日本では2011年に東日本大震災の際に発生した大津波が東北地方沿岸に甚大な被害をもたらしました。
その被害にあわれた方々が撮影した動画により、改めて津波の恐ろしさを認識した方も多いのではないでしょうか?
今回はそんな津波の中から史上最大とされる10の津波をご紹介します。
目次
遡上高とは
遡上高とは、陸に押し寄せた津波が海抜高度何mの高さまで達したかを示す値のことで、陸上の斜面や崖などにのこる浸水痕跡の最大到達地点を現場調査することで正確に測ることができます。
津波の高さを表す表現には他にも下記があります。
- 津波の高さ(波高) - 海岸で観測する、平常潮位面からの波の高さ
- 浸水深 - 陸上の構造物に残る、地面からの浸水痕跡の高さ
- 痕跡高 - 陸上の構造物に残る、平常潮位面からの浸水痕跡の高さ
10位 明治三陸沖地震津波(38.2m)
明治三陸地震は、1896年6月15日に岩手県近海を震源として発生した地震です。
地震は最大震度が4(秋田県仙北郡)で、地震による被害はほとんどありませんでした。
しかし、東日本大震災前まで、本州における観測史上最大の遡上高38.2m(大船渡市)を記録する大津波が発生し、岩手県を中心に死者・行方不明者が2万人以上という甚大な被害が発生しました。
三陸海岸は特有のリアス式海岸から津波の被害を受けやすい地域であり、古くから度々津波の被害が出ています。
その為、現在では多くの漁港や海岸で高い防潮堤などの津波対策が施されています。
9位 大宝地震大津波(40m)
大宝地震は飛鳥時代終盤(701年)に近畿地方北部で発生した大地震です。
大津波の伝承は各地に残されています。
京都府宮津市大垣の「波せき地蔵堂」にある災害記念碑(標高40m)には、津波がこの地点まで到達したことが記述されています。
また、京都府京丹後市大宮町周枳の「荒塩神社」にある鳥居(標高60m、海岸から12.8km)は、神社の手前まで津波が襲ってきて、ちょうど津波が止まったところに鳥居を立てたと言われています。
8位 東日本大震災(40.1m)
2011年3月11日に発生し、岩手県、宮城県、福島県など東北地方に甚大な被害をもたらした東日本大震災では、岩手県大船渡市の綾里湾で遡上高40.1mという巨大な津波が発生しました。
また、観測できた津波の高さでも9.3m以上(福島県相馬港)と、国内観測史上最大の津波が観測されました。
東日本大震災では、地震と津波により死者15,894人、行方不明者2,561人。さらに福島の原子力発電所のメルトダウンという歴史上稀に見る大災害となりました。
7位 クラカタウ噴火の火山津波(46 m)
1883年、インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間、スンダ海峡に位置するクラカタウで爆発的な大噴火が発生しました。
1883年8月26日から28日にかけて発生した噴火では噴煙の高さが70~80kmにも達し、火山灰は12日で地球を1周しました。
この噴火により165の村が破壊され、36,417人が死亡しましたが、噴火そのものではなく噴火に伴って翌日に発生した巨大な津波によるものでした。
非常に大規模な火砕流が、一気に海に流れ込んだことにより大津波が発生。
津波は、多くの町で全ての建物を押し流し、メラクの町では46mの高さまで被害を受け、高さ35m弱の小高い丘に逃げていた13人のヨーロッパ人は全員流され死亡したとされています。
6位 島原大変肥後迷惑(57m)
島原大変肥後迷惑(しまばらたいへんひごめいわく)とは、1792年5月21日に長崎県で発生した雲仙岳の火山性地震、眉山の山体崩壊とそれに伴う津波が島原や対岸の肥後国(熊本県)を襲った大災害です。
1791年頃から雲仙岳から普賢岳を震源とする地震が多発するようになり、翌1972年2月と4月には普賢岳にて噴火が発生。溶岩流が流れ、各地に落石や地割れなどの被害が出ました。
その後、島原周辺に震源を移して地震は続き、5月21日の夜、2度の強い地震が発生すると眉山の南側部分が大きく崩れ、3億4000万m3に上る大量の土砂が島原城下を通り有明海へと一気に流れ込みました。
その衝撃で10m以上の高さの津波が発生し、島原や対岸の肥後天草にも襲い掛かりました。
肥後側の津波の遡上高は熊本市の河内、塩屋、近津付近で15~20m、三角町大田尾で22.5メートル。島原側は布津大崎鼻で57メートルを超えたとの記録が残っています。
島原大変肥後迷惑による死者・行方不明者は15,000人を超え、有史以来日本最大の火山災害となりました。
5位 アラスカ地震の津波(67m)
アラスカ地震は1964年3月27日に米アラスカ州南西部のプリンス・ウィリアム湾で発生した大地震です。
マグニチュード9.2というアメリカ地震観測史上最大規模の海溝型大地震で、大津波が発生しました。
津波はアラスカ州各地を襲い、シャウプ湾では67.1mにも達しました。
他にも津波はカリフォルニア州などのアメリカ西岸、カナダ、更にハワイや日本、メキシコ、南極大陸にまで到達しました。
アラスカ地震では死者131人の他、経済的にも各地に大きな被害が発生しました。
4位 ギリシャ・ミノア噴火の火山津波(90m)
ミノア噴火は、紀元前1628年頃に発生した地球の歴史上最大規模の噴火の一つです。
海底火山の爆発的噴火により、サントリーニ島の多くが吹き飛び現在の形になりました。
また、この噴火で発生した巨大津波は110km離れたクレタ島北海岸に壊滅的な被害をもたらし、当時栄えていたミノア文明が滅んだ原因の一つと考えられています。
このサントリーニ島とクレタ島は、幻の大陸アトランティス伝説の有力なモデルとも言われています。
3位 バイオントダム災害(250m)
バイオントダムはイタリア北東部を流れるバイオント川に建設されたダムです。
1963年のイタリアは記録的な豪雨に見舞われていました。
9月中旬には小さな地滑りが発生し、危険を察知した担当者はダムの貯水量を下げるために放水を行いました。
1963年10月9日の夜、ダム南岸のトック山が2km以上に渡って地すべりを起こし、2億4000万m3もの膨大な土砂が時速100kmという猛スピードでダムになだれ落ちました。
ダム湖に貯水されていた1億1500万m3の水は、対岸の谷の斜面を高さ250mまで駆け上り、ダムから240m以上の高さにあったカッソの集落の家屋にも被害が出ました。
また、5000万m3もの水が堤防を越えてダム下流の村々を襲い、ダムの工事関係者と住民2125人が死亡するという大惨事になりました。
2位 セントヘレンズ山噴火の火山津波(260m)
セントヘレンズ山は、1980年5月18日に大噴火を起こした事で知られる米ワシントン州の活火山です。
噴火により山頂部分では大規模な山体崩壊が発生。直径1.5kmにわたる蹄鉄型のカルデラが出現し、山の標高は2,950mから2,550mに400mも減少しました。
崩壊した土砂は、時速160kmから240kmもの岩屑なだれとなってスピリット湖へ流れ込み、湖の北に位置する山の斜面を260mの高さまで一気に駆け上りました。
爆発的な噴火は数日間続き、最終的には広島型原爆2万7000個分に相当するエネルギーがセント・ヘレンズ山から放出され、噴出物の総量は1km3を超えました。
1位 リツヤ湾大津波(524m)
リツヤ湾大津波は、1958年7月9日に米アラスカ州のリツヤ湾で発生した史上最大の巨大津波です。
リツヤ湾は岩盤が氷河に削られることで形成された急峻なフィヨルドで形成されていました。
1958年7月9日、現地でM7.7の地震が発生。
地震によって、3000万m3(約9000万トン)ものフィヨルドの斜面が崩落し、海中になだれ込んだ土砂や氷塊が大津波を発生させ、波高はその対岸で524mに達しました。
津波発生当時、周辺には3隻の漁船が停泊していましたが、1隻が沈没し、2人の船員が死亡しました。
リツヤ湾は開発が進んでいない人跡未踏の地だったこともあり、この2名以外の人的被害はありませんでした。
リツヤ湾は過去120年間に5回の巨大津波が発生しており、その内2回は何と100mを超える超巨大津波(1854年:120m、1936年:150m)でした。
<史上最悪の津波>スマトラ島沖地震の津波(34m)
2004年に発生したスマトラ島沖地震は、インドネシア、スマトラ島北西沖のインド洋で発生したマグニチュード9.1という超巨大地震です。
この地震により発生した津波は平均10m、最大34mで、数回に渡ってインド洋沿岸を襲いました。
その後の調査によると、津波発生時には2~3mほど海底が持ち上がり、ジェット機並みのスピード(約700km/h)で津波が押し寄せたと考えられています。
この地震と津波による被害者は約23万人にもおよび、観測史上最悪の津波被害となりました。
【参考】八重山地震(昭和の大津波)(85.4m?)
八重山地震は、1771年4月24日に沖縄県の八重山列島近海を震源として発生した地震です。
地震による被害はありませんでしたが、この地震によって引き起こされた津波では大きな被害が発生したため、元号から「明和の大津波」とも呼ばれています。
津波の高さは最大で30m~40m程度だったと考えられており、宮古・八重山で死者・行方不明者約12,000人・家屋流失2,000戸以上という大災害になりました。
また、津波により農地の多くが塩害の影響を受け、飢饉と疫病が発生するなどの2次災害もあったそうです。
また、『大波之時各村之形行書』では、宮良村(石垣島)で最大遡上高85.4mの津波が発生したと記録されていましたが、後の研究によると当時の測量の制度の低さ、85mより低い位置にある井戸が被害を受けていないことなどから、85.4mという記録は否定されています。
【参考】小惑星衝突による津波(300m?)
今から約6550万年前にメキシコのユカタン半島に小惑星が衝突しました。
この小惑星の衝突は、恐竜を含む大型爬虫類などの多くの生物が絶滅した白亜紀末の大量絶滅の最も有力な原因と考えられています。
諸説ありますが、2010年にサイエンス誌に掲載された説では、衝突した小惑星の大きさは直径10-15km、衝突速度は約20km/s、衝突時のエネルギーは広島型原子爆弾の約10億倍(ツァーリ・ボンバの300万倍)、衝突地点付近で発生した地震の規模はマグニチュード11以上、生じた津波は高さ約300メートルと推定されているということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
数ある災害の中でも最も恐ろしいのは地震と思われがちですが、実は地震によって発生する津波や台風による洪水などの水害が最も人的被害が大きい危険な災害です。
地震が発生した際には最終的に自分の身は自分で守るしかありません。
「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫だろう」というような考えは捨て、海や川などの近くからは一刻も早く離れるように注意しましょう。