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【最強猛毒魚】オニダルマオコゼの毒の強さは?刺されたらどうする?

南の温かい海には思いもよらない危険が潜んでいたりします。

ヒョウモンダコ、ハブクラゲ、ウミヘビなど上げたらきりがありません。

その中でも出会ってしまったことにさえ気づかずに毒牙にかかってしまう地雷のような猛毒生物オニダルマオコゼがいます。

このオニダルマオコゼは毎年沖縄で10人程度をその毒牙にかけており、死者も出しています。

今回はこのオニダルマオコゼの恐ろしさと、その意外な一面を紹介していきたいと思います。

オニダルマオコゼとは

オニダルマオコゼ(Synanceia verrucosa)はカサゴ目オニオコゼ科オニダルマオコゼ属の魚で、全身にこぶがあります。

鱗がない代わりに厚く堅い皮に覆われていて、頭部や体表に海藻が生えている個体もいます。

オニダルマオコゼはほとんど動くことがなく一見して岩や石などに見えるため、英名で「Stone fish;石の魚」と呼ばれています。

和名も見た目をそのまま表したもので、「鬼のような形相をしただるまのように丸い怪奇で珍妙な顔をした魚」という意味をもっています。

インド洋や太平洋西部、紅海の温かい海に分布し、日本では八丈島、宮崎県、鹿児島県、屋久島、小笠原諸島や奄美大島、沖縄県の浅瀬のサンゴ礁や岩礁域に生息しています。

稀に水深1mもないタイドプールに出現することもあります。

引用;https://www.pref.nagasaki.jp/suisan/

 

オニダルマオコゼの形態・生態

オニダルマオコゼの大きさは30~40cmで重さは約2kg程度の比較的大きい魚です。

小魚や甲殻類などを主食とする肉食性の魚で、普段は海底の岩やサンゴ礁に擬態して獲物が近くに来るのを待ち伏せていますが、砂に潜っていることもあります。

その擬態技はベテランのダイバーでも見落としてしまうことがあるほどの実力です。

また、オニダルマオコゼには浮袋がなく体も大きいため泳ぎは非常に不得意で、全身を必死に揺らしてもゆっくり進むことしかできず、そのスピードは子供でも追いつけるほどです。

そのため、オニダルマオコゼは基本的に大きく移動することがほとんどありません。

オニダルマオコゼの最大の武器である毒は背びれに6本、尻びれに3本、腹びれに1本ある棘です。

この棘には毒腺がつながっており、刺さると毒が注入される仕組みになっています。

このオニダルマオコゼの毒はオニオコゼ科の中でも最強であると言われています。

引用;http://www.monstersproshop.com/

 

オニダルマオコゼの毒

オニダルマオコゼの毒は複数のたんぱく質の混合物から生成されます。

現在、人間を始めとした哺乳類に有効で分離が成功して研究されているたんぱく質はストナストキシンstonustoxin、ネオベルコトキシンneoverrucotoxin(neoVTX)、カルジオレプチンcardioleptinと呼ばれる3つの毒です。

ストナストキシンは赤血球を破壊・変成させる溶血活性と刺傷部に痛みを伴う腫れをもたらす腫形成活性をもっており、刺されたときの激しい痛みの主要な原因毒となっています。

オニダルマオコゼに刺された直後の痛みは相当なもので、ショック死してしまう人もいるほどです。

ネオベルコトキシンにはストナトトキシンと同じような特性をもっていますが、致死性活性はストナトトキシンよりもさらに強いものとなっています。

カルジオレプチンは他の毒よりも致死性活性は低いですが、血圧と心拍数の低下を促し、心筋収縮をさせることで心臓不整脈を引き起こす恐ろしい毒です。

引用;http://karapaia.com/

 

オニダルマオコゼの毒の強さ

オニダルマオコゼの毒の強さを比較するためにオニダルマオコゼの各毒と有名な生物毒や化学毒を半数致死量(LD50)で示すと以下の通りになります。

※半数致死量(LD50;Lethal Dose, 50%)とは実験動物に毒を投与した後、一定時間経過した際に半数以上が死んでしまう量を表し、数値が小さいほど毒性は高くなります。

生物毒の強さ(LD50)

・オニダルマオコゼ  0.2~0.8mg/kg
ストナストキシン  0.017mg/kg
ネオベルコトキシン 0.047mg/kg
カルジオレプチン  15mg/kg

・ヤマカガシ     5.3mg/kg(日本一毒の強い蛇)

・ヒョウモンダコ   0.02mg/kg(フグ毒をもつタコ)

化学毒の強さ(LD50)

・青酸カリ      10mg/kg

・サリン       0.2mg/kg

オニダルマオコゼの毒は生物界の中でも日本一毒性の高いヤマカガシよりも強い毒をもつ上、毒の成分単体で観ればフグ毒よりも強力な毒をもっていることがわかります。

化学毒を見てみても、少なくとも青酸カリ以上でサリンに相当する毒の強さがあるという恐ろしい魚です。

また、オニダルマオコゼ1匹あたりのもつ毒は、成人男性4人分の致死量をもっていることがわかっています。

引用;https://pixabay.com/

 

オニダルマオコゼに刺されたときの症状

オニダルマオコゼの毒は太く硬い棘から注入されると、刺傷直後に患部の激しい痛み(疼痛)があり、痺れ、知覚麻痺が起き、患部に水疱ができます。

毒が回ってくると発熱、悪心、嘔吐、下痢などが起こります。

さらに重症なものになると、関節痛、冷や汗、発汗、悪寒、呼吸困難を引き起こします。

特に重症なものになってくると心肺機能不全や血圧低下などのショックにより死亡することもあります。

また、たとえ助かったとしても局所的な筋肉の萎縮や麻痺などが後遺症として残ってしまった事例もあるようです。

引用;https://pixabay.com/

 

オニダルマオコゼの被害報告

海外では数件、日本では沖縄県で1983年8月と2010年8月の2回死亡報告がされています。

2010年の被害報告は、ダイビングのインストラクターが亡くなっています。

この時、オコゼに刺されていたことがわかっていましたが、毒の回りが早く対処が間に合わず搬送された病院で息を引き取る事態になりました。

この被害報告でオニダルマオコゼの毒は強力で時間との勝負だということ、海に慣れたプロでも死んでしまうことのある恐ろしい魚だということを世間に知らしめた大きな事件でした。

また、オニダルマオコゼによる刺症者は沖縄県内だけでも毎年10件程度出ており、その被害のほとんどはシュノーケリングなどの遊泳やダイビング中の事故によるものです。

オニダルマオコゼに刺される原因のほとんどは海で誤って踏んづけてしまうことです。

オニダルマオコゼの棘は太く硬く長いため運動靴やマリンブーツなどゴム底のシューズは簡単に貫通してしまいます。

そのため、オニダルマオコゼに刺されないために「ゴム底ではなくフェルト底の靴を使用する」「シュノーケリングやダイビング時には触る場所に気を配る」などの対策が必要になってきます。

引用;http://karapaia.com/

 

オニダルマオコゼに刺されたら

①速やかに海から上がり、助けを呼ぶ。

②患部に棘が残っていればできる限り抜き、取り除く。

③傷口を洗浄・消毒及び毒の吸出しを行う。

④患部を40~45℃のお湯に付け、30~90分温浴します。

(オニダルマオコゼの毒は熱に不安定なのでこれにより痛みを和らげることができます。)

⑤ただちに医療機関を受診する。

オニダルマオコゼの毒に対してはオニダルマオコゼ抗毒素などが有効とされます。

しかし海外製の薬で入手困難な薬なため、常備している病院がほとんどです。

そのため日本では対症療法となることが多いようです。

引用;https://pixabay.com

 

オニダルマオコゼは食べられる!?

オニダルマオコゼには毒がありますが、毒腺のある棘を取り除いた後に絞めて皮をはぐことで食べることができます。

しかしながら、オニダルマオコゼを素人が捌くのは非常に危険ですのでプロに任せるようにしましょう。

オニダルマオコゼは1尾あたり5,000円以上の値段が付くほどの高級魚で、味には癖がなく、噛み応えのある白身魚です。

その風味と食感はカサゴというよりもフグに似ているともいわれます。

調理例としては鍋やみそ汁、煮つけ、天ぷら、唐揚げ、刺身などほとんどの料理で利用できます。

ただし、皮は堅く海藻などが付着していること、皮にも毒があると言っている研究者もいること、硬く苦みがあることなどの理由から食べるのはあまりオススメできません。

また、オニダルマオコゼの肉は低カロリーで高タンパク質な魚で、ビタミンB12とナイアシンが非常に多く含まれています。

ビタミンB12は水溶性のビタミンで体内のビタミンと結合し、ヘモグロビンを生成する働きのある物質で、貧血防止に役立ちます。

ナイアシンは水溶性ビタミンで、細胞内で酵素として働くので皮膚や粘膜の健康維持や回復能力の向上が期待できる物質です。

ただ、筋肉や臓器にはアニサキスが潜んでいるので、刺身にするときは薄く切り、十分目視確認してから食べましょう。

鍋や唐揚げにする際もしっかり火を通してから食べるようにしましょう。

引用;http://seacreatorweblog.cocolog-nifty.com/

 

オニダルマオコゼの生命力

オニダルマオコゼは非常に生命力の高い魚です。

オニダルマオコゼは普段から必要最低限の動きしかしないため低酸素下でも、他の魚類より長く生きながらえることができます。

そのため、鰓呼吸をしているにもかかわらず、陸に上げても24時間は生き続けることが可能だそうです。

引用;https://www.okinawa-fishing.com/

 

オニダルマオコゼは飼える!?

猛毒をもったオニダルマオコゼですが、自宅でペットとして飼うことができます。

その丸いフォルムと泳ぐときの必死な姿がマニアの心をつかみ、アクアショップでは3,000~5,000円程で取り扱われています。

毒蛇のように飼う際に特別な申請をする必要がありません。

しかし、40cm前後もある魚なので少なくとも120cm水槽が必要になってきますし、毒の脅威もあるため飼うにはそれなりの財力と注意が必要になってきます。

引用;https://hcityaqua.exblog.jp/

 

オニダルマオコゼは強い?

毒をもっている魚は毒をもったことをいいことに攻撃性を欠いたり、身体能力が低くなる傾向があります。

オニダルマオコゼ例にもれず遊泳能力の低く、くわえて待ち伏せ型の捕食をする魚なので、「強面だけど強くはなさそう」と毒を考えない単体での強さの評価は低いです。

しかもオニダルマオコゼは高い擬態能力や食欲をそそらない見た目、さらに毒をもったことによって天敵はおろか攻撃してくる外敵さえももいないとされていたので余計にそんな印象をもたれがちでした。

そんなオニダルマオコゼですが、2015年に獰猛さを魅せるようなニュースがありました。

2015年オーストラリアの港でウミヘビとオニダルマオコゼの死体が浮いていたのを近所に住んでいた男性が発見しました。

この2つの死体は驚いたことにお互いに噛みついた状態で浮いていたのです。

状況からウミヘビもしくはオニダルマオコゼのどちらかが捕食しようとしたものの、相手に噛みついて抵抗したものと推察されます。

結局、彼らはお互いの毒によって死んでしまい、勝者はいませんでした。

しかし2m近くあるウミヘビに噛みつき死んでも放さないという獰猛さは今までのイメージとはずいぶんかけ離れた姿です。

オニダルマオコゼは意外にもやればできる魚なのかもしれません。

引用;http://sign.jp/

 

まとめ

いかがでしたか?

オニダルマオコゼはプロのダイバーでも見つけるのが困難な擬態の達人で踏めば人を死に至らしめるほどの毒をもっています。

しかしフェルト底の靴にするなど、踏まないように対策をしっかりとっていれば防げる事故です。

夏の海水浴シーズン、南の海へ出かける方は是非オニダルマオコゼ対策をして遊びましょう。

もしもその時オニダルマオコゼが泳いでいる姿を見られたら、怖がらず幸運だと喜んでください。

その可愛らしい姿に魅了されるかもしれませんよ。



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