく、1000キロメートルです。
そんな脅威的な数字を、かつては本当に学者たちが真に受けていたのです。
我々、人類が主観ではなく、客観的かつ正しい速度というものを認識することが出来るようになったのは、つい最近ということなのです。
観測機器の向上によって、これからも既存の認識が崩れて行くことになるかもしれません。
海洋生物の想像を破壊する鈍足さなどは、多くの失望も生むかもしれませんが、科学は新たな可能性を見つけることもあるはずです。
コウモリが鳥よりも速く飛び、瞬間的な速度においては最速の鳥たちの、少し怪しげな記録にも迫ることも証明されました。
そして、地上を走る最速のランナーたちの記録も、観測機器がお墨付きを与えています。
地球で最速のランナーは、チーターのようです。
かつてから言われて来た古典的な評価は、現代の観測機器において証明されもしました。
ですが、意外性のない記録に、どこかヒトは安心も抱きます。
そして、コウモリが鳥よりも速く飛ぶ可能性は、コウモリの再評価につながるかもしれません。
地球で最速の生物である可能性があるわけですから……。
……これからも科学はさまざまな事実を解明してくれると思うと、ワクワクしちゃいますよね。
いつか、あらゆる生物の速さが精密に評価される時代も来るのかもしれません。